結論から言えば、解体工事の見積で「安かろう悪かろう」を避ける鍵は、廃棄物処理費を含めた積算根拠が項目ごとに開示されているかどうかにあります。解体工事の費用は、建物本体の取壊し費だけでなく、発生したコンクリート・木くず・がれき類などの産業廃棄物の処理費が大きな割合を占め、ここが不透明だと不法投棄や追加請求のトラブルにつながります。私たち行政書士は、解体工事業登録や建設業許可(解体工事業)といった許認可の取得・更新手続を書類作成・提出代行の立場で支援します。積算そのものや見積書の作成は施工業者・積算士の領域、廃棄物処理委託契約の個別判断は弁護士、税務処理は税理士が担いますので、本記事は許認可と関連法令の枠組みを整理するものとしてお読みください。
目次
解体工事の積算は「本体工事費」と「廃棄物処理費」の二本柱
解体工事の見積は、建物本体の取壊しに関わる「本体工事費」と、発生した廃材を適正処理するための「廃棄物処理費」という二つの柱で構成されます。後者を軽視した見積は、現場で廃材が出てから「想定外」として追加請求される温床になります。積算項目を整理すると、おおむね次のように分類できます。
- 本体解体費(重機回送費・足場仮設費・養生費を含む取壊し費用)
- 分別解体に伴う手間賃(建設リサイクル法に基づく現場分別の人件費)
- 廃棄物運搬費(収集運搬の許可業者への委託費・車両費)
- 廃棄物処分費(中間処理施設・最終処分場での処分費。品目ごとに単価が異なる)
- 諸経費・届出関連費(建設リサイクル法の届出、ライフライン撤去立会等)
このうち廃棄物処理費は、品目ごとに処分単価が異なるため、見積書では「がれき類」「木くず」「混合廃棄物」などに分けて数量(㎥またはトン)と単価が示されているのが望ましい形です。一式計上が多い見積は、内訳の説明を受けたうえで判断することをおすすめします。
建設リサイクル法による分別解体の義務(床面積80㎡以上)
廃棄物処理費を理解する前提として、「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(建設リサイクル法)の枠組みを押さえる必要があります。同法は、一定規模以上の工事を「対象建設工事」と定め、特定建設資材を現場で分別解体し、再資源化することを義務付けています。
特定建設資材は、(1)コンクリート、(2)コンクリート及び鉄から成る建設資材、(3)木材、(4)アスファルト・コンクリート の4種類です。対象建設工事の規模基準は次のとおりです。
| 工事の種類 | 規模基準 |
|---|---|
| 建築物の解体 | 床面積の合計 80㎡以上 |
| 建築物の新築・増築 | 床面積の合計 500㎡以上 |
| 建築物の修繕・模様替え(リフォーム等) | 請負代金 1億円以上 |
| 建築物以外の工作物(土木工事等) | 請負代金 500万円以上 |
つまり、住宅の解体であっても延べ床面積80㎡以上であれば対象建設工事となり、分別解体が義務付けられます。分別を前提とした積算では、ミンチ解体(分別せず一括で壊す手法)に比べて人件費が上乗せされますが、これは法令遵守のための正当な費用であり、見積に分別の手間が織り込まれているかが適正性の一つの目安になります。
対象建設工事の届出(工事着手7日前まで)
対象建設工事に該当する場合、建設リサイクル法第10条により、原則として発注者または自主施工者が、工事に着手する日の7日前までに、都道府県知事(または建築主事を置く市区町村長)へ分別解体等の計画を届け出る必要があります。届出書には、解体する建築物の構造、工事着手の時期・工程の概要、分別解体等の計画、解体する建築物に用いられた建設資材の量の見込み等を記載します。
実務上は、発注者から委任を受けた元請業者が代理で届出を行うことが一般的です。この届出を怠った場合や虚偽の届出をした場合には、建設リサイクル法第51条により罰則(罰金)の対象となり得ます。積算上は、この届出関連の事務費が「諸経費」に含まれているかも確認したいポイントです。
廃棄物処理法とマニフェスト(元請=排出事業者)
解体工事で発生したコンクリート殻(がれき類)、木くず、廃プラスチック等は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)上の「産業廃棄物」に該当します。ここで重要なのは、解体工事に伴って生じた産業廃棄物の排出事業者は元請業者とされている点です(廃棄物処理法第21条の3)。下請業者に処理を丸投げすることは認められず、元請が責任をもって処理委託契約を締結し、廃棄物の引渡し時に産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付しなければなりません。
マニフェストは、廃棄物処理法第12条の3に基づく制度で、排出事業者が処理を委託する際に交付し、処理完了を書面(または電子マニフェスト)で確認する仕組みです。交付した管理票の写し等は、交付・送付の日から5年間保存する義務があり、違反した場合は罰則の対象となります。
積算の観点では、廃棄物処理費の単価が極端に安い見積は、適正な許可業者への委託費や処分場の受入単価を満たしているか慎重に確認すべきです。不適正な処理は最終的に排出事業者である元請に跳ね返るため、処理費は「削る対象」ではなく「適正に確保すべき費用」として積算することが肝要です。
500万円(税込)で変わる解体工事業登録と建設業許可(解体工事業)
解体工事を請け負うには、工事1件あたりの請負金額に応じた許認可が必要です。
- 請負金額500万円(税込)未満かつ建設業許可(土木工事業・建築工事業・解体工事業のいずれも)を持たない場合 → 解体工事業登録(建設リサイクル法)が必要
- 請負金額500万円(税込)以上の単独の解体工事 → 建設業許可(解体工事業)が必要
