結論から言えば、海外口座へ送金してしまった国際送金詐欺は、振込先が国外にあるため資金追跡が難しく、初動の証拠整理と告訴状の記載の精度が捜査の入口を大きく左右します。適用される罪名は刑法246条の詐欺罪が中心ですが、犯行が組織的に行われた場合は組織的犯罪処罰法3条の組織的詐欺、被害金が海外口座で隠匿された場合は同法10条のマネー・ローンダリング(犯罪収益等隠匿)も問題となり得ます。行政書士は、警察署に提出することを前提として、被害事実・送金記録・やり取りの履歴を整理した告訴状・告発状の作成を担います。検察庁宛ての告訴状・告発状の作成、提出先の選定や受理後の捜査対応、加害者との示談・損害賠償請求といった交渉や代理は、弁護士・司法書士等の他士業の職務領域となるため、当事務所では行いません。事案の見立てや回収可能性の判断が必要な段階では、弁護士と連携してご案内します。
目次
国際送金詐欺とは何か——手口の典型
「国際送金詐欺」とは、加害者が被害者をだまして海外の銀行口座(または国内の出し子口座を経由して最終的に国外)へ送金させ、金銭をだまし取る詐欺の総称です。法律上の固有の罪名ではなく、適用条文は事案により決まります。近年は次のような類型が目立ちます。
- SNS型投資詐欺:SNSやマッチングアプリ、広告、ダイレクトメッセージ等をきっかけに、架空の暗号資産や偽の投資アプリへの送金を勧められる手口。警察庁の令和7年(2025年)暫定値では、被害額は1,274.7億円に上っています。
- SNS型ロマンス詐欺:恋愛感情や親近感を利用し、「税関で荷物が止まっている」「医療費が必要」等の名目のほか、暗号資産投資等へ誘導して送金を求める手口。警察庁の令和7年(2025年)暫定値では、被害額は552.2億円に上っています。
- 国際取引・前払金詐欺:架空の海外取引や手数料名目で前払金を国外口座に送らせる手口。
警察庁は、振込先に個人名義の口座が指定される、振込のたびに口座が変わるといった点があれば詐欺を疑うよう注意喚起しています。海外口座が絡むと資金がすぐ国外へ移転されるため、気づいた時点で速やかに金融機関と警察へ連絡することが重要です。
中心となる罪名——刑法246条の詐欺罪
国際送金詐欺で中心に検討されるのは、刑法246条の詐欺罪です。
- 刑法246条1項(詐欺):「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。」
- 刑法246条2項(詐欺利得):前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同様に処罰されます。
送金させてお金(財物)をだまし取るケースは1項、債務免除など利益を得させるケースは2項が問題となります。詐欺罪は未遂も処罰されます(刑法250条)。なお、偽の投資アプリの残高表示を操作する等、コンピュータの処理を不正に操作して利益を得る形態では、刑法246条の2(電子計算機使用詐欺、10年以下の拘禁刑)が問題となることもあります。どの条文に当てはまるかは具体的な手口によって変わるため、告訴状には「誰が・いつ・どのような嘘で・いくらを・どの口座へ送金させたか」を時系列で具体的に記載することが要となります。
組織的犯罪処罰法との関係——3条の組織的詐欺
国際送金詐欺は、複数の人物が役割分担して実行する組織犯罪であることが少なくありません。「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(平成11年法律第136号。以下「組織的犯罪処罰法」)は、刑法に定める一定の罪が、団体の活動として、その罪を実行するための組織により行われたときに刑を加重します。
詐欺(刑法246条)については組織的犯罪処罰法3条1項13号が対象とし、団体の活動として組織により行われた場合の法定刑は1年以上20年以下の有期拘禁刑です。通常の詐欺罪(10年以下)に比べ大幅に重くなります。SNS型投資詐欺やロマンス詐欺のように、勧誘役・送金指示役・出金役などが分業する形態では、この組織的詐欺が問われる可能性があります。
もっとも、組織性の立証は容易ではなく、最終的にどの罪名で起訴するかを判断するのは検察官です。告訴・告発の段階では、組織性をうかがわせる事情(複数の連絡相手、定型化されたマニュアル的なやり取り、口座の使い回しなど)があれば、それも書類に整理して記載しておくことが有用です。
マネー・ローンダリングと外為法
だまし取った金銭が海外口座へ移される過程では、次の法律も関係します。
| 法律・条文 | 内容 | 法定刑など |
|---|---|---|
| 組織的犯罪処罰法10条 | 犯罪収益等の取得・処分につき事実を仮装し、又は犯罪収益等を隠匿する行為(マネー・ローンダリング) | 5年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はこれらの併科 |
| 外国為替及び外国貿易法(外為法)55条 | 日本と海外との間で一定額を超える資金を支払・受領した場合の事後報告義務 | 3,000万円相当額を超える送金・受領が報告の対象 |
詐欺被害金が海外口座を経由して隠匿された場合、加害者側に組織的犯罪処罰法10条(犯罪収益等隠匿)が適用される余地があります。外為法55条は、海外送金や海外からの送金受領について、送金額が3,000万円相当額を超える場合に事後報告を求める制度です(報告書名は「支払又は支払の受領に関する報告書」)。この制度は詐欺被害者を処罰する趣旨のものではありませんが、被害者側が高額の海外送金をした場合にも報告義務が問題となることがあります。被害回復の場面では、報告書控えや金融機関の取引記録が資金の流れを示す資料になり得ます。なお、外為法上の報告金額基準は改正・運用変更の可能性があるため、実際の手続では財務省・日本銀行の最新の案内をご確認ください。
