離婚関連

有責配偶者からの離婚請求|認められる条件と判例を解説

更新: 約12分で読めます

「不倫をした夫(妻)の側から離婚を求められている」「自分が有責配偶者だが、どうしても離婚したい」――こうした悩みを抱えている方は少なくありません。

結論から言えば、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められません。ただし、最高裁判所が示した3つの要件を満たす場合には例外的に認められる余地があります。本記事では、有責配偶者からの離婚請求が認められる条件、重要判例、そして実務上の対応策を整理します。

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有責配偶者とは?離婚原因を作った側の法的立場

有責配偶者とは、婚姻関係が破綻する原因を主に作った配偶者のことを指します。具体的には、民法第770条1項に定める法定離婚事由に該当する行為をした側が有責配偶者にあたります。

有責配偶者に該当する典型例

有責行為の類型 具体例 根拠条文
不貞行為 配偶者以外の異性との性的関係 民法770条1項1号
悪意の遺棄 正当な理由のない別居・生活費の不払い 民法770条1項2号
DV・モラハラ 身体的暴力・精神的暴力・経済的支配 民法770条1項5号
犯罪行為 配偶者への暴行・脅迫など 民法770条1項5号

有責配偶者であるかどうかは、その後の離婚手続き全体に大きく影響します。とりわけ、有責配偶者の側から離婚を求める場合には、相手が同意しない限り、裁判で離婚が認められるハードルが非常に高くなります。

なお、夫婦双方に有責性がある場合(例: 双方が不貞行為をしている場合)は、より有責性の重い方が有責配偶者とされることが一般的です。

有責配偶者からの離婚請求はなぜ原則認められないのか?

有責配偶者からの離婚請求が原則として認められない根拠は、信義則(民法1条2項)にあります。自ら婚姻関係を破壊しておきながら、その破綻を理由に離婚を請求するのは信義に反するという考え方です。

最高裁判所は長らく、有責配偶者からの離婚請求を一律に棄却する立場をとっていました。昭和27年2月19日の最高裁判決では、「勝手に愛人を持った夫からの離婚請求は許すべきではない」として、いわゆる「踏んだり蹴ったり判決」と呼ばれる判断を示しています。

民法770条の法定離婚事由

民法第770条1項は、裁判上の離婚が認められる事由として次の5つを定めています(2026年4月1日施行の改正により4号が削除され4つに変更)。

  • 1号: 配偶者に不貞な行為があったとき
  • 2号: 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  • 3号: 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  • 旧4号(削除): 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  • 5号(現4号): その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

ただし同条2項では、上記事由がある場合でも「一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるとき」には、裁判所は離婚請求を棄却できるとされています。有責配偶者からの請求が棄却されるのは、まさにこの規定の適用場面です。詳しくはe-Gov法令検索の民法条文をご確認ください。

最高裁判例が示した3要件とは?(昭和62年9月2日大法廷判決)

有責配偶者からの離婚請求に関する最も重要な判例が、最高裁昭和62年9月2日大法廷判決です。この判決は、それまでの「有責配偶者からの離婚請求は一切認めない」とする判例を変更し、一定の条件のもとで認められる場合があるとしました。

判例が示した3つの要件

この判決では、有責配偶者からの離婚請求であっても、以下の3要件を総合的に考慮して認容される場合があるとされています。

要件 内容 判断のポイント
要件1: 相当の長期間の別居 夫婦の別居が、両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること 年齢・同居期間との比較で判断。一律の年数基準はない
要件2: 未成熟子がいないこと 夫婦の間に未成熟の子が存在しないこと 「未成熟子」とは経済的に自立していない子を意味し、必ずしも未成年とは一致しない
要件3: 過酷状態でないこと 相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態に置かれるなど、離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がないこと 財産分与・慰謝料の提示、相手方の経済力・健康状態等を考慮

この判決の事案では、夫(74歳)が昭和24年頃から別の女性と内縁関係にあり、妻(70歳)との別居期間は約36年に及んでいました。最高裁は上記3要件に照らし、原審の判断を差し戻しています。

「相当の長期間」の別居とはどの程度か?

