「ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠」という言葉を見聞きしてお調べの方が増えていますが、これは制度名の混同によく見られる誤りです。正しくは、人手不足の解消を目的とした『中小企業省力化投資補助金』という独立した制度があり、その中に「一般型(オーダーメイド)」と「カタログ注文型」という2つの類型が用意されています。「ものづくり補助金」とは別制度ですので、まずはこの点を整理しておくことが大切です。本記事では、行政書士の視点から、一般型(オーダーメイド)の要件・補助上限・対象設備と、カタログ注文型との違いを、一次情報に基づいて分かりやすく解説します。
目次
そもそも「中小企業省力化投資補助金」とは
中小企業省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業等が、省力化(人手をかけずに業務を回す)に資する設備やシステムを導入し、付加価値額や生産性の向上を図る取り組みを支援する制度です。運営は独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が担っており、制度には次の2類型があります。
- 一般型(オーダーメイド):自社の現場や業務内容に合わせて、設備・機器を組み合わせたりシステムを構築したりする場合に活用する類型。カタログ注文型のような登録製品の制限はありませんが、人手不足解消に資する省力化投資として、公募要領上の対象性要件を満たす必要があります。
- カタログ注文型:あらかじめ事務局のカタログに登録された汎用製品(ロボット、IoT機器等)を購入する場合に活用する類型。
つまり「省力化(オーダーメイド)」は、ものづくり補助金の枠ではなく、本制度の一般型の通称です。タイトルに使われがちな「省力化枠」という表現は、ものづくり補助金には存在しないため注意してください。
一般型(オーダーメイド)の補助上限額と補助率
一般型は、従業員数と賃上げの有無に応じて補助上限額が段階的に設定されており、最大1億円という大型投資にも対応します。執筆時点の公式情報に基づく内容は次のとおりです。
| 従業員数 | 補助上限額(通常) | 補助上限額(大幅賃上げ特例) |
|---|---|---|
| 5人以下 | 750万円 | 1,000万円 |
| 6〜20人 | 1,500万円 | 2,000万円 |
| 21〜50人 | 3,000万円 | 4,000万円 |
| 51〜100人 | 5,000万円 | 6,500万円 |
| 101人以上 | 8,000万円 | 1億円 |
補助率は、補助金額の区分によって異なります。中小企業の場合、補助金額1,500万円までの部分は原則2分の1、1,500万円を超える部分は3分の1です。小規模企業者・小規模事業者および再生事業者についても同様の区分が適用されます。最低賃金引上げ特例など各種特例により補助率が変わることがあるため、最新の公募要領で必ず確認してください。
一般型の主な要件(労働生産性・賃上げ)
一般型では、補助対象となるために満たすべき事業計画上の要件が複数定められています。代表的なものは次のとおりです。
- 労働生産性の向上:事業計画期間において、労働生産性の年平均成長率4.0%以上の向上を目指す事業計画であること。
- 給与支給総額の増加:1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上の増加を目指す事業計画であること。未達の場合は達成率に応じた補助金返還があり得ます。
- 事業場内最低賃金の確保:事業実施都道府県の地域別最低賃金+30円以上の水準とすること。未達の場合は補助金返還があり得ます。
- 従業員21名以上の場合の一般事業主行動計画公表:次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の公表が必要となります。
- 省力化効果:業務量が削減される割合(省力化効果)が見込まれる事業計画を策定すること。
- 投資回収の根拠:事業計画上の投資回収期間を、根拠資料とともに提出すること。
- 賃上げ(基本要件):1人当たり給与支給総額の年平均成長率を+3.5%以上増加させる事業計画であること。未達の場合は達成率に応じた補助金返還があり得ます。
- 事業場内最低賃金の確保:事業実施都道府県の地域別最低賃金+30円以上の水準とすること。未達の場合は補助金返還があり得ます。
- 一般事業主行動計画の公表:従業員21名以上の場合、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表していること。