告訴と告発の違い——どちらで出すか
刑事手続を求める書類には、告訴状と告発状があります。
- 告訴(刑事訴訟法230条):犯罪の被害者などの告訴権者が、捜査機関に犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示。詐欺の被害者本人が出すのは告訴です。
- 告発(刑事訴訟法239条):犯罪があると思料する者であれば「何人でも」できる申告。被害者以外の第三者が事実を申告する場合は告発になります。
国際送金詐欺で送金してしまったご本人が手続をとる場合は、原則として告訴状を作成します。詐欺罪は告訴がなくても起訴できる非親告罪ですが、告訴状によって被害事実と処罰意思を明確に示すことは、捜査の端緒として実務上意義があります。書類には送金記録(振込明細・送金依頼書)、相手とのSNS・メールのやり取り、相手が名乗った氏名や口座情報など、証拠を整理して添付します。
国際送金詐欺で告訴状作成前に整理すべき証拠
告訴状を作成する前に、送金日・送金額・送金先口座、相手が名乗った氏名・SNSアカウント・メールアドレス、投資サイトやアプリの画面、入出金履歴、相手からの送金指示、被害に気づいた経緯を時系列で整理しておくことが重要です。海外口座や暗号資産が関係する場合は、取引ID、ウォレットアドレス、取引所の履歴、金融機関への組戻し依頼の記録も保存しておきましょう。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、国際送金詐欺に関する警察署提出用の告訴状・告発状の作成をサポートします。被害に至る経緯のヒアリング、送金記録ややり取りの履歴といった資料の整理、刑法246条・組織的犯罪処罰法など想定される罪名を踏まえた事実の構成、提出書類としての体裁の整備までを、書類作成の範囲で丁寧にお手伝いします。検察庁宛ての告訴状・告発状の作成や提出先選定の法的助言は、弁護士・司法書士等の他士業の職務領域となるため、当事務所では行いません。料金はスタンダードプラン(告訴状・告発状の書類作成)38,280円(税込)〜で、事案の複雑さや資料の量により変動します。
なお、行政書士が行えるのは書類の作成までです。提出先の選定に関する法的助言、受理後の捜査対応、加害者との示談交渉や損害賠償請求、刑事手続の代理は弁護士の業務であり、当事務所では行いません。また、当事務所が作成する告訴状は警察署長宛てとなり、検察庁に提出する書類の作成は司法書士・弁護士の業務です。海外資産の回収可能性や民事・刑事の方針判断が必要な事案では、提携する弁護士と連携してご案内します。詳しくは告訴状・告発状作成サポートのご案内をご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
国際送金詐欺は、海外口座を経由するため資金の追跡が難しく、被害に気づいた直後の証拠整理と告訴状の記載精度が捜査の入口を左右します。中心となる罪名は刑法246条の詐欺罪で、未遂も処罰されます。犯行が組織的なら組織的犯罪処罰法3条の組織的詐欺(1年以上20年以下の有期拘禁刑)、被害金の海外隠匿には同法10条が関係し得ます。被害者本人が手続をとる場合は告訴(刑事訴訟法230条)が原則です。行政書士は警察署に提出することを前提とした告訴状・告発状の作成を担い、検察庁宛ての書類作成、捜査対応や交渉・代理は弁護士・司法書士等の他士業の職務領域として連携します。まずは資料を持って、お早めにご相談ください。
国際送金詐欺の告訴に関するよくある質問
Q:海外の口座に送金してしまいました。もう取り返せないのでしょうか。
A:海外送金は資金が国外へ移転するため回収のハードルは高いですが、送金直後であれば組戻し(取消)が間に合う場合があります。まず送金した金融機関に連絡し、同時に警察へ相談してください。回収可能性の判断や民事の手続は弁護士の職務となるため、当事務所では書類作成を担い、必要に応じて弁護士と連携します。
Q:相手が海外にいる場合でも、日本の警察に告訴できますか。
A:被害者が日本にいて日本で送金行為が行われていれば、日本の捜査機関に告訴・相談することは可能です。実際の捜査が国際協力を要するかは事案によりますが、被害事実と証拠を整理した告訴状を備えておくことは意義があります。提出先の選定に関する法的助言は弁護士の業務です。
Q:告訴状と被害届は何が違うのですか。
A:被害届は被害の事実を申告する書類で、必ずしも処罰を求める意思表示を含みません。告訴(刑事訴訟法230条)は、被害者が犯罪事実を申告したうえで犯人の処罰を求める意思を明確に示すものです。詐欺事案では、処罰意思と被害事実を具体的に記した告訴状を整える意義があります。
Q:相手の本名も口座名義もわかりません。それでも告訴状は作れますか。
A:作成できます。被疑者不詳のまま、犯罪事実(いつ・どのような嘘で・いくらを・どの口座へ送金させられたか)を中心に記載します。相手が名乗った名前、SNSアカウント、振込先口座番号など判明している情報をすべて整理して記載することが、捜査の手がかりになります。
Q:告訴状の作成にはどのくらい費用がかかりますか。
A:当事務所の告訴状・告発状の作成は、料金ページ掲載のスタンダードプラン 38,280円(税込)からで、資料の量や事案の複雑さにより変動します。お見積りは事前にご提示します。ご相談は何度でも無料ですので、送金記録ややり取りの履歴をお持ちのうえ、まずはお気軽にお問い合わせください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


