公開日:2026年5月11日
外国人が日本国内で在留資格を失う、または不法滞在・不法就労等で入管法違反となった場合、出入国在留管理庁(入管庁)による退去強制(強制送還)の手続が開始されます。退去強制の対象となっても、配偶者・子が日本国籍を有する場合、生活の本拠が日本にある場合、人道的配慮が必要な場合など、一定要件下では「在留特別許可(在特許可)」によって日本での在留継続が認められることがあります。在特許可は法務大臣の裁量処分ですが、令和5年改正入管法(令和5年法律第56号)により**申請手続が創設**され、令和6年6月10日から運用されています。入管庁が公表する「在留特別許可に係るガイドライン」(令和6年6月10日施行)が運用指針となっています。本記事では、退去強制の手続と在留特別許可申請の実務を整理します。
本記事の結論:
- 退去強制手続は入管法24条の事由該当性から始まり、違反調査→違反審査→口頭審理→法務大臣裁決→退去強制令書発付の段階で進行します。
- 在留特別許可(入管法50条)は法務大臣の裁量処分ですが、令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)により申請手続が創設されました。永住許可保持・かつて日本国民として本籍を有したこと・人身取引等被害・難民/補完的保護対象者の認定・その他特別に在留を許可すべき事情等が考慮事情として法定されています。
- 令和5年改正入管法により3か月ごとの収容要否の見直し運用と監理措置制度が整備されました。仮放免・監理措置中の就労可否は在留資格・許可条件により異なります。
- 退去強制処分の取消訴訟・執行停止申立て・収容中の身柄解放を求める弁護活動は弁護士業務です。Treeの行政書士業務は申請取次による在留特別許可申請に関する理由書・陳述書・立証資料の作成支援等に限定されます。
在留特別許可申請・在留資格関連申請のサポート
申請取次行政書士が、在留特別許可申請に関する理由書・陳述書・立証資料の整理、申請手続に必要な書類整理を支援します。退去強制処分の取消訴訟・行政不服審査・収容中の弁護活動は提携弁護士をご紹介します。
目次
根拠法令
- 出入国管理及び難民認定法24条(退去強制事由)
- 入管法27条〜31条(違反調査)・43条〜47条(違反審査)・48条(口頭審理)・49条(異議申出)
- 入管法50条(在留特別許可、令和5年改正により申請手続を含む)
- 入管法51条(退去強制令書)・52条(送還)・54条(仮放免)
- 入管法22条の4(在留資格取消)・24条の3(出国命令制度)
- 令和5年改正入管法(令和5年法律第56号):在留特別許可の申請手続創設、収容に代わる監理措置制度の整備、被収容者の3か月ごとの収容要否見直し等。令和6年6月10日主要部分施行
- 「在留特別許可に係るガイドライン」(入管庁、令和6年6月10日改訂版運用開始)
- 入管法5条1項9号(上陸拒否事由)
- 行政事件訴訟法14条1項・2項(取消訴訟の出訴期間)・25条(執行停止)
1. 退去強制事由(入管法24条)
入管法24条は退去強制事由を1号〜10号に分類して列挙しています。代表的なものとして、1号の不法入国、2号の不法上陸、4号イの資格外活動の専従、4号ロの在留期間更新・変更を受けないで在留期間を経過した不法残留(オーバーステイ)、4号リの一定の刑罰法令違反、4号ヌの売春関係事犯、5号の旅券等の不正受交付等、出国命令違反などがあります。条文は号・項が細かく分かれているため、実際の事案では該当号を個別に確認する必要があります。退去強制事由に該当する疑いがある外国人は、入管法27条以下の違反調査の対象となります。
2. 退去強制手続の流れ
退去強制手続は3段階で進行します。第1段階は「違反調査」(入管法27条〜31条)で、入国警備官が事実関係を調査します。違反調査の段階で容疑者収容のため必要があると認める場合は、収容令書が発付され身柄が収容されることがあります。第2段階は「違反審査」(入管法43条〜47条)で、入国審査官が退去強制対象者に該当するかを審査し、該当すると認定した場合は認定通知が行われます。認定に不服がある場合は、認定の通知を受けた日から3日以内に特別審理官に対して口頭審理を請求できます(入管法48条)。第3段階は「口頭審理」で、特別審理官が違反該当性・在留特別許可の必要性を審理します。口頭審理の判定に異議があれば、3日以内に法務大臣への異議申出ができ(入管法49条)、法務大臣の裁決を経て退去強制令書または在留特別許可(入管法50条)の処分が下されます。
3. 在留特別許可申請(入管法50条)|令和6年6月10日施行の新制度
