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遺言書の作り方完全ガイド|種類別の手順と注意点

更新: 約15分で読めます

遺言書が作成されるケースは年々増加しており、日本公証人連合会の統計によると公正証書遺言の作成件数は年間10万件を超えています(令和5年/2023年実績)。また、2020年7月に法務局での自筆証書遺言保管制度が開始されたことで、自筆証書遺言を残す方も増えています。遺言書を作成しておくことで、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)を経ずに財産の分け方を指定できるため、遺族の負担を大幅に軽減できます。

一方で、遺言書は法律で定められた形式を満たしていなければ無効になります。せっかく書いた遺言書が形式不備で効力を失うケースは珍しくなく、特に自筆証書遺言では要件の不備が原因で無効になるトラブルが後を絶ちません。この記事では、遺言書の3つの種類を比較したうえで、自筆証書遺言・公正証書遺言それぞれの作り方と注意点を、相続手続きの専門家の視点から解説します。

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遺言書の3つの種類と特徴【比較表】

民法で定められている普通方式の遺言には、自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言の3種類があります。実務上よく利用されるのは自筆証書遺言と公正証書遺言の2つで、秘密証書遺言はほとんど利用されていません。

比較項目 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
作成方法 遺言者が全文を自筆で書く(財産目録はパソコン可) 公証人が遺言者の口述を筆記 遺言者が作成し、公証人に提出
証人 不要 2名以上必要 2名以上必要
費用 ほぼ無料(保管制度利用時は3,900円) 公証人手数料(財産額に応じて数万円〜) 公証人手数料11,000円
保管 自宅保管 or 法務局の保管制度 公証役場で原本保管 自宅保管
検認 必要(法務局保管の場合は不要) 不要 必要
無効リスク 形式不備で無効になるリスクあり 公証人が関与するため極めて低い 形式不備のリスクあり
内容の秘密性 高い(本人のみが知る) 公証人・証人に内容を開示 高い(内容は公証人にも非開示)

どちらを選ぶべきかの判断は、財産の内容や家族構成、費用への考え方によって異なります。一般的には、財産が不動産を含む場合や相続人が複数いる場合は、無効リスクが極めて低く、検認も不要な公正証書遺言が推奨されます。手軽に作成したい場合は自筆証書遺言を選び、法務局の保管制度を利用するのが安全です。

遺言書の種類選びのポイントについては遺言書の種類と選び方でさらに詳しく解説しています。

自筆証書遺言の作り方と要件

自筆証書遺言は、遺言者が自分で全文を手書きする遺言書です。紙とペンがあれば作成でき、費用もかからないため最も手軽な方法ですが、法律で定められた要件を1つでも欠くと無効になります。

自筆証書遺言の4つの法定要件(民法第968条)

要件 内容 注意点
1. 全文の自書 遺言の本文を遺言者本人が自筆で書く パソコン作成・代筆は無効。2019年改正で財産目録のみパソコン・コピー添付可(各ページに署名・押印必要)
2. 日付の自書 作成年月日を自筆で記載 「令和8年4月吉日」は無効(日付が特定できないため)。「令和8年4月2日」と正確に記載
3. 氏名の自書 遺言者の氏名を自筆で記載 戸籍上の氏名をフルネームで記載するのが望ましい
4. 押印 遺言者の印鑑を押す 認印でも有効だが、偽造防止のため実印が望ましい

2019年の民法改正により、財産目録に限ってはパソコンでの作成や不動産登記事項証明書のコピー添付が認められるようになりました。ただし、財産目録の各ページに遺言者の署名と押印が必要です。本文(「誰に何を相続させるか」を記載する部分)は従来どおり全文手書きでなければなりません。

法務局の自筆証書遺言保管制度

2020年7月10日から、法務局(遺言書保管所)に自筆証書遺言を預けられる制度がスタートしています。この制度を利用すると、以下のメリットがあります。

  • 法務局が形式面のチェックを行うため、形式不備による無効リスクが低減される
  • 遺言者の死亡後に家庭裁判所での検認が不要になる
  • 紛失・改ざんのリスクがなくなる
  • 遺言者の死亡後、相続人が法務局に対して遺言書の閲覧・証明書の交付を請求できる

