結論から言えば、SNSや知人の誘いで「必ず儲かる」と勧められて海外のバイナリーオプション業者に入金し、出金を拒否されたり連絡が取れなくなったケースでは、刑法246条の詐欺罪に加え、金融商品取引法(昭和23年法律第25号)違反という二つの切り口で、警察への告訴・告発を検討できる可能性があります。バイナリーオプションは同法上の店頭デリバティブ取引に該当し、日本居住者を相手に業として行うには登録が必須です。無登録業者がそれを欠いたまま勧誘していれば、それ自体が同法違反となり、詐欺の故意を補強する事情になります。行政書士は、警察署長宛ての告訴状・告発状という書面の作成までを職域として担います。検察庁宛ての書面作成、提出先の選定助言、受理後の捜査対応、示談交渉、刑事代理は弁護士等の業務ですので、当事務所では弁護士と連携しながら、まず事実関係を整理した警察署長宛て告訴状の作成をお手伝いします。
目次
バイナリーオプションは金融商品取引法上の「店頭デリバティブ取引」
金融庁は、バイナリーオプション取引が金融商品取引法上の店頭デリバティブ取引に該当すると明示しています。為替や株価指数が一定時刻に基準値より上か下かを予測し、的中すれば一定額、外れれば掛け金を失う仕組みで、短時間に資金を失いやすい性質があります。
日本国内で居住者を相手にこの取引を業として行うには、金融商品取引法29条に基づく金融商品取引業の登録が必要です。海外で何らかのライセンスを保有していても、日本で登録を受けずに日本の居住者を相手方として金融商品取引を業として行うことは禁止されています(金融庁「バイナリーオプション取引にあたってご注意ください!」)。つまり「海外業者だから日本の規制は関係ない」という業者側の説明自体が、法令上は通用しません。
無登録での金融商品取引業は金商法違反
金融商品取引法29条は、金融商品取引業を行うには内閣総理大臣の登録を受けなければならないと定めています。これに違反して無登録で金融商品取引業を行った者には、同法197条の2第10号の4により、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはこれらの併科という罰則が科されます。法人については、同法207条1項に基づき5億円以下の罰金という重い両罰規定が用意されています。
無登録業者については、金融庁・各財務局が「無登録で金融商品取引業を行う者」として警告を行い、その名称等をホームページで公表しています。告訴・告発を検討する際は、相手業者がこの警告対象リストや無登録業者一覧に掲載されていないかを確認することで、無登録性を客観的に裏付けやすくなります。
SNS勧誘・出金拒否・追加送金要求と詐欺の構造
近年の相談で目立つのが、SNSや知人を通じて「分析ツール入りのUSB」「自動売買システム」など高額な情報商材を売り付け、そのうえで特定の海外無登録業者へ誘導する手口です。金融庁も、こうした勧誘により多額の損失が発生した、業者と連絡が取れない、解約できないといったトラブルが20歳代を中心に急増していると注意喚起しています。
このような誘引行為は、刑法246条の詐欺罪の「人を欺いて財物を交付させた」という構成要件に直結します。詐欺罪の構成要件は、(1)欺罔行為、(2)相手方の錯誤、(3)錯誤に基づく財産的処分(入金)、(4)財物・利益の移転、(5)これらの因果関係です。「絶対に勝てる」「元本保証」といった虚偽の説明で錯誤に陥らせ入金させた時点で詐欺が成立し得ます。無登録であるという事実は、当初から正規の取引を行う意思も能力もなかったことをうかがわせ、欺罔の故意を補強する材料になります。
詐欺罪の法定刑と「拘禁刑」への移行
刑法246条1項は「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する」と定めます。2項は、財産上不法の利益を得、または他人に得させた者も同様としています。なお令和7年(2025年)6月1日から、従来の「懲役」「禁錮」が「拘禁刑」に一本化され、同日以降の行為については拘禁刑が言い渡されます。
詐欺罪は親告罪ではなく、被害者の告訴がなくても起訴できる犯罪です。ただし親族間の詐欺については、刑法251条が244条を準用するため、配偶者・直系血族・同居の親族との間で行われた場合は刑が免除され、これら以外の親族との間で行われた場合は告訴がなければ公訴提起できない相対的親告罪となります。海外業者による被害では通常この特例は問題になりませんが、親族が関与する事案では注意が必要です。告訴がなくても捜査は可能ですが、被害者が告訴状で事実と処罰意思を明確に示すことは、捜査機関を動かす実務上の意味が大きいといえます。
警察に相談する前に整理すべき証拠と告訴状の記載事項
バイナリーオプション詐欺の告訴状では、誰が・いつ・どのように勧誘し、どの口座にいくら入金させ、どう出金を拒んだのか、という時系列を具体的に記載することが要です。次のような資料を整理しておくと、書面の説得力が高まります。
- 勧誘時のSNS・チャット・メールのやり取り(スクリーンショットを日時付きで保存)
- 業者サイトのURL・運営者名義・連絡先、利用規約の写し
- 振込先口座(名義・金融機関・支店)と入金日・金額のわかる明細
- 「元本保証」「必ず勝てる」等の虚偽説明がわかる録音・画面
- 出金拒否や連絡途絶のやり取り、解約を拒まれた経緯
- 購入した情報商材(USB・ツール)の代金・領収書
金融庁のウェブサイトでは登録業者の一括検索や警告業者の一覧が公開されており、相手業者の無登録性を確認して告訴状に記載すれば、金商法違反と詐欺の両面から事実を補強できます。
返金を目指す場合の相談先|警察・金融庁・弁護士の役割
