小規模事業者持続化補助金の「創業型(創業枠)」は、創業後1年以内の小規模事業者等(事業開始前の事業者を含む)が販路開拓に取り組む際の経費を、通常枠より手厚く支援する申請枠です。結論から言えば、創業型では補助上限が200万円、補助率は3分の2に設定されており、通常枠の上限50万円と比べて大きく拡充されています。ただしこの枠を使うには、産業競争力強化法に基づく「特定創業支援等事業」の支援を受けたという証明書が必須で、直近の第3回・第4回公募では開業日と支援を受けた日がいずれも公募締切時から起算して過去1か年の間(創業後1年以内)であることが要件です。本記事では、行政書士の立場から、創業型の補助上限・補助率・対象者・特定創業支援等事業の確認方法・申請の流れまでを、中小企業庁の公募要領をふまえて整理して解説します。なお、補助金の申請書類の作成支援は行政書士の業務分野ですが、雇用に関する助成金は社会保険労務士、税務の判断は税理士の領域となるため、それぞれ連携してご案内します。
目次
小規模事業者持続化補助金「創業型(創業枠)」とは
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が自ら経営計画を策定し、地域の商工会・商工会議所の支援を受けながら販路開拓や生産性向上に取り組む経費の一部を補助する制度です。そのなかでも創業型(創業枠)は、地域の雇用や産業を支える創業後間もない小規模事業者を重点的に支援するために設けられた申請枠です。
通常枠(一般型)の補助上限が原則50万円であるのに対し、創業型は補助上限200万円・補助率3分の2と大きく拡充されています。創業期は設備投資や広報・ウェブサイト構築などの初期費用がかさみやすいため、創業型はその立ち上げを後押しする位置づけといえます。なお、かつては一般型の中の「創業枠」でしたが、令和6年度補正予算からの制度再編により独立した類型「創業型」となり、専用の公募要領・事務局が設けられています。一般型(通常枠)との重複申請はできません。
補助上限200万円・補助率3分の2の内訳
創業型の基本的な補助条件は次のとおりです。さらに一定の要件を満たすと、上限額に特例分が上乗せされます。
| 項目 | 創業型(創業枠) | 一般型(通常枠) |
|---|---|---|
| 補助上限額(基本) | 200万円 | 50万円 |
| 補助率 | 2/3 | 2/3 |
| インボイス特例 | +50万円(上限250万円) | +50万円 |
| 賃金引上げ特例 | 適用なし | +150万円(赤字事業者は補助率3/4) |
インボイス特例は、免税事業者であった方がインボイス(適格請求書)発行事業者の登録を受けるなど、一定の要件を満たす場合に補助上限へ50万円を上乗せするものです。創業型でこの特例を使うと、補助上限は最大250万円となります。賃金引上げ特例(+150万円)は一般型(通常枠)に設けられた特例であり、創業型には適用されません。創業型は賃金引上げ要件を満たさなくても基本の上限が200万円に設定されている点が、通常枠(基本上限50万円)との大きな違いです。特例の細かな適用条件や上乗せ後の上限は公募回ごとに整理されるため、申請前に最新の公募要領で確認してください。なお、賃金や最低賃金、雇用関係助成金の取扱いは社会保険労務士の専門領域に関わるため、必要に応じて連携してご案内します。
創業型の対象者|創業後1年以内と小規模事業者の定義
創業型を申請できるのは、まず小規模事業者に該当することが前提です。小規模事業者の範囲は業種ごとに常時使用する従業員数で区切られており、持続化補助金では次のように整理されています。
- 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く):常時使用する従業員5人以下
- 宿泊業・娯楽業、製造業その他:常時使用する従業員20人以下
