結論から言えば、特定技能1号「鉄道」分野は、業務内容を「軌道整備」「電気設備整備」「車両整備」「車両製造」「運輸係員」「駅・車両清掃」の6区分に分けて運用されており、区分ごとに合格すべき技能試験と求められる日本語水準が異なります。運輸係員は日本語教育の参照枠B1相当以上、ほかの5区分はA2.2相当以上が必要です。鉄道分野は令和6年3月に特定技能制度の対象へ追加された比較的新しい分野で、運用ルールも整備途上にあるため、受入れを検討する事業者は最新の公式情報を都度確認する必要があります。行政書士は、在留資格認定証明書交付申請や変更申請の取次・書類整備を職域として担います。雇用契約・就業規則は社会保険労務士、労使紛争は弁護士、税務は税理士と、士業の役割分担を踏まえてご相談ください。
目次
鉄道分野が特定技能に追加された経緯
鉄道分野は、令和6年3月29日の閣議決定により特定技能制度の対象分野へ追加されました。これは、鉄道の安全・安定輸送を担う現場の人手不足が背景にあり、国土交通省が所管省庁となって受入れの枠組みが整えられたものです。鉄道分野における令和6年度からの向こう5年間(令和6〜10年度)の1号特定技能外国人の受入れ見込数は、最大3,800人とされています。
制度を所管する国土交通省は、各業務区分の試験実施要領を令和7年2月から3月にかけて順次定め、最初に電気設備整備区分の評価試験が令和7年3月から開始されました。鉄道分野は新設分野であるため、試験日程や運用の細目は今後も追加・更新される可能性があります。出入国在留管理庁および国土交通省の公式ページで最新状況をご確認ください。
業務区分とそれぞれの業務内容
国土交通省および出入国在留管理庁が公表する区分と業務内容は次のとおりです。いずれも、当該業務に従事する日本人が通常従事する関連業務に付随的に従事できますが、関連業務だけに専ら従事させることはできません。
| 業務区分 | 主な業務内容 |
|---|---|
| 軌道整備 | 軌道検測、レール交換、まくらぎ交換など軌道等の新設、改良、修繕に係る作業・検査業務等 |
| 電気設備整備 | 電路設備、変電所等設備、電気機器等設備、信号保安設備、保安通信設備、踏切保安設備等の新設、改良、修繕に係る作業・検査業務等 |
| 車両整備 | 鉄道車両の整備業務等 |
| 車両製造 | 鉄道車両、鉄道車両部品等の製造業務等 |
| 運輸係員 | ポイント操作、入換え合図、駅設備管理、旅客案内、運行管理、車掌、運転士業務等 |
| 駅・車両清掃 | 車両内部・外部の清掃、コンコース・駅舎・ホーム・休憩室の清掃等 |
運輸係員区分は、駅での旅客対応や列車の運行に直接関わるため、後述のとおり他区分より高い日本語水準が求められる点が特徴です。
鉄道分野6区分の技能試験と日本語要件|駅・車両清掃も含む
特定技能1号で就労するには、原則として「技能試験」と「日本語試験」の両方に合格する必要があります(技能実習2号を良好に修了した者は試験が免除されます)。鉄道分野では、技能試験は区分ごとに別々の試験が用意されており、日本語要件も区分により異なります。
- 軌道整備・電気設備整備・車両整備:対応する鉄道分野特定技能1号評価試験に合格し、日本語教育の参照枠A2.2相当以上と認められる日本語能力が必要です。
- 車両製造:鉄道分野特定技能1号評価試験(車両製造)に合格するほか、機械加工、仕上げ、電子機器組立て、電気機器組立てまたは塗装の技能検定3級によって技能要件を満たせる場合があります。日本語はA2.2相当以上が必要です。
- 運輸係員:鉄道分野特定技能1号評価試験(運輸係員)に合格し、日本語教育の参照枠B1相当以上と認められる日本語能力が必要です。旅客対応・運行業務の安全性確保のため、他区分より高い水準が要件とされています。
- 駅・車両清掃:鉄道分野特定技能1号評価試験(駅・車両清掃)に合格し、日本語教育の参照枠A2.2相当以上と認められる日本語能力が必要です。
各区分の試験は、国土交通省が指定する実施機関がそれぞれ運営しています。
| 業務区分 | 技能試験の実施機関 |
|---|---|
| 軌道整備 | 一般社団法人 日本鉄道施設協会 |
| 電気設備整備 | 一般社団法人 鉄道電業安全協会 |
| 車両整備 | 一般社団法人 日本鉄道車両機械技術協会 |
| 車両製造 | 一般社団法人 日本鉄道車輛工業会 |
| 運輸係員 | 一般社団法人 日本鉄道運転協会 |
| 駅・車両清掃 | 国土交通省が指定する実施機関(令和8年1月に追加された新設区分のため、実施機関名・試験要領は最新の公式案内をご確認ください) |
試験日程・申込方法・受験地は各実施機関の案内で随時公表されます。受験を予定する場合は、就労を予定する区分の実施機関の最新情報を確認してください。
受入れ機関(特定技能所属機関)に求められる要件
鉄道分野で外国人を受け入れる事業者には、特定技能制度に共通する基準に加え、分野固有の要件があります。特定技能所属機関は、鉄道事業法上の鉄道事業者、軌道法上の軌道経営者、または鉄道事業・軌道事業の用に供する施設若しくは車両の整備、車両の製造、駅若しくは車両の清掃に係る事業を営む者でなければなりません。主な要件は次のとおりです。
- 原則として鉄道分野の事業者による直接雇用です。労働者派遣による受入れは認められていませんが、現行方針では一定の要件を満たす鉄道分野の2事業者間の在籍型出向形態が認められる場合があります。
