離婚関連

将来退職金の現在価値計算|中間利息控除と利率の選び方

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離婚の財産分与では、配偶者が将来受け取る予定の退職金も、一定の場合に分与の対象になります。ただし定年が先のため、「いま手元に入るお金」ではない将来額をそのまま2分の1にするのは不公平です。そこで実務では、将来支給される退職金を中間利息控除によって現在価値に引き直してから分けます。本記事では行政書士の立場から、現在価値計算の考え方、ライプニッツ係数の仕組み、控除に用いる利率(法定利率は年3%で、令和8年4月1日以降も年3%が継続)の選び方、別居時退職額方式と定年退職額方式の違いを、具体例を交えて整理します。なお相続税・所得税など税務上の取扱いや、紛争となった場合の金額交渉は税理士・弁護士の領域ですので、本記事は財産分与の計算と協議書作成の観点に絞って解説します。

将来の退職金が財産分与の対象になる場面

退職金は「給与の後払い」としての性質を持つため、婚姻期間中の労働が反映された部分は夫婦が協力して形成した財産(共有財産)とみなされ、財産分与の対象になり得ます。すでに支給済みの退職金が預貯金として残っていれば当然に対象ですが、問題となるのはまだ支給されていない将来の退職金です。

実務上は、定年までの期間がそれほど長くない、勤務先の退職金制度が整っており支給の確実性が高い、といった事情があると対象に含めやすくなります。逆に、定年まで非常に長い、転職や倒産の可能性が高いといった場合は、支給の不確実性から対象外とされたり、評価額が抑えられたりすることがあります。どこまで対象とするかは個別事情によるため、判断に迷う場合は弁護士とも連携してご確認ください。

なぜ「現在価値」に引き直すのか

たとえば10年後に受け取る1,000万円と、いま受け取る1,000万円は同じ価値ではありません。いま受け取れば運用や預金で利息が付くため、将来の1,000万円は現時点では1,000万円より低い価値しかない、と考えるのが経済的に合理的です。

そこで、将来受け取る金額から、受取りまでの間に生じる利息分(中間利息)を差し引いて現在の価値に換算します。これが中間利息控除です。財産分与は原則として別居時(または離婚時)を基準に清算するため、定年時の支給額を基礎とする場合は、その基準時点の価値に直したうえで分けることで、当事者間の公平が図られます。

ライプニッツ係数と中間利息控除の計算式

中間利息控除には、複利計算に基づくライプニッツ係数を用いるのが一般的です。考え方はシンプルで、利率をr、受取りまでの年数をnとすると、係数は次の式で表されます。

  • ライプニッツ係数 = 1 ÷ (1 + r) の n乗
  • 現在価値 = 将来受け取る金額 × ライプニッツ係数

たとえば利率3%・10年後であれば、係数は 1 ÷ (1.03 の10乗) ≒ 0.7441 です。将来の退職金相当額が1,000万円なら、現在価値は約744万円となります。20年後なら係数は約0.5537で、同じ1,000万円でも現在価値は約554万円まで下がります。受取りまでの期間が長いほど割引が大きくなる点が、この計算の核心です。

なお、交通事故の逸失利益などで使われる「年金現価のライプニッツ係数」は毎年継続して受け取る場合の合計係数ですが、退職金は一時金として一度に受け取るのが通常なので、上記の単年(一時金)の現価係数を使う点に注意してください。

控除に用いる利率(運用利率)の選び方

中間利息控除でどの利率を使うかによって、現在価値は大きく変わります。利率が高いほど割引が大きく、現在価値は小さくなります。

現在価値計算の利率としては、民法第404条の法定利率(年3%)を参考にする方法があります。かつて法定利率は年5%でしたが、民法改正により年3%へ引き下げられ、3年ごとに見直す変動制が導入されました。法務省の告示によれば、令和8年4月1日から令和11年3月31日までの期間も法定利率は年3%で据え置かれています。もっとも、財産分与における将来退職金の評価方法や控除利率は事案により判断が分かれるため、年3%はあくまで当事者間で合意内容を整理する際の一つの目安として扱い、争いがある場合は弁護士に確認する必要があります。

もっとも、財産分与は当事者の合意で柔軟に決められる手続でもあります。退職金の運用実態や勤務先の制度を踏まえて、当事者間で別の利率や評価方法に合意することも可能です。下表は3%と5%で現在価値がどう変わるかの目安です(将来額1,000万円の場合)。

受取りまでの年数 年3%での現在価値 年5%での現在価値
5年後 約863万円 約784万円
10年後 約744万円 約614万円
20年後 約554万円 約377万円

このように、利率の選択は分与額に直結します。どの利率・方式を採るかは合意形成上の重要ポイントなので、根拠を明確にして協議書に残しておくことが大切です。

退職金の評価方法と寄与割合の出し方

将来の退職金をいくらと見るかには、主に2つの方式があります。

  • 別居時自己都合退職額方式:別居時(基準時)に自己都合で退職したと仮定した場合の退職金額を基礎とする方法。すでに基準時の金額なので中間利息控除は行いません。支給の確実性が高く、実務で広く用いられます。
  • 定年退職額方式:定年時に受け取る見込みの退職金額を基礎とし、それを中間利息控除で現在価値に引き直す方法。定年が比較的近い場合などに用いられます。

