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婚姻費用分担請求とは?別居中の生活費の相場と請求方法

更新: 約12分で読めます

別居を始めたものの、生活費をどう確保すればよいのかわからない——この問題は、離婚を考えている方が最も不安に感じるポイントの一つではないでしょうか。法律上、夫婦は婚姻が継続している限り、別居中であっても生活費を分担する義務を負います。これが婚姻費用分担請求の制度です。民法第760条は「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」と定めており、収入の少ない側は、収入の多い側に対して生活費の支払いを求めることができます。この記事では、婚姻費用の算定方法・相場・請求手続きをわかりやすく解説します。

婚姻費用のポイントをひと言でまとめると、「別居中でも離婚が成立するまでの間、収入の少ない配偶者は相手に対して生活費(婚姻費用)を請求でき、合意できなければ家庭裁判所に調停を申し立てられる」ということです。

「別居中の生活費が心配」「婚姻費用の請求をどう進めればよいかわからない」——そんな方は、まず専門家にご相談ください。行政書士法人Treeでは、離婚に伴う取り決めの書面化をサポートしております。相談は何度でも無料です。

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婚姻費用とは?どんな費用が含まれるのか

婚姻費用とは、夫婦が通常の社会生活を送るために必要な一切の費用のことです。「生活費」とほぼ同義ですが、法律用語としては婚姻費用と呼ばれ、以下のような費用が含まれます。

費用の種類 具体的な内容
衣食住費 食費、住居費(家賃・住宅ローン)、水道光熱費、被服費
医療費 通院費、薬代、入院費
子どもの養育費 子どもの食費・衣服費・教育費・医療費(婚姻中は婚姻費用に含まれる)
教育費 学校の授業料、塾・習い事の費用
交際費 社会生活を維持するために必要な交際費

婚姻費用は離婚が成立するまでの間発生します。離婚が成立した後は、子どもに関する費用のみが「養育費」として引き続き発生し、元配偶者の生活費は対象外になります。つまり、別居中の生活費を確保するには、離婚が成立する前に婚姻費用の請求を行うことが重要です。

婚姻費用の相場はどのくらい?算定表の見方

婚姻費用の金額は、裁判所が公表している「婚姻費用算定表」を使って算出するのが一般的です。この算定表は2019年12月に改定されたもので、裁判所の公式ページから確認できます。

算定表の基本的な使い方

算定表は、子どもの人数と年齢に応じて複数の表に分かれています。該当する表を選んだら、縦軸に「義務者(支払う側)の年収」、横軸に「権利者(受け取る側)の年収」をあてはめ、交差する位置の金額が目安となります。

  • 給与所得者と自営業者で目盛りが異なるため、正しい側を参照する
  • 子どもが複数いる場合や年齢が異なる場合は、対応する表を選ぶ
  • 算定表の金額は月額で表示されている

婚姻費用の相場の目安

以下は、裁判所の算定表を踏まえた概算例です。実際には給与所得者か自営業者か、子どもの年齢区分、個別事情により金額は前後します。

夫の年収(給与) 妻の年収(給与) 子ども 婚姻費用の目安(月額)
500万円 0円(専業主婦) なし 約8〜10万円
500万円 0円(専業主婦) 1人(0〜14歳) 約10〜12万円
500万円 100万円 1人(0〜14歳) 約8〜10万円
700万円 0円(専業主婦) 2人(0〜14歳) 約16〜18万円
700万円 200万円 2人(0〜14歳) 約12〜14万円

算定表はあくまで標準的なケースを想定したものであり、住宅ローンの負担状況、子どもの私立学校の学費、病気による医療費など、特別な事情がある場合は加算・減算されることがあります。

婚姻費用はいつから請求できる?

婚姻費用の支払い義務は、法律上は婚姻と同時に発生しています。しかし、実際に相手に支払いを求める場面では、請求の意思を明確にした時点以降の分が認められることが多いです。もっとも、具体的にいつから認められるかは、別居開始時期や当事者間のやり取りなど個別事情によって異なります。

具体的には、家庭裁判所に婚姻費用分担請求の調停を申し立てた月からの支払いが命じられるのが一般的です。別居を開始してから長期間にわたって請求しないでいると、過去にさかのぼっての請求が認められにくくなる傾向があるため、別居を始めたらできるだけ早く請求の意思を示すことが重要です。

なお、調停申立ての前に内容証明郵便で支払請求をしておくと、少なくとも「いつ請求したか」を後で証拠として示しやすくなります。ただし、実際にどの時点から婚姻費用が認められるかは、最終的には個別事情に応じて判断されます。

婚姻費用分担請求の手続きはどう進める?

