2024年6月に公布された改正入管法(令和6年法律第60号)により、技能実習制度に代わる新たな在留資格「育成就労」が創設されました。施行日は、一部の規定を除き2027年4月1日とされています。法律本体は骨格部分のみを定め、活動範囲・受入機関の要件・監理支援機関の許可基準・対象分野・技能評価試験・日本語要件などの実務上重要な事項の多くは政省令・告示に委ねられました。本記事では、政省令・告示の制定スケジュール、パブリックコメントの動向、受入機関が施行までに準備すべき事項について、登録支援機関・申請取次行政書士の実務目線で整理します。
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本記事は実務目線で解説しますが、現在技能実習生・特定技能外国人を受け入れている事業者で、2027年4月の育成就労制度施行に向けた支援体制構築・受入機関要件の確認・既存特定技能在留資格申請をご検討の場合、当事務所の登録支援機関業務および申請取次業務でお手伝いします。施行までに約1年弱、政省令・告示の動向を見ながら準備を進めるタイミングです。
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目次
1. 育成就労制度の法律本体と政省令委任の構造
育成就労制度は、2024年6月21日に公布された「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律」(令和6年法律第60号)によって導入されました。この改正により、技能実習制度は廃止され、その根拠法であった「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」は「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律(育成就労法)」へ改題されたうえで、新たな在留資格として「育成就労」が創設されました。
法律本体は、在留資格「育成就労」の創設、受入機関による育成就労計画の認定制度、監理支援機関の許可制度、外国人育成就労機構(現・外国人技能実習機構を改組)の設置などの骨格部分を定めていますが、実務運用上の中核となる事項の多くは下位法令に委ねられています。具体的には、活動範囲の限定、受入機関と監理支援機関の許可基準・支援体制要件、対象分野ごとの所管省庁の指定、技能評価試験の実施基準、日本語要件の具体的水準(N5・N4)などです。
このため、法律が公布されただけでは実際に育成就労外国人を受け入れることはできず、政省令・告示の制定を待つ必要があります。公布から施行まで3年の準備期間が置かれているのは、これらの下位法令を整備し、関係事業者・受入機関・送出国との調整を進めるためです。
2. 育成就労制度はいつから?2027年4月1日施行と準備ロードマップ
施行日は2025年9月26日の閣議決定および同年10月1日公布の施行期日を定める政令により、2027年4月1日に正式に確定しています。年度初めの施行とすることで、企業の人事年度・採用計画・予算策定との整合を取りやすくする狙いがあります。
施行までのロードマップは、おおむね次の段階で進行しています。第1段階(2024〜2025年)は、法律本体の公布と、有識者会議・分野別協議会での運用設計の議論。第2段階(2025〜2026年)は、政省令・告示案の公表とパブリックコメント。第3段階(2026〜2027年初)は、政省令・告示の公布と、受入機関・監理支援機関の許可申請・移行手続きの開始。第4段階(2027年4月1日)が施行日です。
2026年5月時点では、施行日が2025年9月26日の閣議決定で2027年4月1日に正式確定し、関係省令・告示が2025年9月30日に官報で公布、施行期日を定める政令も2025年10月1日に公布済みであるため、ロードマップは公布段階を終え、受入機関・監理支援機関の移行準備の段階に移っています。受入機関にとっては、政省令案・告示案の公表時点で自社の準備状況を点検し、施行直前に慌てて対応することのないよう、段階的にスケジュールを組むことが重要です。
3. 政省令・告示で決まる対象分野・日本語要件・転籍要件
育成就労制度に関し、政省令・告示・運用要領等で整理される主要事項は次のとおりです。以下では、出入国在留管理庁の公表資料、育成就労制度運用要領、Q&A、有識者会議資料等を踏まえて、実務上確認すべき論点を整理します。
(1) 在留資格「育成就労」の活動範囲(法務省令):育成就労の活動は、特定産業分野における人材育成と人材確保を目的とした業務とされ、具体的な分野・業務区分は分野別告示で指定されます。技能実習制度の移行対象職種(91職種168作業)から、特定技能の対象分野(16分野・2024年3月の閣議決定で拡大)にすり合わせる方向で整理が進む見込みです。
(2) 受入機関の要件・支援体制(法務省令):受入機関は育成就労計画の認定を受ける必要があり、賃金水準(日本人と同等以上)、労働関係法令遵守、支援体制、転籍可能要件などが要件として規定されます。特定技能の登録支援機関と同様の支援体制が求められる見込みです。
(3) 監理支援機関の許可基準(法務省令):技能実習制度の監理団体に代わり、監理支援機関の許可制度が導入されます。許可基準は、外部監査体制の強化、独立性、財務基盤、職員の専門性などが厳格化される方向です。
