数次相続で登記を一件にまとめられるかは、最終的に相続する人数だけでは決まりません。原則は各相続に沿った登記ですが、中間の相続が単独相続となるなどの条件を満たせば、最初の登記名義人から最終の相続人へ一件の申請で移転できる取扱いがあります。
本記事は2026年11月5日時点の法令、法務省・法務局の現行案内・申請書記載例を確認しています。中間省略の条件、遺産分割で気を付ける点、登録免許税、相続登記義務化を整理します。Treeは戸籍確認・遺産分割協議書等の作成を担当し、登記申請の依頼は司法書士等、紛争の相談は弁護士の担当範囲と分けてご案内します。
誰の相続が何回重なっているか、戸籍・登記事項証明書・遺言や協議書の有無から確認します。Treeに依頼できる書類作成の範囲と、司法書士等との連携、数次相続に適用する費用をご相談ください。
目次
数次相続とは|代襲相続との違い
数次相続は、最初の相続が始まった後、登記等を終えないうちに、その相続人が亡くなって次の相続が重なる場合です。たとえば祖父Aが亡くなり、Aの相続人である父Bの登記をしないままBも亡くなったときは、AとBそれぞれについて相続関係を調べます。遺産分割が未了の場合も、分割は済んでいて登記だけ未了の場合もあります。
代襲相続では、子が相続開始以前に亡くなっている場合などに、所定の直系卑属が代わって相続人になります。子の配偶者が、その子の配偶者という理由だけで代襲相続するわけではありません。一方、数次相続では、後に亡くなった人の配偶者も、その人の相続人として権利関係に加わることがあります。
| 主な違い | 数次相続 | 代襲相続 |
|---|---|---|
| 死亡の順序の例 | Aの死亡後に、Aの相続人Bが死亡 | Aの相続開始以前に、Aの子Bが死亡 |
| 調べる相続 | Aの相続とBの相続をそれぞれ確認 | Aの相続について、Bの子等の代襲要件を確認 |
| Bの配偶者 | Bの相続人として関係する場合がある | Bの配偶者というだけではAを代襲しない |
代襲は死亡だけでなく欠格・廃除の場合もあり、兄弟姉妹の代襲には子の代襲と異なる範囲があります。相続放棄も死亡と同じように代襲を生むものではありません。また、承認・放棄をしないまま亡くなった場合には再転相続の問題もあるため、死亡順だけで承認・放棄や相続人全員の扱いを決めないでください。
相続人の確認は、関連記事「数次相続の相続人の確定」も参考に、各死亡時の戸籍、遺言、相続放棄等の資料をそろえて進めます。
中間省略登記の原則|中間の相続が単独かを確認
数次相続では、原則として相続ごとの権利移転を登記します。ただし、中間の相続が単独相続である場合などには、一件の申請で最終の相続人まで登記できる取扱いがあります。三回以上の相続なら、最終以外の各段階を確認します。
法務局の現行申請書様式にある数次相続の記載例も、最終以外の相続について共同相続人数名が権利を取得している場合は、一件の申請では登記できない旨を説明しています。単に「現在の相続人が一人」「最後は一人が全部取得する」というだけでは、この条件を満たすとは限りません。
当該不動産について、中間の相続人がもともと一人である場合のほか、適法な遺産分割でその一人が取得した場合や、他の相続人の相続放棄等により単独相続となる場合も検討対象です。相続人が一人かどうかは、子の人数だけでなく配偶者等も含めて確認します。
特別受益や相続分の譲渡が関係する場合は、その効力・範囲、遺産分割の内容、登記の根拠資料を個別に調べます。「一人に権利を集めた」との説明だけで中間省略できるとはせず、申請先の法務局や司法書士に確認してください。
できるケース・できないケースの例
以下は、Aが登記名義人、Bが中間で亡くなった相続人、C・Dが最後の相続人となる例です。他の遺言・権利・相続人等がなく、必要な資料で各関係を証明できることを前提とします。
| 相続関係・取得の状況 | 中間省略の検討 |
|---|---|
| AをBが単独相続し、その後BをCが相続 | 中間が単独なので、一件の申請を検討できる |
| AをBが単独相続し、その後BをC・Dが共有で相続 | 最終が複数でも、中間が単独なら一件の申請を検討できる |
| Aの共同相続人間の適法な分割で、当該不動産をB一人が取得し、その後Bが死亡 | その分割と次の相続を証明して、一件の申請を検討できる |
| AからB・別の相続人が共有取得し、Bの持分をCが相続 | 中間で複数が権利取得する状態のままでは、Aから現在の取得者への一件の移転にはまとめられない |
| Aの共同相続人B・CのうちBが死亡し、Bの唯一の相続人がC | 最後にC一人となっても、Aの相続が初めから単独だったことにはならない。分割未了のままの単独の処分決定で省略できると考えない |
「父は一人っ子」という事情だけでは、祖父の配偶者等の相続権を除外できません。また、中間の相続で共有取得したケースと、中間は単独で最後に共有となるケースは区別します。登記件数は相続回数・分割や既存登記の内容によって確認し、すべて二件で足りるとは限りません。
