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窃盗の被害に遭ったとき、被害届を出すべきか、告訴状を出すべきか——この判断を誤ると、加害者の処罰につながらない可能性があります。被害届は被害事実の届出にとどまり、捜査義務は生じません。一方、告訴状は「処罰を求める意思表示」であり、告訴を受理した捜査機関は事件を検察官に送致する義務を負います。窃盗罪で確実に加害者の処罰を求めるなら、告訴状の提出が有効な手段です。
窃盗罪の告訴状は、(1)犯罪事実を5W1Hで具体的に記載し、(2)被害品目・被害額を明記し、(3)窃取の状況を裏付ける証拠を添付する——この3点を押さえれば、受理される確率が高まります。本記事では、窃盗罪の構成要件から告訴状の記載例、被害届との使い分け、証拠の集め方まで、順を追って整理します。
「窃盗被害に遭ったが、告訴状と被害届のどちらを出すべきかわからない」「告訴状を自分で書いて受理されるか不安」という方は、行政書士法人Treeにご相談ください。告訴状作成の専門家が状況を伺い、適切な方針をご提案します。相談は何度でも無料・全国対応です。
目次
窃盗罪の構成要件とは?告訴状に書くべき法的根拠
告訴状の「告訴事実」を正確に記載するためには、窃盗罪の構成要件を理解しておく必要があります。構成要件を満たしていない事実を記載しても、告訴状として受理されない可能性があるためです。
窃盗罪の条文と法定刑
窃盗罪は刑法第235条に規定されています。
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。
2025年6月1日施行の改正刑法により、従来の「懲役」は「拘禁刑」に一本化されています。告訴状に法定刑を記載する場合は、「拘禁刑」の表記を使用してください。
窃盗罪が成立する3つの要件
窃盗罪の成立には、以下の3つの要件がすべて満たされる必要があります。
| 要件 | 内容 | 告訴状への記載例 |
|---|---|---|
| 他人の財物 | 被害品が他人の所有・占有する財物であること | 「告訴人所有の現金○○万円」「告訴人管理の腕時計(○○製、時価○○円相当)」 |
| 窃取 | 占有者の意思に反して財物を自己の支配下に移すこと | 「被告訴人は…告訴人の留守中に…持ち去った」 |
| 不法領得の意思 | 権利者を排除して経済的用法に従い利用・処分する意思 | 状況証拠から推認される(直接の記載は不要な場合が多い) |
告訴状では「誰の何を」「いつ・どこで」「どのように窃取したか」を具体的に記載することが求められます。「不法領得の意思」は、窃取行為の態様から推認されるため、明示的に記載しなくても問題ないケースがほとんどです。ただし、一時的な使用(使用窃盗)と区別が問題になるような事案では、処分行為に関する事実の記載が重要になります。
告訴状と被害届はどう使い分ける?
窃盗被害に遭った場合、告訴状と被害届のどちらを提出すべきか迷うケースは少なくありません。両者は法的効力が大きく異なるため、目的に応じた使い分けが重要です。
| 比較項目 | 告訴状 | 被害届 |
|---|---|---|
| 法的根拠 | 刑事訴訟法第230条 | 犯罪捜査規範第61条 |
| 提出者 | 犯罪の被害者またはその法定代理人等 | 犯罪の被害者 |
| 処罰意思 | あり(「処罰を求める」意思表示) | なし(被害事実の届出のみ) |
| 捜査機関の義務 | 受理後、書類・証拠物を検察官に送致する義務あり | 捜査義務は生じない |
| 書式 | 法定の書式なし(自由書式) | 警察署に所定の様式あり |
| 受理のハードル | 高い(犯罪事実の具体的記載が必要) | 低い(口頭でも可能) |
| 窃盗罪における必要性 | 処罰を求める場合に提出 | 被害を記録に残したい場合に提出 |
窃盗罪は親告罪ではないため、告訴がなくても検察官は起訴できます。しかし、被害届だけでは捜査が進まない可能性があり、加害者の処罰を積極的に求めるのであれば告訴状の提出が効果的です。特に、被害届を出したものの捜査が進展しないケースでは、改めて告訴状を作成・提出する方法が考えられます。両者の違いについては「告訴状と被害届の違いとは?法的効力・提出方法の違いを解説」で詳しく解説しています。
窃盗罪の告訴状はどう書く?犯罪事実の記載例