Step 1:夫婦間で話し合う

まずは夫婦間で婚姻費用の金額や支払方法について話し合います。合意ができた場合は、後のトラブルを防ぐために合意内容を書面に残しておくことをおすすめします。口約束だけでは、相手が支払いをやめた際に強制執行ができません。

Step 2:合意できなければ家庭裁判所に調停を申し立てる

話し合いがまとまらない場合や、そもそも相手が話し合いに応じない場合は、家庭裁判所に婚姻費用の分担請求調停を申し立てることができます。

項目 内容
申立先 相手方の住所地を管轄する家庭裁判所(当事者間で合意がある場合は、合意で定めた家庭裁判所も可)
申立費用 収入印紙 1,200円 + 郵便切手代(裁判所により異なる)
必要書類 申立書・戸籍謄本・申立人の収入証明書(源泉徴収票・確定申告書等の写し)
期間の目安 申立てから解決まで概ね2〜4か月程度

調停では、調停委員が双方の収入や生活状況を聴き取り、算定表を参考にしながら適正な金額を提案します。合意に至れば調停調書が作成され、これは確定判決と同じ効力を持ちます。相手が支払わない場合には強制執行が可能ですが、実際に強制執行を行う際には調停調書の正本や送達証明書などの追加書類が必要になります。

Step 3:調停が不成立なら審判に移行する

調停で合意に至らなかった場合は、自動的に審判手続きに移行します。審判では、裁判官が双方の事情を審理したうえで婚姻費用の金額を決定します。審判で決定された金額にも強制執行力があります。

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婚姻費用が減額・免除されるケースとは?

婚姻費用は常に満額が認められるわけではありません。以下のような事情がある場合、減額または免除されることがあります。

請求する側に有責性がある場合

別居の原因が、婚姻費用を請求する側の不貞行為(浮気・不倫)にある場合は、婚姻費用の請求が減額される、または子どもの養育に必要な部分のみに限定される可能性があります。ただし、有責配偶者であっても完全に免除されるわけではなく、子どもの生活に必要な費用は認められるのが一般的です。

義務者の収入が減少した場合

失業や病気などにより義務者(支払う側)の収入が大きく減少した場合は、婚姻費用の減額が認められることがあります。この場合は、改めて調停を申し立てるか、当事者間で合意のうえ金額を変更します。

同居しているが家庭内別居の場合

同居中であっても、実質的に生活費の分担がされておらず、家計が分離しているような事情があれば、婚姻費用が問題となる余地はあります。ただし、別居事案に比べると事情の個別性が強く、住居費や光熱費の共有状況なども考慮されるため、具体的には専門家への確認が望ましいでしょう。

婚姻費用と養育費は何が違う?

婚姻費用と養育費は混同されやすいですが、対象範囲と発生する時期が異なります。

比較項目 婚姻費用 養育費
対象 配偶者と子どもの生活費全般 子どもの生活費・教育費のみ
発生時期 婚姻中(別居中を含む) 離婚後
終了時期 離婚成立まで 子どもが経済的に自立するまで
算定表 婚姻費用算定表を使用 養育費算定表を使用
金額の傾向 養育費より高い(配偶者の生活費を含むため) 婚姻費用より低い

離婚成立後は婚姻費用の請求ができなくなるため、別居中に離婚を急がず、まず婚姻費用の分担請求を行ったうえで、離婚条件の交渉を進めるという順序が経済的には有利になる場合があります。

養育費の算定方法と取り決め方については「離婚公正証書の作り方と費用」でも触れています。養育費の具体的な相場と計算方法は「養育費の相場と計算方法|無料シミュレーターで簡単に算出」をご覧ください。

よくある質問

Q. 婚姻費用は過去にさかのぼって請求できますか?

実務上は、請求の意思を明確にした時点(調停申立月など)以降の婚姻費用が認められることが多いですが、個別事情により判断は異なります。請求していなかった過去の期間については、遡及が認められにくい傾向にあります。そのため、別居を開始したらできるだけ早く請求することが重要です。

Q. 相手が婚姻費用を払ってくれない場合はどうすればよいですか?

調停調書や審判に基づく婚姻費用であれば、家庭裁判所を通じた履行勧告や、相手の給与・預貯金に対する強制執行(差し押さえ)を行うことができます。当事者間の合意書のみの場合は、まず調停を申し立てて調停調書を取得するか、公正証書を作成しておく必要があります。

Q. 自分に収入がある場合でも婚姻費用を請求できますか?

請求できます。婚姻費用は夫婦の収入の差額に基づいて算定されるため、自分に収入があっても相手の収入のほうが高ければ差額分の請求が可能です。算定表で確認してみてください。

Q. 婚姻費用の請求は行政書士に依頼できますか?

行政書士は、婚姻費用に関する合意内容の書面化(合意書の作成)をお手伝いできます。ただし、相手方との交渉代理や調停・審判の代理は行政書士の業務範囲外です。交渉が必要な場合は弁護士への相談をおすすめします。合意が成立している場合の書面化は、行政書士に依頼するのが費用を抑えやすい方法です。

まとめ

別居中の生活費に不安を感じたら、婚姻費用分担請求という制度があることを覚えておいてください。

  • 婚姻費用は民法第760条に基づく夫婦の分担義務であり、別居中でも離婚が成立するまで請求可能
  • 金額の目安は裁判所の婚姻費用算定表で確認でき、夫婦の収入と子どもの人数・年齢で算出される
  • 合意できなければ家庭裁判所に調停を申し立て、調停不成立なら審判で決定される
  • 請求は早い段階で行うことが重要。過去への遡及は認められにくい

婚姻費用について合意ができた場合は、その内容を書面に残しておくことで将来のトラブルを防げます。離婚協議書や離婚公正証書の作成を検討される方は、行政書士法人Treeにご相談ください。

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