さらに、補助上限額が引き上げられる「大幅な賃上げ特例」を選択する場合は、基本要件の給与増加(1人当たり+3.5%以上)に加え、事業計画期間において1人当たり給与支給総額を年平均成長率6.0%以上(基本要件比で追加+2.5%以上)増加させること、かつ事業場内最低賃金を事業実施場所の地域別最低賃金+50円以上の水準とすることの双方が求められます。未達の場合は補助金の返還や特例不適用が生じ得るため、最新の公募要領で必ず確認してください。
対象となる設備・経費のイメージ
一般型(オーダーメイド)は、カタログに掲載されていない設備も含めて自由に選定できることが最大の特徴です。自社の個別の現場・業務に合わせて、設備の組み合わせやシステムの構築を行えます。一般に対象となり得る経費としては、機械装置・システム構築費を中心に、運搬費・技術導入費・専門家経費・クラウドサービス利用費・外注費などが挙げられます(公募回により対象経費の範囲・上限は異なります)。
一方で、単純な買い替えや、省力化・生産性向上に結びつかない汎用的な備品購入などは対象外となるのが通例です。「どの設備が、どの経費区分で、いくらまで対象になるか」は、必ず最新の公募要領で確認してください。
カタログ注文型との違い
同じ省力化投資補助金でも、一般型とカタログ注文型は性格が大きく異なります。主な違いを整理すると次のとおりです。
| 比較項目 | 一般型(オーダーメイド) | カタログ注文型 |
|---|---|---|
| 設備の選び方 | カタログ外も含め自由に選定・組み合わせ | 登録済みカタログ製品から選択 |
| 補助上限額 | 最大1億円(従業員数・賃上げで段階設定) | 従業員数に応じ最大1,000万円(賃上げで1,500万円) |
| 労働生産性要件の目安 | 年平均成長率4%以上の向上 | 年平均成長率3%以上の向上 |
| 申請の進め方 | 自社(支援者)が事業計画を策定して申請 | 販売事業者のサポートを受けて申請 |
| 公募 | 公募期間が定められている | 随時申請が可能 |
大型かつ自社固有の省力化投資を行いたい場合は一般型、定番の汎用製品を手早く導入したい場合はカタログ注文型、というのが基本的な選び分けの考え方です。なお、カタログ注文型の補助上限額は制度改定(2026年3月19日以降)の内容で記載しています。いずれの数値も改正・運用変更により変動しますので、申請前に必ず公式サイトの最新情報をご確認ください。
申請手続きの流れと専門家の活用
一般型の申請は、GビズIDプライムの取得、電子申請システムでの登録、事業計画書の作成・提出という流れが基本です。採択後も交付申請、設備の発注・導入、実績報告、そして数年にわたる事業化状況報告(労働生産性・賃上げの実績報告)まで、一連の手続きが続きます。とりわけ、省力化効果や投資回収の根拠を説得力ある形で示す事業計画の作成が、採択の鍵を握ります。
補助金の申請支援は行政書士の業務として対応可能です。一方で、減価償却や税額の計算、申告書の記載方法、具体的な節税額の試算などの税務に関するご相談は税理士へ、雇用関係助成金など社会保険労務士の独占業務に関わる手続きは社労士へ、それぞれおつなぎする形となります。制度の性質上、補助金(経済産業省・中小機構系)と助成金(厚生労働省系)は別物ですので、目的に応じて適切な専門家にご相談ください。
料金・ご相談について
当事務所では、中小企業省力化投資補助金(一般型)の制度確認から事業計画の組み立て、申請手続きのサポートまで対応しております。補助金申請は補助金申請(完全成果報酬型)として、着手金0円・成果報酬8〜15%(税抜)・不採択時は完全無料でご案内しております。成果報酬率は補助金の種類・申請内容により個別にお見積りします。ご相談は何度でも無料です。詳しくは補助金サポートのご案内をご覧ください。
まとめ
「ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠」は制度名の混同であり、正しくは『中小企業省力化投資補助金』の一般型(オーダーメイド)です。一般型は最大1億円の大型投資に対応し、設備を自由に選定できる一方、労働生産性の年平均成長率4%以上の向上や(特例選択時の)賃上げ要件など、満たすべき条件が定められています。汎用製品を選ぶカタログ注文型との違いを理解し、自社の目的に合った類型を選ぶことが重要です。補助率・補助上限・要件・公募回は改正により変動しますので、申請をご検討の際は最新の公募要領を確認のうえ、お早めに専門家へご相談ください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。