保管の申請手数料は1件あたり3,900円です。詳しくは法務局の自筆証書遺言書保管制度ページをご確認ください。

公正証書遺言の作り方と費用

公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言書です。遺言者が口頭で遺言内容を伝え、公証人がそれを筆記して作成します。公証人という法律の専門家が関与するため、形式不備で無効になるリスクが極めて低いのが最大のメリットです。

公正証書遺言の作成手順

(1)必要書類の準備。遺言者の印鑑登録証明書、相続人の戸籍謄本、財産に関する資料(不動産の登記事項証明書・固定資産税納税通知書、預貯金の残高がわかる資料等)を準備します。

(2)公証役場との事前打ち合わせ。遺言内容の原案を公証人に伝え、法的に有効な文言に整えてもらいます。この段階で行政書士が原案を作成し、公証人と調整するケースが多いです。

(3)証人2名の手配。公正証書遺言の作成には2名以上の証人の立会いが必要です。証人になれない人(推定相続人、受遺者、これらの配偶者・直系血族など)が定められているため注意してください。証人を自分で手配できない場合は、公証役場や行政書士に依頼できます。

(4)公証役場での作成。遺言者・証人2名が公証役場に出向き、公証人が遺言者の口述を筆記します。内容を確認したうえで、遺言者・証人・公証人がそれぞれ署名・押印します。遺言者が病気等で公証役場に行けない場合は、公証人が自宅や病院に出張することも可能です(出張費別途)。

公正証書遺言の費用

公証人手数料は「目的の価額」(遺言で指定する財産の価額)に応じて法令で定められています。主な手数料は以下のとおりです。

目的の価額 公証人手数料
100万円以下 5,000円
100万円超〜200万円以下 7,000円
200万円超〜500万円以下 11,000円
500万円超〜1,000万円以下 17,000円
1,000万円超〜3,000万円以下 23,000円
3,000万円超〜5,000万円以下 29,000円
5,000万円超〜1億円以下 43,000円

上記は相続人1人あたりの手数料です。相続人が複数いる場合は、各相続人が受け取る財産の価額ごとに手数料を算出し、合計します。また、遺言書の目的の価額が1億円以下の場合は11,000円が加算されます(遺言加算)。公証人の出張が必要な場合は手数料が1.5倍になるほか、旅費(日当)が加算されます。

遺言書作成の手続きの流れ

遺言書の作成は、思い立ったその日に書き始めるよりも、事前に準備を整えてから取りかかるほうが確実です。以下のステップに沿って進めてください。

Step 1: 財産の棚卸しを行う

遺言書に記載する財産を正確に把握するため、まず保有財産の一覧を作成します。不動産・預貯金・有価証券・生命保険・自動車・貴金属類など、すべての財産をリストアップします。不動産は登記事項証明書で所在・地番・家屋番号を確認し、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号を整理しておきます。

Step 2: 相続人と受遺者を確定する

法定相続人が誰かを確認します。戸籍謄本を取得して確認するのが確実です。法定相続人以外の人(孫、甥姪、お世話になった知人など)に財産を渡したい場合は、遺言書で「遺贈する」と記載します。相続人の調査方法については相続手続きの流れと期限一覧もご参照ください。

Step 3: 誰に何を相続させるか決める

各相続人(または受遺者)に対して、どの財産を、どのような割合で渡すかを決めます。遺留分(兄弟姉妹以外の法定相続人に保障された最低限の取り分)に配慮した分配にしておくと、遺留分侵害額請求によるトラブルを予防できます。

Step 4: 遺言書を作成する

自筆証書遺言の場合は本文を全文手書きし、日付・氏名を自書して押印します。公正証書遺言の場合は公証役場に必要書類を持参し、公証人に作成を依頼します。いずれの場合も、遺言執行者を指定しておくことをおすすめします。遺言執行者がいれば、遺言の内容を確実に実現してもらえます。

Step 5: 遺言書を保管する

自筆証書遺言は法務局の保管制度を利用するのが安全です。公正証書遺言は公証役場に原本が保管されるため、遺言者には正本と謄本が交付されます。いずれの場合も、遺言書を作成したこと・保管場所を信頼できる人に伝えておくことが重要です。

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遺言書を書くときの注意点・よくある不備

遺言書は法的効力を持つ重要な文書であるにもかかわらず、形式や内容の不備により効力が否定されるケースが少なくありません。特に自筆証書遺言で注意すべき点を整理します。

