結論から言えば、一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)などで事業用トラックを5台以上使用する営業所では、道路運送車両法第50条により「整備管理者」の選任が義務づけられ、選任した日から15日以内に管轄の運輸支局へ選任届を提出しなければなりません。整備管理者は、自動車整備士(1〜3級)の資格を持つか、点検・整備・整備管理の実務経験2年以上に加えて地方運輸局長が行う「選任前研修」を修了することで就任できます。当事務所(行政書士法人Tree)は、車庫証明・名義変更などの車両手続に加え、運送業許可や整備管理者・運行管理者の選任届といった運輸局への各種届出を業務範囲としています。整備そのものや労務・税務の判断は自動車整備士・社会保険労務士・税理士等の専門家と連携し、書類作成と手続の面から確実に支えます。
目次
整備管理者制度とは(道路運送車両法第50条)
整備管理者は、事業用自動車の点検・整備、および自動車車庫の管理に関する事項を処理する社内の責任者です。道路運送車両法第50条は、一定台数以上の自動車を使用する使用者に対し、「自動車の使用の本拠ごとに」、一定の要件を備える者を整備管理者として選任し、必要な権限を付与するよう義務づけています。運行管理者が「運転者・運行の安全」を担うのに対し、整備管理者は「車両の状態」を担う役割で、両者は別の制度です。
整備管理者に付与すべき権限には、日常点検の実施方法の決定、日常点検の結果に基づく運行可否の決定、定期点検の実施、随時必要な整備の実施、点検・整備の実施計画の策定、点検整備記録簿その他の記録の管理、車庫の管理、運転者・整備要員に対する指導監督が含まれます(道路運送車両法施行規則第32条第1項)。営業所(使用の本拠)ごとに選任するのが原則で、複数の営業所を持つ事業者は、それぞれの営業所に整備管理者を置く必要があります。なお、運行管理者と異なり車両を増車しても整備管理者の増員は求められず、同一営業所内であれば運行管理者との兼務も可能です。また、整備管理者が不在となる場合に備えて「整備管理者の補助者」を選任し、日常点検の実施の指導や運行可否の決定に係る業務を行わせることもできます(補助者は資格要件を満たす者、または整備管理者が十分な教育を行った者から選任します)。
整備管理者は何台から必要?事業の種類ごとの必要台数(事業用トラックは5台以上)
選任義務が生じる台数は自動車の種類によって異なります。国土交通省が示す整備管理者制度の概要では、次のとおり整理されています(使用の本拠ごと)。
| 区分 | 自動車の種類 | 選任が必要となる台数 |
|---|---|---|
| 事業用 (貨物軽自動車運送事業者を除く) |
バス(乗車定員11人以上) | 1台以上 |
| トラック・ハイタク(乗車定員10人以下) | 5台以上 | |
| 貨物軽自動車運送事業 | 軽自動車 | 10台以上 |
| 自家用 | バス(乗車定員11人以上) | 乗車定員30人以上は1台以上/11〜29人は2台以上 |
| 大型トラック等(車両総重量8トン以上) | 5台以上 |
一般貨物自動車運送事業でトラックを使用する場合は、営業所ごとに事業用トラック5台以上で選任義務が生じます。なお、運送業(一般貨物自動車運送事業)の新規許可を受ける際には、営業所ごとに整備管理者を配置できる体制が許可要件の一つとされており、許可申請の段階から人選と資格の確認が重要になります。
整備管理者の資格要件|自動車整備士(1〜3級)または実務経験2年+選任前研修
整備管理者として選任するには、次のいずれかの資格要件を満たす必要があります。
- 要件1(実務経験+研修):整備の管理を行おうとする自動車と同種類の自動車の「点検若しくは整備」又は「整備の管理」に関して2年以上の実務経験を有し、かつ地方運輸局長が行う研修(整備管理者選任前研修)を修了した者。
- 要件2(整備士資格):一級、二級又は三級の自動車整備士技能検定に合格した者。この場合、選任前研修の修了は不要です。
ここでいう「同種類の自動車」は「二輪自動車」と「二輪自動車以外」の2区分で、トラック・バス等の車種区分はありません。そのため乗用車や軽自動車の点検・整備経験でも、トラックの整備管理者の資格要件を満たします。要件1の「点検又は整備に関する実務経験」には、整備工場等における整備要員としての点検・整備業務のほか、自動車運送事業者の整備実施担当者としての経験も含まれます。また「整備の管理に関する実務経験」には、整備管理者・その補助者・整備責任者として車両管理業務を行った経験が該当します。整備士資格がない場合でも、実務経験2年以上を積み、運輸支局ごとに実施される選任前研修(受講は無料)を修了すれば要件を満たせる点が実務上のポイントです。
選任届・変更届・廃止届の手続き
整備管理者を選任したときは、道路運送車両法第52条に基づき、選任した日から15日以内に、管轄する運輸支局(検査・整備・保安担当)へ選任届を提出しなければなりません。届出事由と提出期限は次のとおりです。
- 選任届(15日以内):整備管理者を新しく選任したとき、営業所(使用の本拠)を新設して整備管理者を選任したとき。
- 変更届(15日以内):届出者の氏名・名称・住所の変更、営業所の名称・位置の変更、事業の種類の変更、人事異動等で整備管理者が交代したとき、整備管理者を減員したとき、婚姻等で整備管理者の氏名が変わったとき。
- 廃止届(30日以内):事業を廃止・譲渡したとき、営業所を廃止したとき、又は選任を必要としなくなったとき。台数が選任基準数を下回った場合も廃止届が必要です。
