結論から言えば、養親と養子が生存中に離縁(協議離縁・裁判離縁)をすると、その時点で民法上の親族関係が終了し、相互の相続権はその後完全に消滅します。一方、養親または養子の一方が死亡した後に行う「死後離縁」では、すでに発生した相続をくつがえすことはできません。つまり相続権が消えるタイミングは「生存中の離縁が成立した瞬間」か「死亡時点」かで結論が大きく変わります。当事務所は行政書士として戸籍収集・法定相続人の確定・遺産分割協議書の作成を担い、離縁の効果を正しく整理したうえで、相続登記は司法書士、相続税は税理士、親族間の紛争は弁護士と連携してご相談に対応します。離縁が絡む相続は当事者の感情も交錯しやすいため、まず事実関係を冷静に確認することが第一歩です。
目次
養子縁組で発生する相続権の根拠
養子縁組をすると、養子は縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得し(民法第809条)、養子と養親およびその血族との間に、血族間と同一の親族関係が生じます(民法第727条)。この結果、養親が亡くなれば養子は第一順位の相続人である子として相続権を持ちます。一方、養子が先に亡くなった場合、養親は直系尊属として、養子に子やその代襲者がいないときに第2順位の相続人となります。
重要なのは、普通養子縁組では「実親との関係も存続する」という点です。普通養子は、実親の相続人であると同時に養親の相続人でもあり、二重に相続権を持ちます。これに対し特別養子縁組(民法第817条の2以下)では、養子と実方の父母およびその血族との親族関係が終了するため(民法第817条の9)、実親側の相続権は失われます。本記事のテーマである「離縁」は、この縁組によって生じた親族関係を解消する手続です。なお、以下で解説する協議離縁・裁判離縁は普通養子縁組の解消方法であり、特別養子縁組は原則として離縁できません。養親による虐待等があり実父母が相当の監護をすることができる場合に、養子の利益のため特に必要があると認めるときに限り、家庭裁判所の審判によってのみ離縁が認められます(民法第817条の10。請求できるのは養子・実父母・検察官のみで、養親の側からは離縁を請求できません)。
離縁による親族関係の終了(民法第729条)
民法第729条は、養子およびその配偶者、養子の直系卑属およびその配偶者と、養親およびその血族との親族関係は、離縁によって終了すると定めています。自然血族(実の親子)の関係は離婚などで切れることはありませんが、養子縁組による法定血族の関係は、離縁という手続によって将来に向けて消滅するのが大きな特徴です。
離縁の効果は養親・養子の当事者間にとどまりません。条文どおり、養子の配偶者や、縁組後に生まれた養子の子(養親からみた孫にあたる直系卑属)と養親の血族との親族関係も、まとめて終了します。したがって離縁が成立すると、養親・養子間の相続権はもちろん、養子の子による代襲相続の前提となる親族関係も将来に向けて失われることになります。
協議離縁・裁判離縁における相続権の消滅時期
離縁には主に次の方法があり、相続権が消滅するタイミングはいずれも「離縁の効力が生じた時」です。生存中に効力が生じれば、その後に開始する相続では相続人になりません。
| 種類 | 根拠条文 | 相続権が消滅する時期 |
|---|---|---|
| 協議離縁 | 民法第811条第1項 | 離縁届が受理された日(届出により効力発生) |
| 調停離縁・調停に代わる審判 | 家事事件手続法 | 調停成立の時、または調停に代わる審判が確定した時 |
| 裁判離縁 | 民法第814条 | 離縁判決が確定した時 |
協議離縁は、当事者の協議により離縁し、戸籍法の定めに従って届け出ることで効力が生じます(民法第811条第1項)。届出に際しては当事者双方と成年の証人2人以上の署名が必要です。当事者の協議が調わない場合は、家庭裁判所の調停を経て、それでも合意できないときは、裁判離縁を求めることになります。裁判離縁は、(1)他の一方から悪意で遺棄されたとき、(2)他の一方の生死が3年以上明らかでないとき、(3)その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき、のいずれかに該当する場合に限り認められます(民法第814条第1項)。
いずれの方法でも、当事者の生存中に離縁の効力が生じれば、その瞬間に法定血族関係が終了し、以後に開始する相続について養親・養子は互いに相続人となりません。逆にいえば、離縁の効力が生じる前に相続が開始(被相続人が死亡)していれば、その相続については養親・養子は相続人のままです。
死後離縁では「すでに発生した相続」は動かない
養親または養子の一方が死亡した後でも、生存している当事者は家庭裁判所の許可を得て離縁をすることができます(民法第811条第6項。いわゆる死後離縁)。死後離縁は、養親の血族との親族関係を将来に向けて整理したい場合などに用いられます。
ここで誤解が多いのが相続への影響です。死後離縁が成立しても、死亡時点ですでに発生していた相続そのものは覆りません。たとえば養親が死亡して相続が開始した後に養子が死後離縁をしても、養親の相続における養子の相続権が遡って消えるわけではありません。死後離縁の効果は、あくまで離縁成立後に開始する相続(たとえば養親の親族側で将来発生する相続における代襲相続の前提など)に及ぶものです。したがって、相続権を確実に消滅させたいのであれば、当事者の生存中に生前離縁を成立させておくことが要点になります。
