離婚関連

婚姻無効・婚姻取消の手続|偽装結婚・重婚・詐欺強迫の家事調停と人事訴訟

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結婚生活を継続できなくなった際、通常は協議離婚・調停離婚・裁判離婚といった「離婚」の手続を選択しますが、そもそも婚姻自体が法律上無効または取消可能なケースでは、「婚姻無効確認」または「婚姻取消」のため、まず家庭裁判所での家事調停を検討し、合意に相当する審判または人事訴訟により戸籍上の整理を行う必要があります。婚姻無効・婚姻取消は離婚と異なり、婚姻自体が初めからなかったもの(無効)または将来に向かって解消されるもの(取消)として扱われ、戸籍記載・財産関係・姻族関係の処理が離婚とは異なります。重婚・近親婚・詐欺強迫による婚姻・婚姻意思を欠く婚姻(仮装婚)など、無効・取消事由は限定列挙されており、家事事件手続法に従って家庭裁判所で判断されます。本記事では、婚姻無効・婚姻取消の制度と業際を整理します。婚姻無効・婚姻取消そのものは紛争性のある家事事件であり、家事調停申立て・人事訴訟提起・代理交渉・主張整理書面の作成は弁護士・司法書士業務です。行政書士は離婚協議書・夫婦間契約書(紛争性のない合意書面)の作成等に限定されます。

本記事の結論:

  • 婚姻無効事由は民法742条(人違い・婚姻意思を欠く仮装婚等)、婚姻取消事由は民法731条以下(不適齢・重婚・近親婚・詐欺強迫)に限定列挙されています。
  • 手続は家事調停(調停前置主義)から始まり、合意成立時は家事事件手続法277条の合意に相当する審判、不成立時は人事訴訟(人事訴訟法2条)で扱います。
  • 再婚禁止期間(旧民法733条)および同期間内の婚姻の取消請求権(旧民法746条)は、2024年4月1日施行の改正民法(令和4年法律第102号)で全面廃止済みです。
  • Treeの行政書士業務は離婚協議書・夫婦間契約書(紛争性のない合意書面)・戸籍収集に限定されます。婚姻無効・婚姻取消に関する事実関係整理・主張立証書面・調停申立書・訴状の作成、調停代理・訴訟代理は弁護士・司法書士業務のためご紹介します。

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根拠法令

  • 民法731条(婚姻適齢、令和4年4月1日施行改正で男女とも18歳)・732条(重婚禁止)・旧733条(再婚禁止期間。令和6年4月1日施行の改正により廃止)
  • 民法734条(近親婚禁止・直系血族・3親等内の傍系血族)・735条(直系姻族間)・736条(養親子等)
  • 民法742条(婚姻無効事由)・743条以下(婚姻取消し)・744条(婚姻取消請求権者)・745条(不適齢者の婚姻取消請求期限)
  • 旧民法746条(再婚禁止期間内の婚姻の取消請求権、同改正で廃止)
  • 民法747条(詐欺・強迫による婚姻取消)・748条(婚姻取消の効果)・749条(離婚規定の準用)
  • 民法766条(離婚後の子の監護に関する事項、婚姻取消にも準用)・768条(財産分与、婚姻取消にも準用)
  • 家事事件手続法257条1項(調停前置主義)・277条(合意に相当する審判)
  • 人事訴訟法2条(人事訴訟事件の範囲)
  • 戸籍法24条(戸籍の訂正)・116条(確定判決による戸籍訂正の申請)
  • 刑法184条(重婚罪・2年以下の拘禁刑、2025年6月1日施行改正刑法による拘禁刑への一本化対応済み)
  • 刑事訴訟法250条2項6号(重婚罪の公訴時効3年)
  • 刑法157条(公正証書原本不実記載罪・電磁的公正証書原本不実記録罪)
  • 出入国管理及び難民認定法22条の4(在留資格の取消)

1. 婚姻無効・婚姻取消・離婚の違い

婚姻無効は、婚姻が初めから法律上の効力を生じないとされるもので、家事調停・合意に相当する審判または人事訴訟により「婚姻が無効であったこと」が公的に確定されます。一方、婚姻取消は、婚姻成立時には一応有効ですが、取消事由がある場合に取消判決により将来に向かって解消されるものです(民法748条1項)。両者の違いは、無効は婚姻が初めから法律上の効力を生じないものとして扱われるのに対し、取消は取消しまでの間は有効な婚姻として扱われる点です。婚姻無効の場合、離婚を前提とする財産分与とは法的構成が異なりますが、実際に共同生活や財産形成がある事案では、不当利得、共有関係、内縁関係類似の清算などが問題となることがあります。婚姻取消は、民法749条により離婚規定(民法766条以下)が準用されるため、財産分与・子の親権者指定・養育費・面会交流の取扱いは離婚とほぼ同じです。婚姻取消の場合でも子の嫡出性は失われず、嫡出子として扱われます。戸籍記載については、婚姻無効の審判または判決が確定した後、戸籍法116条に基づく戸籍訂正の手続により婚姻記載を整理します。婚姻取消の場合は、取消しの旨が戸籍に記載されます。