一人になった人が自分だけで「遺産分割した」と書面を作ればよいわけでもありません。遺産分割は共同相続の財産について行う手続であり、権利承継と共同相続状態がどうなっているかが問題になります。登記を簡単にする目的で、事実と異なる分割や相続関係を書かないでください。
遺産分割が未了のまま次の相続が起きたら
最初の相続人の一人が亡くなったときは、残る相続人と、亡くなった人の相続上の地位を承継した人など、協議に参加する権利を持つ人を確認します。単に「今生きている子全員」で決めず、後に亡くなった人の配偶者、相続放棄、遺言等も調べます。
次の相続が起きた後の遺産分割でも、中間の取得と最後の取得をどのように証明するかが重要です。中間の相続と最後の相続の内容を整理し、協議書を作る前に登記の進め方と整合するか確認してください。省略のために結論だけを無理に書き換えることはできません。
協議書を必ず相続ごとに別々の二通にするという意味ではありません。国土交通省の公式資料(267ページ)には、最終的な分割結果だけの協議書でも中間の単独相続が相続人の合理的意思と確認できる場合や、異順位の相続分譲渡後に中間が単独となる分割がされた場合の、一件申請の取扱いが紹介されています。個別の相続関係と書面の内容を確認して用います。
未成年者と親の利益相反、判断能力の問題、相続人の所在不明等がある場合には、必要な代理・裁判所の手続も別に検討します。相続人間で争いがある場合は弁護士へ相談してください。協議書の構成は「数次相続の遺産分割協議書の書き方」も参考になります。
登記原因の書き方と必要資料
二回の相続を一件で申請できる場合でも、相続があった事実や各死亡日まで省略するものではありません。登記原因に、最初の被相続人の死亡日と中間相続人の氏名・相続、次の死亡日・相続を記載します。
たとえば、Aが2020年5月1日に死亡してBが単独相続し、Bが2025年8月1日に死亡してCが相続した場合の原因欄の考え方は、「令和2年5月1日B相続 令和7年8月1日相続」です。これは説明用の例で、申請書全体のひな形ではありません。
法務局の数次相続の記載例では、「相続人」の欄に最初の登記名義人を被相続人として記し、最終の相続人の住所・氏名、複数なら持分等を記載しています。現在の様式・個別の権利関係に合わせ、実際の記載を確認してください。
- 各段階の相続を証明する戸籍・除籍等、相続放棄等に関する資料
- 遺言や遺産分割協議書等、当該不動産を誰が取得したかの資料
- 登記名義人と被相続人の同一性、最終相続人の住所等を証明する資料
- 不動産の登記内容、登録免許税の課税価格・免税の確認資料等
法定相続情報一覧図の写し等で戸籍資料に代えられる場合もありますが、各段階の相続関係や分割の証明まで不要になるわけではありません。申請人の検索用情報・国籍等の情報を含め、令和8年10月5日以降申請用の数次相続の記載例で必要事項を確認してください。
本人が法務局の案内を利用して申請する方法もあります。専門家へ登記申請書の作成・提出代理を依頼する場合は、司法書士等へ相談します。Treeは行政書士として扱える戸籍確認や権利義務に関する書類作成等と、登記・裁判所提出書類・税務申告を分けて対応します。
登録免許税は「一件なら必ず半額」とは限らない
相続による所有権移転登記の通常の登録免許税率は、課税価格の1,000分の4(0.4%)です。中間の登記を別にしない一件の申請では、中間者名義への別の移転登記の税が生じないという利点があります。ただし、免税措置が適用される場合もあるため、二件を一件にすれば必ず税額が半分になると保証することはできません。
2026年11月時点では、土地を相続した人が、その登記を受ける前に死亡した場合、その死亡した人を名義人とするための所定の土地の相続登記について、2027年3月31日まで登録免許税の免税措置があります。建物まで当然に対象になるものではなく、その次の相続の登記も、この理由だけで全部免税になるわけではありません。
土地の価額が100万円以下の場合等の別の免税措置もあります。対象となる登記・土地・持分・申請期間・免税の記載等を、国税庁の登録免許税の税額表と法務局で確認してください。登録免許税、戸籍等の実費、司法書士等の報酬は分けて見積もりを確認します。
相続登記義務化|古い相続と数次相続の期限
2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されました。基本となるのは、自分のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内という期限です。亡くなった日から全国一律に数えるものではありません。
2024年4月1日より前の相続も対象です。施行前に取得を知っていた未登記不動産は、原則として2027年3月31日までに対応する必要があります。施行後に相続による取得を知った場合は、その知った日から3年以内という取扱いもあるため、全員の期限が同じではありません。
数次相続では、相続関係・各取得を知った時期・分割の時期・既にされている登記等から、それぞれの義務と期限を確認します。次の相続が起きた、協議が始まった、中間省略を検討しているというだけで、何もせず期限を待ってよいとは考えないでください。
