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私印偽造罪・私文書偽造罪の告訴状|実印・銀行印の不正使用と刑法167条・159条

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「契約書に身に覚えのない署名と押印がされていた」「実印を勝手に使われて委任状が作成された」「卒業証明書を偽造された」――印章や署名の不正使用は、被害者の財産・身分・社会的信用を一瞬で揺るがす重大な犯罪です。刑法は私印偽造罪・有印私文書偽造罪などを定め、これらの行為を厳しく処罰しています。さらに2025年6月1日施行の改正刑法により、従来の「懲役」と「禁錮」が「拘禁刑」へと一本化され、刑罰の運用も新しい段階に入りました。

本記事では、私印偽造罪(刑法167条)と有印私文書偽造罪(刑法159条)を中心に、典型事例・刑事責任・告訴の手続を整理し、警察署長宛て告訴状の作成を行政書士の業務範囲で解説します。

本記事の結論:

  • 印章や署名を不正に使われた場合、刑法上は私印偽造及び不正使用等罪(刑法167条)、有印私文書偽造罪・偽造私文書等行使罪(刑法159条・161条)などが成立する可能性があります。
  • 私文書偽造は非親告罪のため告訴がなくても捜査・起訴は可能ですが、被害者からの告訴状提出は捜査開始の強い契機となります。
  • 告訴状は「警察署長宛て」で作成・提出するのが基本。行政書士は事実関係に基づく告訴状の作成(書類作成業務)を業務範囲内で行えます。
  • 告訴後の捜査機関に対する代理交渉、被疑者との示談交渉、損害賠償請求は弁護士業務のため、必要に応じて提携弁護士をご紹介します。
  • 2025年6月1日施行の改正刑法により、「懲役」と「禁錮」が「拘禁刑」に一本化されています。

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1. 根拠法令と全体像

印章・署名・私文書の偽造に関わる主要な刑法の条文は以下の通りです。いずれも2025年6月1日施行の改正刑法により、「懲役」「禁錮」が「拘禁刑」へと一本化されています。

条文 罪名 法定刑
刑法159条第1項 有印私文書偽造罪 3月以上5年以下の拘禁刑
刑法159条第2項 有印私文書変造罪 3月以上5年以下の拘禁刑
刑法159条第3項 無印私文書偽造罪 1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金
刑法161条第1項 偽造私文書等行使罪 偽造・変造の罪と同等
刑法167条第1項 私印偽造罪 3年以下の拘禁刑
刑法167条第2項 不正使用罪(私印・私署名) 私印偽造と同等(3年以下の拘禁刑)
刑法155条第1項・第2項 有印公文書偽造罪等(参考) 1年以上10年以下の拘禁刑
刑法155条第3項 無印公文書偽造罪等(参考) 3年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金

これらの罪は、「文書」「印章」「署名」という社会的信頼の基礎をなす表象を保護することを目的としています。偽造文書が一通市場に出るだけで、契約・取引・身分関係に重大な影響を与えるため、刑罰は重く設定されています。

2. 私印偽造罪・不正使用罪(刑法167条)の構成要件

刑法167条第1項は「行使の目的で、他人の印章又は署名を偽造した者」を3年以下の拘禁刑に処すと定めます。第2項は、偽造した印章・署名を使用したり、他人の真正な印章・署名を不正に使用した者についても同等の刑を科します。

2-1. 「印章」「署名」とは

判例上「印章」とは、人の同一性を表示するために物体に印影を顕出する道具(印鑑そのもの)と、その印影の双方を含むと解されています。「署名」は自筆のサインを指し、本人の識別機能を持つものです。

2-2. 「行使の目的」とは

偽造した印章・署名を、真正なものとして他人に認識させる目的をいいます。たんに練習や実験で印影を作っただけでは「行使の目的」を欠くと評価され得ますが、実際に契約書や領収書に押印するつもりであれば「行使の目的」が認められます。

2-3. 不正使用罪の意義

真正な実印・銀行印を、本人の意思に反して契約書に押印する行為は、第2項の「不正使用」に該当し得ます。また、その押印により本人名義の契約書等を作成・提出した場合には、有印私文書偽造罪・偽造私文書等行使罪も併せて問題となります。印鑑そのものを「偽造」していなくても、無権限で使用すれば犯罪となり得る点に注意が必要です。

3. 有印私文書偽造罪・変造罪(刑法159条第1項・第2項)

刑法159条第1項は「行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者」を3月以上5年以下の拘禁刑に処すと定めます。第2項は、真正な文書を改変する「変造」行為を同様に処罰します。

3-1. 「権利、義務若しくは事実証明に関する文書」とは

判例・通説によれば、以下のように整理されます。

  • 権利・義務に関する文書:契約書、念書、借用書、委任状、遺言書(自筆証書)など、法律上の権利・義務の発生・変更・消滅に関する文書
  • 事実証明に関する文書:履歴書、卒業証明書、診断書、推薦状、領収書、出席簿など、社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りる文書