死後離縁の許可申立ては、申立人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。裁判所の案内によれば、申立てには収入印紙800円分のほか、連絡用の郵便切手(予納郵券)が必要です。許可の審判が確定した後、確定証明書を得て、本籍地または住所地の市区町村役場に養子離縁の届出をします。
離縁と代襲相続・相続放棄の関係
養子の子が養親を代襲相続できるのは、その子が「養子縁組後に生まれた」場合に限られる点にも注意が必要です(縁組前に生まれていた養子の子は、養親との間に血族関係がないため代襲相続権を持たないと解されています)。離縁が成立すると、この代襲相続の前提となる親族関係自体が将来に向けて終了します。
また、すでに開始した相続について「相続したくない」という場合、離縁とは別に相続放棄という制度があります。相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月以内に、家庭裁判所へ申述して行う手続です。相続放棄の申述は家庭裁判所への手続であり、行政書士は代理できません。お困りの際は弁護士・司法書士と連携してご案内します。
当事務所のサポート
当事務所は行政書士として、離縁の有無や効力発生時期を戸籍で確認し、誰が法定相続人になるのかを正確に確定する作業を得意としています。具体的には、被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍の収集、養子縁組・離縁の記載の読み取り、法定相続人の確定、そして確定した相続人による遺産分割協議書の作成までを一括してお引き受けします。
料金は、遺産分割協議書作成のミニマムプランが43,780円(税込)、必要書類の収集を含むスタンダードプランが87,780円(税込)、戸籍収集から協議書作成まで丸ごとお任せいただける丸投げプランが217,800円(税込)です。なお、相続登記は司法書士、相続税の申告は税理士、親族間で争いがある場合は弁護士へおつなぎし、当事務所が窓口となって連携いたします。2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を取得した相続人は取得を知った日から3年以内に登記申請をしないと10万円以下の過料の対象となり得ますので、登記の段取りも見据えてご案内します。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
養子縁組による相続権は、当事者の生存中に協議離縁・裁判離縁の効力が生じた瞬間に、将来に向けて完全に消滅します(民法第729条)。一方、死後離縁(民法第811条第6項)は家庭裁判所の許可を得て行えますが、すでに発生した相続を覆す効果はありません。相続権を確実に断つには「生存中の離縁」が、すでに開始した相続を引き受けたくないなら「相続放棄」が、それぞれ役割を担います。離縁が絡む相続は戸籍の読み取りが鍵となりますので、早めに専門家へご相談ください。
離縁後の相続権に関するよくある質問
Q:養親が亡くなる前に協議離縁をしました。養親の遺産を相続できますか。
A:相続できません。離縁の効力が生じた時点で養親・養子の親族関係は終了するため(民法第729条)、その後に開始した養親の相続について、元養子は相続人になりません。逆に元養親も、元養子の相続人にはなりません。
Q:養親が亡くなった後に死後離縁をすれば、相続を辞退したことになりますか。
A:なりません。死後離縁(民法第811条第6項)は将来に向けた効果しか持たず、死亡時点ですでに発生した相続はそのまま有効です。相続そのものを引き受けたくない場合は、家庭裁判所への相続放棄の申述(原則3か月以内)を別途検討する必要があります。
Q:相手が離縁に応じてくれません。どうすればよいですか。
A:当事者の協議が調わない場合は、まず家庭裁判所の調停を申し立て、合意に至らないときは裁判離縁を求めます。裁判離縁は、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、その他縁組を継続し難い重大な事由のいずれかが必要です(民法第814条第1項)。手続の代理は弁護士の職域となるため、連携してご案内します。
Q:離縁すると、養子の子(孫)の代襲相続はどうなりますか。
A:離縁により養子の直系卑属と養親の血族との親族関係も終了します(民法第729条)。したがって、離縁後に養親側で開始する相続について、養子の子が代襲相続することはありません。なお代襲相続が認められるのは、もともと縁組後に生まれた養子の子に限られる点にも注意が必要です。
Q:特別養子縁組の場合、実親の相続権はどうなりますか。
A:特別養子縁組では、縁組により養子と実方の父母およびその血族との親族関係が原則として終了します(民法第817条の9)。そのため、実親が亡くなっても特別養子は原則として実親の相続人にはなりません。ただし、夫婦の一方が他方の嫡出子の養親となる場合には、実親である配偶者およびその血族との親族関係は終了しません。普通養子縁組とは扱いが異なるため、縁組の形態を戸籍で確認する必要があります。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


