結論から言えば、一般貨物自動車運送事業(いわゆる緑ナンバーのトラック運送業)の許可を取得するには、貨物自動車運送事業法第6条の許可基準と、各地方運輸局が公示する処理方針の両方を満たす必要があり、その柱となるのが「事業用自動車5両以上」「営業所」「車庫(休憩・睡眠施設を含む)」「運行管理者・整備管理者」「資金計画」の各要件です。これらは一つでも欠けると許可基準に適合せず、不許可となる可能性があり、書類の整合性も細かく審査されます。行政書士は、事業計画書や所要資金見積りの作成、運輸支局への許可申請書の作成・提出代行を担う国家資格者です。物件の不動産契約や金融機関からの資金調達、労働保険・社会保険の手続は、それぞれ宅地建物取引業者・税理士・社会保険労務士など各士業・専門家と連携して進めるのが堅実です。本記事では、許可の中核となる5つの要件を条文に沿って整理します。
目次
一般貨物自動車運送事業とは(法律上の位置づけ)
貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)は、貨物自動車運送事業を「一般貨物自動車運送事業」「特定貨物自動車運送事業」「貨物軽自動車運送事業」の3種類に区分しています。このうち一般貨物自動車運送事業は、同法第2条第2項で「他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く。)を使用して貨物を運送する事業であつて、特定貨物自動車運送事業以外のもの」と定義されています。
他人の需要に応じて有償でトラック等により貨物を運送し、特定貨物自動車運送事業に該当しない事業がこれに当たり、開始するには同法第3条により国土交通大臣(実務上は地方運輸局長)の許可が必要です。許可を受けずに営業すれば無許可営業として罰則の対象となります。なお、軽トラックや二輪を使う宅配・フードデリバリー等は「貨物軽自動車運送事業」となり、こちらは許可ではなく届出制で、本記事の対象とは手続が異なります。
許可の基準(法第6条)
許可の可否を判断する基準は、貨物自動車運送事業法第6条に定められています。国土交通大臣は、申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ許可をしてはならない、とされており、要旨は次のとおりです。
- 事業の計画が、過労運転の防止その他輸送の安全を確保するため適切なものであること(安全性の確保)
- 事業用自動車の数、自動車車庫の規模その他の国土交通省令で定める事項に関し、事業を継続して遂行するための適切な計画を有するものであること
- 事業を自ら適確に遂行するに足る経済的基礎及びその他の能力を有するものであること(経済的基礎)
この抽象的な基準を具体的な数値・条件に落とし込んだものが、各地方運輸局が公示する「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可等に関する処理方針」です。実際の審査はこの公示基準に沿って行われるため、申請者は管轄運輸局の最新の公示を確認する必要があります。以下では、その柱となる要件を順に解説します。
事業用自動車5両以上の要件
公示基準では、一つの営業所に配置する事業用自動車の最低数は5両とされています。これは霊柩運送や一部の島しょ部などを除き、原則として全国共通の最低ラインです。トレーラーの場合はけん引車と被けん引車の1組で1両として数えるなど、車両の数え方には運用上の取扱いがあります。
車両は、許可申請の時点では使用権原(自己所有のほか、リース契約・購入契約等)を証する書類で確保が見込めることを示せれば足り、すべてを名義変更・登録まで済ませておく必要はありません。なお、車検証上の用途や最大積載量などが事業計画と整合している必要があります。霊柩・廃棄物運搬などは積載物に応じた追加要件が課される場合があるため、用途を明確にして計画を立てます。
営業所・休憩睡眠施設・車庫の要件
営業所は、業務に必要な広さを備え、原則として都市計画法・建築基準法・農地法等の関係法令に抵触しない場所であることが求められます。市街化調整区域内の建物などは用途上使用できないことがあるため、物件選定の段階で確認が必要です。
車庫(自動車車庫)は、運行管理等の観点から営業所に併設することが原則とされ、併設できない場合でも一定距離内に置くことが求められます。許容される距離は地方運輸局・地域ごとに公示で定められており、たとえば関東運輸局管内では、東京都(特別区)・横浜市・川崎市は20km以内、その他の地域は原則10km以内とされています。地域によって基準が異なるため、必ず管轄運輸局の公示を確認してください。
車庫はさらに、計画する事業用自動車の全てを収容でき、車両と車庫の境界・車両相互間に原則50cm以上の間隔が確保できることが求められます。車庫の前面道路については、原則として車両制限令に照らして通行に支障がない幅員であることを、道路管理者の幅員証明書等で確認します。休憩・睡眠施設は、乗務員が有効に利用できる適切な広さを確保し、営業所または車庫に併設する必要があります(睡眠を与える場合は1人当たり2.5平方メートル以上が目安とされます)。休憩施設のみが単独で離れて存在することは認められません。
運行管理者・整備管理者・運転者の要件
輸送の安全を確保するため、人的体制についても基準が定められています。
- 運行管理者:運行管理者試験(貨物)に合格するなどして運行管理者資格者証の交付を受けた者を選任します。貨物自動車運送事業輸送安全規則第18条により、選任すべき人数は営業所ごとに「事業用自動車(被けん引自動車を除く。)の数を30で除して得た数(端数切捨て)に1を加えた数」とされ、車両5両であれば1名以上で足ります。
- 整備管理者:自動車の点検・整備に関する実務経験等の要件を満たす者を選任します。一定の要件を満たせば運転者との兼任も可能です。
- 運転者:事業計画を遂行するに足る員数の運転者を常時選任して確保する必要があります。日々雇い入れられる者や2か月以内の期間を定めて使用される者などは「常時選任運転者」として認められません。運転者は、勤務時間や休日、運行計画を踏まえ、事業計画を確実に遂行できる十分な員数を確保する必要があります。
