結論から言えば、特定技能1号「木材産業」分野は2024年(令和6年)に追加された比較的新しい受入れ分野で、業務区分は「製材業、合板製造業等に係る木材の加工等」の1区分に絞られています。製材ラインのオペレーションや合板・単板の製造といった現場作業が中心で、所管は農林水産省(林野庁)、在留資格そのものの審査は出入国在留管理庁が行います。届出済みの行政書士は、在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更・更新申請に係る申請書類を作成し、申請取次者として入管への提出を取り次ぐことができます。本記事では、対象業務、試験、免除要件、協議会加入および在留申請のポイントを実務目線で整理します。雇用契約や就業規則の整備、社会保険・税務など隣接領域については、社会保険労務士・税理士など各士業と連携してご案内します。
目次
特定技能「木材産業」分野が新設された背景と根拠
木材産業分野は、深刻な人手不足に対応するため特定技能の対象分野として追加されました。分野の運用方針を具体化した「木材産業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針に係る運用要領」は令和6年4月19日付で定められています。制度の所管行政機関は農林水産省(林野庁)で、分野所管省庁として技能試験の実施や協議会の運営に関与します。在留資格「特定技能1号」の付与可否そのものは、出入国在留管理庁が出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づいて審査します。
木材産業分野における特定技能1号外国人の受入れ見込み数は、令和10年度末までの5年間で最大5,000人とされています。これは分野全体の受入れ上限であり、個々の企業に割り当てられる採用枠ではありません。受入れ見込み数は今後の運用方針の改定により変更される可能性があるため、申請時点の林野庁および出入国在留管理庁の公式情報をご確認ください。
業務区分は1つ|「製材業、合板製造業等に係る木材の加工等」
木材産業分野の特徴は、業務区分が1つに統合されている点です。従事できる主たる業務は「製材業、合板製造業等に係る木材の加工等」とされ、林業由来の原木を加工して製品にする一連の工程が広く対象になります。具体的には、おおむね次のような作業が想定されています。
- 製材
- 単板(ベニヤ)製造
- 木材チップ製造
- 合板製造・集成材製造
- プレカット加工
- 銘木製造・床板製造
対象となるのは、所定の日本標準産業分類に該当する事業所で行われる木材・木製品の製造・加工です。家具・装備品製造業、建具、パーティクルボード、繊維板、木製容器などは木材産業分野の対象に含まれません。
業務区分は1区分ですが、すべての木材関連業務へ自由に配置できるわけではありません。外国人が就労する事業所が所定の日本標準産業分類に該当し、その事業所で行われる製材、合板、集成材、プレカット加工、床板製造などの対象業務に主として従事する必要があります。分野外の建設現場作業や、対象外の木製品を製造する業務を主たる業務とすることはできないため、事業所の業種と配属予定の作業内容を運用要領に照らして確認してください。
付随業務(関連業務)の取扱い
特定技能では、主たる業務に加えて、その分野の日本人が通常従事する関連業務に「付随的に」従事することが認められています。木材産業分野でも、原材料・製品の運搬や受入れ、検品、機械・設備の清掃や日常的な整理整頓など、製造工程に付随する作業を併せて行うことが想定されます。
注意したいのは、付随業務はあくまで「主たる業務に付随する範囲」にとどまる点です。運搬や清掃だけを専従的に担わせる運用は特定技能の趣旨に反します。主たる加工業務を中心に、関連業務を補助的に組み合わせる配置設計を行ってください。
技能試験|木材産業特定技能1号測定試験
木材産業分野で特定技能1号として就労するには、原則として技能試験「木材産業特定技能1号測定試験」に合格する必要があります。この試験は、木材産業分野で必要となる知識・技能と、現場での安全に関する理解を確認するもので、学科試験と実技試験で構成されています。
- 学科試験:森林・林業・木材産業の概要、木材の性質、作業安全、各製品の製造作業、使用する機械・装置、製品の利用など
- 実技試験:木材加工の作業手順や作業安全に関する判断等試験
現行の試験はペーパーテスト方式で、試験時間は60分、問題数は35問(学科試験32問、実技試験3問)、合格基準は両試験の合計得点の65%以上とされています。
試験の実施時期・会場・申込方法・合格基準は実施機関が公表する試験実施要領で定められ、回ごとに更新されます。受験予定がある場合は、林野庁および試験実施団体の公式案内で最新の日程・要領を確認してください。なお、木材加工職種の機械製材作業に係る技能実習2号を良好に修了し、従事予定業務との技能の関連性が認められる方は、技能試験が免除される場合があります。他の職種・作業の技能実習2号修了者は、原則として木材産業特定技能1号測定試験への合格が必要です。
日本語試験の要件
特定技能1号では、技能水準に加えて一定の日本語能力が求められます。木材産業分野でも、次のいずれかの日本語試験に合格していることが原則として必要です。
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)
- 日本語能力試験(JLPT)N4以上
技能実習2号を良好に修了した方は、日本語能力水準を満たすものとして日本語試験が免除される取扱いがあります。ただし、木材産業分野の技能試験も免除されるかどうかは、修了した技能実習の職種・作業と従事予定業務との関連性によって異なります。在留資格の審査では、技能試験・日本語試験の合格証や技能実習の修了を証する資料が必要となるため、免除要件と提出資料を申請前に確認することが重要です。
