公開日:2026年5月14日
賃貸借契約は、借地借家法による借主保護が強い契約類型です。「2年契約期間が満了したのに更新拒絶できない?」「保証会社契約と連帯保証人契約の違いは?」「2020年改正民法の保証契約極度額は?」――契約更新時の論点と、改正民法による保証契約の必須記載事項を整理します。
本記事の結論:
- 賃貸借契約の更新は①合意更新(新契約締結)と②法定更新(借地借家法26条による自動更新)の2類型があります。
- 更新拒絶には「正当事由」(借地借家法28条)が必要で、貸主からの一方的拒絶は実務上困難です。
- 保証契約は2020年4月1日施行の改正民法465条の2により「極度額の定め」が必須となり、極度額のない個人根保証契約は無効です。
- 当所は賃貸借契約書・更新合意書・保証契約書の作成を担当、登記・訴訟代理(明渡請求等)は司法書士・弁護士をご紹介します。
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目次
根拠法令
- 借地借家法26条1項(建物賃貸借契約の更新)
- 借地借家法27条1項(解約申入れ)
- 借地借家法28条(建物賃貸借契約更新拒絶等の正当事由)
- 借地借家法38条(定期建物賃貸借)
- 民法601条以下(賃貸借)
- 民法617条1項(賃貸借の解約申入れ:土地1年前・建物3か月前・動産1日前)
- 民法465条の2(個人根保証契約の極度額・書面要件)
- 民法465条の4(個人根保証契約の元本確定事由)
- 民法465条の6・7・8(事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約における公証人による保証意思宣明)
- 民法465条の10(契約締結時の情報提供義務・事業用主たる債務の場合)
- 民法458条の2(債権者から保証人への主債務履行状況の情報提供義務)
- 民法458条の3(債権者から保証人への期限利益喪失通知義務)
- 改正民法(令和2年4月1日施行)
- 消費者契約法10条(消費者の権利制限・義務加重条項の無効)
- 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年法律第60号、令和3年6月15日完全施行)
- 国土交通省「極度額に関する参考資料」(平成30年3月公表)
- 主要判例:最判平成23年7月15日(民集65巻5号2269頁、更新料条項の有効性)、東京地判令和3年4月23日(賃貸借契約のみ更新の場合の保証契約への改正民法非適用)
賃貸借契約の更新時に確認すべきポイント
賃貸借契約を更新する際は、単に契約期間を延ばすだけでなく、合意更新か法定更新か、更新料条項の有無、賃料改定、連帯保証人の極度額、保証会社契約、原状回復条項、定期建物賃貸借か普通建物賃貸借かを確認する必要があります。特に、2020年4月1日以降に個人連帯保証契約を新たに締結する場合は、極度額の定めがないと保証契約が無効となるため、更新合意書・保証契約書の整備が重要です。
1. 賃貸借契約の更新パターン
1-1. 合意更新
当事者が新たな賃貸借契約条件で更新合意。賃料改定・期間設定等を新規に取り決め。新契約書または更新契約書の作成。
1-2. 法定更新
借地借家法26条1項により、期間満了の1年前から6か月前までに更新拒絶等の通知をしない場合、原則として従前契約と同一条件で更新されたものとみなされます。ただし、更新後の期間については、当事者が期間を定めた場合を除き、期間の定めがないものとされます。
1-3. 定期建物賃貸借(借地借家法38条)
更新がなく期間満了で終了する契約類型。書面による事前説明・書面契約締結が要件。再契約は新規契約として可能。
2. 更新拒絶の「正当事由」
2-1. 借地借家法28条の正当事由
借地借家法28条は、以下の要素を総合考慮して正当事由を判断します。
- 建物使用を必要とする事情(賃貸人・賃借人双方の必要性の比較。中核要素)
- 賃貸借に関する従前の経過(賃料滞納・賃料増額交渉・関係履歴等)
- 建物の利用状況(賃借人による使用態様・近隣関係等)
- 建物の現況(老朽化・建替え必要性等)
- 立退料の提供等の財産上の給付(補完要素)
判例実務では、賃貸人の使用必要性が賃借人の使用必要性を上回ることが正当事由の中核とされ(最判昭和38年3月1日民集17巻2号290頁、最判平成6年10月25日民集48巻7号1303頁等)、立退料は不足する正当事由を補完する位置づけです。
2-2. 立退料の役割
正当事由が単独では不足する場合、立退料の提供により正当事由が補完されることがあります。居住用では月額賃料の数か月分から1〜2年分程度が目安として語られることがありますが、事業用物件・営業補償・移転費用・賃借人側の使用必要性・契約経過等により大きく変動します。
3. 更新料の取扱い
3-1. 更新料条項の有効性
最判平成23年7月15日により、賃貸借契約の更新料条項は原則有効。ただし以下の要件を満たす必要:
- 更新料の趣旨が契約書で明確
- 金額が高額に過ぎない(賃料の1〜2か月分が相場)
- 消費者契約法10条との整合性
3-2. 法定更新時の更新料