そのうえで創業型は、開業日(法人は設立年月日)および特定創業支援等事業の支援を受けた日がいずれも公募締切時から起算して過去1か年の間(創業後1年以内)である小規模事業者等を対象としています(事業開始前の事業者も対象です)。具体的には、後述する特定創業支援等事業による支援を受けた日、および開業日(法人の場合は設立年月日)が、公募締切時から起算して過去1か年の間であることが求められます(第3回・第4回公募)。この「創業からの期間」は公募回・予算年度によって運用が異なるため(令和6年度補正予算の第1回・第2回は創業後3年以内でしたが、第3回から1年以内に短縮されました)、自社が要件を満たすかは最新の公募要領で必ず確認してください。
「特定創業支援等事業」の確認が創業型の鍵
創業型の最大の特徴は、「特定創業支援等事業」による支援を受けたことの証明書が必須という点です。これは産業競争力強化法に基づく仕組みで、申請の可否を分ける重要な要件です。
特定創業支援等事業とは、産業競争力強化法に基づき国の認定を受けた市区町村(認定市区町村)、または市区町村と連携する認定連携創業支援等事業者(地域金融機関、商工会議所・商工会、NPO法人等)が実施する、創業者向けの継続的な支援事業を指します。創業に必要な「経営」「財務」「人材育成」「販路開拓」の4分野の知識を習得できるよう設計されており、一般的には1か月以上にわたり、かつ4回以上の支援(窓口相談・セミナー等)を受けることが想定されています。
この支援を受けたうえで市区町村に申請すると、「特定創業支援等事業による支援を受けたことの証明書(支援証明書)」が交付されます。創業型ではこの証明書の添付が求められるため、まだ支援を受けていない場合は、お住まい・事業所在地の市区町村が認定市区町村かどうかを確認し、早めに支援プログラムへ申し込むことが出発点になります。認定市区町村の一覧は中小企業庁「産業競争力強化法に基づく認定を受けた市区町村別の創業支援等事業計画の概要」で確認できます。
なお、特定創業支援等事業の証明書を受けると、補助金以外にも会社設立時の登録免許税の軽減や日本政策金融公庫の融資要件の緩和などの優遇が受けられる場合があります。ただし登記手続そのものは司法書士、融資に関する税務判断は税理士の領域となるため、当事務所では行政書士の職域である申請書類の整理を担い、これらの手続は必要に応じて連携してご案内します。
創業型の補助対象経費と申請の流れ
補助の対象となるのは、策定した経営計画に基づき販路開拓等のために使う経費に限られます。代表的な対象経費は次のとおりです。
- 機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費(広報費・ウェブサイト関連費は第4回公募から補助金交付申請額の上限が各30万円(税込)、単独申請不可)
- 展示会等出展費(オンラインの展示会・商談会等を含む)、旅費
- 新商品開発費、借料、委託・外注費 など
申請から入金までの大まかな流れは、「公募要領の確認 → 経営計画・補助事業計画の作成 → 商工会議所・商工会で事業支援計画書(様式4)の発行 → 電子申請 → 採択発表 → 交付決定 → 事業実施 → 実績報告 → 入金」です。ここで特に注意したいのが次の2点です。
- 交付決定前に発注・契約した経費は原則として補助対象外です。採択されても交付決定を待たずに設備を購入すると、補助されないおそれがあります。
- 電子申請にはgBizIDプライムが必要です。書類郵送申請は、書類到着後、不備がなければ原則2週間以内が目安です。申請を検討した段階で早めに取得しておくと安心です。
また、補助金は後払いが原則で、事業を実施し実績報告・確定検査を経てから入金されます。当面の資金は自己資金や融資で手当てする前提で計画を立ててください。
採択に向けて押さえたいポイント
持続化補助金は予算枠に対する審査型で、要件を満たして申請しても採択されるとは限りません。創業型で特に重要なのは次の点です。
- 特定創業支援等事業の証明書を早めに確保する:支援プログラムの受講から証明書交付まで時間がかかるため、創業の初期段階から計画的に進めることが肝心です。
- 経営計画の具体性:自社の強み・市場・販路開拓の方法を、数字と根拠をもって具体的に書き込むことが採否を左右します。
- 商工会議所・商工会との連携:申請には事業支援計画書(様式4)の発行が必要で、発行には日数を要するため、締切間際ではなく早めに相談を始めましょう。