形式面の不備

パソコンで本文を作成してしまうケースが最も多い不備です。2019年改正で財産目録のパソコン作成が認められましたが、「誰に何を相続させるか」という本文部分は全文手書きが必須です。この点を誤解して本文もパソコンで作成し、署名だけ手書きにしても遺言書としては無効になります。

日付を「○月吉日」と書くのも典型的な無効原因です。作成日が特定できなければ遺言書は効力を持ちません。必ず年月日を正確に記載してください。

内容面の注意点

財産の特定が不十分だと、遺言執行の段階で混乱が生じます。不動産は「自宅の土地と建物」ではなく、登記事項証明書の記載どおりに所在・地番・家屋番号を正確に記載する必要があります。預貯金も「○○銀行の預金」ではなく、支店名・口座番号まで特定するのが望ましいです。

遺留分への配慮が欠けていると、遺言書の内容どおりに遺産が分配されても、遺留分を侵害された相続人が遺留分侵害額請求を行い、結果として遺言者の意思と異なる結果になることがあります。兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分が保障されているため、遺言を作成する段階で遺留分に配慮した分配を検討することが大切です。

予備的条項(補充遺言)の記載漏れも見落としがちです。遺言書で財産を渡す相手が遺言者より先に亡くなった場合、その部分の遺言は効力を失います。「Aに相続させる。Aが先に死亡した場合はBに相続させる」といった予備的条項を入れておけば、このリスクを回避できます。

遺産分割協議書の書き方と比較したい方は遺産分割協議書の書き方をご覧ください。

よくある質問

Q. 遺言書は何歳から作れますか?

民法第961条により、15歳以上であれば遺言書を作成できます。未成年者であっても法定代理人の同意は不要で、遺言者本人の意思のみで作成可能です。ただし、遺言能力(遺言の内容を理解し判断する能力)が必要であり、認知症等で判断能力が著しく低下している場合は遺言が無効になる可能性があります。

Q. 一度作った遺言書を撤回・変更することはできますか?

遺言者はいつでも遺言の全部または一部を撤回できます(民法第1022条)。撤回は新たな遺言を作成する方法で行います。前の遺言と後の遺言の内容が矛盾する場合は、矛盾する部分については後の遺言が優先されます。遺言書を物理的に破棄する方法でも撤回とみなされます。

Q. 遺言書に書ける内容に制限はありますか?

法的効力が認められる事項は民法等で定められています。代表的なものは「相続分の指定」「遺産の分割方法の指定」「遺贈」「遺言執行者の指定」「認知」「相続人の廃除」などです。これら以外の内容(「家族仲良く暮らしてほしい」等の希望)は「付言事項」として記載できますが、法的な拘束力はありません。

Q. 夫婦で1通の遺言書を作ることはできますか?

できません。民法第975条により、2人以上の者が同一の証書で遺言すること(共同遺言)は禁止されています。夫婦がそれぞれ遺言を残したい場合は、別々の用紙で1通ずつ作成する必要があります。

Q. 相続放棄をする予定の相続人がいる場合、遺言書にどう書けばいいですか?

相続放棄は相続開始後(被相続人の死亡後)に家庭裁判所に申述して行う手続きであり、遺言書の段階で「放棄させる」ことはできません。特定の相続人に財産を渡さない場合は、他の相続人に全財産を相続させる旨の遺言を作成する方法が考えられますが、遺留分の問題が生じる可能性があるため注意が必要です。詳しくは相続放棄の手続きと期限をご確認ください。

まとめ

遺言書は、遺族に自分の意思を伝え、相続トラブルを予防するための最も有効な手段です。この記事のポイントを振り返ります。

  • 実務上よく使われる遺言書は自筆証書遺言公正証書遺言の2種類
  • 自筆証書遺言は手軽だが、法定要件(全文自書・日付・氏名・押印)を1つでも欠くと無効
  • 法務局の保管制度を利用すれば、形式チェック・検認不要・紛失防止のメリットがある
  • 公正証書遺言は公証人が関与するため無効リスクが極めて低い(費用は財産額に応じて発生)
  • 遺留分に配慮した分配、財産の正確な特定、予備的条項の記載が重要な注意点

遺言書の作成は、元気なうちに、判断能力がしっかりしている段階で取りかかることが何より大切です。「書こうと思っていたが、まだ書いていない」という方は、まず財産の棚卸しから始めてみてください。

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