- 鉄道分野特定技能協議会の構成員になること。受入れ機関は、国土交通省が設置する「鉄道分野特定技能協議会」の構成員となり、協議会・国土交通省が行う調査や指導等に必要な協力を行う必要があります。
- 外国人と締結する特定技能雇用契約が、報酬額を含め日本人と同等以上であること、報酬・労働時間・社会保険等が適正であること。
- 支援計画を作成し、職業生活・日常生活・社会生活上の支援を適切に実施すること(登録支援機関への委託も可能)。
協議会への加入手続には、初回の受入れ前または受入れ後一定期間内に行うべき期限が定められる運用があるため、申請スケジュールと併せて早めに準備することが重要です。
在留資格手続の実務上の流れ
海外から新たに呼び寄せる場合は「在留資格認定証明書交付申請」、すでに日本にいる外国人(技能実習修了者や留学生等)が切り替える場合は「在留資格変更許可申請」を行います。いずれも、業務区分・試験合格(または試験免除)・雇用契約・支援体制などを書類で立証する必要があります。
入管手数料は、2025年4月1日の改定により、在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請が窓口6,000円・オンライン5,500円となっています(在留資格認定証明書交付申請自体には手数料はかかりません)。特定技能1号の在留期間は3年を超えない範囲で法務大臣が個々に指定する期間となり、期間満了前の更新申請が必要です。通算在留期間は原則5年以内ですが、一定の場合には例外的な取扱いがあります。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、申請取次行政書士として、鉄道分野を含む特定技能の在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請の取次と、必要書類の整備・支援計画の作成補助を承っています。区分の確認、試験合格・試験免除の立証、協議会加入の段取りまで、手続全体を見通してご案内します。雇用契約や就業規則の設計は社会保険労務士、労使トラブルは弁護士、税務は税理士と、それぞれの専門家と連携しながら進めます。
料金(税込)は、特定技能1号の在留資格認定・変更申請がスタンダード89,800円、在留期間更新申請がスタンダード33,000円です。登録支援機関サービスを当事務所へ委託する場合には別途の料金が設定されています。万一不許可となった場合の無料再申請保証を含む詳細・お申込みは、就労ビザ・特定技能サポートページをご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
特定技能1号「鉄道」分野は、令和6年3月に追加され、令和8年1月23日の改定で「軌道整備」「電気設備整備」「車両整備」「車両製造」「運輸係員」「駅・車両清掃」の6区分に拡充されました。技能試験は区分ごとに実施機関が異なり、日本語能力は運輸係員が日本語教育の参照枠B1相当以上、ほかの5区分がA2.2相当以上です。原則として鉄道分野の事業者による直接雇用ですが、一定の要件を満たす在籍型出向が認められる場合があります。受入れ機関は鉄道分野特定技能協議会の構成員となる必要があります。試験日程や運用の細目は今後も更新されるため、就労予定の区分の公式情報を確認しながら準備を進めてください。
特定技能「鉄道」分野に関するよくある質問
Q:鉄道分野の業務区分のうち、どれを選ぶかは誰が決めますか。
A:受入れ機関が外国人に従事させる主な業務に対応する区分を選びます。外国人は、合格した試験または認められた技能水準に対応する区分の業務に従事します。たとえば駅係員・車掌・運転士として働くなら運輸係員区分、車両の整備業務なら車両整備区分、駅舎や車両の清掃業務なら駅・車両清掃区分です。複数区分にまたがる業務を想定する場合は、各区分の技能要件と従事可能な業務を公式情報で確認してください。
Q:運輸係員だけ高い日本語能力が求められるのはなぜですか。
A:運輸係員は旅客案内、運行管理、車掌・運転士業務など、利用者の安全や異常時対応に直結する業務を担うため、より高い日本語コミュニケーション能力が求められています。現行方針では、運輸係員は日本語教育の参照枠B1相当以上、ほかの5区分はA2.2相当以上の水準が要件とされています。
Q:派遣会社を通じて鉄道分野の特定技能外国人を受け入れられますか。
A:労働者派遣による受入れは認められていません。原則として鉄道分野の事業者が特定技能外国人を直接雇用します。ただし、現行方針では一定の要件を満たす鉄道分野の2事業者間における在籍型出向形態が認められる場合があります。
Q:技能実習を修了していれば試験は免除されますか。
A:鉄道分野に関する技能実習2号を良好に修了している場合は、技能試験・日本語試験ともに免除される取扱いがあります。ただし、修了した職種・作業と特定技能の業務区分との関連性が問われるため、個別の経歴に応じて適用可否を確認する必要があります。詳しくは公式情報および専門家にご確認ください。
Q:鉄道分野特定技能協議会には必ず加入しなければなりませんか。
A:はい。受入れ機関は、国土交通省が設置する鉄道分野特定技能協議会の構成員となることが受入れの条件です。加入には期限の定めがある運用のため、初めて受け入れる際は申請スケジュールに合わせて早めに手続を進めることをおすすめします。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


