離婚関連

離婚と社会保険の手続き|健康保険・年金・扶養の切替方法を解説

更新: 約15分で読めます

離婚後に忘れてはならないのが、健康保険と年金の切替手続きです。とりわけ配偶者の扶養に入っていた方は、離婚日から14日以内に国民健康保険への加入届出を行わないと、医療機関での窓口負担が全額自己負担になるおそれがあります。

この記事では、離婚に伴う社会保険関連の手続きをケース別に整理し、国民健康保険への切替え・国民年金第1号への種別変更・子どもの保険証の変更・児童扶養手当の申請まで、必要な届出を一覧でまとめています。手続き先や期限も表にしていますので、ご自身の状況に当てはめてご確認ください。

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離婚後の社会保険手続きが必要になる3つのケースとは?

離婚後に社会保険(健康保険・年金)の手続きが必要かどうかは、離婚前の加入状況によって異なります。大きく分けると、以下の3パターンに分類されます。

ケース 離婚前の状況 主な手続き
A. 配偶者の扶養に入っていた 健康保険の被扶養者 / 国民年金第3号被保険者 国保加入 or 勤務先の社保加入 + 年金種別変更届
B. 自分が被保険者で配偶者を扶養していた 会社員・公務員として社会保険に加入 被扶養者(異動)届で配偶者を扶養から除外
C. 夫婦それぞれが自分の社会保険に加入していた 共働きで各自の勤務先で保険加入 基本的に不要(子どもの保険証変更のみ検討)

もっとも手続きの負担が大きいのはケースAです。離婚によって扶養から外れると健康保険証が使えなくなり、年金の種別も変わるため、速やかに届出を行う必要があります。以下のセクションで、それぞれのケースに必要な手続きを詳しく解説します。

ケースA: 配偶者の扶養に入っていた場合

婚姻中に配偶者(会社員など)の健康保険の被扶養者となっていた方は、離婚によって被扶養者の資格を喪失します。同時に、国民年金の種別も第3号被保険者から第1号被保険者に変わります。

このケースでは、以下の2つの手続きがセットで必要です。

  • 健康保険: 国民健康保険に加入する、または就職先の健康保険に加入する
  • 年金: 市区町村の窓口で第1号被保険者への種別変更届を提出する

いずれも届出の期限は14日以内です。届出が遅れても届出日から保険料は遡って発生しますが、届出前に医療機関を受診すると窓口で全額(10割)負担を求められることがあるため、早めの対応が大切です。

ケースB: 自分が被保険者で配偶者を扶養していた場合

自分が会社員や公務員として社会保険に加入し、配偶者を被扶養者にしていた場合は、勤務先を通じて「被扶養者(異動)届」を提出します。届出により、元配偶者の健康保険証は使えなくなります。

この届出は勤務先の総務・人事担当者を通じて行うのが一般的です。また、資格喪失後に元配偶者が国民健康保険に加入する際には「健康保険資格喪失証明書」が必要になるため、速やかに発行手続きをとることが求められます。

ケースC: 共働きで各自が社会保険に加入していた場合

夫婦ともに自分の勤務先の健康保険に加入していた場合は、離婚による手続きは原則不要です。ただし、子どもがいる場合は、子どもの健康保険をどちらの親の保険に入れるかを決める必要があります。これについては後述の「子どもの健康保険証の切替え」で解説します。

健康保険の切替え手続き ── 資格喪失証明書の取得から加入届出まで

扶養から外れた後の健康保険の選択肢は、主に次の3つです。

選択肢1: 国民健康保険に加入する

離婚後すぐに就職しない場合や自営業を始める場合は、お住まいの市区町村で国民健康保険(国保)に加入します。手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 健康保険資格喪失証明書を取得する ── 元配偶者の勤務先(または加入していた健康保険組合・協会けんぽ)に依頼して発行してもらいます
  2. 市区町村の国保窓口に届出する ── 資格喪失証明書・本人確認書類・マイナンバー確認書類を持参し、加入届を提出します
  3. 新しい保険証を受け取る ── 即日交付されない場合もあるため、受診予定がある方は窓口で相談してください