令和5年改正入管法により、在留特別許可(入管法50条)について申請手続が創設され、令和6年6月10日から運用されています。現在は、退去強制手続の過程で、外国人本人からの申請または職権により在留特別許可が判断される制度となっています。改正後の入管法50条は、退去強制対象者に該当する場合であっても、永住許可を受けているとき、かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき、人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき、難民認定または補完的保護対象者の認定を受けているとき、その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるときには、申請または職権により在留を特別に許可できる旨を定めています。ただし、退去強制令書が発付された後は在留特別許可の申請ができないため、口頭審理・異議申出段階までに事情を整理して主張立証することが重要です。在留特別許可は法務大臣の裁量処分であるため、申請すれば当然に許可されるものではなく、退去強制手続の過程で在留継続を求める事情を理由書・陳述書・立証資料により具体的に主張立証する必要があります。
4. 在留特別許可ガイドラインの判断要素
入管庁が公表している「在留特別許可に係るガイドライン」(令和6年6月10日施行の改訂版)は、在特許可の判断における積極方向・消極方向に考慮され得る事情を例示しています。積極方向に考慮され得る事情として、日本人配偶者との真正かつ安定した婚姻関係、日本人実子の監護養育、長期にわたる在留と日本社会への定着、人身取引等の被害、難民認定または補完的保護対象者の認定を受けていること、人道上配慮を要する事情などが挙げられます。消極方向に考慮され得る事情として、重大な刑事犯罪歴(薬物・凶悪犯罪等)、偽装結婚・偽装認知への関与、不法就労期間が長期にわたる、退去強制歴・出国命令歴がある、暴力団等の反社会的勢力との関係等が挙げられます。どの事情がどの程度重視されるかは、退去強制事由の内容、違反態様、家族関係、素行、生活状況等との総合判断になります。
5. 口頭審理・在留特別許可申請での主張立証ポイント
口頭審理および在留特別許可申請手続は、退去強制手続のなかで在特許可を勝ち取るための主要な機会となるため、立証準備が極めて重要です。主張立証のポイントは、(1)日本人配偶者・子との家族関係の真正性(婚姻届・住民票・写真・連絡記録・親族・知人の証言書等)、(2)日本での生活基盤(住居・就労状況・納税状況・社会保険加入歴等)、(3)日本社会への適応・貢献(日本語能力・地域活動・ボランティア・学校生活等)、(4)本国における生活困難(治安・宗教的迫害・経済的困窮・医療事情等)、(5)反省と再発防止策(違反事実の認否と更生の意欲)の5要素を中心に整理します。立証資料は時系列・人物関係に整理した立証趣旨書とともに提出することが効果的です。具体的な主張立証戦略の構築は弁護士業務範囲となるため、複雑な事案では弁護士へのご相談を推奨します。
6. 仮放免・監理措置と収容|就労可否と保証金の注意点
退去強制手続の進行中、収容令書または退去強制令書に基づき、入国者収容所または地方入管局の収容場に収容されることがあります。収容中、健康上の理由・人道的配慮等で身柄拘束を解除する制度が「仮放免」(入管法54条)です。仮放免請求は、被収容者本人のほか、代理人、保佐人、配偶者、直系の親族または兄弟姉妹が行うことができます。許可される場合は、保証金の納付、住居指定、出頭義務、行動範囲の制限などの条件が付されることがあります。令和5年改正入管法により、被収容者について3か月ごとに収容の要否を見直す運用や、収容に代わる「監理措置制度」が整備されました。監理措置は、監理人による監理のもとで手続を進める制度であり、仮放免とは別の制度です。仮放免中や監理措置中に就労できるかは、在留資格の有無、活動資格、仮放免・監理措置の条件等により異なります。不法残留等で就労資格がない場合は、仮放免や監理措置になっても就労できるようになるわけではありません。
7. 退去強制令書発付後の処分取消訴訟
退去強制令書が発付された後は、在留特別許可をしない裁決や退去強制令書発付処分の取消訴訟、執行停止申立て等を検討します。取消訴訟には、原則として処分があったことを知った日から6か月以内(行政事件訴訟法14条1項)、かつ処分の日から1年以内(同条2項)という出訴期間の制限があるため、直ちに弁護士へ相談する必要があります。並行して、執行停止申立て(同法25条)により送還の停止を求めるのが実務上の対応です。処分取消訴訟・執行停止申立てはいずれも弁護士業務範囲となるため、退去強制令書発付段階では弁護士への速やかな相談が必要です。並行して、入管庁に対する仮放免請求(再申請)も検討します。
8. 出国命令制度との違い|オーバーステイで自首出頭する場合
出国命令制度(入管法24条の3)は、自発的に出頭した不法残留者で、重大な違反歴等がなく、速やかな出国意思を表明している者を対象に、収容されずに出国できる制度です。出国命令により出国した者の上陸拒否期間は原則1年と、退去強制(原則5年)と比べて短い点が利点であり、再来日希望者の選択肢となります。出国命令制度の対象となるためには、不法残留であり、自ら出頭し、過去に一定の退去強制歴等がないこと、犯罪歴がないこと等の要件を満たす必要があります。要件該当性の判断は事案により異なるため、自首出頭前に申請取次行政書士・弁護士に相談することを推奨します。
