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育成就労制度の転籍ルール|本人意向転籍の要件・1〜2年制限・調整窓口

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育成就労制度(令和6年法律第60号。2027年〔令和9年〕4月1日施行)の最大の改革ポイントの一つが、転籍(受入機関の変更)の柔軟化です。旧技能実習制度では「やむを得ない事由」がない限り転籍が困難でしたが、育成就労では一定の要件のもとで「本人意向転籍」が認められます。本記事では、転籍ルールの要件、就労期間の制限、調整窓口、受入機関の実務対応を整理します(細目は主務省令・分野別運用方針・運用要領で定められており、最新の公表内容をご確認ください)。

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転籍ルールの柔軟化は、受入機関の人材確保戦略に大きな影響を与えます。当事務所では制度設計の段階から運用支援まで一貫してサポートします。

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1. 旧技能実習制度の転籍困難からの大改革

旧技能実習制度では、原則として転籍(受入機関の変更)は認められず、「やむを得ない事由」(受入機関の倒産・廃業、賃金不払い、人権侵害等の重大な違反)がある場合のみ例外的に転籍が認められていました。この厳格な転籍制限は、技能実習生の権利保護の観点から国内外で批判の対象となり、技能実習制度の廃止と育成就労制度の創設を内容とする法改正(2024年成立)により大幅に見直されました。

育成就労制度では、一定の要件を満たす場合に本人の意向による転籍(本人意向転籍)が認められる見込みです。労働者としての選択権を一定程度保障する大きな転換となります。同時に、受入機関側の人材確保のための制度設計(一定期間の制限、調整プロセス)も組み込まれており、両者のバランスをとった設計が検討されています。

2. 本人意向転籍の想定要件

本人意向転籍の要件は、政省令で詳細が定められる予定です。現時点で想定される要件は次のとおりです(あくまで制度設計段階の想定であり、施行時の正式運用は政省令確定後の情報をご確認ください)。

① 一定期間の継続就労:同一受入機関での継続就労実績(分野ごとに1〜2年程度の幅で設定される見込み)が必要となる方向です。専門技能の習得期間が長い分野では、長めの期間設定となる可能性があります。

② 一定の技能・日本語能力:転籍後の生活基盤・労働環境への適応に必要な、技能水準・日本語能力の要件が設定される見込みです。

③ 受入機関側に違反がないこと:本人意向転籍は本人の選択によるものであり、受入機関側の不正行為は要件として求められません(やむを得ない事由による転籍とは区別されます)。

④ 転籍先受入機関の要件適合:転籍先となる受入機関は、育成就労制度の受入機関要件(不正行為がないこと、支援体制、労働関係法令の遵守等)を満たす必要があります。

3. 「やむを得ない事由」による転籍(従来制度の継続)

本人意向転籍とは別に、従来制度の「やむを得ない事由」による転籍も継続して認められる見込みです。具体的な事由としては次のものが想定されます。

① 受入機関の倒産・廃業
② 賃金不払い・低額労働
③ 暴力・人権侵害・ハラスメント
④ 労働条件違反
⑤ 受入機関の認定取消・行政処分
⑥ その他育成就労外国人の責めに帰さない事由

これらの事由がある場合は、就労期間の要件を満たさなくても緊急避難的に転籍が認められる方向です。労働者保護のセーフティネットとして重要な仕組みとなります。

4. 転籍時の手続きフロー

本人意向転籍のフローとして想定される流れは次のとおりです。

① 本人による転籍申出:受入機関への通知、転籍希望時期の提示。

② 受入機関への通知期間:一定の通知期間が設定される可能性があります。業務の引継ぎ、後任者確保のための期間です。

③ 新受入機関の選定:本人主導での選定、または監理支援機関・調整窓口の紹介。

④ 新受入機関の要件確認:受入機関要件(不正行為がないこと、支援体制、労働関係法令遵守等)の適合確認。

⑤ 入管手続き:所属機関変更に関する手続き(届出または在留資格変更許可申請)。詳細は政省令で確定します。

⑥ 賃金水準への配慮:新受入機関での労働条件が適正であることの確認。

⑦ 監理支援機関の関与:転籍前後の監理支援機関が連携し、円滑な移行を支援します。

5. 調整窓口の役割

転籍プロセスの円滑化のため、複数の調整窓口が整備される予定です。

① 外国人育成就労機構(旧・外国人技能実習機構の後継として想定):転籍相談の受付、受入機関情報の提供、紛争調整。中立的な第三者機関として、本人と受入機関双方の利益を考慮した調整を行う役割が期待されます。

