結論から言えば、育成就労制度では、監理支援費を育成就労外国人本人から徴収することはできません。監理支援機関は、職業紹介費、講習費、監査指導費その他の監理支援事業に必要な実費を、用途と金額を明示したうえで監理型育成就労実施者等から徴収します。このほか、送出機関が本人から徴収できる費用にも上限が設けられ、来日前の過大な費用負担を抑制する仕組みが採用されています。行政書士法人Treeは、就労ビザ・在留資格手続を職域とする立場から、育成就労計画の認定申請や在留資格申請に必要な書類作成を支援します。賃金控除をめぐる労務問題や契約紛争、税務上の取扱いについては、社会保険労務士・弁護士・税理士と連携して対応します。育成就労制度による外国人の受入れは2027年(令和9年)4月1日に開始されるため、最新の法令・運用要領を確認する必要があります。
目次
育成就労制度の費用負担ルールが問われる背景
「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」(旧・技能実習法を改正したもの。e-Gov掲載の令和9年4月1日施行版)は、技能実習制度で生じた構造的な問題を是正するために設計されました。とりわけ、来日前に外国人本人が送出機関へ多額の手数料を支払い、その借金返済のために失踪・違法就労に至るという連鎖が大きな課題でした。育成就労制度では、誰がどの費用を負担するのかを育成就労計画に明記させ、その内容を認定の対象とすることで、費用負担の透明化と本人負担の抑制を図ります。
以下では、出入国在留管理庁(ISA)・厚生労働省が公表する「育成就労制度Q&A」(出入国在留管理庁)等を基に、本人に負担させてはならない項目と受入機関側が負担すべき項目を整理します。制度は施行前で運用要領の改訂が続くため、断定できない箇所はその旨を付しています。
本人に負担させてはならない費用(負担禁止項目)
特に重要なのが、育成就労法第28条に定められた「監理支援費」の負担ルールです。監理支援費とは、監理支援機関が行う職業紹介、講習、監査・指導その他の監理支援事業に必要な実費であり、監理支援機関は用途と金額を明示したうえで監理型育成就労実施者等から徴収できます。育成就労外国人本人から監理支援費を徴収することはできません。
禁止されるのは直接の請求だけではありません。次のような「実質的に本人へ転嫁する行為」も認められないと整理されています。
- 監理支援費相当額を給与から天引き(控除)すること
- 別名目(協力金・研修費等)に置き換えて本人に負担させること
- 貸付・前借りの名目で実質的に負担させること
- 本人の「同意書」をもって負担させること(同意があっても禁止項目は負担させられない)
報酬については、育成就労外国人が希望する場合、本人名義の預貯金口座へ振り込むよう努めることとされています。口座振込み以外の方法で支払う場合も認められますが、給与明細や報酬支払証明書など、支払状況を確認できる資料を保存する必要があります。
受入機関・監理支援機関が負担すべき費用
公式Q&A等から確認できる、受入機関(育成就労実施者)または監理支援機関が負担する主な費用は次のとおりです。
| 費用項目 | 負担者 | 根拠(公式資料) |
|---|---|---|
| 監理支援費(職業紹介費・講習費・監査指導費・その他諸経費) | 監理型育成就労実施者等(本人からの徴収不可) | 育成就労法第28条/育成就労制度運用要領 |
| 入国後講習・日本語能力向上のための費用 | 育成就労実施者または監理支援機関 | Q&A Q66 |
| 送出機関手数料のうち上限超過分 | 育成就労実施者または監理支援機関 | Q&A Q74 |
| 季節業務で一時帰国する場合の旅費 | 単独型は受入機関、監理型は監理支援機関 | Q&A Q18 |
このように、技能実習制度では実務上あいまいだった負担の所在が、育成就労制度では「本人に負わせない」方向で明確化されています。受入機関にとっては初期費用が増える一方、計画段階で費用構造を確定させておくことが認定の前提となります。
送出機関への手数料は「月給2か月分」が上限
本人負担を抑える仕組みの中核が、送出機関に支払う費用の上限設定です。公式Q&A(Q74)によれば、育成就労外国人が送出機関に支払う費用は、日本の受入機関から支払われる月給(所定内月額)の2か月分までが上限とされています。そして、この上限を超える費用については、育成就労実施者または監理支援機関が負担することとされています。
つまり、送出機関が高額の手数料を設定しても、月給2か月分を超える部分は本人ではなく日本側の機関が負担する建付けです。「借金漬けで来日させない」という制度趣旨に沿った設計といえます。具体的な計算方法や対象費用の範囲は政省令・運用要領で定まるため、最新版の確認が欠かせません。
適法に控除できる費用との線引き
すべての賃金控除が禁止されるわけではありません。住居費・食費・水道光熱費など、本人が実際に利益を受ける費用については、一定の条件下で給与から控除(負担させること)が認められます。ただし、次の条件を満たす必要があります。
- 本人が、提供される食事・宿泊施設その他の利益の内容を十分に理解したうえで合意していること
- 負担額が実費相当額その他の適正な額であること
