結論から言えば、自社で実際に運送するのではなく、他の運送事業者の運送を「利用」して荷主から貨物の運送を引き受ける事業は、貨物利用運送事業法に基づく許認可の対象です。なかでも、集配を伴う一貫輸送までは行わない最もシンプルな形態が「第一種貨物利用運送事業」であり、国土交通大臣の登録を受ければ営業できます。行政書士は、官公署に提出する登録申請書類の作成・提出代行を業として担う専門家であり、運輸局の審査基準に沿った書類整備をお手伝いできます。資本政策や法人設立登記は税理士・司法書士、契約上の紛争は弁護士と、必要に応じて士業連携で対応します。本記事では、実運送との違い、登録の要件、利用運送約款の取扱いを、条文と公式情報に基づいて整理します。
目次
第一種貨物利用運送事業とは何か
貨物利用運送事業は、貨物利用運送事業法(平成元年法律第82号)に基づく事業です。同法第2条第6項は、貨物利用運送事業を「第一種貨物利用運送事業及び第二種貨物利用運送事業をいう」と定義しています。
同条第7項は、第一種貨物利用運送事業を、おおむね「他人の需要に応じ、有償で、利用運送(運送事業者の行う運送を利用してする貨物の運送)を行う事業であって、第二種貨物利用運送事業以外のもの」と定めています。つまり、自らは運送手段を持たず、実際の運送は船舶・航空・鉄道・トラックの運送事業者に委託し、その運送を利用して荷主に対して運送責任を負う事業が第一種です。荷主に対しては運送人として責任を負う点が特徴です。
実運送との違い
「実運送」とは、同法第2条第1項により、船舶運航事業者、航空運送事業者、鉄道運送事業者または貨物自動車運送事業者(実運送事業者)が行う貨物の運送をいいます。これに対し「利用運送」も同項に定義され、これら運送事業者の行う運送(実運送に係るものに限る)を利用してする貨物の運送をいいます。両者の主な違いは次のとおりです。
| 項目 | 実運送 | 利用運送(第一種) |
|---|---|---|
| 運送手段 | 自社の車両・船舶・航空機等で運ぶ | 他の運送事業者の運送を利用する |
| 根拠法・許認可 | 貨物自動車運送事業法の許可(緑ナンバー)等 | 貨物利用運送事業法の登録 |
| 荷主への責任 | 運送人として責任を負う | 運送人として責任を負う |
| 車両の保有 | 必要 | 不要 |
注意したいのは、単に運送会社を紹介・取り次ぐだけの「運送取次」とは異なる点です。第一種貨物利用運送事業者は、自らが荷主に対して運送を引き受け、運送責任を負います。自社車両を持って荷主から直接運ぶ事業(実運送)を行う場合は、貨物利用運送事業法ではなく貨物自動車運送事業法に基づく一般貨物自動車運送事業の許可が必要となり、制度が別になります。
第一種は「登録」、第二種は「許可」
第一種貨物利用運送事業を経営しようとする者は、貨物利用運送事業法第3条第1項により、国土交通大臣の登録を受けなければなりません。一方、海運・航空・鉄道の利用運送と、その前後の貨物の集配(トラックでの集荷・配達)を一貫して行う事業は「第二種貨物利用運送事業」にあたり、第3条の登録ではなく、同法第20条以下に基づく国土交通大臣の許可が必要です。
第一種が「登録」、第二種が「許可」と手続が分かれている点は実務上の基本です。なお、第二種の許可を受けた事業者は、その許可に係る範囲については第一種の登録を別途受ける必要はありません。海上・航空・鉄道の幹線輸送に、その前後双方の集配を組み合わせて一貫サービスを提供する場合は第二種、その他の利用運送は第一種、と整理して検討します。
登録の要件と欠格事由
登録にあたっては、貨物利用運送事業法第6条の登録拒否事由に該当しないことが前提です。同条では、一定期間内に拘禁刑を受けた者、登録や許可を取り消されてから一定期間を経過しない者、申請前一定期間内に不正な行為をした者、法人でその役員にこれらに該当する者がいる場合などが、登録を拒否すべき事由として定められています。あわせて、事業を遂行するために必要と認められる施設を有しないとき、その事業を的確に遂行するに足る能力を有しないと認められるときも拒否事由とされています。
実務上、貨物自動車(トラック)を利用する第一種の登録では、運輸局の審査基準において、財産的基礎として直近の貸借対照表上の純資産額がおおむね300万円以上であること、利用運送に必要な施設として営業所や保管体制等が確保されていること(営業所は都市計画法等の関係法令に抵触しないことが必要です)などが求められます。具体的な基準や添付書類は、各地方運輸局が公表する審査基準・標準処理期間に従う必要があるため、申請先の運輸局の最新の取扱いを確認することが欠かせません。
利用運送約款の取扱い
第一種貨物利用運送事業者は、貨物利用運送事業法第8条第1項により、利用運送約款を定め、国土交通大臣の認可を受けなければなりません。約款を変更しようとするときも同様です。約款には、運賃・料金の収受、貨物の受取・引渡し、損害賠償その他の責任に関する事項などを、荷主の利益を不当に害さない形で明確に定める必要があります。
もっとも、国土交通大臣が定めて公示した「標準利用運送約款」と同一の約款を用いる場合には、認可を受けたものとみなされる扱いがあり、自前で約款を作成して個別認可を受ける手間を省けます。標準約款は運送機関ごとに国土交通省が公示しており、近年も改定が行われるなど随時見直されています。実務では、特段の事情がなければ、申請時点で公示されている最新の標準利用運送約款を採用するのが一般的です。具体的にどの版が適用されるかは、申請先の運輸局や国土交通省の最新の公示内容を確認します。
登録免許税と手続の流れ