業務範囲の整理
行政書士業務(Treeで対応可能)
- 申請取次行政書士による在留特別許可に関する理由書・陳述書・立証資料の作成支援
- 在留特別許可申請手続に必要な書類整理、入管への提出方法の確認
- 家族関係・在留歴・生活基盤の客観的事実の整理
- 仮放免請求書の作成支援(本人、配偶者、直系親族、兄弟姉妹等による請求を想定)
- 在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更申請(在特許可後の手続)
業務範囲外(提携専門家をご紹介)
- 退去強制令書取消訴訟・在留特別許可不許可処分取消訴訟・執行停止申立ての代理(弁護士業務)
- 収容中の身柄解放を求める弁護活動・面会対応(弁護士業務)
- 主張立証戦略の構築・口頭審理の代理(弁護士業務)
- 難民認定申請の代理・難民不認定処分の取消訴訟(弁護士業務)
- 刑事事件の弁護(弁護士業務)
FAQ|よくあるご質問
Q1. 在留特別許可は申請できますか。
A. 令和5年改正入管法により在留特別許可の申請手続が創設され、令和6年6月10日から運用されています。もっとも、在留特別許可は法務大臣の裁量処分であるため、申請すれば当然に許可されるものではありません。退去強制手続の過程で、在留継続を求める事情を理由書・陳述書・立証資料により具体的に主張立証する必要があります。なお、退去強制令書が発付された後は申請ができないため、口頭審理・異議申出段階までに準備することが重要です。
Q2. 自首出頭で在特許可を得る確率は。
A. 在留特別許可の可否は、退去強制事由、違反態様、家族関係、日本での生活基盤、素行、消極要素の有無などを総合して判断されるため、個別事案について確率を示すことはできません。公表統計を見る場合も、退去強制手続全体、口頭審理段階、異議申出段階など、母数によって比率が大きく異なるため、単純に「何割が許可される」とはいえません。
Q3. 偽装結婚を理由とする退去強制で在特許可は出ますか。
A. 偽装結婚関与は消極方向に強く考慮される要素のため、原則として在特許可は困難とされます。ただし、人身取引被害・脅迫被害等の特殊事情がある場合は、人道的配慮の観点から検討されることがあります。事案ごとの判断となるため、弁護士へのご相談を推奨します。
Q4. 出国命令制度との違いは。
A. 出国命令制度(入管法24条の3)は、自発的に出頭した不法残留者で重大な違反歴等がない者が対象で、収容されずに出国できる制度です。出国後の上陸拒否期間が原則1年(退去強制は原則5年)と短い点が利点ですが、要件該当性の判断は事案により異なります。
Q5. 在特許可を得た場合の在留資格は。
A. 事案に応じて、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、特定活動などの在留資格が付与されることがあります。在留期間は、家族関係、生活状況、違反内容、許可時の個別事情により判断されるため、一律に何か月から始まると断定することはできません。
Q6. 退去強制歴があると将来の入国は。
A. 入管法5条1項9号により、初回の退去強制歴がある者は退去強制の日から原則5年間、過去に退去強制または出国命令歴がある者は原則10年間、出国命令により出国した者は原則1年間、日本への上陸を拒否されます。また、1年以上の拘禁刑等に処せられた者や薬物関係法令違反により刑に処せられた者などは、期間制限とは別に上陸拒否事由が問題となります。期間経過後も、在留資格認定証明書交付申請や上陸審査で個別事情が審査されます。
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在留特別許可申請・在留資格関連申請のサポート
申請取次行政書士が、在留特別許可申請に関する理由書・陳述書・立証資料の整理、申請手続に必要な書類整理を支援します。退去強制処分の取消訴訟・行政不服審査・収容中の弁護活動は提携弁護士をご紹介します。
まとめ
退去強制と在留特別許可は、外国人の日本での在留継続をめぐる最重要かつ最終局面の手続です。退去強制事由(入管法24条)への該当性が確定すると、違反調査・違反審査・口頭審理の3段階を経て、法務大臣裁決により在特許可または退去強制令書が決定されます。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)により在留特別許可の申請手続が創設され、外国人本人からの申請または職権による判断という制度になっています。日本人配偶者・実子・長期在留・人道配慮等の積極方向の事情の主張立証と、消極方向の事情への対応戦略の構築が鍵となります。Treeでは申請取次行政書士が在特許可申請に関する理由書・陳述書・立証資料の作成支援、家族関係・生活基盤の客観的事実整理を担当し、退去強制令書取消訴訟・執行停止申立て・収容中の弁護活動・主張立証戦略の構築は提携弁護士をご紹介する連携体制で対応します。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。