運行管理者と運転者の兼任は一律に禁止されていませんが、点呼や運行管理業務を確実に実施できる勤務体制が必要です。必要人員は車両数だけでなく、運行計画や勤務時間、休日等を踏まえて判断します。なお、運送事業を始める法人の役員等は、運輸支局が実施する法令試験(多くの局で奇数月に実施)に合格する必要があります。
資金計画・損害賠償能力の要件
第6条の「経済的基礎」を担保するため、申請時に所要資金を見積もり、その所要資金以上の自己資金を確保していることを、申請時及び審査期間中の常時にわたり残高証明書等で証明します。所要資金には、おおむね次のような費用が含まれます。
- 車両費(取得費またはリース料)
- 建物費・土地費(営業所・車庫の取得費または賃借料)
- 人件費(運転者・運行管理者等の概ね6か月分など、公示で定める期間分)
- 燃料費・油脂費・修繕費(一定期間分)
- 保険料、各種税・登録免許税、その他開業に要する費用
必要となる自己資金の額は、車両数・賃料・人件費などの事業規模により大きく変動するため、一律の金額は定められていません。あわせて、自動車事故による損害賠償を確実に行えるよう、対人・対物の任意保険(共済を含む)に加入する計画であることが求められます。資金繰りや融資の相談は税理士・金融機関、保険設計は損害保険の専門家と連携して進めます。
許可までの流れ・費用・期間
一般的な手続の流れは、要件を満たす物件・人員の確保 → 事業計画・所要資金の整理 → 許可申請書の作成・運輸支局への提出 → 役員法令試験の受験 → 審査 → 許可 → 登録免許税の納付 → 運輸開始前の確認・車両登録(緑ナンバー取得)→ 運輸開始届、という順序です。
標準処理期間はおおむね3〜5か月程度とされ、法令試験の実施月との関係で前後します。許可取得後は、登録免許税12万円を許可の日から一定期間内に納付する必要があります。なお、運送業を取り巻く法令は改正が続いており、改正貨物自動車運送事業法が令和7年(2025年)4月1日に施行されています。最新の基準・様式は申請前に必ず確認してください。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、一般貨物自動車運送事業をはじめとする運送業許可(貸切バス・タクシー・介護タクシー・福祉有償運送等)について、要件の事前確認、事業計画書・所要資金見積りの作成、許可申請書一式の作成と運輸支局への提出代行までを職域の範囲でサポートします。許可取得後の車庫証明(5,500円(税込)〜)や事業用自動車の名義変更・新規登録(名義変更7,000円(税込)〜、いずれも個人・法人や地域により変動します)にも対応しています。運送業許可申請の代行報酬は、車両数・営業所数・案件の難易度により異なるため、事案ごとにお見積りいたします。不動産契約・融資・労務手続など職域外の事項は、提携する税理士・社会保険労務士・司法書士等の専門家と連携してご案内します。まずはお気軽に 自動車・運送業許可のご相談ページ からお問い合わせください。ご相談は何度でも無料です。
車庫証明・名義変更などの自動車手続でお困りではありませんか。行政書士法人Treeでは、書類の作成から警察署・運輸支局への提出代行まで対応します。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
一般貨物自動車運送事業の許可は、貨物自動車運送事業法第6条の基準と各地方運輸局の公示基準を満たすことが前提となり、「事業用自動車5両以上」「適法な営業所」「営業所に併設等した車庫と休憩・睡眠施設」「運行管理者・整備管理者・運転者の体制」「所要資金以上の自己資金と損害賠償能力」が中核の要件です。車庫の距離や面積、必要人員、所要資金の積算は地域や事業規模で変わるため、物件を契約する前の要件確認が成否を分けます。準備に不安がある場合は、早い段階で行政書士にご相談ください。
一般貨物自動車運送事業の許可に関するよくある質問
Q:トラックは必ず5台そろえないと申請できませんか。
A:一つの営業所につき事業用自動車5両以上が原則の最低要件です。ただし申請時点では、購入契約書やリース契約書など使用権原を確保できる見込みを示す書類があれば足り、5両すべての登録を済ませておく必要はありません。霊柩運送など一部の例外を除き、5両を下回る計画では許可は受けられません。
Q:自宅を営業所や車庫として使えますか。
A:建物・土地が都市計画法や建築基準法、農地法などの関係法令に抵触せず、業務に必要な広さや前面道路の幅員などの要件を満たせば、自宅やその敷地を営業所・車庫として使える場合があります。一方で市街化調整区域内の建物などは用途上使用できないことがあるため、物件選定の段階で確認が必要です。
Q:運行管理者と運転者は兼任できますか。
A:運行管理者と運転者の兼任は一律に禁止されていません。ただし、運行管理者として点呼その他の業務を確実に実施できる勤務体制が必要であり、必要人員は具体的な運行計画や勤務時間等に応じて判断します。整備管理者については、一定の要件を満たせば運転者との兼任が認められる場合があります。
Q:許可が下りるまでどのくらいかかりますか。
A:標準処理期間はおおむね3〜5か月程度とされています。これに加えて、法人の役員等が受ける法令試験が多くの運輸局で奇数月に実施されるため、その日程との関係で全体の期間が前後します。許可後は登録免許税12万円の納付や緑ナンバーへの登録などの手続が続きます。
Q:許可取得にかかる費用はどのくらいですか。
A:法定費用としては登録免許税12万円がかかります。これとは別に、車両・営業所・車庫の確保費用や人件費などの所要資金以上の自己資金を確保している必要があり、その額は事業規模により大きく変わります。当事務所への申請代行報酬は案件ごとにお見積りいたしますので、まずは無料相談でご事情をお聞かせください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


