入管・ビザ関連

特定技能1号の支援計画とは?義務的支援10項目と登録支援機関への委託を解説

更新: 約10分で読めます

結論から言えば、特定技能1号の外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)は、出入国管理及び難民認定法第2条の5第6項に基づき「1号特定技能外国人支援計画」を必ず作成し、義務的支援10項目を漏れなく盛り込んだうえで、在留資格の申請時に提出しなければなりません。この支援計画の不備は、在留資格の不許可だけでなく、後の受入れ停止にもつながりかねない実務上の急所です。行政書士は申請取次の専門職として、支援計画の作成助言と入管への申請取次を担えますが、雇用契約の労務面は社会保険労務士、登録支援機関への委託契約のトラブルは弁護士と、必要に応じて士業が連携して対応します。本記事では、10項目の中身と、自社支援・登録支援機関への委託の選び方を整理します。

1号特定技能外国人支援計画とは(法第2条の5第6項)

1号特定技能外国人支援計画とは、受入れ企業が特定技能1号の外国人に対して行う「職業生活上・日常生活上・社会生活上の支援」の実施内容を定めた法定の計画書です。出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)第2条の5第6項は、特定技能1号の活動を行おうとする外国人と特定技能雇用契約を締結しようとする本邦の機関に対し、法務省令の定めるところにより支援計画を作成する義務を課しています。

同条第7項は、この支援に「日本人との交流の促進に係る支援」と「外国人の責めに帰すべき事由によらず雇用契約が解除される場合の転職支援」を含めることを明記しています。さらに第8項により、支援計画は法務省令で定める基準に適合するものでなければなりません。この基準の詳細は、出入国在留管理庁が公表する「特定技能外国人受入れに関する運用要領」および別冊「1号特定技能外国人支援計画の基準について」に示されています。

支援計画は、在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請等の際に提出します。また、2025年4月1日施行の制度改正により、特定技能所属機関は、特定技能外国人が活動する事業所所在地および住居地の市区町村へ協力確認書を提出し、地方公共団体が実施する共生施策を確認したうえで、その内容を踏まえて支援計画を作成・実施する必要があります。なお、1号特定技能外国人支援計画は、特定技能2号には課されません。

義務的支援10項目の一覧

運用要領で定められた義務的支援は、次の10項目です。これらはすべて支援計画に記載し、かつ実際に履行しなければなりません。

No. 支援項目 主な内容
1 事前ガイダンス 在留資格申請前に、労働条件・活動内容・入国手続等を対面またはテレビ電話等で説明
2 出入国する際の送迎 入国時の空港等から事業所・住居までの送迎、帰国時の保安検査場までの同行・確認
3 住居確保・生活に必要な契約支援 住居の確保(居室の床面積は原則1人あたり7.5㎡以上)、銀行口座・携帯電話・ライフライン契約の補助
4 生活オリエンテーション 入国後に日本での生活ルール・公的手続・相談窓口等を説明
5 公的手続等への同行 住居地届出・社会保障・税などの手続への同行と書類作成補助
6 日本語学習の機会の提供 日本語教室の案内、教材情報の提供、オンライン講座の情報提供等
7 相談・苦情への対応 外国人が理解できる言語での相談対応、内容に応じた助言・関係機関の案内
8 日本人との交流促進 地域の自治会・行事等の案内、交流機会の情報提供
9 転職支援 非自発的な雇用契約終了時に、他の受入れ先に関する情報の提供、公共職業安定所・適法な職業紹介事業者等の案内、推薦状の作成、求職活動のための有給休暇の付与等を実施
10 定期的な面談・行政機関への通報 支援責任者等による定期的な面談、労働基準法令違反等を把握した場合の関係行政機関への通報