第一種貨物利用運送事業の登録に係る登録免許税は、国土交通省の案内によれば1件につき9万円です。外航海運・国際航空の利用運送機関を追加する変更登録は1件につき1万5,000円です。鉄道・内航海運・国内航空の追加には登録免許税は課されません(いずれも登録免許税法に基づく国税で、消費税はかかりません)。なお、第二種の許可は1件につき12万円とされています。
- 申請先:事業計画に応じた地方運輸局(運輸支局経由)
- 主な提出書類:登録申請書、事業計画、利用する運送機関の運送事業者との契約関係を示す書類、財産的基礎を示す書類(貸借対照表等)、欠格事由に該当しない旨の宣誓書、法人は定款・登記事項証明書等
- 標準処理期間:申請先や利用運送機関により異なりますが、貨物自動車の第一種ではおおむね3か月程度を目安とする運輸局が多く、書類受理時が起算点です
無登録で第一種貨物利用運送事業を経営した場合には罰則が定められているため、営業開始前に登録を完了させるとともに、2026年4月1日施行の改正貨物自動車運送事業法による書面交付、実運送体制管理簿等の規制についても確認してください。書類準備の期間は標準処理期間に含まれないため、開始時期から逆算した余裕ある準備が重要です。登録完了後は、設定した運賃・料金を30日以内に届け出るほか、事業概況報告書・事業実績報告書を定期的に提出する義務があります。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、官公署に提出する許認可申請書類の作成・提出代行を業として、第一種貨物利用運送事業の登録申請をサポートします。事業形態が第一種登録・第二種許可のいずれに当たるかの整理、運輸局の審査基準に沿った事業計画・添付書類の整備、標準利用運送約款を用いる場合の手続のご案内まで、運輸局の最新基準を確認しながら対応します。車両に関する手続として、車庫証明(登録自動車)は5,500円(税込)〜、名義変更(ナンバー変更なし)は7,000円(税込)〜でお引き受けしており(個人・法人の別や地域により変動します)、運送業関連の許認可は事案により別途お見積りいたします。なお、純資産確保のための資本政策・決算は税理士、法人設立の登記は司法書士、契約紛争は弁護士と連携し、行政書士の職域を越える事項は適切な専門家へおつなぎします。詳しくは車両・運送業務のご案内ページをご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
車庫証明・名義変更などの自動車手続でお困りではありませんか。行政書士法人Treeでは、書類の作成から警察署・運輸支局への提出代行まで対応します。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
第一種貨物利用運送事業は、自社で運送手段を持たずに他の運送事業者の運送を利用して荷主の貨物運送を引き受ける事業で、貨物利用運送事業法第3条に基づく登録が必要です。実運送(自社車両等で運ぶ事業)とは根拠法・許認可が異なり、集配を伴う一貫輸送を行う第二種が「許可」であるのに対し、第一種は「登録」である点が基本の区別です。登録には欠格事由に該当しないことや財産的基礎・施設の確保が求められ、利用運送約款は第8条の認可(標準約款採用ならみなし認可)が必要となります。登録免許税は1件9万円です。要件の当てはめや書類整備でお悩みの際は、お早めにご相談ください。
第一種貨物利用運送事業の登録に関するよくある質問
Q:自社でトラックを持っていなくても登録できますか。
A:はい。第一種貨物利用運送事業は、自社では運送手段を持たず、他の運送事業者の運送を利用して荷主の貨物運送を引き受ける事業です。車両を保有していないことは登録要件ではなく、自ら実運送を行わず他の運送事業者の運送を利用することが登録の要件です。逆に、自社車両で荷主から直接運ぶ場合は、貨物利用運送事業法ではなく貨物自動車運送事業法に基づく一般貨物自動車運送事業の許可が必要となり、別制度になります。
Q:第一種と第二種はどう使い分けますか。
A:海上・航空・鉄道の幹線輸送に、その前後のトラックによる集配を組み合わせて一貫サービスを提供する場合は第二種(許可)です。海上・航空・鉄道の幹線輸送に前後双方の集配を伴わない利用運送は、第一種(登録)に該当します。ご自身のサービス内容がどちらに当たるか不明な場合は、事業計画を拝見したうえで整理いたします。
Q:登録免許税はいくらですか。消費税はかかりますか。
A:第一種貨物利用運送事業の登録は1件につき9万円です。外航海運・国際航空の利用運送機関を追加する変更登録は1件につき1万5,000円です。鉄道・内航海運・国内航空の追加には登録免許税は課されません。これらは登録免許税法に基づく国税であり、消費税は課税されません。
Q:純資産はいくら必要ですか。
A:貨物自動車を利用する第一種の登録では、運輸局の審査基準上、直近の貸借対照表上の純資産額がおおむね300万円以上であることが求められるのが一般的です。資本金や預金残高そのものではなく、貸借対照表の純資産で判断される点に注意が必要です。利用する運送機関や申請先により取扱いが異なる場合があるため、最新基準を確認します。
Q:利用運送約款は自分で作らないといけませんか。
A:必須ではありません。国土交通大臣が公示した標準利用運送約款と同一の約款を用いる場合は、認可を受けたものとみなされる扱いがあり、個別の認可申請を省けます。特段の事情がなければ最新の標準約款を採用するのが一般的です。独自約款を用いる場合は第8条に基づく認可申請が必要です。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