選任届には、届出書に加え、資格を証する書面(要件1の場合は実務経験を証する書面と選任前研修修了証明書の写し、要件2の場合は整備士技能検定合格証書等の写し)、整備管理規程、および過去2年間に道路運送車両法第53条に基づく解任命令を受けていないことを示す書面などが必要です。なお、事業用自動車の整備管理者の外部委託は原則として認められていません(自家用は一定の条件で委託可)。
選任後に続く義務──定期点検整備と選任後研修
整備管理者を置くこと自体がゴールではなく、選任後は継続的な管理業務が求められます。
定期点検整備(道路運送車両法第48条・自動車点検基準第2条):事業用自動車(バス・トラック・タクシー等)は、3ヶ月ごとの定期点検(51項目)と12ヶ月ごとの定期点検(101項目)を確実に実施する義務があります。点検整備記録簿は自動車に備え付け、事業用車では1年間の保存が必要です(国土交通省「点検整備の種類」)。整備管理者は、これらの点検が計画的・確実に実施されるよう管理し、必要な整備を実施させる役割を担います。
選任後研修:自動車運送事業者において選任されている整備管理者は、地方運輸局長が行う整備管理者選任後(定期)研修を、2年に1回受講する必要があります。法令改正や点検整備実務の最新情報を確認する趣旨の研修で、受講漏れがないよう社内で管理することが望まれます。
整備管理者を選任しないとどうなる?行政処分・解任命令のリスク
整備管理者がこの法律や、これに基づく命令・処分に違反したときは、道路運送車両法第53条により、地方運輸局長が使用者に対して整備管理者の解任を命ずることができます。解任命令を受けた者は、解任の日から2年間(乗車定員11人以上のバスの整備管理者にあっては5年間)は再び整備管理者に選任できません(道路運送車両法施行規則第31条の4)。また、選任義務があるのに整備管理者を選任していない、選任届を提出していない、定期点検を怠っているといった状態は、運送事業者に対する行政処分(車両の使用停止等)の対象となり得ます。制度の趣旨に沿って、資格要件を満たす人選と、期限内の確実な届出、日常の点検整備の実施を一体で運用することが重要です。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、車両に関する各種手続を幅広くお引き受けしています。車庫証明は5,500円(税込)〜、名義変更(移転登録)は7,000円(税込)〜で対応しており、料金は個人・法人の別や地域により変動します。整備管理者・運行管理者の選任届の作成・提出代行や、一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)をはじめとする運送業許可(貸切バス・タクシー・介護タクシー・福祉有償運送等を含む)の申請は、営業所の体制や車両数によって手続が異なるため、事案に応じてお見積りいたします。整備そのものの実施や整備士資格の判定、労務・税務に関わる判断は、自動車整備士・社会保険労務士・税理士等の専門家と連携し、行政書士は書類作成と運輸局への手続を担います。詳しくは車両手続の専門ページ(https://office-tree.jp/syaryou/)をご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
整備管理者は、事業用トラック5台以上(バスは1台以上)を使用する営業所ごとに、道路運送車両法第50条に基づき選任が義務づけられる車両管理の責任者です。資格は「実務経験2年以上+選任前研修修了」または「自動車整備士1〜3級」のいずれかで満たせます。選任後は15日以内の選任届、3ヶ月・12ヶ月ごとの定期点検整備、2年に1回の選任後研修という継続義務が伴います。人選・届出・点検の運用を一体で整えることが、行政処分や解任命令のリスクを避ける近道です。
整備管理者の選任に関するよくある質問
Q:事業用トラックが4台の営業所でも整備管理者は必要ですか。
A:事業用トラック(ハイタク含む乗車定員10人以下)については、使用の本拠ごとに5台以上で選任義務が生じます。4台であれば道路運送車両法第50条上の選任義務はありませんが、車両を増車して5台以上となる場合は選任と15日以内の届出が必要です。事業用のバス(乗車定員11人以上)は1台から義務が生じる点にご注意ください(自家用バスは乗車定員30人以上で1台以上、11~29人で2台以上と基準が異なります)。
Q:整備士の資格がなくても整備管理者になれますか。
A:なれます。同種類の自動車の点検・整備又は整備の管理に関する実務経験が2年以上あり、地方運輸局長が行う整備管理者選任前研修(運輸支局ごとに実施・受講無料)を修了すれば資格要件を満たします。自動車整備士1〜3級の資格がある方は、選任前研修の修了は不要です。
Q:選任届はいつまでに、どこへ出しますか。
A:整備管理者を選任した日から15日以内に、管轄する運輸支局(検査・整備・保安担当)へ選任届を提出します(道路運送車両法第52条)。届出書のほか、資格を証する書面や整備管理規程などの添付が求められます。担当者の交代や減員があった場合も、原則15日以内に変更届が必要です。
Q:整備管理者を外部の整備工場に委託できますか。
A:事業用自動車の整備管理者の外部委託は、原則として認められていません。自家用自動車については、委託先の同意書や委託契約書の写しなどを添えることで一定の条件下で委託が可能とされています。運送事業者は、社内で資格要件を満たす人材を確保することが基本となります。
Q:整備管理者を選任した後に必要な手続や研修はありますか。
A:選任後は、事業用自動車について3ヶ月ごと・12ヶ月ごとの定期点検整備(道路運送車両法第48条)を確実に実施し、点検整備記録簿を1年間保存する必要があります。また、選任されている整備管理者は、地方運輸局長が行う選任後(定期)研修を2年に1回受講する必要があります。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


