結論から言えば、特定技能1号「自動車整備」で外国人を受け入れるには、外国人本人が「技能試験+日本語試験」または「技能実習2号の良好な修了」のいずれかで要件を満たし、受入企業側が道路運送車両法第78条第1項に基づく認証工場であり、かつ「自動車整備分野特定技能協議会」の構成員であることが前提となります。さらに2020年(令和2年)4月1日施行の改正で「分解整備」が「特定整備」へ改められ、業務範囲の理解も欠かせません。行政書士は申請取次として在留資格手続を担い、認証や許認可は地方運輸局・整備振興会、労務面は社会保険労務士と連携して進めます。本記事では、試験・実習移行・整備主任者との関係を整理します。
目次
特定技能1号「自動車整備」の制度概要
自動車整備分野は、特定技能制度(出入国管理及び難民認定法別表第一の二に基づく在留資格「特定技能」)の対象19分野の一つで、所管は国土交通省(物流・自動車局 自動車整備課)です。深刻化する整備人材の不足に対応するため、一定の技能と日本語能力を有する外国人を受け入れる枠組みとして運用されています。
特定技能1号の在留期間は通算で上限5年、家族の帯同は基本的に認められません。これに対し特定技能2号は在留期間の更新に上限がなく、要件を満たせば家族帯同も可能です。自動車整備分野は2号の対象でもあり、1号で経験を積んだ後に2号へ進む道も用意されています。受入れの根拠となる「自動車整備分野に係る特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」「運用要領」「分野別告示」は、出入国在留管理庁・国土交通省の公式ページで公表されています。
外国人本人に課される要件:技能試験と日本語試験
海外から新たに採用する場合、外国人本人は次の2つの水準を満たす必要があります。
- 技能水準:「自動車整備分野特定技能1号評価試験」に合格すること。試験は一般社団法人日本自動車整備振興会連合会(JASPA)が実施し、合格に必要な技能・知識の程度は、道路運送車両法第55条に基づく「自動車整備士技能検定試験3級」と同水準程度とされています。学科(構造・機能・取扱法、点検・修理・調整、整備用試験機・計量器・工具、材料・燃料油脂に関する初等知識など)と実技で構成されます。なお「自動車整備士技能検定試験3級」に合格している場合は、技能評価試験に代えて技能水準を満たします。
- 日本語能力水準:「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」または「日本語能力試験(JLPT)N4以上」のいずれかに合格していること。
試験の実施時期・会場・申込方法は随時更新されるため、受験前に必ずJASPAおよび試験運営機関(プロメトリック等)の最新公式情報をご確認ください。
技能実習からの移行ルート(試験免除)
自動車整備職種で技能実習2号を良好に修了した外国人は、技能試験と日本語試験がともに免除され、特定技能1号「自動車整備」へ移行できます。これは実習で同分野の技能・日本語を習得済みと評価されるためです。
ここでいう「良好に修了」とは、原則として技能実習2号まで(おおむね2年10か月以上)を修了し、技能検定3級または相当する技能実習評価試験(専門級)の実技に合格しているか、実習実施者が作成した評価調書等により出勤状況・技能修得状況が良好と認められる場合を指します。移行にあたっては在留資格「特定技能」への変更許可申請が必要で、技能実習と特定技能では受入機関・支援体制・届出義務が異なります(切替パターンにより必要書類が異なる点にご注意ください)。在留期限に余裕をもって、早めに準備を始めることが重要です。
受入企業(特定技能所属機関)の要件
外国人本人の要件を満たしても、受け入れる側の企業が基準を満たさなければ就労できません。自動車整備分野に固有の主な要件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 認証工場であること | 道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第78条第1項に基づき、地方運輸局長の認証を受けた事業場であること。 |
| 協議会への加入 | 国土交通省が設置する「自動車整備分野特定技能協議会」の構成員となること。会費は発生しません。令和6年(2024年)6月15日以降は、在留資格の申請時に協議会の構成員であることの証明書(協議会様式)の提出が必要とされ、申請前に加入を済ませておく必要があります。 |
| 各種協力義務 | 協議会・国土交通省が行う調査や指導に協力すること。 |
このほか、特定技能制度に共通する基準(労働関係法令の遵守、報酬が日本人と同等以上であること、支援計画の適切な実施または登録支援機関への委託など)も満たす必要があります。
業務範囲と「特定整備」への名称変更
特定技能1号「自動車整備」で従事できる業務区分は、運用要領上「日常点検整備、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随する基礎的な業務」とされています。2号では、これらに加えて他の要員への指導を行いながら従事する一般的な業務が含まれます。
かつて「分解整備」と呼ばれていた業務は、2020年(令和2年)4月1日施行の道路運送車両法改正により「特定整備」へ名称が改められました。改正では、取り外しを伴わなくても装置の作動に影響を及ぼす整備等まで対象が拡大され、電子制御装置整備(衝突被害軽減ブレーキ等のセンサー校正=エーミング等)や自動運行装置が新たに位置づけられました。電子制御装置整備の認証取得は経過措置が設けられ、2024年(令和6年)3月31日で移行期間が終了し本格運用へ移っています。特定技能外国人もこの「特定整備」の枠組みの中で業務に従事します。