どちらの方式でも、退職金全額が分与対象になるわけではありません。退職金のうち婚姻期間(同居期間)に対応する部分だけが夫婦の協力で形成された財産だからです。そこで次の寄与割合を掛けて対象額を算出します。

  • 寄与割合 = 同居期間 ÷ 勤続年数(入社から基準時または定年まで)
  • 分与対象額 = 退職金額(現在価値) × 寄与割合
  • 受け取る額 = 分与対象額 × 原則2分の1

たとえば入社から定年までの勤続年数が50年(現時点で勤続30年、定年は20年後)、定年退職額が2,000万円、同居期間が15年というケースを定年退職額方式で考えてみます。まず2,000万円を年3%・20年で現在価値に直すと約1,107万円(2,000万円×0.5537)です。これに寄与割合15÷50を掛けて分与対象額を求め、その2分の1が受取り額の目安になります。実際の勤続年数の取り方や別居期間の扱いは事案ごとに異なるため、数値は必ず勤務先の退職金規程で確認してください。

協議書に残すときの実務ポイント

将来退職金の分与は計算の前提が複雑なため、後日の紛争を防ぐには離婚協議書に前提と算定根拠を明記しておくことが重要です。具体的には、基礎とした退職金額(根拠資料)、評価方式、用いた利率と係数、寄与割合、支払時期(離婚時に一括か、実際の退職時に支払うか)などを盛り込みます。退職時払いとする場合は、支払時期・金額・遅延時の取扱いを明確にしておくと安心です。

当事務所では、こうした財産分与の取り決めを反映した離婚協議書(離婚給付契約書)の作成をサポートしています。確実性を高めたい場合の公正証書化に向けた手続のご案内も可能です。なお、退職金にかかる税務の取扱いは提携税理士に、金額面で争いがある場合の交渉や調停・訴訟は弁護士に、それぞれ連携してご対応します。財産分与の進め方は離婚協議書作成のページもあわせてご覧ください。

将来退職金の現在価値計算や離婚協議書の作成でお悩みの方は、行政書士法人Treeにご相談ください。ご相談内容に応じて、提携する弁護士・税理士・司法書士とも連携しながら最適な進め方をご提案します。離婚協議書の作成サポートはミニマムプラン21,780円(税込)、スタンダードプラン27,500円(税込)、公正証書作成サポートプラン32,780円(税込)からお選びいただけます。離婚協議書作成サポートのご案内はこちら。ご相談は何度でも無料です。

まとめ

将来の退職金は、婚姻期間に対応する部分が財産分与の対象となり得ますが、別居時自己都合退職額方式や定年退職額方式など評価方法は複数あり、どの方式を採るかは個別事情によって変わります。定年退職額方式で整理する場合、現在価値は「将来額 × ライプニッツ係数(1÷(1+r)のn乗)」で計算する方法があり、民法の法定利率を参考にする場合は、令和8年4月1日から令和11年3月31日まで年3%です。評価方式(別居時退職額・定年退職額)と寄与割合(同居期間÷勤続年数)の取り方で結果が変わるため、当事者間で合意した前提と算定根拠を協議書に明記しておくことが、後日のトラブル防止につながります。

将来退職金の現在価値計算に関するよくある質問

Q:中間利息控除の利率はいつも3%ですか。

A:実務の基準は民法第404条の法定利率で、現在は年3%です。法務省の告示により令和8年4月1日から令和11年3月31日まで年3%が継続します。ただし変動制のため将来は見直される可能性があり、また当事者の合意で別の利率に基づき評価することも可能です。

Q:まだ若く定年まで30年以上あります。退職金は対象になりますか。

A:定年まで非常に長い場合は、支給の不確実性から対象外とされたり評価が抑えられたりすることがあります。一方で退職金制度が確立し支給見込みが高いと判断されれば対象になり得ます。判断が分かれる論点のため、弁護士とも連携してご確認ください。

Q:退職金を受け取る側にかかる税金はどう考えればよいですか。

A:退職金や財産分与にかかる税務上の取扱いは税理士の専門領域です。当事務所では協議書の作成を担い、税務の判断が必要な点は提携税理士を紹介して連携対応します。

Q:相手が金額の計算に応じてくれません。

A:金額面で争いがある場合の交渉や調停・訴訟の代理は弁護士の業務です。当事務所では合意ができた内容の協議書化を担当し、紛争性のある部分は弁護士と連携してサポートします。

Q:将来の退職金分は離婚時に一括でもらえますか。

A:当事者の合意により、離婚時に現在価値で一括清算する方法も、相手の実際の退職時に支払う方法も選べます。支払時期・金額・遅延時の取扱いを協議書に明記しておくと安心です。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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