法定更新時に更新料を請求できるかは、契約書の文言が法定更新を含む趣旨か、更新料の性質、従前の取扱い等により判断されます。単に「更新時に支払う」とあるだけでは争いになることがあるため、法定更新時も対象にする場合は契約書で明確に定める必要があります。
4. 保証契約の極度額(改正民法465条の2)
4-1. 改正の背景
2020年4月1日施行の改正民法により、個人による「根保証契約」(賃貸借契約の保証は典型例)には極度額の定めが必須となりました。
4-2. 極度額の定め方
- 金額で具体的に明記(例:「金200万円」「契約時の月額賃料(〇〇万円)の24か月分」)
- 書面または電磁的記録による定めが必須(民法465条の2第3項・同446条2項3項準用)
- 不確定額・上限のない表現では個人根保証契約として効力が認められないリスクがある
- 「家賃〇か月分」という表現は、契約時の家賃額が具体的に定まっていて、家賃変動後も極度額の計算は当初の額でなされる前提なら有効。家賃増額に応じて極度額も増減する設定は無効と解されているため、契約時月額賃料を基準に具体額を併記するのが安全
- 国土交通省「極度額に関する参考資料」(平成30年3月公表)の表記例も参考になる
4-3. 極度額の設定相場
国土交通省「極度額に関する参考資料」(平成30年3月公表)による判決における連帯保証人の負担額の平均値は、住居用で家賃の約13.2か月分、事業用で約24.6か月分です。これを参考に、以下が実務上の目安となります。
- 住居用:賃料の12〜24か月分程度
- 事業用:賃料の24〜36か月分程度
- 滞納賃料・原状回復費・損害賠償等を見込んで設定
極度額の上限について明文の規制はありませんが、家賃額や物件等の保証目的・保証人の資力等と比較して不当に高額な極度額は公序良俗違反(民法90条)として無効となる可能性があるため、根拠を持った算出が必要です。
4-4. 極度額がない場合
個人保証契約全体が無効。連帯保証人からの請求が一切できなくなります。賃貸人の保証取得目的が達成されないため、必ず明記。
4-5. 元本確定事由(民法465条の4第1項)
個人根保証契約は、以下の事由により元本が確定し、確定後に発生する債務は保証範囲外となります。
- 保証人の財産に対する強制執行または担保権の実行(手続開始決定があった場合に限る)
- 保証人が破産手続開始決定を受けたとき
- 主たる債務者または保証人が死亡したとき
特に「主たる債務者または保証人が死亡したとき」に元本が確定する点は賃貸借保証実務で重要で、賃借人死亡後の相続人による継続賃借に伴う賃料は連帯保証人の責任範囲外となります。連帯保証人死亡後の滞納賃料も連帯保証人の相続人に承継される範囲が限定されます。
5. 公正証書による保証意思の確認
5-1. 適用場面
「事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約」または「主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約」については、保証契約締結前1か月以内に公証人による保証意思宣明公正証書の作成が必要です(民法465条の6第1項、同465条の7・8)。経営者保証等の場合は適用除外(民法465条の9)。
5-2. 賃貸借保証への適用
賃貸借の保証契約は、通常、民法465条の6以下が対象とする「事業のために負担した貸金等債務」を主たる債務とする保証契約には該当しないため、公正証書による保証意思宣明手続は不要です(事業用テナントの賃貸借保証であっても同様)。ただし、賃貸借契約と併せて事業資金の貸付・立替金・リース債務等の保証を含む場合は、同制度の対象となるか個別確認が必要です。
6. 保証会社による保証
6-1. 保証会社契約の普及
近年、個人連帯保証人に代わって賃貸保証会社の利用が一般化。借主が保証料を支払い、保証会社が連帯保証する仕組み。
6-2. 保証会社契約の利点
- 個人連帯保証人不要(または併用)
- 賃貸人側の代金回収リスク低減
- 保証範囲に応じて、滞納賃料・明渡しまでの損害金・原状回復費等が保証対象となる場合がある(保証会社による督促・求償・代位弁済の範囲は、保証委託契約・保証契約の内容により異なる)
6-3. 規制の動き
2017年(平成29年)に国土交通省告示に基づく「家賃債務保証業者登録制度」(任意登録制度)が創設され、家賃債務保証業者の事業適正化が図られました。2020年6月成立・2021年6月15日完全施行の「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(令和2年法律第60号、いわゆる賃貸住宅管理業法)では、賃貸住宅管理業者の登録制度、サブリース業者・特定転貸事業者に対する規制が強化されました。追い出し条項(賃貸人の催告なき解除・即時明渡し・強引な督促等)については、消費者契約法10条(消費者の権利制限・義務加重条項の無効)・公序良俗違反(民法90条)・賃貸住宅管理業法の業務適正化義務違反として無効主張の余地があります。
7. 連帯保証人の権利・義務
7-1. 連帯保証の効果
- 催告の抗弁権なし(直接請求可能)
- 検索の抗弁権なし
- 分別の利益なし(複数保証人でも全額請求可)
7-2. 債権者・主たる債務者の情報提供義務(2020年改正民法)