判例上、別居期間について一律の基準は示されていません。ただし、複数の裁判例を概観すると以下の傾向がうかがえます。

  • 別居期間10年以上の場合、有責配偶者からの請求が認められるケースが比較的多い
  • 別居期間7~8年程度でも、他の事情(同居期間が短い、子が成人しているなど)次第で認められる場合がある
  • 別居期間3~5年程度の場合は、有責配偶者からの請求が認められるのは例外的(ただし同居期間が短い場合など個別事情による)

重要なのは、別居の「年数」だけでなく、同居期間と別居期間の比率、当事者の年齢、婚姻関係の破綻の度合いが総合的に考慮される点です。同じ5年の別居でも、婚姻期間が3年の夫婦と30年の夫婦では評価が大きく異なります。

未成熟子の要件と2026年共同親権導入の影響

未成熟子とは何か?

有責配偶者の離婚請求で問題となる「未成熟子」とは、経済的に自立していない子どものことです。法律上の「未成年」(18歳未満)とは異なり、個別の事情によって判断されます。

  • 高校生以下 → 原則として未成熟子に該当
  • 大学生 → 個別の事情(学費の負担状況等)による判断
  • 成人しているが障がい等で自立困難 → 未成熟子に該当する場合がある
  • 既に就労して独立している → 未成年でも未成熟子に該当しない場合がある

なお、未成熟子がいる場合でも、子に対する十分な養育費の支払いが確保されているなどの事情があれば、直ちに離婚請求が否定されるわけではないとする裁判例もあります。ただし、未成熟子がいる場合のハードルは高いのが実情です。

2026年4月施行の共同親権制度による影響は?

2026年4月1日に施行された改正民法により、離婚後の共同親権が導入されました。従来は離婚後は父母のいずれかの単独親権でしたが、改正後は父母が協議して共同親権を選択できるようになっています。

この改正が有責配偶者の離婚請求における「未成熟子」要件にどのような影響を与えるかについては、施行直後の現時点では判例の蓄積がまだありません。ただし、以下の点は注目されます。

  • 共同親権の選択肢が増えたことで、「離婚しても子の養育に両親が関与できる」環境が整備された
  • 法定養育費制度の導入(先取特権付き)により、養育費の支払いがより確実になった
  • これらの制度変更が、将来的に「未成熟子がいても有責配偶者の離婚請求が認められやすくなる」方向に作用する可能性がある

ただし、この点はあくまで今後の裁判実務の動向を見守る必要があり、現時点で確定的なことは言えません。

有責配偶者が離婚を実現するための実務的な対応

有責配偶者であっても、相手方の同意が得られれば協議離婚は成立します。裁判で争う前に、まずは話し合いによる解決を試みることが実務上は最も重要です。

協議離婚を成立させるためのポイント

有責配偶者の側から離婚を望む場合、相手方の納得を得るために以下のような対応が考えられます。

  • 相当額の慰謝料を提示する: 自らの有責行為に対する謝罪の意味を込めた金銭的補償
  • 有利な財産分与条件を提示する: 法定の2分の1を超える財産分与を申し出る
  • 養育費の十分な確保: 子がいる場合は、相場を上回る養育費の支払いを約束する
  • 住居の確保: 相手方が住み続ける住居の提供・ローンの負担など
  • 年金分割の合意: 厚生年金の分割について合意する

これらの条件を具体的に示した上で交渉を行うことで、相手方が離婚に応じる可能性が高まります。

離婚協議書・公正証書で合意内容を確実に残すべき理由

協議離婚が成立する場合、合意内容は必ず離婚協議書として書面化し、できれば公正証書にすることが強く推奨されます。口約束だけでは、後になって「そんな約束はしていない」と言われてしまうリスクがあるためです。

公正証書には強制執行認諾文言を付けることで、養育費や慰謝料の支払いが滞った場合に裁判を経ずに強制執行(給与差押え等)が可能になります。詳しくは日本公証人連合会の離婚に関する公正証書の解説ページも参考になります。

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有責配偶者から離婚を請求された場合の対処法

ここまでは有責配偶者の側からの視点で解説しましたが、逆に有責配偶者から離婚を求められている側の対処法も重要です。

離婚を拒否できるケースとは?