(4) 対象分野・分野所管省庁告示:分野ごとに所管省庁が指定され、分野別の運用方針・受入見込数が分野別告示で示されます。
(5) 技能評価試験の実施基準:受入後の技能評価試験(特定技能1号への移行要件)の試験範囲・合格基準が告示で定められます。
(6) 日本語要件(A1・A2相当等)の具体運用:就労開始前までにA1相当以上、特定技能1号移行時にA2相当以上の日本語能力が求められる方向で整理されています。JLPTではA1相当がおおむねN5、A2相当がおおむねN4に対応しますが、JFT-Basicの判定区分、講習修了の扱い、分野ごとの上乗せ要件なども確認が必要です。
4. パブリックコメントの動向(2025〜2026年)
政省令・告示の制定にあたっては、行政手続法第39条に基づくパブリックコメント(意見公募手続)が原則として実施されます。意見提出期間は原則30日以上で、e-Govパブリックコメント上で公示されます。
育成就労制度の政省令・告示は、内容が広範にわたるため、一括ではなく段階的・分野別にパブリックコメントが実施される見込みです。法務省令系(受入機関要件、監理支援機関許可基準、活動範囲)および主要な分野別告示は2025年9月30日に官報で公布済みであり、分野ごとの細目告示が引き続き順次整備されています。
受入機関・監理団体・登録支援機関は、パブリックコメント公表時点で意見提出の機会を活用することができます。特に、自社が属する分野の告示案については、業界団体を通じての意見集約や、個別事業者としての意見提出が可能です。提出された意見は、行政手続法第43条に基づき、結果概要が公表されます。
パブリックコメントを経た政省令・告示は、内容を一部修正の上、施行に間に合うタイミングで公布されます。経過措置の細部もこの段階で確定するため、施行直前の駆け込み準備とならないよう、公布版を必ず一次資料で確認することが重要です。
5. 既存技能実習生・既存技能実習計画の扱い
現に技能実習生として在留している外国人と、既に認定を受けている技能実習計画の扱いは、改正法附則と政省令の経過措置で定められます。基本的な方向性は次のとおりです。
(1) 施行時点で在留中の技能実習生は、原則として在留期間満了まで現行の技能実習制度の下で活動を継続できます。技能実習2号・3号の修了後は、特定技能1号への移行ルートが用意される見込みです。
(2) 施行時点で認定済みの技能実習計画は、計画期間が満了するまで有効です。施行後に新規の技能実習計画を申請することはできず、新規受入は育成就労計画に切り替わります。
(3) 監理団体は、施行後の一定期間内に監理支援機関の許可申請を行い、移行することが想定されます。許可基準は技能実習制度の監理団体許可よりも厳格化されるため、申請準備に十分な期間を要します。
(4) 技能実習制度と育成就労制度の並行期間は、最長で技能実習3号の在留期間満了までと見込まれ、数年単位の並行期間が生じます。受入機関は、自社の既存技能実習生の在留期間・移行ルートを個別に管理する必要があります。
6. 受入機関が施行までに準備すべきこと
受入機関(現在技能実習生を受け入れている事業者、または育成就労での新規受入を検討する事業者)が、施行までに準備すべき主な事項は次のとおりです。
(1) 既存技能実習生の処遇見直し:賃金水準を日本人従業員と同等以上に整理する必要があります。育成就労制度では賃金要件が明確化されるため、施行を待たず、既存技能実習生の賃金台帳・就業規則を点検しておくと、移行時の負担が軽減されます。
(2) 監理団体との関係再構築:契約中の監理団体が監理支援機関の許可を取得するかどうかを確認し、取得しない場合は別の機関への乗り換え、または受入機関単独型(直接雇用+登録支援機関活用)への切り替えを検討します。
(3) 賃金水準の確認:賃金規程・人事評価制度を整備し、日本人従業員との比較資料を整理しておきます。育成就労計画の認定時に賃金水準の説明資料が求められる見込みです。
(4) 支援体制構築:自社で支援する場合は、社内体制(支援担当者の選任、母国語対応、相談窓口)を整備します。委託する場合は、登録支援機関の選定を進めます。
(5) 既存特定技能在留資格との整理:既に特定技能外国人を受け入れている場合は、特定技能1号・2号と育成就労の関係を整理し、人員計画を再構築します。
これらの準備は、政省令・告示の公布を待ってからでも遅くはありませんが、賃金水準・支援体制の整備には数か月単位の時間を要するため、2026年中に基礎部分を固め、2027年初に最終調整するスケジュールが現実的です。
7. 関連する登録支援機関・特定技能の実務記事
育成就労制度の施行までは、引き続き特定技能制度・登録支援機関制度の運用が続きます。以下の関連記事も参考にしてください。
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- 特定技能の定期届出ガイド|届出書の書き方と提出の流れ
特に「登録支援機関と監理団体の違い」は、育成就労制度における監理支援機関の位置付けを理解する前提として有用です。育成就労制度の監理支援機関は、現行の技能実習制度における監理団体の仕組みを見直し、育成就労実施者への監理・支援を担う機関として新たに位置付けられるものです。登録支援機関は引き続き特定技能制度の支援機関として位置付けられるため、両者の役割の違いを整理して理解する必要があります。
8. よくある質問(FAQ)
Q1. 育成就労制度の施行日は確定していますか?
