特定技能1号の外国人を受け入れる際、受入れ機関(特定技能所属機関)には日常生活・職業生活・社会生活上の支援を行う義務があります。しかし、自社だけでこれらの支援を適切に実施し続けることは容易ではありません。登録支援機関を選ぶ際は、料金の安さだけでなく、義務的支援10項目を実態に即して実施できるか、対応言語・支援実績・届出への協力体制が十分かを総合的に比較することが重要です。登録支援機関は全国で1万件を超えており、どこに委託すればよいか迷われる方も少なくありません。本記事では、登録支援機関の役割を整理したうえで、支援内容・委託費・実績という観点から、自社に合った登録支援機関を見極めるポイントを解説します。
目次
登録支援機関とは|役割と特定技能制度における位置づけ
登録支援機関とは、特定技能所属機関(受入れ機関)からの委託を受けて、1号特定技能外国人支援計画に基づく支援の全部または一部を実施する機関です。出入国在留管理庁長官の登録を受けた個人または団体がこれにあたり、登録の有効期間は5年間で、継続するには更新が必要です。
特定技能1号の外国人を受け入れる企業は、本来、自社で支援計画を作成し支援を実施しなければなりません。しかし支援体制を自社で整えることが難しい場合、登録支援機関に支援の全部を委託することができます。委託した場合、企業は支援体制に関する基準を満たしているものとして扱われるため、登録支援機関の活用は実務上の有力な選択肢となっています。
なお、登録支援機関には支援計画の全部または一部を委託できます。ただし、受入れ機関が支援体制に関する基準を満たしているものとみなされるのは、登録支援機関に支援計画の全部の実施を委託した場合です。一部のみを委託する場合は、受入れ機関側にも未委託部分を適切に実施できる体制が必要となる点に注意が必要です。
義務的支援10項目|登録支援機関が担う支援の中身
登録支援機関を選ぶうえで、まず理解しておきたいのが「何を支援してもらえるのか」です。1号特定技能外国人支援計画には、必ず実施しなければならない義務的支援と、任意で行う任意的支援があります。出入国在留管理庁が示す義務的支援の柱となるのは、次の10項目です。
- 事前ガイダンス(雇用契約締結後、在留資格認定証明書交付申請前などに労働条件・活動内容等を説明)
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援(銀行口座開設、携帯電話・ライフラインの契約補助等)
- 生活オリエンテーション(円滑な社会生活を営めるよう日本のルール等を説明)
- 公的手続等への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(受入れ機関の都合により雇用契約を解除する場合等)
- 定期的な面談・行政機関への通報
登録支援機関を比較する際は、これら10項目を「形式的に行う」のか「外国人本人が十分に理解できる言語で、実態を伴って行う」のかを確認することが重要です。とくに事前ガイダンスや相談・苦情対応は、外国人が理解できる言語での対応体制が登録要件にも関わる重要なポイントです。
登録支援機関の登録要件|信頼できる機関の見極め
登録支援機関には、出入国在留管理庁が定める一定の基準が課されています。委託先を選ぶ際は、これらの要件をきちんと満たし、かつ適切に運用しているかを確認することが、トラブルを避ける第一歩になります。主な要件は次のとおりです。
- 支援責任者および支援担当者を選任していること
- 委託を受けた支援業務を適切に実施できる体制を有していること(支援計画の全部を委託する場合、受入れ機関が支援体制基準を満たしたものとみなされます)
- 外国人が十分に理解できる言語で情報提供・相談対応等を行える体制があること
- 一定期間内に、責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
- 支援に要する費用を、直接または間接に外国人本人に負担させないこと
- 法令違反など、登録の欠格事由に該当しないこと
とくに「支援費用を外国人本人に負担させない」という点は重要です。本来は受入れ機関・登録支援機関が負担すべき費用を外国人に転嫁する運用は適切ではありません。委託前に費用の負担関係を明確にしておきましょう。また、委託候補先が登録支援機関として現に登録されているかは、出入国在留管理庁が公表する登録支援機関登録簿で確認することが重要です。
委託費の考え方|金額だけで選ばないための視点
登録支援機関への委託費は、支援内容や対応言語、面談の頻度、トラブル発生時のサポート範囲などによって大きく変わります。料金が安いという理由だけで選ぶと、いざという時に十分な対応を受けられず、結果的に受入れ機関側の負担やリスクが増えることもあります。委託費を検討する際は、次のような点を確認するとよいでしょう。
- 委託費に義務的支援10項目のどこまでが含まれるか(追加費用が発生する範囲)
- 定期面談や通訳対応、緊急時対応がどの程度カバーされているか
- 外国人本人が理解できる言語での対応が可能か
- 定期届出・随時届出に必要な書類作成への協力が含まれるか
なお、定期届出(受入れ・活動・支援実施状況に係る届出)は、2025年4月1日施行の改正により従来の四半期ごと(年4回)から年1回(毎年4月1日~5月31日に前年度分を提出)へと変更されています。これに加え、雇用契約・支援計画の変更等が生じた場合の随時届出も、適切に行わなければ受入れ全体に影響します。登録支援機関に支援を委託している場合、登録支援機関は委託を受けた支援業務に関する届出資料の作成・情報提供に協力することになりますので、この協力体制の有無も委託費とあわせて確認したいポイントです。
実績とマッチング|自社に合う登録支援機関の選び方
最後に、登録支援機関選びで見落とされがちなのが「自社との相性(マッチング)」です。登録件数の多さや知名度だけでなく、自社が受け入れる分野・国籍・人数に対応した実績があるかを確認しましょう。確認しておきたい観点を整理します。
- 自社が受け入れる分野・業種での支援実績があるか
- 受け入れる外国人の母国語に対応できる体制があるか
- 事業所の所在地と支援対象者の勤務地・居住地が離れすぎていないか
- 担当者と連絡が取りやすく、相談しやすい関係を築けそうか
- 制度改正など最新情報へのキャッチアップ姿勢があるか
制度面では、2027年(令和9年)4月1日から、技能実習に代わる「育成就労制度」が施行される予定です。育成就労では技能実習の監理団体に代わり「監理支援機関」が支援等を担う仕組みとされており、特定技能の「登録支援機関」とは制度上別の枠組みです。また、育成就労から特定技能1号への移行には、原則として技能検定試験3級等または特定技能1号評価試験の合格、日本語能力A2相当以上の試験合格などが要件とされています。こうした制度の動きを踏まえ、最新情報を適切に把握している機関を選ぶことが、中長期的な人材定着につながります。なお、登録支援機関の届出・支援計画の作成・在留資格申請の取次は行政書士が対応できますので、まずは専門家に相談しながら自社に合う体制を整えることをおすすめします。
登録支援機関の選び方や特定技能の受入れ体制について、料金やプランのご案内を含め、個別にお問い合わせください。ご相談は何度でも無料です。特定技能・登録支援機関に関するご相談はこちら
まとめ
登録支援機関は、特定技能1号外国人の支援を全部委託できる重要なパートナーです。選定にあたっては、義務的支援10項目への実態を伴った対応、登録要件の遵守状況、委託費に含まれる支援範囲、そして自社の分野・国籍・地域に合った実績という観点から総合的に見極めることが大切です。委託費の安さだけで判断せず、届出への協力体制や制度改正への対応力も含めて比較しましょう。育成就労制度への移行など制度は変動していくため、最新の法令・実務に精通した専門家のサポートを受けながら、自社に最適な登録支援機関とマッチングすることが、安定した受入れの鍵となります。
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