各項目の実施基準で押さえるべき数値

運用要領は、いくつかの項目について具体的な実施水準を定めています。形だけ計画に記載しても、この水準を満たさなければ義務的支援を履行したことにはなりません。

  • 事前ガイダンス:運用要領は、労働条件や活動内容を十分に理解できるよう実施することを求めており、その目安として概ね3時間以上をかけて実施することが一般に求められています(実施時間が著しく短い場合、適切に実施したと認められないおそれがあります)。
  • 生活オリエンテーション:おおむね8時間以上の実施が標準とされ、外国人が十分に理解できる言語で行います。
  • 住居の確保:自己所有・賃借・社宅のいずれでもよいものの、居室の床面積は原則として1人あたり7.5㎡以上を確保する必要があります(既存の入居者がいる場合の取扱いに留意)。
  • 定期的な面談:支援責任者または支援担当者が、外国人本人およびその監督をする立場の者と、少なくとも3か月に1回以上の頻度で面談を行います。労働基準法令違反等を把握したときは、労働基準監督署等への通報が義務づけられています。
  • 相談・苦情対応:外国人の勤務形態に合わせ、1週間当たり勤務日に3日以上、休日に1日以上対応し、相談しやすい就業時間外にも対応できる体制を整える必要があります。緊急時には必要な連絡を受けられる体制も求められます。

これらの支援に要する費用は、外国人本人に直接的にも間接的にも負担させてはならないとされています(運用要領)。支援費用を給与から控除して実質的に本人に負担させる運用は、基準違反となるため注意が必要です。

支援を行う体制と支援責任者・支援担当者

支援計画を実行するには、社内に支援を行う体制が必要です。受入れ企業は、支援責任者および支援担当者(同一人でも可)を選任し、計画の中立的な実施ができる体制を確保しなければなりません。たとえば、過去2年間に中長期在留者の受入れ・管理を適正に行った実績や、外国人が理解できる言語で支援できる体制などが基準となります。

義務的支援に加えて、運用要領は「任意的支援」を例示しています。任意的支援は法令上必須とされる10項目への上乗せ支援ですが、1号特定技能外国人支援計画に記載した場合には、その記載内容を実施する義務が生じます。日本語学習費用の補助、資格取得の支援、家族の生活サポートなどを計画に盛り込む場合は、継続して履行できる内容であることを確認する必要があります。

支援計画の全部・一部を委託する(登録支援機関)

自社で支援体制を整えることが難しい場合、受入れ企業は支援計画の全部または一部の実施を他者に委託できます。とりわけ、出入国在留管理庁の登録を受けた「登録支援機関」に支援計画の全部の実施を委託した場合には、受入れ企業が満たすべき支援体制の基準を満たしたものとみなされます(法第2条の5第5項に基づく取扱い)。自社に外国人支援の経験がない企業が、この「みなし」規定を活用して受入れを進めるケースは少なくありません。

委託する場合のポイントを整理します。

  • 全部委託:10項目すべてを登録支援機関に委託する形態。みなし規定により、受入れ企業側の支援体制基準は満たしたものとして扱われます。委託費や料金体系は登録支援機関ごとに異なります。行政書士法人Treeの登録支援機関サービスは、月次支援料金が税込10,780円で、事前ガイダンス・生活オリエンテーション等の義務的支援は別途お見積りです。
  • 一部委託:一部の項目のみを委託し、残りを自社で実施する形態。この場合、自社で実施する項目について支援体制基準を満たす必要があります。
  • 再委託の制限:登録支援機関は、委託を受けた支援業務をさらに別の機関へ丸ごと再委託することはできません(補助的な範囲での委託は可能)。
  • 記載事項:委託する場合は、支援計画に委託の有無、委託先の氏名・名称・住所、委託契約の内容等を記載します。

委託する・しないにかかわらず、特定技能雇用契約上の使用者責任は受入れ企業に残ります。委託は支援実務の担い手を外部化する仕組みであって、雇用主としての責任を免れるものではありません。