資格喪失日(=離婚日)から14日以内が届出期限です。14日を過ぎても届出自体は可能ですが、届出が遅れた期間に医療機関を受診していた場合は、いったん全額自己負担になることがあります。後から療養費の支給申請はできますが、手間がかかります。

選択肢2: 就職先の健康保険に加入する

離婚後にフルタイムの仕事に就く場合や、すでに勤務先がある場合は、その勤務先の健康保険に加入します。入社手続きの一環として勤務先の担当者が対応するため、特別な届出は不要です。

パートやアルバイトでも、一定の労働時間・日数の要件を満たせば社会保険に加入できます。現在のルールでは、従業員51人以上の企業で週20時間以上・月額賃金88,000円以上などの条件を満たすと社会保険の加入対象になります(なお、月額賃金88,000円以上という「106万円の壁」の要件は2026年10月をめどに撤廃される予定です。また「従業員51人以上」の企業規模要件も段階的に拡大され、2035年10月には10人以下を含むすべての企業の労働者が社会保険の加入対象になる方向で制度改正が進んでいます。最新情報は厚生労働省の案内をご確認ください)。

選択肢3: 親族の扶養に入る

離婚後に親が会社員で健康保険に加入している場合などは、親の被扶養者になれる場合があります。ただし、年収130万円未満(60歳以上は180万円未満)といった収入要件があるため、加入の可否は親の勤務先の健康保険組合に確認してください。

国民健康保険料の減免制度 ── 離婚による収入減がある場合

離婚によって世帯の収入が大幅に減少した場合、国民健康保険料の減免(軽減)を受けられる場合があります。制度の内容は自治体によって異なりますが、一般的な仕組みは以下のとおりです。

  • 法定軽減: 前年の所得が一定額以下の場合、保険料の均等割・平等割が7割・5割・2割軽減されます(申請不要。確定申告や住民税の申告をしていれば自動適用)
  • 申請減免: 離婚による収入の著しい減少(前年比おおむね3割以上の減少など)がある場合、申請により保険料の一部が減額されることがあります

減免を希望する場合は、お住まいの市区町村の国保窓口に早めに相談することが重要です。滞納してから相談するよりも、納期限前に申請するほうが対応してもらいやすくなります。

年金の種別変更届と年金分割 ── 離婚後に必要な手続き

第3号被保険者から第1号被保険者への種別変更はどう届け出る?

配偶者の扶養に入っていた方(国民年金第3号被保険者)は、離婚によって第3号の資格を失います。離婚後に厚生年金に加入しない場合は、第1号被保険者への種別変更届を市区町村の国民年金窓口に提出する必要があります。

届出に必要なものは次のとおりです。

必要書類 備考
年金手帳または基礎年金番号通知書 マイナンバーでも手続き可
本人確認書類 マイナンバーカード・運転免許証など
離婚日がわかる書類 戸籍謄本、離婚届受理証明書など
印鑑 自治体によっては不要

届出期限は14日以内で、届出先は住所地の市区町村役所です。届出を忘れると年金の記録に未加入期間が生じ、将来の年金額に影響が出る場合があるため注意してください。なお、離婚後に就職して厚生年金に加入する場合は、勤務先を通じて手続きが行われるため、市区町村への届出は不要です。

詳しい届出方法は日本年金機構「結婚・離婚・出産・育児」のページで確認できます。

年金分割の制度 ── 合意分割と3号分割の違い

離婚に際しては、婚姻期間中の厚生年金記録を分割する「年金分割」の制度を利用できます。年金分割には2種類あります。

項目 合意分割 3号分割
対象期間 婚姻期間全体 2008年4月以降の婚姻期間
合意の要否 夫婦間の合意 or 裁判所の決定が必要 合意は不要(第3号被保険者の請求のみでOK)
分割割合 最大2分の1(当事者間で取り決め) 一律2分の1
請求期限 離婚翌日から原則5年以内(2026年4月1日より前の離婚は2年以内) 離婚翌日から原則5年以内(2026年4月1日より前の離婚は2年以内)
請求先 年金事務所 年金事務所

年金分割は老後の年金受給額に影響する重要な制度です。詳しい手続きの流れや必要書類については、年金分割の手続きガイドで詳しく解説していますのでご参照ください。

請求期限を過ぎると原則として年金分割はできなくなるため、離婚後は早めに年金事務所に相談されることをおすすめします。制度の概要は日本年金機構「離婚時の年金分割制度のご案内」でも確認できます。