整備主任者との関係
整備主任者は、認証工場において点検・整備および整備内容の確認等を統括する者で、道路運送車両法に基づき選任が義務づけられています。選任には、認証の種類(分解整備のみか、電子制御装置整備を含む特定整備か)に応じた自動車整備士資格などの要件があり、特定整備(電子制御装置整備を含む)の認証工場では、原則として1級自動車整備士、または2級自動車整備士等に「電子制御装置整備の整備主任者等資格取得講習」の修了等を加えた資格が求められます。
ここで押さえたいのは、特定技能1号の技能水準が「3級相当」である点です。整備主任者に求められる資格水準とは異なるため、特定技能外国人を採用したからといって直ちに整備主任者に選任できるわけではありません。整備主任者の確保はあくまで認証工場側の体制の問題であり、特定技能外国人は整備主任者の管理・確認のもとで日常点検整備・定期点検整備・特定整備等に従事する、という整理になります。将来的に本人が上位の整備士資格を取得すれば、整備主任者を担う道も開けます。選任要件や講習の詳細は、地方運輸局・各都道府県の自動車整備振興会の公式情報をご確認ください。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、申請取次行政書士として、特定技能1号「自動車整備」の在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請を代行します。技能実習2号からの移行可否の確認、業務区分と認証内容の整合チェック、協議会加入や届出(受入れ・支援・活動状況に関する各種届出)のスケジュール管理まで、受入企業の実務負担を抑えながら進めます。認証・整備主任者の選任そのものは運輸支局・整備振興会の所管、社会保険・労務の整備は社会保険労務士、雇用契約や紛争対応は弁護士と、それぞれの専門家と連携してご案内します。
料金(税込)の目安は、在留資格認定・変更がスタンダード89,800円(税込)、在留期間更新がスタンダード33,000円(税込)です。企業の継続的なご依頼には継続割引をご用意し、万一不許可となった場合の無料再申請保証も設けています。なお入管手数料は2025年(令和7年)4月1日改定により、在留資格変更・在留期間更新が窓口6,000円・オンライン5,500円(改定前4,000円)です。詳しくは就労ビザのご案内ページ(https://office-tree.jp/shuro-visa/)をご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
特定技能1号「自動車整備」は、(1)外国人本人が技能試験+日本語試験に合格するか、自動車整備職種の技能実習2号を良好に修了して移行すること、(2)受入企業が道路運送車両法第78条第1項の認証工場であり協議会に加入すること、の双方を満たして初めて成立します。業務は2020年4月1日施行の改正で「特定整備」へ整理され、整備主任者の選任は別途の資格要件で判断される点に注意が必要です。なお技能実習制度は2027年(令和9年)4月1日施行予定の育成就労制度へ移行するため、将来的には技能実習2号を経た試験免除ルートの枠組みも変わる見込みです。制度・試験・協議会の運用は改正や更新が続くため、受入れを検討する際は最新の公式情報を確認し、早めに準備を進めることをおすすめします。
特定技能1号「自動車整備」に関するよくある質問
Q:技能実習生でなくても特定技能1号「自動車整備」で採用できますか。
A:はい。海外から新たに採用する場合は、本人が「自動車整備分野特定技能1号評価試験」(または自動車整備士技能検定試験3級)と「日本語試験(JFT-BasicまたはJLPT N4以上)」の双方に合格していれば対象となります。技能実習を経ていない方でも、試験ルートで要件を満たせます。
Q:自社が認証工場でない場合でも受け入れられますか。
A:受け入れられません。受入事業所は道路運送車両法第78条第1項に基づく地方運輸局長の認証を受けた事業場であることが要件です。認証取得は運輸支局・整備振興会の所管手続となるため、まずそちらの要件をご確認ください。
Q:特定技能の外国人を整備主任者にできますか。
A:特定技能1号の技能水準は3級相当であり、整備主任者に求められる資格水準とは異なるため、採用しただけで整備主任者に選任することはできません。整備主任者は認証工場側で別途の資格要件を満たす者を選任する必要があります。本人が将来上位資格を取得すれば担える可能性はあります。
Q:協議会への加入には費用がかかりますか。
A:自動車整備分野特定技能協議会の会費は発生しません。令和6年(2024年)6月15日以降は、在留資格の申請時に協議会の構成員であることの証明書を提出する運用となっており、在留申請の前に加入を済ませておく必要があります(以前は受入れ後一定期間内の加入が認められていましたが、運用が変更されています)。加入後は協議会・国土交通省が行う調査・指導への協力が求められます。
Q:特定技能1号からそのまま日本で働き続けられますか。
A:特定技能1号の在留期間は通算で上限5年です。引き続き就労を希望する場合は、要件を満たして特定技能2号(自動車整備分野は2号の対象)への移行を目指す方法があります。2号は在留期間更新の上限がなく、家族帯同も可能です。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