有責配偶者からの離婚請求に対しては、前述の3要件を満たさない限り、裁判上は離婚を拒否することが可能です。特に以下のような事情がある場合は、離婚請求が認められにくくなります。

  • 別居期間がまだ短い(同居期間との対比で「相当の長期間」に至っていない)
  • 未成熟の子がいる
  • 離婚すると経済的に著しく困窮する状態に陥る
  • 有責配偶者から十分な慰謝料・財産分与の提示がない

離婚に応じる場合に確認すべきこと

一方で、有責配偶者からの離婚請求に応じる場合には、自分が不利にならないよう以下の点を事前に整理しておくことが大切です。

  • 慰謝料の金額: 不貞行為の場合、慰謝料の相場は100万~300万円程度とされますが、個別事情により異なります
  • 財産分与の対象と割合: 婚姻期間中に形成した共有財産をどのように分けるか
  • 養育費の金額と支払期間: 裁判所の養育費算定表を参考に取り決める
  • 年金分割: 婚姻期間中の厚生年金記録の分割
  • 面会交流: 子がいる場合の面会交流の取り決め

離婚の慰謝料相場について詳しくは、「離婚の慰謝料相場と請求方法」の記事で解説しています。

よくある誤解と注意点

「別居すれば自動的に離婚できる」は誤り

別居期間が長くなれば婚姻関係の破綻が認められやすくはなりますが、別居だけで自動的に離婚が成立することはありません。相手方が離婚に同意しない限り、協議離婚は成立せず、調停・裁判を経る必要があります。

「有責配偶者は一切離婚できない」も誤り

前述のとおり、昭和62年の大法廷判決以降、3要件を満たせば有責配偶者からの離婚請求も認められ得ます。また、協議離婚であれば、有責性に関係なく双方の合意のみで成立します。有責配偶者であることは裁判離婚のハードルを高くしますが、離婚自体が不可能になるわけではありません。

行政書士と弁護士の役割の違い

離婚手続きにおいて、行政書士と弁護士では対応できる業務範囲が異なります。

業務 行政書士 弁護士
離婚協議書の作成 ◯ 対応可 ◯ 対応可
離婚公正証書の作成サポート ◯ 対応可 ◯ 対応可
離婚調停・訴訟の代理 ✕ 不可 ◯ 対応可
相手方との交渉代理 ✕ 不可 ◯ 対応可
慰謝料請求訴訟の代理 ✕ 不可 ◯ 対応可

協議離婚で合意ができる段階であれば、行政書士に離婚協議書や公正証書の作成を依頼するのが費用を抑える方法です。一方、相手方との交渉が必要な場合や、調停・訴訟に発展する場合には弁護士への依頼が必要です。裁判離婚の手続きについては「裁判離婚の手続きと流れ」も参照してください。

よくある質問

Q1. 有責配偶者からの離婚請求は絶対に認められないのですか?

いいえ。最高裁昭和62年9月2日大法廷判決により、(1)相当の長期間の別居、(2)未成熟子がいないこと、(3)離婚により相手方が極めて苛酷な状態に置かれないこと、の3要件を満たせば認められる余地があります。また、協議離婚であれば有責性に関係なく双方の合意で成立します。

Q2. 有責配偶者の離婚請求で「相当の長期間」の別居とは何年くらいですか?

一律の基準はありませんが、判例では7~8年以上の別居で認められるケースが見られます。ただし、同居期間と別居期間の比率、当事者の年齢などが総合的に考慮されるため、個別事案によって異なります。

Q3. 不倫した側からでも慰謝料を請求されることはありますか?

有責配偶者が離婚を求める場合、相手方から慰謝料を請求されるのが通常です。有責配偶者の側から慰謝料を請求することは、信義則に反するとして認められない場合がほとんどです。

Q4. 有責配偶者との離婚で行政書士に依頼できることは何ですか?

行政書士は離婚協議書の作成および離婚公正証書の作成サポートが可能です。協議離婚で条件がまとまっている場合の書面作成を専門的にサポートします。相手方との交渉代理や調停・訴訟の代理は弁護士の業務範囲です。

Q5. 2026年4月の共同親権導入で、有責配偶者の離婚請求は認められやすくなりますか?

共同親権制度の導入により、離婚後も両親が子の養育に関与できる枠組みが整備されました。これが「未成熟子」要件の判断にどう影響するかは、今後の裁判例の蓄積を待つ必要があります。現時点では確定的なことは言えません。

まとめ

有責配偶者からの離婚請求は原則として認められませんが、最高裁判例が示す3要件(相当の長期間の別居・未成熟子がいないこと・過酷状態でないこと)を満たす場合には例外的に認容される可能性があります。

  • 裁判離婚のハードルが高いため、まずは協議離婚での解決を目指すことが実務上重要
  • 協議離婚の場合、有責性に関係なく双方の合意で成立する
  • 合意内容は離婚協議書・公正証書で確実に書面化すべき
  • 2026年4月の共同親権制度導入による影響は今後の判例に注目

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※ 本記事の内容は2026年4月時点の民法・家事事件手続法に基づく解説です。個別の事案では弁護士への相談もご検討ください。

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