2. 婚姻無効事由(民法742条)

民法742条は婚姻無効事由を限定的に列挙しています。第1号は「人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき」で、いわゆる仮装婚(在留資格取得目的の偽装結婚等)・本人の意思によらない婚姻届出が該当します。第2号は「当事者が婚姻の届出をしないとき」ですが、ただし書で他の方式の婚姻が成立する場合は無効とならないと定めます。実務で問題となるのは第1号の婚姻意思を欠く婚姻で、最判昭和44年10月31日(民集23巻10号1894頁)は、婚姻意思を「当事者間に真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思」と解釈しており、たとえ婚姻届出自体について意思の合致があっても、それが他の目的を達するための便法として仮託されたものにすぎないときは、婚姻はその効力を生じないと判示しています。在留資格取得目的の偽装結婚、社会保険の扶養目的の便宜的婚姻、親族関係を作出する目的のみの婚姻は、婚姻意思を欠くものとして無効とされる可能性があります。なお、事実上の夫婦の一方が他方の意思に基づかないで婚姻届出を作成提出した場合でも、当時両名に夫婦としての実質的生活関係が存在し、かつ、後に他方の配偶者が届出の事実を知ってこれを追認したときは、当該婚姻は追認により届出当初に遡って有効となると解されています(最判昭和47年7月25日民集26巻6号1263頁)。

3. 婚姻取消事由(民法743条〜747条)

婚姻取消事由は、(1)婚姻適齢違反(民法731条、令和4年4月1日施行改正で男女とも18歳)、(2)重婚(民法732条)、(3)近親婚(民法734条〜736条、直系血族・3親等内傍系血族・直系姻族・養親子等)、(4)詐欺・強迫による婚姻(民法747条)に分類されます。再婚禁止期間(旧民法733条)および同期間内の婚姻の取消請求権(旧民法746条)は、2024年4月1日施行の改正民法(令和4年法律第102号)で全面廃止されました。取消請求権者は事由ごとに異なり、(1)不適齢・(2)重婚・(3)近親婚は当事者・親族・検察官(民法744条1項本文)、加えて重婚に当たる婚姻については前婚の配偶者も取消請求できます(同条2項)。ただし検察官の取消請求権は、当事者の一方が死亡した後は行使できません(同条1項ただし書)。(4)詐欺・強迫による取消は、詐欺・強迫を受けた当事者本人のみに限定されます(民法747条1項)。取消請求の期限は、詐欺発見・強迫を免れた時から3か月(民法747条2項)、適齢到達から3か月(民法745条)等、事由ごとに定められています。

4. 重婚と婚姻取消の手続

重婚は民法732条で禁止され、戸籍法上も二重の婚姻届は通常受理されない仕組みです。もっとも、国際結婚における外国での婚姻の成立・解消の確認、戸籍記載の誤り、離婚の有効性をめぐる争いなどにより、結果として重婚状態が問題となることがあります。重婚状態となった場合、後の婚姻が取消しの対象となります。民法744条により、各当事者、その親族または検察官が取消しを請求できるほか、重婚に当たる婚姻については前婚の配偶者も取消しを請求できます(同条2項)。重婚は刑法184条の重婚罪(2年以下の拘禁刑、2025年6月1日施行改正刑法による拘禁刑への一本化対応済み)の対象となり得るため、事案によっては捜査機関への相談・告発・被害申告等を検討することがあります。なお、重婚罪は長期5年未満の拘禁刑にあたる罪であるため、公訴時効は3年です(刑事訴訟法250条2項6号)。刑事手続への対応や相手方との紛争対応は弁護士に確認する必要があります。重婚を理由とする婚姻取消の手続は、家事調停を経て不調の場合は人事訴訟となります。

5. 詐欺・強迫による婚姻の取消(民法747条)