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子どもの健康保険証はどうなる? ── 親権者側への切替え手続き

離婚して子どもの親権者が変わった場合、子どもの健康保険証も見直しが必要になることがあります。ただし、法律上は親権者でなくても子どもを健康保険の被扶養者にすることは可能です。そのため、「必ず親権者側の保険に入れなければならない」というわけではありません。

実務上よくあるケースを整理すると、以下のようになります。

母親が親権者で、父親の扶養に入っていた場合

子どもが父親の健康保険の被扶養者だったケースでは、次のいずれかの対応が考えられます。

  • 父親の扶養のまま継続する ── 父親が引き続き子どもの生計を維持している場合(養育費を支払っている場合など)は、被扶養者のまま残せることがあります。勤務先の健康保険組合の判断にもよるため確認が必要です
  • 母親の保険に切り替える ── 母親が就職して自分の健康保険に加入する場合は、母親の被扶養者として加入できます。母親が国民健康保険に加入する場合は、子どもも国保に加入します

子どもの保険切替えに必要な手続き

子どもを父親の扶養から外す場合は、父親の勤務先で「被扶養者(異動)届」を提出して扶養から除外します。その後、母親側で以下のいずれかの手続きを行います。

  • 母親が社会保険に加入している場合 〜 母親の勤務先で被扶養者追加の届出
  • 母親が国民健康保険に加入する場合 〜 市区町村の国保窓口で子どもの分も加入届出

いずれの場合も、父側での扶養削除手続や、母側での加入手続が必要になることがあります。子どもの被扶養者認定は親権の有無だけでなく、生計維持関係や加入先保険者の判断も関わるため、離婚前に子どもの保険をどうするか話し合っておくと、手続きがスムーズに進みます。

離婚後に忘れやすい手続きと期限一覧

離婚後に必要な社会保険関連の手続きを一覧にまとめました。期限のある届出が多いため、チェックリストとしてご活用ください。

手続き内容 届出先 期限 必要書類(主なもの)
国民健康保険への加入 市区町村の国保窓口 14日以内 資格喪失証明書・本人確認書類・マイナンバー
国民年金の種別変更届(第3号〜第1号) 市区町村の国民年金窓口 14日以内 年金手帳・本人確認書類・離婚日確認書類
被扶養者(異動)届の提出 勤務先の人事担当 事実発生から5日以内 被扶養者異動届・戸籍謄本等
年金分割の請求 年金事務所 離婚翌日から原則5年以内(2026年4月1日より前の離婚は2年以内) 年金分割請求書・戸籍謄本・年金手帳等
児童扶養手当の申請 市区町村の福祉窓口 離婚後すみやかに(申請月の翌月分から支給) 戸籍謄本・所得証明書・通帳コピー等
子どもの健康保険証の切替え 勤務先 or 市区町村 速やかに 被扶養者異動届・資格喪失証明書等
氏名変更に伴う保険証の書換え 勤務先 or 市区町村 速やかに 戸籍謄本等

離婚届の提出後は、氏変更の手続きや住所変更など、社会保険以外にも多くの届出が重なります。優先順位の高いものから順に対応していくと混乱を防げます。全体像については離婚後の手続き完全ガイドもあわせてご覧ください。

よくある不備・失敗 ── 離婚時の社会保険手続きで注意すべきポイント

離婚に伴う社会保険の手続きでは、以下のような不備やトラブルが起こりがちです。事前に知っておくことで回避できます。

資格喪失証明書がもらえない場合はどうする?

