結論から言えば、一般貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の運行を管理する営業所ごとに、その営業所が管理する車両数を30で除して1を加えた数以上の運行管理者を選任し、遅滞なく運輸支局へ届け出なければなりません(貨物自動車運送事業輸送安全規則第18条。届出は貨物自動車運送事業法第16条第3項・同規則第19条)。運行管理者は運行管理者資格者証の交付を受けた者に限られ、点呼の実施や記録管理など日々の安全管理を担います。私たち行政書士は、運送業許可の取得から運行管理者・整備管理者の選任届出、事業計画変更まで運輸行政手続の代理を業務としております。就業規則や社会保険は社会保険労務士、労働紛争は弁護士と連携しながら、許可後の体制整備までお手伝いいたします。
目次
運行管理者とは|制度の位置づけと根拠法令
運行管理者は、貨物自動車運送事業法および貨物自動車運送事業輸送安全規則(平成2年運輸省令第22号)に基づき、事業用自動車の運行の安全を確保するために営業所ごとに選任される責任者です。ドライバーの過労運転や過積載の防止、点呼による健康状態やアルコールの確認、運行指示など、輸送の安全に直結する業務を統括します。
運送事業を営むには許可(一般貨物自動車運送事業では貨物自動車運送事業法第3条の許可)が必要であり、運行管理者の選任は許可の要件であると同時に、事業開始後も継続して満たすべき義務です。選任を怠ると行政処分の対象となります。
運行管理者の選任|必要人数の計算(第18条)
貨物自動車運送事業輸送安全規則第18条第1項は、事業用自動車の運行を管理する営業所ごとに、その営業所が運行を管理する事業用自動車の数を30で除して得た数(1未満の端数は切り捨て)に1を加算した数以上の運行管理者を選任することを義務づけています。被牽引車を除いて数えます。ただし、同項ただし書により、事業用自動車の数が5両未満の営業所については、地方運輸局長が、その自動車の種別・地理的条件その他の事情を勘案して輸送の安全の確保に支障を生じないと認めるときは、運行管理者を選任しないことができるとされています。
具体的には次のとおりです(5両未満の営業所は上記ただし書の例外があり得ます)。
| 営業所の事業用自動車数 | 必要な運行管理者数 |
|---|---|
| 5〜29両 | 1人以上 |
| 30〜59両 | 2人以上 |
| 60〜89両 | 3人以上 |
| 90〜119両 | 4人以上 |
計算式は「車両数 ÷ 30(端数切捨て)+ 1」です。例えば29両では0+1で1人、30両では1+1で2人となります。営業所ごとに数えるため、複数営業所を持つ事業者はそれぞれの営業所で人数を満たす必要があります。また、一の営業所で運行管理者を2人以上選任する場合は、それらの業務を統括する「統括運行管理者」を選任し、運行管理者選任(解任)届出書に記載して届け出なければなりません(同条第2項)。
運行管理者資格者証の取得方法(貨物自動車運送事業法第17条・第19条)
運行管理者に選任できるのは、運行管理者資格者証の交付を受けた者に限られます。資格者証には「貨物」と「旅客」の種別があり、貨物自動車運送事業では貨物の資格者証が必要です。取得方法は大きく2つあります。
- 運行管理者試験に合格する方法:受験には、(ア)事業用自動車の運行管理に関し1年以上の実務経験を有すること、または(イ)国土交通大臣認定機関が実施する基礎講習(貨物)を修了していること、のいずれかが必要です。合格後、合格日から3か月以内に運輸支局へ資格者証の交付申請を行います。
- 実務経験と講習による方法:一般貨物自動車運送事業等の事業用自動車の運行管理に関し5年以上の実務経験を有し、その間に運行管理に関する講習を5回以上(うち少なくとも1回は基礎講習)受講している場合に、試験を経ずに認定交付を申請できます。
資格者証の交付申請手数料は、運輸支局へ窓口・郵送で申請する場合は収入印紙270円です。2026年(令和8年)4月1日からはe-Govによるオンライン申請も可能となり、その場合の手数料は260円(電子納付・収入印紙不要)です。運行管理者試験の受験手数料は6,000円(非課税)で、CBT方式のためシステム利用料660円(税込)が別途かかります。基礎講習の受講料は独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)等で概ね8,900円程度で、3日間・合計16時間の日程です。金額・日程は改定されることがあるため、最新額は運行管理者試験センターやNASVAの公式案内でご確認ください。
補助者の選任と点呼の分担
運行管理者の業務を補助させるため、事業者は「運行管理者資格者証を有する者」または「国土交通大臣認定の基礎講習を修了した者」を補助者として選任することができます(安全規則第18条第3項)。補助者は点呼の一部などを担当できますが、あくまで運行管理者を補助する立場です。
重要な点として、補助者に点呼の一部を行わせる場合でも、その営業所で選任されている運行管理者が行う点呼は、点呼を行うべき総回数の少なくとも3分の1以上でなければなりません。補助者に全ての点呼を任せきりにすることは認められていません。補助者を選任するときは、その職務や遵守事項を運行管理規程等で明確に定めておく必要があります。
点呼の実施義務(第7条)とアルコールチェック
運行管理者の中核的な業務が点呼です。貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条は、運転者に対して次の点呼を行い、報告を求め、確認と指示を行うことを義務づけています。
- 業務前点呼:日常点検の実施状況、運転者の酒気帯びの有無、疾病・疲労・睡眠不足等の状況を確認し、安全確保に必要な指示を行う。
- 業務後点呼:業務にかかる車両・道路・運行状況、他の運転者等への通告事項を報告させ、あわせて酒気帯びの有無を確認する。
- 中間点呼(業務途中点呼):業務前・業務後のいずれの点呼も対面等で行えない運行(2泊3日以上の運行等)では、業務の途中に少なくとも1回点呼を行う。