「事実証明」の範囲は広く、社会生活上意義のある事実であれば足りるため、偽造・不正使用された印章や署名が契約書・領収書・証明書等の作成や提出に用いられた場合には、同条の射程に入ることが多くあります。

3-2. 「偽造」と「変造」の区別

「偽造」は、文書の作成名義人ではない者が、その名義を冒用して新たに文書を作成することをいいます。「変造」は、真正な文書の本質的でない部分を改変することをいい、本質的部分の改変は「偽造」とされます。たとえば領収書の金額欄を書き換える行為は、改変の程度により偽造または変造と評価されます。

4. 無印私文書偽造罪(刑法159条第3項)と偽造私文書等行使罪(刑法161条)

刑法159条第3項は、印章・署名のない私文書(権利義務・事実証明に関する文書)を偽造・変造した場合に「1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金」を科します。タイプ打ちの覚書・メモなどでも、権利・義務又は事実証明に関する文書に当たり、かつ行使の目的がある場合には、処罰対象となり得ます。

そして偽造・変造された文書を「行使」する行為は、刑法161条第1項により偽造・変造罪と同等の刑に処されます。「行使」とは、偽造文書を真正なものとして他人に認識させ得る状態に置くことであり、相手に交付したり、提示したりする行為が典型です。

5. 公文書偽造罪(刑法155条)との区別

公文書偽造罪は「公務員の作成すべき文書」を偽造する罪です。有印公文書偽造等(刑法155条1項・2項)は1年以上10年以下の拘禁刑、無印公文書偽造等(同条3項)は3年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金と、私文書偽造より重く処罰される場合があります。住民票、戸籍謄本、運転免許証、登記簿、各種許可証などが「公文書」にあたります。

同じ「文書偽造」でも、対象が私人作成文書なら159条・161条、公務員作成文書なら155条・158条が適用される点を必ず区別してください。卒業証明書は学校長作成の文書ですが、私立学校か公立学校か、また書類の性質により評価が分かれることがあります。

6. 典型事例の整理

6-1. 契約書への偽造署名・押印

不動産売買契約書・賃貸借契約書・連帯保証契約書などに、本人の意思に基づかない署名・押印がされた場合。被害者の財産的損害が大きく、有印私文書偽造罪が問題となります。さらに、その契約書を相手方や第三者に提示・交付した場合には、偽造私文書等行使罪も成立し得ます。

6-2. 委任状の偽造

不動産登記、金融機関での払戻し、行政手続などで使用される委任状を偽造する行為。委任状は、代理権授与の事実や法律上の権限関係を示す文書であり、権利義務又は事実証明に関する文書として、刑法159条1項の対象となり得ます。

6-3. 領収書の偽造・金額改変

金額の水増しや日付の改変は事実証明文書の偽造・変造にあたります。会社内部で経費精算に使われた場合、業務上横領罪や詐欺罪と併合的に問題となるケースもあります。

6-4. 卒業証明書・資格証明書の偽造

就職活動や転職、資格申請の場面で問題化する典型例。私立学校が作成する証明書は私文書、公立学校(公務員)作成の証明書は公文書として処理される場合があります。

6-5. 実印・銀行印の不正使用

家族や同居人が無断で実印を使用して契約書を作成した場合、私印偽造罪(不正使用)と有印私文書偽造罪(同行使罪を含む)が問題となります。実印そのものは真正でも、無権限の使用は犯罪です。

7. 親告罪・非親告罪と告訴・告発の違い

7-1. 私文書偽造罪は非親告罪

私文書偽造罪・私印偽造罪・偽造私文書等行使罪は、いずれも非親告罪です。被害者の告訴がなくても捜査機関は捜査・起訴を行うことができます。ただし実務上、被害者からの告訴状提出は捜査機関にとって重要な端緒であり、捜査の優先順位や進捗に大きく影響します。

7-2. 告訴と告発の違い

区分 告訴 告発
主体 被害者本人または法定代理人 第三者(誰でも可)
根拠 刑事訴訟法230条 刑事訴訟法239条
意義 被害者として処罰を求める意思表示 第三者として捜査・処罰を求める意思表示

8. 告訴状の書き方・証拠整理と提出先(警察署長宛て)

告訴状は、被害者が捜査機関に対して犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める書面です。行政書士は、依頼者から事実関係を聴取し、告訴状(書類)を作成する業務を行うことができます。

8-1. 提出先は警察署長

行政書士が作成する告訴状サンプルは「○○警察署長殿」宛てを基本とします。検察庁宛ての告訴状の作成・提出代理は弁護士業務の領域に近接するため、行政書士は警察署長宛てを推奨します。

9. 告訴の効果と捜査・起訴の流れ

告訴状が受理されると、警察は捜査を開始し、必要に応じて被疑者の取調べ・関係者からの聴取・物証の押収などを行います。捜査の結果、嫌疑が固まれば検察庁へ事件が送致(送検)され、検察官が起訴・不起訴を判断します。