法律本体は2024年6月21日公布、施行日は公布から3年以内とされ、施行日は2025年9月26日の閣議決定および同年10月1日公布の施行期日を定める政令により、2027年4月1日に正式に確定しています。
Q2. パブリックコメントはどこで確認できますか?
e-Govパブリックコメント(公示等専門サイト)で、法務省・出入国在留管理庁・分野所管省庁ごとに公示されます。意見提出期間は原則30日以上で、提出された意見の結果概要は行政手続法第43条に基づき公表されます。
Q3. 既存の技能実習生はどうなりますか?
施行時点で在留中の技能実習生は、原則として在留期間満了まで現行制度で活動を継続できます。技能実習2号・3号修了後は特定技能1号への移行ルートが用意される見込みです。具体的な経過措置は、改正法附則と政省令で定められます。
Q4. 監理団体は監理支援機関にそのまま移行できますか?
監理支援機関は新たな許可制度であり、現行の監理団体許可とは別途、新規許可申請が必要です。許可基準は外部監査の強化、独立性、財務基盤、職員の専門性などで厳格化される見込みで、移行申請には十分な準備期間が必要です。
Q5. 賃金水準「日本人と同等以上」はどう判断されますか?
同種業務に従事する日本人従業員の賃金水準と比較し、同等以上であることを示す必要があります。具体的な判断基準・必要書類は法務省令・告示で定められます。事前に賃金規程・賃金台帳・人事評価制度を整理しておくことが推奨されます。
Q6. 育成就労外国人の転籍は認められますか?
法律本体で、本人意向による転籍が一定の要件下で認められる制度設計とされています。要件・手続き・同一分野内の制限などの詳細は法務省令で定められます。技能実習制度では原則として転籍が制限されていたのと対比される大きな変更点です。
【記事のまとめに代えて】行政書士法人Tree|登録支援機関業務+申請取次
本記事で解説した育成就労制度の政省令・告示制定スケジュールについて、当事務所では現行の特定技能制度・登録支援機関業務を継続しつつ、2027年4月の育成就労施行に向けた既存技能実習生の特定技能1号移行申請、受入機関の支援体制整備、政省令・告示公布後の社内規程見直しなどをお手伝いします。育成就労計画の認定申請・監理支援機関許可申請の業務範囲は施行後の運用に応じて対応します。
料金プラン:登録支援機関サービス 月次支援料金 10,780円/月(税込)/特定技能1号の認定・変更申請 通常料金100,000円(税込)、登録支援機関サービスをご委託の方限定料金50,000円(税込)/更新申請は通常50,000円(税込)、初回の在留資格切り替え時の更新に限り無料、2年目以降は25,000円(税込)
まとめ
法律本体と政省令委任の構造:育成就労制度は令和6年法律第60号で創設され、法律本体は骨格部分のみを定め、活動範囲・受入機関要件・監理支援機関許可基準・対象分野・技能評価試験・日本語要件などの中核事項は政省令・告示に委ねられています。法律公布だけでは運用が始まらず、下位法令の整備を待つ構造です。
施行スケジュールとパブコメ動向:施行は公布から3年以内(2027年4月1日が事実上のターゲット)。政省令・告示は段階的・分野別に2025〜2026年にかけて公表され、e-Govパブリックコメントを経て公布されます。受入機関は意見提出の機会を活用しつつ、公布版を一次資料で確認することが重要です。
既存技能実習生と並行期間:施行時点で在留中の技能実習生は在留期間満了まで現行制度で活動を継続でき、技能実習2号・3号修了後は特定技能1号への移行ルートが用意される見込みです。技能実習制度と育成就労制度は数年単位の並行期間が生じ、受入機関は個別に在留期間・移行ルートを管理する必要があります。
受入機関の準備事項:賃金水準(日本人と同等以上)の整理、監理団体との関係再構築、支援体制構築、既存特定技能との整理が主な準備事項です。賃金規程・人事評価制度の整備には数か月単位の時間を要するため、2026年中に基礎部分を固め、2027年初に最終調整するスケジュールが現実的です。
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※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