② 監理支援機関:旧監理団体の後継として、調整機能を担います。同一分野内の転籍では、受入機関間のマッチング支援を行うことが想定されます。

③ ハローワーク:日本人と同様、外国人にも職業紹介が提供されます。地域の労働市場との接続を担います。

④ 受入機関相互の調整:転籍前後の受入機関同士で、業務引継ぎ・費用精算等を協議します。

6. 受入機関間の費用負担

転籍時には、受入機関間での費用負担の調整が論点となります。具体的なルールは政省令・ガイドラインで定められる予定です。

① 送り出しに要した費用:当初受入機関が負担した費用の一部について、転籍先受入機関による補填が検討される見込みです。

② 教育費・研修費:日本語教育、技能訓練、生活オリエンテーション等の費用。一定期間内の転籍では、当初受入機関の負担分の一部補填が議論されています。

③ 住居費・引越費:転居を伴う転籍では、引越費用の負担者を協議する必要があります。

④ 監理支援費:監理支援機関への支払いの按分・移管。

受入機関は、転籍を見越した費用設計を事前に検討する必要があります。費用負担ルールの確定後は、受入時の契約・社内規程への反映が求められます。

7. 同一分野内・分野横断の転籍可否

転籍先の制限についても、複数のパターンが想定されます。

① 同一分野内の転籍:原則として認められる方向です。介護→介護、建設→建設のように、同一の技能分野での移動です。

② 分野横断の転籍:技能水準の継続性・育成計画の整合性の観点から、より慎重に扱われる可能性があります。分野変更には追加の要件確認が必要となる場合があります。

③ 特定技能への移行を見据えた選択:育成就労を経て特定技能1号へ移行する際の業種選択との関係。育成就労中の分野と特定技能分野の対応関係は、別途要件確認が必要です。

8. 失踪との区別|労働者の正当な権利

本人意向転籍が制度化されることで、従来「失踪」と扱われていたケースの相当数が「正当な転籍」として位置づけ直されることが期待されます。労働環境を改善したいという正当な希望は、失踪ではなく転籍という制度的選択肢で対応されることになります。

ただし、受入機関への無断退職・連絡途絶は引き続き不適正な事案として扱われます。本人意向転籍を行う場合は、通知期間の遵守、調整窓口経由の手続き等の手順を踏むことが重要です。手順を踏まない退職は、在留資格や今後の在留に影響する可能性もあります。

9. 受入機関に求められる実務対応

転籍の柔軟化を踏まえ、受入機関には次のような実務対応が求められます。

① 労働条件・処遇の見直し:転籍を防ぐ本質的な対策は、適正な労働条件と魅力的な職場づくりです。賃金水準、生活サポート、キャリアパスの整備が重要となります。

② 受入時契約・社内規程の整備:費用負担ルールや通知期間を踏まえた契約・規程の整備が必要です。

③ 監理支援機関・登録支援機関との連携:制度運用に精通した支援機関と連携し、手続きの漏れや違反を防ぎます。

④ 育成計画の適正な実施:育成就労は「育成」を目的とする制度であり、適正な育成計画の実施が受入継続の前提となります。

10. 育成就労と特定技能の接続|長期キャリア設計

育成就労制度は、技能を一定水準まで育成し、その後の特定技能1号・2号への移行を見据えた制度として設計されています。転籍ルールを理解する際は、この長期的なキャリア経路の中に位置づけて考えることが重要です。

育成就労(原則3年)の期間中に技能検定や日本語試験の所定水準を満たすことで、特定技能1号への移行が見込まれます。特定技能1号では同一分野内での転職が比較的柔軟に認められており、育成就労段階での転籍ルールと連続的に捉えると、外国人材のキャリア選択の幅が段階的に広がる構造になっています。