協議会への加入(受入れ前の必須手続)
木材産業分野では、特定技能外国人を受け入れる事業者は、分野ごとに設けられた協議会への加入が必要です。協議会の名称は「木材産業特定技能協議会」で、受入れ機関は外国人を受け入れる前に加入手続を済ませておく必要があります。育成就労制度は令和9年4月1日から運用開始予定で、同制度に関する協議会は今後設けられる見込みです。
協議会に加入するのは、外国人と雇用契約を結ぶ受入れ機関(特定技能所属機関)です。同一機関で2人目以降を受け入れる際は改めての加入は不要で、構成員資格に変更が生じた場合は変更届出書を提出します。なお加入申請の際は、特定技能外国人を勤務させる事業所ごとの機械設備一覧表など、事業所単位の添付書類が求められます。協議会加入は在留申請までに十分な余裕をもって行う必要があるため、採用スケジュールと逆算して早めに着手してください。手続の細目は運用変更され得るため、林野庁の公式案内で最新の取扱いをご確認ください。
在留資格の申請手続と入管手数料
海外から新たに呼び寄せる場合は「在留資格認定証明書交付申請」、国内で他の在留資格から切り替える場合は「在留資格変更許可申請」、在留期間の満了に伴う延長は「在留期間更新許可申請」を行います。在留資格認定証明書交付申請には手数料はかかりませんが、在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請の手数料は2025年4月1日改定により、窓口申請が6,000円、オンライン申請が5,500円となっています(旧4,000円)。
届出済みの行政書士は、在留資格申請書類の作成および入管への申請取次を行うことができます。技能試験・日本語試験の合格証、雇用契約書、支援計画、協議会の構成員資格証明書など、必要な立証資料を整えたうえで申請することが重要です。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、特定技能1号「木材産業」分野の在留資格手続を、申請取次行政書士として一貫してサポートします。業務区分への該当性の確認、技能試験・日本語試験の要件チェック、協議会加入のスケジュール設計、在留資格認定証明書交付申請・変更・更新の書類作成および取次まで対応いたします。雇用契約・就業規則・賃金や社会保険・税務など隣接分野は、社会保険労務士・税理士等の各専門家と連携してご案内し、当事務所の職域内で責任をもって対応します。
特定技能1号の料金(税込)は、通常料金として認定・変更申請100,000円、更新申請50,000円です。登録支援機関サービスをご利用の場合などは料金区分が異なるため、詳細は特定技能ビザ・登録支援機関の申請代行ページをご確認ください。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
特定技能1号「木材産業」分野は2024年に追加された新しい分野で、業務区分は「製材業、合板製造業等に係る木材の加工等」の1つに集約されています。製材・合板・集成材・プレカットなど木材加工の幅広い工程が対象となり、運搬・検品・清掃などの関連業務に付随的に従事することも可能です。就労には木材産業特定技能1号測定試験(学科・実技)と日本語試験(JFT-BasicまたはJLPT N4以上)の合格等が原則必要で、受入れ事業者は事業所ごとに協議会へ加入する必要があります。試験日程・協議会・受入れ見込み数などは運用変更され得るため、申請時点の公式情報を確認のうえ、計画的に手続を進めることをおすすめします。
木材産業の特定技能に関するよくある質問
Q:特定技能「木材産業」分野はいつから受入れが始まりましたか。
A:木材産業分野は2024年(令和6年)に特定技能の対象分野として追加され、分野の運用要領は令和6年4月19日付で定められています。受入れ実績や見込み数の取扱いは運用方針の改定で変わり得るため、最新の状況は林野庁・出入国在留管理庁の公式情報でご確認ください。
Q:製材だけでなく合板や集成材の製造も任せられますか。
A:業務区分が「製材業、合板製造業等に係る木材の加工等」の1区分に統合されているため、製材から合板・集成材・プレカットなど木材加工の各工程を幅広く担当させることが想定されています。ただし分野の枠を超える業務は対象外ですので、具体的な作業内容と運用要領を照らして確認することをおすすめします。
Q:技能試験や日本語試験は必ず受ける必要がありますか。
A:原則として木材産業特定技能1号測定試験と日本語試験(JFT-BasicまたはJLPT N4以上)の合格が必要です。技能実習2号を良好に修了した方は日本語試験が免除される場合がありますが、木材産業の技能試験が免除されるのは、木材加工職種の機械製材作業を良好に修了するなど、修得した技能と従事予定業務との関連性が認められる場合です。他職種の技能実習2号修了者は、原則として木材産業の技能試験に合格する必要があります。
Q:協議会には誰がいつ加入するのですか。
A:外国人と雇用契約を結ぶ受入れ機関(特定技能所属機関)が、外国人を受け入れる前に協議会(木材産業特定技能協議会)へ加入する必要があります。同一機関で2人目以降を受け入れる際は改めての加入は不要で、変更が生じた場合に変更届出書を提出します。加入審査には時間を要するため、在留申請までに余裕をもって手続を行ってください。
Q:在留資格の変更や更新にかかる入管手数料はいくらですか。
A:2025年4月1日の改定により、在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請の手数料は窓口6,000円、オンライン5,500円です(旧4,000円)。なお在留資格認定証明書交付申請には手数料はかかりません。当事務所の報酬とは別に、これらの実費が必要になります。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