告訴状に法定の書式はありませんが、記載すべき項目は概ね決まっています。以下の構成に沿って作成すると、受理されやすい告訴状に仕上がります。
告訴状の基本構成
- 表題:「告訴状」
- 提出先:○○警察署長 殿(または○○地方検察庁検察官 殿)
- 提出日:作成年月日
- 告訴人の情報:住所・氏名・生年月日・連絡先
- 被告訴人の情報:住所・氏名(不明の場合は「氏名不詳」)
- 告訴の趣旨:「被告訴人の下記行為は刑法第235条(窃盗罪)に該当すると思料するので、捜査のうえ厳重に処罰されたく告訴します」
- 告訴事実:5W1Hで犯罪事実を具体的に記載
- 告訴に至る経緯:背景事情・動機等
- 証拠資料:添付する証拠の一覧
犯罪事実の記載例(空き巣の場合)
告訴事実の記載で最も重要なのは、犯罪事実を5W1Hに沿って具体的に書くことです。以下は空き巣被害を想定した記載例です。
被告訴人は、令和○年○月○日午前○時頃から同日午後○時頃までの間、東京都○○区○○町○丁目○番○号所在の告訴人方において、施錠されていない1階居間の窓から侵入し、同室内のタンス引き出し内にあった告訴人所有の現金○○万円および腕時計1点(○○製、型番○○、時価○○円相当)を窃取したものである。
犯罪事実の記載例(職場での窃盗の場合)
被告訴人は、令和○年○月○日午後○時頃、○○県○○市○○町○丁目○番○号所在の株式会社○○事務所において、同事務所内の告訴人の机上に置かれていた告訴人所有の財布1点(○○製、内容物:現金○万○千円、クレジットカード○枚)を窃取したものである。
犯罪事実は推測や意見を交えず、客観的な事実のみを記載してください。「被告訴人が犯人であると思われる」ではなく、「被告訴人が窃取したものである」と断定する形式で記載します。犯人の特定に至る根拠は「告訴に至る経緯」のセクションで説明します。
「告訴状の犯罪事実をどう書けばよいかわからない」方へ
行政書士法人Treeでは、お客様の被害状況を丁寧にヒアリングし、受理されやすい告訴状を作成いたします。
- ✔ 構成要件に沿った犯罪事実の記載
- ✔ 証拠の整理・証拠資料一覧の作成
- ✔ 相談は何度でも無料・全国対応
窃盗罪の告訴状に添付する証拠の集め方
告訴状に証拠の添付は法律上の義務ではありませんが、犯罪事実を裏付ける証拠を添付することで、受理の可能性が高まります。窃盗罪で有効な証拠は大きく3種類に分けられます。
被害の存在を証明する証拠
- 購入時のレシート・領収書:被害品の所有を証明する
- 製品の保証書・シリアルナンバーの控え:被害品の特定に有効
- 被害品の写真:盗難前に撮影していた写真
- 口座の出入金記録:現金被害の場合、直前の出金記録
犯行を裏付ける証拠
- 防犯カメラの映像:犯行の様子を記録した映像は最も有力
- 目撃者の証言:目撃者がいる場合は氏名・連絡先を告訴状に記載する
- 指紋・DNA等の物的証拠:警察の鑑識によって採取されるものだが、被害品に触れていない状態を保つことが重要
被告訴人の特定に関する証拠
- 被告訴人の身元情報:氏名・住所・勤務先など(わかる範囲で可)
- 犯行前後のやり取り記録:メール・LINE等の通信記録
- 盗品の所持・処分に関する情報:フリマアプリへの出品記録など
証拠が十分に集まっていなくても、告訴状の提出は可能です。証拠の収集は捜査機関の本来の役割であり、被害者が完璧な証拠を揃える必要はありません。ただし、告訴状に添付できる証拠が多いほど、受理・捜査がスムーズに進む傾向にあります。告訴状が受理されない場合のよくある原因については「告訴状が受理されない5つの理由と対策」をご確認ください。
告訴状の提出先はどこ?警察署と検察庁の違い
告訴状の提出先は、管轄の警察署または検察庁のいずれかです。どちらに提出しても法的効力に違いはありませんが、実務上は以下の特徴があります。
| 提出先 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 警察署 | 犯罪捜査を直接行う機関。現場検証・物的証拠の収集が得意 | 犯行現場が特定されている窃盗、物的証拠が残っている事案 |
| 検察庁 | 起訴・不起訴の判断を行う機関。法的判断の精度が高い | 警察署で受理されなかった場合、法的論点が複雑な事案 |