点呼では、原則として対面(またはこれと同等の方法)により、アルコール検知器を用いて酒気帯びの有無を確認します。そして点呼を行った旨、報告および指示の内容等を記録し、その記録を1年間保存しなければなりません。
業務等の記録・運行記録計と帳簿の保存期間
運行の実態を把握し安全管理に活用するため、次の記録・書類の作成と保存が義務づけられています。
| 書類・記録 | 根拠 | 保存期間 |
|---|---|---|
| 点呼の記録 | 安全規則第7条 | 1年間 |
| 業務(乗務)の記録 | 安全規則第8条 | 1年間 |
| 運行記録計(タコグラフ)の記録 | 安全規則第9条 | 1年間 |
| 運行指示書 | 安全規則第9条の3 | 運行終了日から1年間 |
| 事故の記録 | 安全規則第9条の2 | 3年間 |
運行記録計(タコグラフ)は、車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上の普通自動車などに装着し、瞬間速度・運行距離・運行時間を記録する義務があります。これらの帳簿類は運輸支局の監査や巡回指導で確認される重要書類であり、保存期間内は営業所で整然と管理してください。
選任・解任の届出手続
運行管理者を選任し、または解任したときは、遅滞なく(貨物自動車運送事業者の場合は原則として1週間以内に)事業者を管轄する運輸支局へ「運行管理者選任(解任)届出書」を提出しなければなりません。選任届出の際は、運行管理者資格者証の写しを添付するのが一般的な取扱いです。
補助者については運輸支局への選任届出は法令上求められていませんが、運行管理規程等で職務・遵守事項を定めておくことが必要です。届出様式や添付書類は各運輸支局で細部が異なる場合があるため、管轄の運輸支局の最新の案内をご確認ください。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、車庫証明・名義変更・各種登録に加え、一般貨物自動車運送事業をはじめとする運送業許可(貸切バス・タクシー・介護タクシー・福祉有償運送等を含む)の申請代理、および運行管理者・整備管理者の選任届出、事業計画変更届出まで、運輸行政手続を一括してお引き受けします。「必要人数が足りているか」「補助者の位置づけをどう整理すべきか」「巡回指導に向けて帳簿をどう整えるか」といった許可後の体制整備のご相談も承ります。
料金の目安は、車庫証明5,500円(税込)〜、名義変更7,000円(税込)〜です(個人・法人や地域により変動します)。運送業許可・各種届出は事案により内容が大きく異なるため、お見積りにてご案内いたします。就業規則・社会保険は社会保険労務士、労務紛争は弁護士など、必要に応じて連携先の専門家をご紹介します。詳しくは車両・登録サポートのご案内(https://office-tree.jp/syaryou/)をご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
運行管理者は、営業所ごとに「車両数÷30(端数切捨て)+1」以上を選任することが貨物自動車運送事業輸送安全規則第18条で義務づけられ、運行管理者資格者証を持つ者から選ぶ必要があります。資格者証は試験合格(受験には実務1年または基礎講習修了が必要)、または5年以上の実務経験と5回以上の講習によって取得できます。補助者を置いても運行管理者自身が点呼の3分の1以上を行わなければならず、点呼記録や業務記録は1年間保存します。選任・解任時は遅滞なく運輸支局へ届け出ましょう。また、選任した運行管理者には、新規選任時に基礎講習を受講させ、以後は原則2年度ごとに1回の一般講習を受講させる義務があります(安全規則第23条第1項)。許可後も継続して体制を維持することが安全運行と行政処分回避の両面で重要です。
運行管理者の選任に関するよくある質問
Q:事業用自動車が5両しかない小規模営業所でも運行管理者は必要ですか。
A:必要です。貨物自動車運送事業輸送安全規則第18条第1項により、5両の営業所では運行管理者を1人以上選任しなければなりません。なお同項ただし書には、事業用自動車が5両未満(1〜4両)の営業所について、地方運輸局長が自動車の種別・地理的条件等を勘案して輸送の安全に支障を生じないと認めるときは選任しないことができるという例外があります。5両は5両未満に当たらないため、この例外は適用されません。
Q:運行管理者の資格を試験なしで取得することはできますか。
A:できる場合があります。取得しようとする種別(貨物)の事業用自動車の運行管理に関し5年以上の実務経験があり、その間に運行管理に関する講習を5回以上(うち少なくとも1回は基礎講習)受講していれば、試験を経ずに資格者証の認定交付を申請できます。要件を満たさない場合は運行管理者試験の合格が必要です。
Q:補助者にすべての点呼を任せてもよいですか。
A:できません。補助者に点呼の一部を行わせることは可能ですが、その営業所で選任されている運行管理者が行う点呼は、点呼を行うべき総回数の少なくとも3分の1以上でなければなりません。補助者への完全な委任は認められていません。
Q:点呼記録や業務記録は何年間保存すればよいですか。
A:点呼の記録(第7条)、業務の記録(第8条)、運行記録計の記録(第9条)はいずれも1年間の保存が義務づけられています。一方、事故の記録(第9条の2)は3年間の保存が必要です。監査や巡回指導で確認されるため、保存期間内は営業所で整然と管理してください。
Q:運行管理者を交代したときは何か手続きが必要ですか。
A:必要です。運行管理者を選任・解任したときは、遅滞なく(貨物では原則1週間以内に)管轄の運輸支局へ「運行管理者選任(解任)届出書」を提出します。新たに選任する場合は資格者証の写しを添付するのが一般的です。届出を怠ると法令違反となりますのでご注意ください。
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