受入機関としては、育成就労から特定技能への円滑な移行を支援することが、人材定着の有力な手段となります。試験対策の支援、キャリアパスの提示、処遇の段階的引上げなどを通じて、「この職場で長く働きたい」と思える環境を整えることが、結果的に転籍の抑制にもつながります。

11. 監理支援機関・登録支援機関の選び方

転籍を含む制度運用を適切に進めるには、信頼できる監理支援機関・登録支援機関との連携が不可欠です。選定にあたっては次の点を確認します。

① 制度理解と実績:育成就労制度・特定技能制度の双方に精通し、転籍対応の知見があるか。

② 支援体制:母国語での相談対応、生活支援、苦情・相談への対応体制が整っているか。

③ 法令遵守の姿勢:労働関係法令・入管法令の遵守を徹底し、不正行為の履歴がないか。

④ 費用の透明性:支援委託費・各種手数料が明確に提示されているか。

当事務所は登録支援機関として、また申請取次行政書士として、これらの観点を踏まえた継続的な支援を提供します。受入開始前の体制設計から、転籍を含む在留中の各種手続きまで一貫して対応します。

12. 関連記事のご案内

13. よくある質問(FAQ)

Q1. 転籍はいつから可能になりますか?

育成就労制度の施行(2027年〔令和9年〕4月1日)後となります。本人意向転籍の具体的な就労期間要件は主務省令・運用要領で定められているため、最新の公表内容を確認のうえ対応する必要があります。

Q2. 受入機関は転籍をどう防ぎますか?

労働条件の改善、賃金水準の引上げ、生活サポートの充実、キャリアパスの提示など、外国人材にとって魅力的な職場づくりが本質的な対策となります。日本人労働者と同様の人材戦略が必要です。

Q3. 転籍時の入管手続きは?

所属機関の変更に関する手続き(届出または在留資格変更許可申請)が想定されます。詳細は政省令で確定します。

Q4. 監理支援機関の役割は?

旧監理団体の後継として、調整機能を担います。受入機関間のマッチング、転籍相談、支援を提供する役割が期待されています。

Q5. やむを得ない事由がある場合は期間要件を満たさなくても転籍できますか?

賃金不払い・人権侵害・受入機関の倒産等のやむを得ない事由がある場合は、就労期間要件を満たさなくても緊急避難的に転籍が認められる方向です。

Q6. 当事務所のサポート範囲は?

申請取次行政書士として在留資格に関する申請を担当し、登録支援機関として転籍前後の支援計画策定・実行をサポートします。

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まとめ

本人意向転籍の制度化:旧技能実習の転籍困難から大きく舵を切り、一定の要件のもとで労働者としての選択権を保障する転換となります。一定期間の継続就労、技能・日本語能力、転籍先要件適合が想定要件です。

やむを得ない事由による転籍の継続:賃金不払い・人権侵害・受入機関倒産等の事由がある場合は、就労期間要件を満たさなくても緊急避難的に転籍が可能となる方向です。労働者保護のセーフティネットとして機能します。

調整窓口の重層化:外国人育成就労機構、監理支援機関、ハローワーク等が連携し、転籍プロセスを円滑化することが想定されています。同一分野内では機関間マッチング、分野横断ではより慎重な確認が必要となります。

受入機関の戦略転換:転籍を防ぐには、労働条件改善・賃金引上げ・生活サポート充実・キャリアパス提示など、日本人労働者と同様の人材戦略が本質的に重要です。失踪防止という発想から、人材定着戦略への転換が求められます。

行政書士法人Treeでは、申請取次行政書士として在留資格手続きを担当し、登録支援機関として転籍を含めた包括的な支援を提供します。なお本記事の制度内容は施行前の想定を含むため、最新の政省令・告示をご確認ください。育成就労制度の運用にお困りの受入機関の方は、ぜひご相談ください。

※ 本記事は執筆時点(2026年6月)の法令・通達・運用に基づきます。法改正・運用変更により内容が変わる可能性があります。個別のご相談はお問い合わせください。

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