2020年改正民法により、以下の情報提供義務・通知義務が新設されました。
- 債権者(賃貸人)から保証人への主債務履行状況の情報提供義務(民法458条の2):保証人が主たる債務者の依頼を受けて保証をした場合に、保証人の請求があれば、賃貸人は遅滞なく主たる債務の元本・利息・違約金・損害賠償等の不履行の有無・残額・弁済期等の情報を提供しなければなりません。
- 債権者(賃貸人)から保証人への期限利益喪失通知義務(民法458条の3):主たる債務者が期限の利益を喪失した場合、債権者は知った時から2か月以内に個人保証人に通知が必要(法人保証人は対象外)。
- 主たる債務者から個人保証人への契約締結時の情報提供義務(民法465条の10):主たる債務が「事業のため」に負担するものである場合に限り適用(居住用賃貸借は対象外、社宅を除く)。
8. 賃貸借契約書の必須記載事項
8-1. 基本事項
- 当事者の氏名・住所
- 物件の表示
- 賃料・敷金・礼金
- 契約期間・更新
- 使用目的・使用方法
8-2. 修繕・原状回復
- 賃貸人の修繕義務範囲
- 賃借人の善管注意義務
- 原状回復の範囲(国交省ガイドライン準拠)
8-3. 解除・違約
- 解除事由
- 違約金・損害賠償
- 明渡しの期限
8-4. 保証関係
- 連帯保証人の極度額
- 保証会社契約の有無
- 保証期間
9. 業務範囲の整理
9-1. 行政書士の業務範囲
- 賃貸借契約書・更新契約書のひな形作成
- 連帯保証契約書(極度額明記)の作成
- 保証会社契約のチェック
- 原状回復ガイドラインを踏まえた契約条項案の作成・チェック
9-2. 業務範囲外(提携専門家を紹介)
- 賃料増減・更新拒絶の交渉・訴訟 → 弁護士業務
- 明渡訴訟・強制執行 → 弁護士業務
- 不動産売買仲介 → 宅地建物取引業者
- 不動産登記 → 司法書士業務
- 賃料収入の税務 → 税理士業務
FAQ|よくあるご質問
Q1. 法定更新後はいつまで住めますか?
借地借家法26条1項に基づく法定更新後は、当事者が期間を定めた場合を除き「期間の定めのない建物賃貸借」となります。賃貸人は借地借家法27条1項に基づく解約申入れ(正当事由+6か月前通知)で解約可能、賃借人は民法617条1項2号により、いつでも3か月前通知で解約可能です。なお、契約書に賃借人に有利な短い予告期間が定められている場合もあるため、契約条項の確認が必要です。賃借人にとっては従前条件で継続居住できる強力な借主保護です。
Q2. 連帯保証人を後から極度額付き契約に切り替えるべきですか?
2020年4月1日以降に個人連帯保証契約を新たに締結する場合は、極度額の定めが必要です。施行日(2020年4月1日)前に締結された連帯保証契約は、改正民法施行後も従前の例(極度額の定めなしでも有効)が適用されます。施行日前の賃貸借契約が施行日後に更新される場合の取扱いは、賃貸借契約の更新と保証契約の更新を区別して以下のとおりです。
①賃貸借契約のみが法定更新された場合:保証契約は更新されず、極度額不要・旧法適用で有効。
②賃貸借契約が合意更新され、保証契約も連帯保証人の署名・押印により合意更新された場合:保証契約に改正民法が適用され、極度額の定めがなければ更新後の保証は無効。
③賃貸借契約が合意更新されたが、保証契約は更新手続が取られていない場合:旧法適用で保証契約は有効(東京地判令和3年4月23日)。
実務上は、契約更新時に極度額を明記した新たな連帯保証契約書を作成することを推奨します。
Q3. 定期建物賃貸借は更新できますか?
定期建物賃貸借は更新がない契約。期間満了で終了。再契約(新規契約)は可能。
Q4. 更新料を払いたくない場合は?
契約書の更新料条項が明記され、金額が相当な範囲であれば原則支払義務。条項なき場合・著しく高額な場合は争いの余地。
Q5. 保証会社が滞納時に強引な追い出しをしたら?
賃貸住宅管理業法・追い出し条項規制違反の可能性。消費者契約法・公序良俗違反として無効主張も。弁護士に相談を推奨。
Q6. 個人保証人と保証会社の併用は可能ですか?
はい、併用契約は可能。実務上、保証会社契約必須+個人連帯保証人任意というパターンが多い。
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- 2020年改正民法の保証契約|極度額・公正証書・情報提供義務
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契約書作成・リーガルチェックサポート
契約書作成・リーガルチェックについて、行政書士法人Treeで対応します。ミニマム 21,780円(税込)/スタンダード 27,500円(税込)/公正証書作成サポート 32,780円(税込)。
まとめ
賃貸借契約の更新は合意更新と法定更新の2類型があり、更新拒絶には正当事由(借地借家法28条)が必要。保証契約は2020年改正民法により極度額の定めが必須となり、極度額なき個人保証契約は無効。賃貸借契約書・保証契約書の整備は行政書士業務、紛争解決・明渡訴訟は弁護士業務、登記は司法書士業務という業際を踏まえ、専門家チームで対応します。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。