元配偶者やその勤務先に資格喪失証明書の発行を依頼しても、対応が遅れたり拒否されたりするケースがあります。この場合は、元配偶者が加入していた健康保険の保険者(協会けんぽや健康保険組合)に直接問い合わせることで、被扶養者でなくなった旨の証明書を取得できる場合があります。

それでも入手が困難な場合は、市区町村の国保窓口に相談してください。自治体によっては、離婚届受理証明書などの書類で代替対応してくれる場合もあります。

届出を14日以上忘れていた場合

14日の届出期限を過ぎても、国民健康保険や国民年金への加入届出は受理されます。ただし、保険料は資格喪失日に遡って発生します。また、届出前に医療機関を受診していた場合は、窓口で全額(10割)を支払い、後日「療養費」として申請する手間が発生します。

子どもの保険証が2枚ある(重複加入)状態になった

父親側の扶養削除が完了しないまま、母親側で国民健康保険に加入してしまうと、一時的に保険が重複する状態になることがあります。この場合は、速やかに父親側の被扶養者削除を完了させ、重複期間の保険料の精算を行う必要があります。離婚前に、子どもの保険をいつ切り替えるか双方で確認しておくのが望ましいです。

年金分割の請求期限を過ぎてしまった

年金分割の請求期限は、2026年4月1日以降の離婚では原則として離婚翌日から5年以内です(2026年4月1日より前の離婚については2年以内の従来ルールが適用されます)。この期間を過ぎると、原則として年金分割の請求はできなくなります。離婚後はさまざまな手続きに追われがちですが、年金分割は老後の生活に直結するため、早い段階で年金事務所に相談することをおすすめします。

よくある質問

離婚後、国民健康保険料はいくらくらいかかりますか?

国民健康保険料は、前年の所得・住んでいる自治体・世帯の人数によって異なります。離婚直後に現在の収入がない場合でも、保険料は原則として前年の所得等を基礎に算定されます。そのため、前年に一定の所得があれば保険料が発生します。法定軽減や、離職等に伴う軽減制度の対象になる場合もあるため、具体的な金額はお住まいの市区町村の国保窓口で試算してもらうのが確実です。

資格喪失証明書はどこで発行してもらえますか?

資格喪失証明書は、元配偶者が加入していた健康保険の保険者が発行します。勤務先が協会けんぽに加入していた場合は全国健康保険協会(協会けんぽ)の各都道府県支部、健康保険組合に加入していた場合はその組合に問い合わせてください。なお、元配偶者の勤務先が発行する退職証明書等で代用できる場合もあります。

離婚後にひとり親になった場合、児童扶養手当はいくらもらえますか?

児童扶養手当の金額は所得に応じて異なります。2026年4月分以降の全部支給の場合、子ども1人で月額48,050円、2人目以降は1人につき月額11,350円の加算です(こども家庭庁の定める額。2024年11月の法改正により、3人目以降の加算額が2人目と同額に引き上げられました。所得制限による一部支給の場合は減額されます)。申請はお住まいの市区町村の福祉窓口で行います。詳しくはこども家庭庁「児童扶養手当について」をご確認ください。

離婚後すぐに就職する場合、国民健康保険に加入する必要はありますか?

入社日に勤務先の健康保険に加入できるのであれば、国民健康保険に加入する必要はありません。ただし、離婚日と入社日の間に空白期間がある場合は、その期間をカバーするために国民健康保険に加入しておくほうが安全です。空白期間中に医療機関を受診すると全額自己負担になるおそれがあるためです。

年金分割は離婚協議書に記載すべきですか?

離婚協議書に年金分割の合意内容(分割割合など)を記載しておくと、後の手続きがスムーズになります。ただし、協議書に記載しただけでは年金分割の効力は発生しません。年金事務所での請求手続き(合意分割の場合は「年金分割の合意書」の提出)が別途必要です。公正証書にしておくと、一方当事者のみで年金事務所に請求できるメリットがあります。

ひとり親になった場合に利用できる支援制度については、離婚後のひとり親支援制度まとめで詳しく解説しています。

まとめ

離婚後の社会保険手続きは、ご自身の加入状況によって必要な届出が異なります。要点を整理すると次のとおりです。

  • 扶養に入っていた方は、国民健康保険への加入(14日以内)と年金の種別変更届が最優先
  • 配偶者を扶養していた方は、被扶養者(異動)届で扶養から除外し、資格喪失証明書を速やかに発行する
  • 子どもの保険証は、どちらの親の保険に入れるか離婚前に話し合っておく
  • 年金分割は離婚翌日から原則5年以内に請求が必要(2026年4月1日より前の離婚は2年以内。いずれも期限に注意)
  • 国保料の減免制度や児童扶養手当など、ひとり親向けの支援制度も確認しておく

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