配偶者が投資やギャンブルにのめり込み、生活費を使い込んだり多額の借金を重ねたりした結果、夫婦の信頼関係が壊れてしまった――。こうしたご相談は、離婚を考える場面で少なくありません。投資・ギャンブルへの依存が「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項4号)に当たるのかは、多くの方が気にされるところです。本記事では、同号の一般的な考え方を中立的な情報として整理したうえで、当事者間で合意ができた場合に、その内容を離婚協議書や公正証書として書面化する実務についてご説明します。なお、慰謝料・財産分与の金額算定や、裁判・調停の代理は弁護士の職務であり、本記事は法的な助言や訴訟戦略を示すものではありません。
目次
民法770条1項4号「婚姻を継続し難い重大な事由」とは
裁判によって離婚を求める場合、民法770条1項は、離婚を請求できる事由(法定離婚事由)を定めています。現行法上は、配偶者の不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、そして「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」の4つです。このうち4号は、1号から3号までのような具体的な類型に当てはまらない場合でも、夫婦関係が深刻に破綻し、回復の見込みがないと評価できるときに適用される包括的・抽象的な規定とされています。なお、旧民法770条1項4号にあった「回復の見込みがない強度の精神病」は、2026年4月1日施行の改正により削除されています。
ここで前提として押さえておきたいのは、これらが問題となるのは「裁判離婚」の場面だという点です。夫婦が話し合いで離婚に合意できる協議離婚では、法定離婚事由の有無を立証する必要はありません。理由がどのようなものであっても、双方が離婚に同意し、子の親権など必要な事項を取り決めれば離婚は成立します。投資・ギャンブルが絡む離婚の多くは、まず協議離婚で解決できないかを検討することになります。
投資・ギャンブル依存は4号に該当するのか(一般的な考え方)
投資やギャンブルへの依存、それに伴う浪費や借金が、ただちに「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるわけではありません。一般に、行為の理由や内容、金額や程度、家計や生活への影響、それ以外の夫婦関係の状況などを総合的に考慮して判断されると説明されています。たとえば、生活費まで投資やギャンブルにつぎ込み家庭に必要なお金を入れない、借金を繰り返して家計が破綻している、といった事情が積み重なるほど、夫婦関係の破綻と結びつきやすいと整理されることが多いようです。
もっとも、4号に該当するかどうかは個別の事情によって大きく左右される、評価を伴う事項です。実際に裁判で争う場合の見通しや立証の方法、慰謝料・財産分与の金額といった点は、法律事務の代理を扱う弁護士に確認すべき領域です。当事務所は、こうした評価そのものに踏み込んで助言することはできません。本記事はあくまで一般的な情報の整理にとどまります。
協議離婚で取り決めておきたい事項
話し合いで離婚を進める場合、離婚届を出して終わりにするのではなく、合意した内容をきちんと書面に残しておくことが後々のトラブル防止につながります。投資・ギャンブルが背景にある離婚では、特に次のような事項が問題になりやすいといえます。
第一に、夫婦が作った借金(債務)の取扱いです。どちらが負担するのか、名義はどうするのかを明確にしておかないと、離婚後に思わぬ請求を受けることがあります。第二に、財産分与です。投資による含み損益や、すでに費消された資産をどう清算するかは、当事者間でよく話し合う必要があります。第三に、未成年の子がいる場合の親権者、養育費、親子交流の取り決めです。これらをあいまいにせず、金額・支払方法・頻度などを具体的に定めておくことが大切です。なお、金額の相場や算定そのものは弁護士・税理士等の専門領域であり、当事務所は合意された内容を正確に書面化する立場でサポートします。
離婚協議書・公正証書による書面化のメリット
当事者間でまとまった合意は、離婚協議書という形で書面化できます。書面にしておくことで、「言った・言わない」の争いを避け、お互いが合意内容を確認しながら離婚後の生活に進むことができます。
さらに、養育費や財産分与の分割払いなど、将来にわたる金銭の支払いがある場合には、公正証書(強制執行認諾文言付き)にしておくことが有効です。公正証書にしておけば、万一支払いが滞ったときに、あらためて裁判を起こさなくても、給与や預貯金などへの強制執行の手続を取れる可能性があります。投資・ギャンブルに起因する金銭問題が背景にある場合、支払いの確実性を高める意味でも、公正証書化を検討する価値は大きいといえます。
2026年4月施行の改正民法と書面作成の注意点
離婚に関する民法は、2026年(令和8年)4月1日施行の改正により大きく見直されています。離婚後も父母双方が親権を持つことを選べる「共同親権」が導入され、単独親権との選択が可能になりました。あわせて、婚姻中の別居時にも親子交流について定められるようになり、養育費の取り決めがない場合に一定額の支払いを義務づける「法定養育費」の仕組みも設けられています。協議書を作成する際は、親権の在り方や子に関する取り決めを、改正後のルールに沿って整理しておくことが重要です。
もう一つ実務上重要なのが、夫婦間の契約の取消しを認めていた民法754条が削除された点です。これにより、施行後に夫婦間で交わした合意は、原則として通常の契約と同様の拘束力を持つものとして扱われることになります。離婚に向けた合意書や協議書を作成する際は、内容を十分に理解し、慎重に判断したうえで取り決めることが、これまで以上に大切になっています。
行政書士に依頼できること・できないこと
行政書士は、当事者間でまとまった合意を離婚協議書として書面化し、公正証書化の手続をサポートすることができます。一方で、慰謝料・財産分与の金額算定や相場の提示、裁判離婚の代理、調停の代理は弁護士の職務であり、行政書士が行うことはできません。また、税務に関する判断は税理士、不動産登記は司法書士の領域です。当事務所では、まず話し合いで合意を目指せる状況かどうかを丁寧にうかがい、合意ができた場合にその内容を正確に書面へ落とし込むお手伝いをいたします。争いが大きく代理が必要な場面では、弁護士など適切な専門家へのご相談をおすすめしています。
投資・ギャンブル依存を背景とする離婚は、借金の整理や子に関する取り決めなど、書面化しておくべき事項が多岐にわたります。離婚協議書や公正証書の作成について、料金は個別にお問い合わせください。ご相談は何度でも無料です。お気軽にこちらからお問い合わせください。
まとめ
投資・ギャンブルへの依存は、その内容や程度、家計への影響などを総合的に考慮したうえで「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項4号)への該当性が判断される、評価を伴う事項です。もっとも、双方が離婚に合意できる協議離婚では事由の立証は不要であり、まずは話し合いによる解決を検討する意義があります。合意ができた場合は、借金の負担、財産分与、親権・養育費・親子交流などを離婚協議書にまとめ、必要に応じて公正証書化しておくことで、離婚後のトラブルを防ぎやすくなります。2026年4月施行の共同親権・法定養育費・民法754条削除といった改正も踏まえ、書面の作成は当事務所が丁寧にサポートいたします。金額の算定や裁判・調停の代理が必要な場合は、弁護士等の専門家にご相談ください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。