かつては「とび・土工工事業」の許可で解体工事も施工できましたが、平成28年(2016年)6月1日施行の改正建設業法により「解体工事業」が独立業種として新設され、とび・土工の許可業者に認められた経過措置も令和元年(2019年)5月31日に終了しました。現在はとび・土工の許可のみで500万円(税込)以上の解体工事を請け負うことはできません。
なお、解体工事業登録の有効期間は5年で、引き続き営業する場合は有効期間満了日の30日前までに更新申請が必要です。登録業者には技術管理者の選任義務があり、怠ると建設リサイクル法第51条により罰金の対象となります。建設業許可(土木・建築・解体)を取得していれば、解体工事業登録は不要です。
見積書チェックの実務ポイント
発注者の立場で見積書を比較検討する際、廃棄物処理費を含めた積算の妥当性は次の観点で確認するとよいでしょう。
- 本体工事費と廃棄物処理費(運搬費・処分費)が分けて記載されているか
- 廃棄物が「がれき類」「木くず」「混合廃棄物」等の品目ごとに数量・単価で示されているか
- 建設リサイクル法の届出・分別解体の手間が反映されているか
- 残置物(家具・家電等)は解体物とは処理責任と廃棄物区分が異なるため、事前に所有者等が処理する前提か、処理方法が明示されているか
- 地中障害物(旧基礎・浄化槽等)が出た場合の追加費用の取扱いが事前に説明されているか
- 請負金額に応じた許認可(解体工事業登録・建設業許可)を業者が有しているか
「混合廃棄物」は分別が不十分なほど処分単価が高くなる傾向があり、丁寧な分別解体は処理費の抑制にもつながります。安さだけでなく、分別と適正処理の体制が積算に織り込まれているかを見ることが、トラブル回避の近道です。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、解体工事業を営むうえで必要となる建設業許可(解体工事業)の新規取得・業種追加・更新、および関連書類の作成・提出代行を、書類作成の専門家としてお手伝いします。要件確認から申請書類の作成、提出代行まで一貫してサポートし、許可取得後の決算変更届や更新スケジュールの管理についてもご相談を承ります。
税込料金の目安は次のとおりです(いずれも登録免許税・証紙代等の実費は別途)。
- 建設業許可(知事・新規):110,000円(税込)
- 業種追加:55,000円(税込)
- 更新:55,000円(税込)
なお、見積書そのものの作成・積算、廃棄物処理委託契約の個別の有効性判断、税務処理については、それぞれ施工業者・積算士、弁護士、税理士の領域となりますので、必要に応じて連携先をご案内します。解体工事業登録・建設業許可(解体工事業)に関するご相談は、解体工事業許認可サポートページからお問い合わせください。ご相談は何度でも無料です。
建設業許可の取得・更新でお困りではありませんか。行政書士法人Treeでは、要件の確認から申請書類の作成・提出代行、決算変更届や各種変更届まで対応します。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
解体工事の積算は、本体工事費と廃棄物処理費の二本柱で構成され、後者の透明性が見積の信頼性を左右します。延べ床面積80㎡以上の建築物解体は建設リサイクル法の対象建設工事となり、分別解体と工事着手7日前までの届出が義務付けられます。発生した産業廃棄物の排出事業者は元請業者であり、マニフェストの交付と5年間の保存義務を負います。請負金額500万円(税込)を境に解体工事業登録と建設業許可(解体工事業)が分かれ、許可があれば登録は不要です。許認可の取得・更新手続でお困りの際は、書類作成の専門家である行政書士へご相談ください。
解体工事の積算に関するよくある質問
Q:見積書で廃棄物処理費が「一式」になっています。問題ありますか。
A:直ちに違法ではありませんが、廃棄物処理費は品目ごとに処分単価が異なるため、内訳が不透明だと現場で追加請求が生じやすくなります。「がれき類」「木くず」「混合廃棄物」等に分けた数量・単価の説明を受けたうえで比較検討することをおすすめします。なお見積内容の妥当性そのものの判断は施工業者・積算士の領域です。
Q:80㎡未満の小さな建物なら建設リサイクル法の届出は不要ですか。
A:建築物の解体については床面積の合計が80㎡以上のものが対象建設工事となるため、80㎡未満であれば建設リサイクル法第10条の届出義務は原則かかりません。ただし、産業廃棄物の適正処理(廃棄物処理法)の義務は規模にかかわらず生じますので、廃材の処理はいずれにせよ適正に行う必要があります。
Q:解体工事の廃棄物は発注者(施主)が処理責任を負うのですか。
A:解体工事に伴って生じた産業廃棄物の排出事業者は、廃棄物処理法上、原則として元請業者とされています。したがって処理委託契約の締結やマニフェストの交付は元請の責任です。ただし発注者としても、適正処理を行う業者を選ぶことがトラブル回避につながります。個別の責任関係の判断は弁護士にご確認ください。
Q:500万円未満の解体工事だけを行う予定でも、何か登録は必要ですか。
A:請負金額500万円(税込)未満の解体工事のみを行う場合でも、土木・建築・解体のいずれの建設業許可も持たないのであれば、建設リサイクル法に基づく解体工事業登録が必要です。登録には技術管理者の選任が要件となり、有効期間は5年です。書類作成・提出のご相談を承ります。
Q:とび・土工の建設業許可を持っていれば解体工事を請け負えますか。
A:平成28年(2016年)の改正で解体工事業が独立業種となり、とび・土工の許可業者に認められた経過措置も令和元年(2019年)5月31日に終了しました。現在は、とび・土工の許可のみで500万円(税込)以上の単独の解体工事を請け負くことはできず、原則として「解体工事業」の建設業許可が必要です。ただし、総合的な企画・指導・調整のもとに行う土木一式工事・建築一式工事など、契約実態により許可業種の判断が分かれる場合があります。業種追加の手続については当事務所でサポート可能です。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