民法747条1項は、詐欺または強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消を家庭裁判所に請求することができると定めます。詐欺による婚姻取消が問題となる例として、国籍・在留資格、職業・収入、婚姻歴・子の存在、疾病等について、婚姻意思の形成に重大な影響を与える虚偽説明や隠蔽があったと主張されることがあります。ただし、これらが直ちに取消事由となるわけではなく、詐欺といえる行為の有無、婚姻意思決定への影響、発見後3か月以内の請求かどうかを個別に検討する必要があります。請求期限は、詐欺を発見しまたは強迫を免れた時から3か月以内(民法747条2項)です。

6. 偽装結婚・仮装婚と婚姻無効確認

在留資格取得目的・社会保険の扶養目的等で婚姻意思を欠く婚姻届を出した場合、民法742条1号により婚姻無効となる可能性があります。実務で多いのが、(1)配偶者ビザ取得目的の偽装結婚、(2)報酬目的での名義貸し婚姻、(3)相続権発生目的での便宜的婚姻等です。なお、判例上明確に無効とされた典型例は最判昭44.10.31の「子の嫡出化目的の婚姻」と、後の下級審裁判例で確立した「在留資格取得目的の偽装結婚」であり、その他の目的の便宜的婚姻が無効と認定されるかは事案ごとの判断となります。婚姻無効確認の調停・訴訟では、婚姻意思の有無を判断する基礎となる事実(同居実態・経済関係・連絡頻度・婚姻に至る経緯等)の整理が前提となります。これらの主張・立証・整理書面の作成は弁護士業務であり、家事調停申立書類の作成は司法書士業務です。行政書士は婚姻無効・取消事案そのものには関与できません。出入国在留管理庁が偽装結婚を把握した場合は、入管法22条の4に基づく在留資格取消の対象となるほか、刑法157条の公正証書原本不実記載罪・電磁的公正証書原本不実記録罪が成立する可能性もあります。なお、国際結婚一般が直ちに偽装結婚と疑われるわけではなく、配偶者ビザ申請等で婚姻実体を疎明することにより通常の婚姻として処理されます。

7. 家事調停・合意に相当する審判・人事訴訟の流れ

婚姻無効・婚姻取消の手続は、まず家庭裁判所への家事調停申立てから始まります(家事事件手続法257条1項の調停前置主義)。婚姻無効事件は、当事者間で「婚姻が無効である」旨の合意が成立し、家庭裁判所が必要な事実調査を行ったうえで合意の正当性を認めるときは、家事事件手続法277条により合意に相当する審判が出されます。合意に相当する審判は、確定すると確定判決と同一の効力が認められます。合意が成立しない場合は調停不成立となり、人事訴訟法に基づく人事訴訟(家庭裁判所第一審)に移行します。婚姻取消事件も同様に、調停を経て人事訴訟に進みます。合意に相当する審判または人事訴訟の判決が確定した後は、戸籍法116条に基づき、審判書または判決書の謄本・確定証明書等を添付して市区町村で戸籍訂正の手続を行います。必要書類や届出期間は、事件類型と市区町村の取扱いにより確認が必要です。家事調停・人事訴訟の代理は弁護士、家庭裁判所提出書類の作成は司法書士の業務範囲です。

8. 2024年改正民法による嫡出否認権の拡大

婚姻無効・取消が問題となる事案では、生まれた子の父子関係の確定が並行して問題となることが多いため、嫡出否認制度の最新動向も併せて確認が必要です。2024年4月1日施行の改正民法により、嫡出否認権がこれまでの夫のみから母・子にも拡大され(民法774条・775条)、嫡出否認の訴えの出訴期間も1年から3年に伸長されました。再婚禁止期間廃止と併せて、2024年改正は婚姻・親子関係の根幹に関わる広範な制度変更となっています。

業務範囲の整理

行政書士業務(Treeで対応可能)

  • 離婚協議書・公正証書原案の作成(夫婦間に争いがない場合の合意書面に限定)
  • 夫婦間契約書(不貞誓約書・別居合意書等、紛争性なき合意書面)の作成
  • 戸籍収集・親族関係説明図の作成

※ 婚姻無効・婚姻取消は紛争性のある家事事件のため、行政書士はこれらの事案そのものには関与できません。婚姻無効確認・婚姻取消を希望される場合は、初動から弁護士・司法書士に直接ご相談ください。

業務範囲外(提携専門家をご紹介)