支援計画を作成しない・履行しない場合のリスク

支援計画は在留資格の許可要件です。計画の不備があれば申請は不許可となり得ます。また、許可後に支援を適正に履行しなかった場合、出入国在留管理庁による指導・改善命令の対象となり、悪質なケースでは特定技能外国人の受入れができなくなる(一定期間の受入れ制限)こともあります。あわせて、定期届出(受入れ・活動・支援実施状況に係る届出)を怠ると、届出義務違反として制裁の対象となります。なお、2025年4月1日施行の省令改正により、この定期届出の頻度は従来の四半期ごと(年4回)から年1回に変更され、毎年度(4月1日~翌年3月31日)の状況を翌年5月31日までに届け出る運用となっています。形式を整えるだけでなく、実際の支援を継続的に履行・記録することが欠かせません。

当事務所のサポート

行政書士法人Treeでは、申請取次行政書士として、1号特定技能外国人支援計画の作成助言と、在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請の取次を承ります。義務的支援10項目の計画への落とし込み、自社支援か登録支援機関への委託かの整理、提出書類の点検まで一貫してお手伝いします。労務管理や就業規則に関わる部分は社会保険労務士、委託契約や解雇に関わる法的紛争は弁護士と連携し、職域を越えない範囲で適切な専門家へおつなぎします。

料金(税込)は、事案の内容や自社支援・委託の別によって異なります。特定技能1号の申請取次(在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請)および登録支援機関サービスの費用は、個別にお見積りのうえご案内いたします。万一の不許可時には無料での再申請保証を設けています。なお、入管手数料は2025年4月1日改定により、在留資格変更・在留期間更新が窓口6,000円・オンライン5,500円となっています。詳しくは特定技能ビザ・登録支援機関サポートのご案内をご覧ください。ご相談は何度でも無料です。

まとめ

1号特定技能外国人支援計画は、入管法第2条の5第6項に基づく法定の計画書で、義務的支援10項目(事前ガイダンス、送迎、住居確保、生活オリエンテーション、公的手続同行、日本語学習機会、相談対応、交流促進、転職支援、定期面談・通報)をすべて盛り込む必要があります。事前ガイダンスや生活オリエンテーションの実施時間、居室7.5㎡以上、定期面談3か月に1回以上といった水準を満たし、費用を本人に負担させない運用が求められます。自社で体制を整えられない場合は登録支援機関への全部委託でみなし要件を満たせますが、雇用主としての責任は残ります。計画作成と申請取次は、申請取次行政書士へご相談ください。

1号特定技能外国人支援計画に関するよくある質問

Q:支援計画は誰が作成するのですか。

A:作成義務を負うのは受入れ企業(特定技能所属機関)です。ただし作成には専門知識が必要なため、申請取次行政書士に作成助言と入管への取次を依頼するのが一般的です。登録支援機関に全部委託する場合でも、計画の名義人は受入れ企業となります。

Q:義務的支援と任意的支援は何が違いますか。

A:義務的支援は法令上必ず実施しなければならない10項目で、在留資格の許可要件です。任意的支援は、この10項目に追加して行う支援ですが、1号特定技能外国人支援計画に記載した場合には、その内容を実施する義務が生じます。日本語学習費用の補助や資格取得支援などが任意的支援の例です。

Q:登録支援機関に全部委託すれば、自社では何もしなくてよいのですか。

A:支援実務は登録支援機関が担いますが、雇用主としての責任は受入れ企業に残ります。定期届出(2025年4月1日施行の省令改正により年1回に変更)や、雇用契約・労働条件に関する責任は引き続き企業側が負います。委託は支援の担い手を外部化する仕組みであり、責任の移転ではありません。

Q:支援にかかる費用を給与から差し引いてもよいですか。

A:いいえ。運用要領は、支援に要する費用を外国人本人に直接的・間接的に負担させることを禁じています。支援費用を給与控除等で実質的に本人負担とする運用は基準違反となります。

Q:定期面談はどのくらいの頻度で行う必要がありますか。

A:支援責任者または支援担当者が、外国人本人およびその監督をする立場の者と、少なくとも3か月に1回以上の頻度で面談を行う必要があります。面談で労働基準法令違反等を把握したときは、労働基準監督署等への通報が義務づけられています。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。

行政書士法人Tree