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結論から言えば、特定技能「漁業」は漁業と養殖業の2区分で外国人を受け入れられる在留資格であり、農業と並んで派遣形態での雇用が認められた数少ない分野です。漁業は魚種や漁法によって繁忙期と閑散期の差が大きく、通年雇用が難しい経営体も多いため、派遣を活用した柔軟な人材配置が制度上認められています。所管は農林水産省(水産庁)で、技能測定試験は一般社団法人大日本水産会が実施しています。この記事では、特定技能「漁業」の対象業務・派遣形態の要件・協議会への加入方法・試験内容を整理します。
結論:特定技能「漁業」には漁業と養殖業の2区分があり、直接雇用・派遣の両方で受入れが可能です。派遣先は派遣元が適切に管理できる地理的範囲に限られ、受入れには漁業特定技能協議会への加入が必要です。
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目次
特定技能「漁業」の制度概要
特定技能「漁業」は2019年4月に創設された在留資格です。日本の漁業・養殖業の就業者数は長期にわたって減少が続いており、高齢化も著しい状況にあります。水産庁の統計によると、漁業就業者の平均年齢は60歳前後で推移しており、若い担い手の確保が喫緊の課題となっています。
こうした人手不足を背景に、漁業分野では特定技能制度を通じた外国人材の受入れが進められています。2023年6月には特定技能2号の対象分野にも追加され、1号の通算5年の上限を超えて働き続ける道が開けました。特定技能制度の全体像は「特定技能とは?1号・2号の違いと16分野を解説」で詳しくまとめています。
漁業と養殖業――2つの業務区分はどう違う?
特定技能「漁業」の業務区分は、漁業と養殖業の2つに分かれています。それぞれ技能測定試験も別に実施されるため、従事する業務に対応した試験に合格する必要があります。
| 業務区分 | 主たる業務 | 関連業務の例 |
|---|---|---|
| 漁業 | 漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保 | 漁具・漁労機械の点検・換装、魚倉への搬入、甲板の清掃、船体の補修・塗装 など |
| 養殖業 | 養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理(餌料・水質管理等)、養殖水産動植物の収獲・処理、安全衛生の確保 | 養殖用の機械・設備の点検、出荷用の梱包、種苗の採取 など |
漁業と養殖業ではそもそも作業内容が大きく異なります。漁業は漁船に乗り込んで水産物を採捕する業務が中心であるのに対し、養殖業は陸上や沿岸の養殖施設で水産動植物の育成管理を行う業務が中心です。漁業区分で合格した外国人が養殖業の業務に従事すること(またはその逆)は認められていません。
関連業務の扱い
主たる業務に加えて、関連業務に付随的に従事することは認められています。ただし、関連業務のみに従事させることは不可です。たとえば、漁港での荷揚げ・運搬だけをさせるといった運用は制度の趣旨に反します。
派遣形態での受入れ――要件と地理的制限
特定技能「漁業」では、直接雇用に加えて派遣形態での受入れが認められています。これは特定技能16分野の中で農業とともに漁業にだけ認められた特例であり、漁業の季節性に配慮した制度設計です。
なぜ漁業で派遣が認められているのか
漁業は対象魚種や漁法によって繁忙期と閑散期の差が極めて大きく、一つの漁業経営体が通年で外国人を雇用し続けることが経営上難しいケースが多くあります。派遣形態であれば、Aさんの漁船で漁期に3ヶ月、Bさんの養殖場で別の時期に3ヶ月、といった柔軟な労働力配分が可能になります。
派遣事業者に課される要件
漁業分野で特定技能外国人を派遣する事業者は、通常の労働者派遣事業の許可に加え、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 漁業又は漁業に関連する業務を行っている者であること
- 地方公共団体又は漁業協同組合その他の漁業に関連する業務を行っている者が資本金の過半数を出資していること
- 業務執行に実質的に関与する者が地方公共団体の職員又は漁業関連業者であること
- 上記のいずれかに準じるものとして法務大臣が農林水産大臣と協議の上で適当と認めた者であること
漁業協同組合(漁協)やその関連会社が派遣元として機能するケースが典型的です。一般的な人材派遣会社がそのまま参入できるわけではないため、派遣での受入れを検討する場合は、地域の漁協や関連団体に相談するのが近道です。
派遣先の地理的範囲に制限はある?