なお、補助金の名称・補助上限・特例の上乗せ額・創業期間の要件・締切は公募回ごとに見直されます。「採択されれば必ず資金が出る」「要件を満たせば必ず通る」といったことはなく、最新の公募要領を一次情報として確認することが欠かせません。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、経済産業省・中小企業庁系の補助金を中心に、経営計画・補助事業計画の作成支援、公募要領の読み解き、必要書類の整理、電子申請の準備といった補助金申請の実務を、行政書士の職域の範囲でサポートしています(官公署に提出する補助金申請書類の作成は、行政書士法に基づく行政書士の業務に含まれます)。創業型で必須となる特定創業支援等事業の確認や、商工会議所・商工会との連携の進め方についてもご案内します。一方、雇用に関する助成金は社会保険労務士、税務処理や消費税の取扱いは税理士、会社設立登記は司法書士の領域となるため、これらは必要に応じて連携してご案内します。
補助金申請のご相談・サポートをご検討の方は、補助金申請サポートのご案内ページをご覧ください。料金や進め方については個別にお問い合わせください。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
小規模事業者持続化補助金の創業型(創業枠)は、補助上限200万円・補助率3分の2と通常枠(上限50万円)より手厚く、創業後間もない小規模事業者の販路開拓を後押しする枠です。利用には、産業競争力強化法に基づく特定創業支援等事業の支援を受けたことの証明書が必須で、「経営・財務・人材育成・販路開拓」の4分野の支援を1か月以上かつ4回以上受けたうえで市区町村から交付を受けます。創業からの期間要件・特例の上乗せ額・締切は公募回ごとに変わるため、最新の公募要領で確認することが大切です。交付決定前の発注は対象外、入金は後払い、電子申請にはgBizIDプライムが必要という基本も押さえておきましょう。
持続化補助金の創業枠に関するよくある質問
Q:創業型の補助上限と補助率はいくらですか。
A:基本の補助上限は200万円、補助率は3分の2です。これに加え、インボイス特例の要件を満たす場合は50万円が上乗せされ、上限は最大250万円となります。なお、賃金引上げ特例(+150万円)は一般型(通常枠)の特例で、創業型には適用されません。創業型は賃上げ要件を満たさなくても基本の上限が200万円に設定されており、通常枠(上限50万円)より手厚い設定です。特例の適用条件や上乗せ後の上限は公募回ごとに整理されるため、最新の公募要領でご確認ください。
Q:特定創業支援等事業の証明書はどこでもらえますか。
A:産業競争力強化法に基づく認定市区町村、または市区町村と連携する認定連携創業支援等事業者の支援(経営・財務・人材育成・販路開拓の4分野を1か月以上かつ4回以上)を受けたうえで、市区町村に申請すると交付されます。まずは事業所在地の市区町村が認定市区町村かどうかをご確認ください。
Q:創業して何年以内なら創業型を申請できますか。
A:直近の第3回・第4回公募では、開業日(法人は設立年月日)および特定創業支援等事業の支援を受けた日がいずれも公募締切時から起算して過去1か年の間である必要があります。令和6年度補正予算の第1回・第2回では3年以内でしたが、第3回から1年以内に短縮されました。最新の公募要領でご確認ください。
Q:補助金はいつ入金されますか。先に設備を買っても対象になりますか。
A:補助金は後払いが原則で、交付決定後に事業を実施し、実績報告・確定検査を経てから入金されます。交付決定前に発注・契約した経費は原則として補助対象外になるため、発注のタイミングには十分ご注意ください。
Q:雇用関係の助成金や会社設立の登記もまとめて頼めますか。
A:補助金申請書類の作成支援は行政書士の業務として当事務所で対応しますが、雇用に関する助成金は社会保険労務士、会社設立登記は司法書士、税務処理は税理士の領域です。これらは当事務所では行わず、必要に応じて連携してご案内します。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