遺産分割が成立した場合にも、その内容を反映する登記について、分割から3年以内という追加的義務等の確認が必要です。基本的な義務への対応をせず「分割するまで期限は始まらない」と考えることはできません。法定相続分で登記した後の分割や、相続人申告登記の後の分割も含め、法務省の申請義務の案内で確認してください。
施行前に既に遺産分割をしていた場合まで、過去の分割日から単純に3年を数えるものではありません。施行前の相続については、取得を知った日と2024年4月1日の遅い方を基準とする経過措置があります。法定相続分の登記後に施行前の分割があった場合にも、分割日と施行日の遅い方を基準とするため、古い分割の具体的な期限は個別に確認してください。
正当な理由なく義務を怠った場合は、10万円以下の過料の対象となり得ます。期限の翌日に一律に最大額が自動請求される制度ではなく、登記官の催告等の手続があります。相続人が極めて多数、争いがあるなどの事情も含め、正当な理由の有無は具体的に確認します。
相続人申告登記は、所有権移転の登記とは別
期限内の本来の相続登記が難しい場合には、登記名義人の相続人である旨等を申し出る相続人申告登記の利用も検討できます。数次相続で登記名義人の相続人の地位を承継した場合も、必要な相続関係資料等を確認します。
これは所定の基本的義務を履行したとみなす制度で、申出人について効果が生じます。他の相続人も自動的に全員済むものではなく、持分・所有権取得を確定して売却等ができる登記でもありません。申出後に遺産分割で取得した場合等の追加的義務は、この申告だけでは果たせません。
また、申出前に既に成立した遺産分割に基づく登記義務は、相続人申告登記では履行できません。法務省の相続人申告登記の案内や法務局で、利用できる場面とその後の申請を確認してください。
Treeへの相談・書類作成の範囲と料金
Treeは、戸籍資料の収集・確認、法定相続人の確認、合意した内容に基づく遺産分割協議書の作成等を支援します。相続登記は連携する司法書士、相続税の計算・申告は税理士、紛争の解決・交渉は弁護士等の担当としてご案内します。相続放棄・限定承認など家庭裁判所に提出する書類を、Treeが作成・提出するものではありません。
通常の遺産分割協議書作成プランは、ミニマム43,780円、スタンダード87,780円(税込)と案内しています。ただし、総合料金表では、数次相続が発生している場合、または法定相続人が10名以上の場合は、表示価格の倍額としています。本記事の数次相続を、通常料金のまま一律に受任する案内ではありません。
ミニマムは依頼者が用意した戸籍等の確認・協議書の作成等、スタンダードは所定の資料取得代行・法定相続情報一覧図・製本郵送等を含むプランです。対象となる相続の範囲、必要資料、修正期間、書類取得費・郵送費、司法書士・税理士等の別報酬を、依頼前に見積もりで確認してください。
よくある質問
Q. 最後に相続する人が一人なら、中間省略できますか?
それだけでは決まりません。最終以外の相続で共同相続人数名が権利を取得している場合は、その状態のまま一件の移転にはまとめられません。各段階の取得と分割等を確認する必要があります。
Q. 中間が単独相続なら、最後は兄弟共有でも申請できますか?
最終の相続人が複数という理由だけで一件の申請ができなくなるわけではありません。法務局の記載例にも、中間が単独で、最終の二人が各2分の1を取得する例があります。戸籍・取得の根拠・各持分を確認してください。
Q. 父が一人っ子なら、祖父の単独相続人ですか?
子の人数だけでは判断できません。祖父の配偶者等、他の相続人や遺言等も確認します。父が単独でその不動産を相続したことを、必要な資料で証明できるかが問題になります。
Q. 二件に分けると、登録免許税は必ず二倍ですか?
必ず二倍とはいえません。死亡した中間相続人を土地の名義人とする所定の登記などに、期間・対象を限った免税措置があります。建物や次の相続まで同じ免税になるとは限らず、対象と税額を個別に確認します。
Q. 相続人申告登記をすれば、遺産分割後も登記は不要ですか?
不要にはなりません。相続人申告登記は所有権移転を完成させる登記ではなく、所定の基本的義務に対応する制度です。申出後の分割で取得した場合等は、分割から3年以内という追加的義務も確認してください。
Q. Treeに登記申請まで依頼できますか?
Treeは行政書士として扱える戸籍確認・遺産分割協議書等の作成を担当します。登記申請書の作成・提出代理は司法書士等、相続税の申告は税理士、紛争は弁護士の担当範囲として、連携や別費用を事前にご案内します。
各相続の資料と、必要な手続きから整理
死亡した方と死亡順、現在分かっている相続人、不動産、遺言・協議書・登記の状況を、分かる範囲でお知らせください。数次相続の料金条件と書類作成の範囲、登記等を担う専門家との連携をご案内します。相談は無料です。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。