  • 婚姻無効確認・婚姻取消に関する事実関係整理・主張立証書面の作成(弁護士業務)
  • 家事調停申立書・人事訴訟提起書・準備書面・主張書面の作成(司法書士・弁護士業務)
  • 家事調停・人事訴訟・家事審判事件の代理(弁護士業務)
  • 慰謝料請求の交渉・訴訟代理(弁護士業務)
  • 重婚罪等に関する捜査機関対応、告訴・告発、相手方との交渉(弁護士業務)
  • 偽装結婚に関連する在留資格取消、退去強制手続、行政不服申立て等の入管対応(事案により弁護士、申請取次行政書士、特定行政書士等の専門家へ確認が必要)

FAQ|よくあるご質問

Q1. 婚姻無効と離婚はどう違いますか。
A. 婚姻無効は、婚姻自体が初めから法律上効力を生じなかったと確認するものです。戸籍上は、婚姻無効の審判または判決が確定した後、戸籍法116条に基づく戸籍訂正の手続により婚姻記載を整理します。離婚は有効な婚姻を将来に向かって解消するもので、戸籍に離婚記載が残ります。財産分与・年金分割等の効果も異なります。

Q2. 偽装結婚を理由に婚姻無効を申し立てたいです。
A. 偽装結婚を理由とする婚姻無効確認は紛争性のある家事事件のため、弁護士に直接ご相談されることを推奨します。実務では、(a)在留資格申請時の入管職員の調査で偽装結婚が指摘されるケース、(b)相続発生時に親族が偽装婚姻の事実を発見するケース、(c)配偶者ビザ更新が拒否されて発覚するケース、(d)前婚配偶者からの指摘で発覚するケース等の典型パターンがあります。婚姻無効確認の事実関係整理書面の作成、家事調停申立て、人事訴訟提起、調停代理・訴訟代理は弁護士業務(家裁提出書類は司法書士業務)のため、Treeでは提携弁護士・司法書士をご紹介します。

Q3. 取消の場合、過去の財産関係はどうなりますか。
A. 民法748条1項により、婚姻取消しは将来に向かってのみ効力を生じます。そのため、取消しまでの婚姻関係を前提に、民法749条による財産分与等の準用、婚姻費用、慰謝料、子に関する事項などが個別に問題となります。具体的な処理は弁護士に確認してください。

Q4. 婚姻取消にも財産分与はありますか。子の親権はどうなりますか。
A. 民法749条が離婚に関する規定(民法766条以下)の準用を定めており、財産分与請求(民法768条準用)のほか、子の親権者指定・養育費・面会交流(民法766条準用)も離婚と同様に取り扱われます。婚姻取消の場合でも子の嫡出性は失われず、嫡出子として扱われます。慰謝料請求や年金分割の取扱いは事案に応じた判断となります。

Q5. 詐欺による婚姻取消の3か月期限は厳格ですか。
A. 詐欺発見または強迫を免れた時から3か月(民法747条2項)は除斥期間と解されるため、原則として伸長は認められません。発見後は速やかに弁護士に相談することが推奨されます。

Q6. 重婚状態を解消するにはどうすればよいですか。
A. 家庭裁判所に重婚を理由とする婚姻取消を申し立てます。重婚罪(刑法184条、2年以下の拘禁刑、公訴時効3年)に該当する事案では、捜査機関への相談・告発・被害申告等の検討も並行する場合があります。戸籍訂正の申立て等の対応も必要です。弁護士・司法書士をご紹介します。

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協議離婚における離婚協議書・公正証書化、婚姻継続中の夫婦間契約書(不貞誓約書・別居合意書等)の作成を支援します。家事審判・人事訴訟の手続自体は弁護士・司法書士をご紹介します。

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まとめ

婚姻無効・婚姻取消は、離婚と異なる別系統の家事事件で、無効事由(民法742条)・取消事由(民法731条以下)が法定されているため、該当事由がない事案では選択できません。重婚・近親婚・詐欺強迫など、特殊事情のある事案では、家事調停を経て合意に相当する審判または人事訴訟に進む手続が必要となり、弁護士・司法書士の専門的対応が不可欠です。とくに偽装結婚の婚姻無効確認では、婚姻意思の有無を判断する基礎となる事実関係の整理が前提となりますが、これは弁護士業務(家裁提出書類の作成は司法書士業務)であり、行政書士の業務範囲外です。Treeでは提携弁護士・司法書士をご紹介する連携体制で初動対応し、行政書士業務範囲としては紛争性のない離婚協議書・夫婦間契約書の作成等で並行対応します。婚姻無効・取消を検討される際は、早期に弁護士へ直接ご相談されることを強く推奨します。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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