窃盗罪の告訴状は、被害発生地を管轄する警察署への提出が一般的です。警察署に提出する場合は「○○警察署長 殿」、検察庁に提出する場合は「○○地方検察庁検察官 殿」と記載します。
窃盗罪の告訴で注意すべきポイント
窃盗罪の公訴時効は7年
窃盗罪の公訴時効は7年です(刑事訴訟法第250条第2項第4号)。犯行日から7年が経過すると起訴できなくなるため、告訴状の提出は早めに行うことが重要です。なお、窃盗罪は親告罪ではないため、告訴期間(犯人を知った日から6ヶ月)の制限はありません。
万引きも窃盗罪に該当する
店舗での万引きも刑法第235条の窃盗罪に該当します。「万引き」という呼称から軽い犯罪と誤解されがちですが、法定刑は「10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」であり、他の窃盗と同じです。店舗経営者が告訴状を提出するケースもあります。
住居侵入を伴う場合は併記する
空き巣のように住居侵入(刑法第130条)を伴う窃盗の場合は、告訴状に窃盗罪と住居侵入罪の両方を記載することで、犯罪の全体像を正確に捜査機関に伝えることができます。この場合、牽連犯として処理され、重い方の窃盗罪の刑が適用されます。
よくある質問
Q. 窃盗の被害に遭いましたが、犯人がわかりません。告訴状は出せますか?
犯人が特定できていなくても告訴状の提出は可能です。被告訴人の欄には「氏名不詳」と記載し、犯罪事実と被害状況を具体的に記載してください。捜査機関が捜査によって犯人を特定する流れになります。ただし、犯人を特定する手がかり(防犯カメラ映像の存在、目撃情報等)がある方が、受理されやすくなります。
Q. 被害届を出した後に、追加で告訴状を出すことはできますか?
はい、被害届の提出後に告訴状を別途提出することは可能です。被害届では捜査義務が生じないため、捜査が進まない場合に告訴状を追加提出する方法は有効です。両者は別の手続きであり、被害届を出したことが告訴の妨げにはなりません。
Q. 窃盗の被害額が少額でも告訴状は受理されますか?
被害額の多寡は告訴状の受理基準ではありません。法律上、窃盗罪は被害額にかかわらず成立します。ただし、実務上は被害額が極めて少額の場合、微罪処分や不起訴処分となる可能性が高い点は念頭に置いておく必要があります。告訴状の作成自体は被害額に関係なく可能です。
Q. 家族による窃盗でも告訴できますか?
配偶者・直系血族・同居の親族間の窃盗には、刑法第244条の「親族相盗例」が適用されます。この規定により、これらの親族間の窃盗は刑が免除される(同条第1項)ため、告訴しても処罰には至りません。ただし、同居していない親族間の窃盗については、告訴がなければ公訴を提起できない親告罪として扱われます(同条第2項)。
まとめ
- 窃盗罪(刑法第235条)の法定刑は10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
- 被害届は被害事実の届出にとどまり、告訴状は処罰を求める意思表示。処罰を求めるなら告訴状の提出が有効
- 告訴事実は5W1Hに沿って具体的に記載し、推測・意見を交えない
- 防犯カメラ映像・購入レシート・目撃証言など、添付できる証拠が多いほど受理されやすい
- 窃盗罪の公訴時効は7年。親告罪ではないため告訴期間の制限はない
窃盗罪の告訴状作成は行政書士法人Treeにお任せください
| サービス | 料金 |
|---|---|
| 告訴状作成 | 34,800円(税抜)〜 |
- ✔ 構成要件に沿った犯罪事実の記載
- ✔ 証拠の整理・添付資料の一覧作成
- ✔ 受理率を高める書面構成
- ✔ 相談は何度でも無料・全国対応
窃盗被害の告訴でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。被害状況を丁寧にヒアリングし、最適な対応方針をご提案いたします。
※ 2026年3月時点の刑事訴訟法に基づく解説です。告訴・告発の受理判断は捜査機関の裁量による部分があります。具体的な事案は弁護士にもご相談ください。
※ 記事の内容には細心の注意を払っておりますが、万が一誤りがございましたらご指摘いただけますと幸いです。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではございません。具体的なケースについては専門家へのご相談をおすすめいたします。