- 控除する費用の内容と金額を本人に明示すること
- 税金・社会保険料等の法令上の控除を除き、賃金から控除する場合は労働基準法第24条に基づく労使協定を締結すること
- 控除前の賃金が最低賃金法その他の賃金基準を満たしていること
監理支援費のような「負担禁止項目」と、住居費等の「実費控除が認められる項目」を混同しないことが、認定実務上の重要なポイントです。実費の範囲を超える控除は労働基準法上の賃金全額払いの原則(労働基準法第24条)との関係でも問題になり得るため、賃金台帳・控除協定の整備は社会保険労務士と連携して進めるのが安全です。
育成就労計画の認定と費用記載義務
育成就労制度では、育成就労外国人ごとに「育成就労計画」を作成し、外国人育成就労機構の認定を受ける必要があります(認定制)。育成就労の期間は原則3年以内とされ、計画には業務・技能・日本語能力の目標や受入れの内容が記載されます。費用負担についても、誰がどの費用をいくら負担するのかを計画に位置づけることが求められ、本人負担禁止項目に反する計画は認定されません。
制度全体のスケジュールとしては、施行日は2027年(令和9年)4月1日、育成就労計画の認定に係る施行日前申請は令和8年9月1日から可能とされています。また、監理支援機関は許可制となり、技能実習制度の監理団体であっても、あらためて監理支援機関の許可を受けなければ監理支援事業を行えません。対象分野や送出機関の規制、講習・技能評価の詳細は分野別運用方針や政省令で定まるため、これらの最新版を前提に費用設計を行う必要があります。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、育成就労計画の認定申請や就労に必要な在留資格申請について、申請書類の作成や申請取次を行います。費用負担に関する法令上の記載事項を確認し、申請書類に反映するための整理も支援します。賃金控除をめぐる就業規則・労使協定は社会保険労務士、契約紛争や損害賠償に関する相談は弁護士、源泉徴収や課税の取扱いは税理士の業務となるため、必要に応じて各専門家と連携します。外国人材の紹介・あっせんは、有料職業紹介事業の許可を受けた株式会社TreeGlobalPartnersが担当します。
料金は案件の規模・分野や必要な手続により異なるため、個別にお問い合わせください。ご相談は何度でも無料です。就労ビザや在留資格申請については、就労ビザ・外国人雇用サポートをご確認ください。
外国人材の受入れ・登録支援でお困りの企業様へ。行政書士法人Treeでは、在留資格の申請取次に加え、支援計画の作成や各種届出までをサポートします。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
育成就労制度の費用負担ルールは、「本人に借金を負わせない」という制度趣旨を、計画認定と上限規制で具体化したものです。監理支援費は本人負担が禁止され受入機関が全額負担、送出機関手数料は月給2か月分が上限で超過分は日本側が負担、入国後講習費や一時帰国旅費も受入機関側の負担です。一方、住居費・食費などの実費控除は条件付きで認められます。施行は2027年(令和9年)4月1日予定で、政省令・運用要領は改訂が続いているため、最新の公式情報を確認したうえで費用設計を進めてください。
育成就労の費用負担に関するよくある質問
Q:監理支援費を外国人本人の同意のうえで給与から天引きできますか。
A:できません。監理支援費は本人負担禁止項目とされており、本人の同意書があっても、天引き・別名目・貸付名目などいかなる方法でも本人に負担させることは認められません。全額を受入機関側が負担します。
Q:送出機関に支払う手数料はいくらまで本人負担にできますか。
A:公式Q&A(Q74)では、月給(所定内月額)の2か月分までが上限とされています。これを超える費用は、育成就労実施者または監理支援機関が負担します。対象費用の範囲や計算方法は政省令・運用要領で定まるため最新版をご確認ください。
Q:住居費や食費を給与から差し引くのは違法ですか。
A:本人が提供される利益の内容を十分に理解して合意し、負担額が実費相当額その他の適正な額である場合には、住居費や食費を本人負担とすることがあります。ただし、税金・社会保険料等の法定控除以外を給与から差し引くには、労働基準法第24条に基づく労使協定が必要です。最低賃金を満たすかどうかは、原則として控除後の手取り額ではなく、最低賃金の算入対象となる控除前の賃金額を基準に判定します。
Q:日本語講習や入国後講習の費用は誰が負担しますか。
A:公式Q&A(Q66)では、育成就労実施者または監理支援機関が、費用負担を含め日本語能力向上のために必要な措置を講じることとされています。本人に負担させる前提ではありません。
Q:育成就労制度はいつから始まりますか。費用ルールも同時に適用されますか。
A:施行日は2027年(令和9年)4月1日予定で、費用負担ルールも同制度の枠組みとして適用されます。育成就労計画の認定に係る施行日前申請は令和8年9月1日から可能とされています。詳細は政省令の最新版でご確認ください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