刑事手続の前後で活用できる公的窓口も把握しておきましょう。金融庁は「詐欺的な投資に関する相談ダイヤル」(0570-050588、平日10時〜17時)を設けています。証券取引等監視委員会の情報提供窓口(0570-00-3581)では、無登録業者に関する情報提供を受け付けています。被害金そのものの回復は刑事手続とは別であり、口座の凍結や返金交渉は弁護士の業務範囲です。当事務所は告訴状の作成までを担います。
| 窓口 | 主な役割 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 金融サービス利用者相談室(詐欺的な投資に関する相談ダイヤル) | 無登録業者・投資被害の相談 | 0570-050588(平日10〜17時、IP電話からは03-6206-6066) |
| 証券取引等監視委員会 情報提供窓口 | 金商法違反の情報提供 | 0570-00-3581(平日10〜16時、時間外は留守番電話、一部IP電話等からは03-3581-9909) |
| 警察相談専用電話 | 被害届・告訴の事前相談 | #9110 |
| 消費生活センター | 契約・解約トラブルの相談 | 消費者ホットライン 188 |
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、バイナリーオプション詐欺をはじめとする投資被害について、警察署長宛ての告訴状・告発状の作成をお手伝いします。お客様からお伺いした事実関係と保存資料をもとに、刑法246条の詐欺罪や金融商品取引法違反の構成要件に沿って事実を整理し、警察が読み解きやすい書面に仕上げます。行政書士ができるのは警察署長宛ての書類作成までであり、検察庁宛ての書面作成、提出先の選定助言、受理後の捜査対応、示談交渉、刑事代理は弁護士等の業務として行いません。これらが必要な場合は、連携する弁護士をご紹介し、書面作成と並行してスムーズに引き継げる体制を整えています。
警察署長宛ての告訴状・告発状の作成は、スタンダードプラン38,280円(税込)から承ります。追加の犯罪行為または加害者1件につき11,000円(税込)が加算されますので、ご状況を確認したうえで最終お見積りとさせていただきます。詳しくは告訴状・告発状作成サポートのご案内ページをご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
告訴状・告発状の作成でお困りの方へ。行政書士法人Treeでは、警察署(司法警察員)に提出する告訴状・告発状について、事実関係と証拠を整理した書面の作成を承ります。書類作成に関するご相談は何度でも無料です。※検察庁に提出する書類の作成は司法書士・弁護士の業務です。また、提出先の選定に関する法的助言、告訴の代理、受理後の捜査対応や示談交渉は弁護士の業務であり、当法人では取り扱いません。
まとめ
バイナリーオプションは金融商品取引法上の店頭デリバティブ取引であり、日本居住者を相手に業として行うには金商法29条の登録が必要です。これを欠く海外無登録業者の勧誘は同法違反(197条の2、5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金等)に当たり得るうえ、「必ず勝てる」等の虚偽説明で入金させる誘引行為は刑法246条の詐欺罪を構成しやすい類型です。詐欺罪は2025年6月1日以降は10年以下の拘禁刑となり、原則として告訴がなくても起訴可能ですが、被害者の告訴は捜査を動かす実務上の意味があります。やり取りの記録・入金明細・無登録性の確認資料を時系列で整え、告訴状に落とし込むことが第一歩です。書面作成は行政書士、捜査対応や被害回復は弁護士という役割分担を踏まえ、士業連携で進めましょう。
バイナリーオプション詐欺の告訴に関するよくある質問
Q:海外業者が相手でも日本で告訴できますか。
A:被害者が日本国内で勧誘を受け、日本の口座から入金したような場合、日本国内で犯罪結果が生じたといえ、管轄警察署に告訴・告発を相談することが考えられます。最終的な管轄や立件可否は捜査機関の判断ですが、事実関係を整理した警察署長宛ての告訴状を準備しておくことには十分な意味があります。検察庁宛ての書面作成、提出先の選定や受理後の対応については弁護士へおつなぎします。
Q:詐欺罪と金融商品取引法違反は両方主張できますか。
A:可能です。虚偽の説明で入金させた点は刑法246条の詐欺罪、無登録で金融商品取引業を行った点は金商法29条・197条の2の違反として、別個の犯罪事実になり得ます。両面から記載することで、業者の悪質性や故意を立体的に示せます。どの罪名で立件するかは捜査機関の判断です。
Q:相手業者が無登録かどうかはどう確認しますか。
A:金融庁のウェブサイトで登録業者の一括検索ができ、また過去に警告を受けた業者の名称等も公表されています。登録一覧に該当がなく、警告リストに掲載されていれば、無登録性の有力な裏付けになります。これらの確認結果は告訴状の添付資料として整理しておくとよいでしょう。
Q:出金を拒否された段階でも告訴できますか。
A:出金拒否や連絡途絶は、当初から返金の意思がなかったことをうかがわせる重要な事情です。被害が現実化していれば、その時点での記録(拒否のやり取り、画面表示、入金明細)をそろえて告訴を検討できます。早い段階で証拠を保全しておくことが、後の立証で有利に働きます。
Q:行政書士に頼める範囲はどこまでですか。
A:行政書士は告訴状・告発状という書類の作成までを職域とします。なお、行政書士が作成できる告訴状は警察署長宛てのものに限られ、検察庁宛ての告訴状の作成は司法書士(司法書士法第3条第1項第4号)または弁護士の業務となります。提出先の選定助言、受理後の捜査対応、業者との示談交渉、刑事手続の代理は弁護士の業務であり、行政書士は行いません。当事務所は書面作成を担い、弁護士業務が必要な場面では連携弁護士をご紹介します。被害金の返還交渉も弁護士の領域です。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