なお、告訴後に捜査機関に対して代理人として法的主張・交渉を行うこと、被疑者との示談交渉、損害賠償請求等は弁護士業務に該当します。行政書士法人Treeでは、こうした場面で連携可能な提携弁護士をご紹介します。

10. 民事責任との関係(弁護士業務)

私文書偽造の被害者は、刑事処罰とは別に、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)や不当利得返還請求(民法703条)を行うことができます。これらの請求は紛争の代理交渉・訴訟代理を伴うため、弁護士業務に該当します。行政書士は民事請求の代理交渉を行うことはできません。提携弁護士をご紹介します。

11. 公訴時効(刑事訴訟法250条)

主な罪の公訴時効は以下の通りです(長期5年未満は3年、長期5年以上10年未満は5年、長期10年以上15年未満は7年など、刑事訴訟法250条2項)。

  • 有印私文書偽造罪・変造罪・偽造私文書等行使罪(長期5年・長期10年未満の拘禁刑に当たる罪):5年
  • 無印私文書偽造罪(長期1年):3年
  • 私印偽造罪・不正使用罪(長期3年):3年

時効完成後は起訴できなくなるため、被害発覚から早期に告訴を検討することが重要です。

12. 印章登録証明書・銀行届出印・電子署名との比較

種別 性質 偽造・不正使用への適用条文
実印(市区町村登録) 印鑑登録制度に基づく印章 私印偽造(167条)、私文書偽造(159条)
銀行届出印 金融機関に届け出た印章 同上+詐欺・私電磁的記録不正作出罪等
認印 登録のない一般的な印章 167条・159条の対象
電子署名・電子契約 電子署名法上の電子署名や電子契約データ等 私電磁的記録不正作出・同供用(161条の2)等

13. デジタル時代の私文書偽造

電子契約・電子署名・PDFの改変など、デジタル文書をめぐる偽造事案も増えています。電子契約に対する不正な電子署名の付与や、PDFの内容を改変する行為は、刑法161条の2(私電磁的記録不正作出罪・同供用罪)の問題となり得ます。また、印影画像をスキャンして貼り付けた契約書データや、それを印刷して使用した書面については、事案により私文書偽造罪・偽造私文書等行使罪との関係も問題となります。

近年は、AIによる署名再現や画像生成技術を悪用した偽造事案も指摘されており、被害者側でもデジタル証拠の保全(メタデータ・ハッシュ値・送受信記録)が重要になっています。

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14. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 印鑑を勝手に押されただけで犯罪になりますか。
A. 行使の目的があれば、刑法167条2項(不正使用罪)や159条(私文書偽造罪)に該当し得ます。

Q2. 私文書偽造罪は告訴がないと起訴されませんか。
A. 非親告罪のため、告訴がなくても捜査・起訴は可能です。ただし告訴は捜査開始の重要な契機となります。

Q3. 告訴状はどこに提出するのですか。
A. 行政書士作成のサンプルは「警察署長殿」宛てを基本とします。検察庁宛ての告訴は弁護士業務の領域です。

Q4. 被疑者と示談交渉をしてほしいのですが。
A. 示談交渉は弁護士業務です。行政書士は対応できません。提携弁護士をご紹介します。

Q5. 損害賠償請求もお願いできますか。
A. 民事の損害賠償請求の代理交渉・訴訟代理は弁護士業務です。提携弁護士をご紹介します。

Q6. 告訴状を出してから捜査はすぐに始まりますか。
A. 受理後、警察の判断で捜査が開始されます。捜査の進度は事案や証拠の状況によります。

Q7. 偽造された契約書しか手元にありません。原本がなくても告訴できますか。
A. コピーや関係資料、状況証拠から告訴状を構成できる場合があります。ご相談ください。

Q8. 公訴時効はどのくらいですか。
A. 有印私文書偽造罪は5年、私印偽造罪は3年が目安です(刑事訴訟法250条)。

Q9. 2025年6月の刑法改正で何が変わりましたか。
A. 「懲役」と「禁錮」が「拘禁刑」に一本化されました。本記事の表記もこれに対応しています。

Q10. 電子契約のなりすましも対象になりますか。
A. 私電磁的記録不正作出罪(刑法161条の2)等の対象となり得ます。事案ごとに評価が必要です。

Q11. 告訴状を作成しても警察に受理されないことはありますか。
A. 受理判断は警察の権限です。事実関係・証拠の整理が不十分だと受理に時間を要する場合があります。

Q12. 料金はどのくらいかかりますか。
A. スタンダード38,280円(税込)/お急ぎ特急49,280円(税込)/オプション不受理時対応+33,000円です。

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16. まとめ

印章・署名の不正使用、私文書の偽造・変造・行使は、刑法上の重大犯罪です。被害に遭われた場合は、早期に事実関係と証拠を整理し、警察署長宛ての告訴状を準備することが重要です。行政書士法人Treeは、書類作成業務の範囲で告訴状作成をお引き受けします。示談交渉・損害賠償請求・訴訟代理など弁護士業務に関する事項は、提携弁護士と連携してご案内します。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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