派遣先の範囲は、派遣元が外国人の適切な雇用管理(苦情対応を含む)を行える地理的範囲に限られます。具体的には「同日中に苦情処理が可能な範囲」が目安とされており、派遣元から著しく離れた地域への派遣は認められません。
| 比較項目 | 直接雇用 | 派遣 |
|---|---|---|
| 雇用主 | 漁業経営体 | 派遣事業者 |
| 適したケース | 通年操業の漁船・養殖場 | 季節的な漁期に限定される経営体 |
| 支援計画の責任 | 漁業経営体(または委託先の登録支援機関) | 派遣事業者 |
| 複数の漁業者で勤務 | 原則不可 | 可能(派遣先の変更) |
| 地理的制限 | なし | 派遣元が管理可能な範囲 |
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漁業特定技能協議会への加入方法
漁業分野で特定技能外国人を受け入れる事業者は、漁業特定技能協議会への加入が義務づけられています。この協議会は農林水産省(水産庁)が設置しており、漁業分科会と養殖業分科会の2つの分科会で構成されています。
加入手続きは水産庁のウェブサイトからオンラインで行えます。入会金・年会費は不要です。加入義務があるのは受入企業のほか、派遣形態の場合は派遣事業者、登録支援機関にも加入が求められます。
漁業技能測定試験と日本語試験
漁業技能測定試験
漁業分野の技能測定試験は、漁業と養殖業の2区分に分かれています。試験は大日本水産会が実施しており、CBT方式(コンピューター・ベースド・テスティング)またはペーパーテスト方式で行われます。
| 試験項目 | 内容 |
|---|---|
| 学科試験 | 漁業(または養殖業)に関する業務上必要な知識および日本語能力を測定。多肢選択式 |
| 実技試験 | 図やイラスト等から知識・技能を判断する問題。多肢選択式 |
| 合格基準 | 学科・実技それぞれの正答率65%以上 |
試験は国内のほか、海外(インドネシア・フィリピン・ベトナム等)でも実施されています。試験日程は大日本水産会の公式サイトで随時公開されるため、受験を予定している外国人にはこまめな確認を勧めてください。
なお、漁業分野には対応する技能実習の職種(かつお一本釣り漁業、延縄漁業、いか釣り漁業、まき網漁業、ひき網漁業、刺し網漁業、定置網漁業、かに・えびかご漁業、ほたてがい・まがき養殖作業など)が多数あり、これらの技能実習2号を良好に修了した方は技能測定試験と日本語試験が免除されます。技能実習と特定技能の違いについては「特定技能と技能実習の違いとは?8つの比較項目を解説」をご確認ください。
日本語能力の要件
以下のいずれかに合格する必要があります(技能実習2号修了者は免除)。
- 日本語能力試験(JLPT)N4以上
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の合格
漁業は安全管理上、船上での的確なコミュニケーションが不可欠です。制度上の最低要件はN4ですが、安全面を考慮するとN3レベル以上の日本語力がある方を採用したほうが、現場でのトラブルを減らせます。
受入企業の要件と届出の変更点
漁業分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、特定技能制度の共通要件を満たす必要があります。
- 日本人と同等以上の報酬を支払うこと
- 社会保険・労働保険に適切に加入していること
- 過去5年以内に入管法違反や労働関係法令違反がないこと
- 支援計画を策定し適切に実施すること(登録支援機関への委託も可)
- 保証金の徴収や違約金契約を行わないこと
届出の頻度については、2025年4月の制度改正により従来の四半期ごとの届出が年1回の定期届出に変更されました。届出の負担は軽減されましたが、届出を怠ると罰則の対象となるため、期限の管理は引き続き重要です。
漁業分野で特定技能を活用するうえで気をつけること
漁船上での労働環境への配慮
漁業は自然環境のもとで行われる業務であり、荒天時の作業中止判断や安全装備の着用など、安全衛生面での配慮が特に重要です。外国人に対しても、母国語または理解できる言語で安全教育を実施し、緊急時の対応手順を事前に周知しておく必要があります。
業務区分をまたぐ就労は不可
漁業区分で合格した外国人が養殖業の業務に従事すること(またはその逆)は認められていません。たとえば、まき網漁業の技能実習を修了して漁業区分の特定技能に移行した外国人が、養殖場で働くためには養殖業の技能測定試験に改めて合格する必要があります。
在留期間の通算と2号への移行
特定技能1号の在留期間は通算5年が上限です。2025年9月の制度改正により、妊娠・出産・育児や病気・労災による休業期間は通算から除外されるようになりました。1号の5年間が終了した後は、特定技能2号への移行を目指すか、他の在留資格への変更を検討します。漁業分野は2号の対象分野であり、2号に移行すれば在留期間の更新に上限がなくなり、家族帯同も可能になります。
よくある質問
Q1. 漁業と水産加工業は何が違いますか?
漁業は水産動植物の採捕(漁船での操業)と養殖が対象であるのに対し、水産加工は漁獲物を加工場で処理する業務です。水産加工は特定技能「飲食料品製造業」の範囲に含まれるため、在留資格が異なります。漁獲物の船上での処理・保蔵は漁業の主たる業務に含まれますが、陸上の加工場で行う作業は別分野になる点にご注意ください。
Q2. 漁業の特定技能外国人を遠洋漁業に従事させることはできますか?
特定技能「漁業」の業務範囲に遠洋漁業が明示的に除外されているわけではありません。ただし、長期の遠洋航海では支援計画の実施(定期面談・相談対応など)が物理的に困難になるケースが想定されます。受入れの可否は個別の状況に応じて出入国在留管理庁が判断するため、遠洋漁業での受入れを検討する場合は事前に確認されることをおすすめします。
Q3. 派遣元が漁協でない一般の派遣会社でも参入できますか?
一般の人材派遣会社がそのまま参入することは原則として認められていません。漁業分野の派遣事業者には、漁業又は漁業関連業務を行っている者であることなどの固有要件が課されています。漁協やその関連会社、地方公共団体が出資する法人などが典型的な派遣元です。
Q4. 養殖業の技能実習を修了していれば試験免除で特定技能に移行できますか?
はい。ほたてがい・まがき養殖作業などの養殖業に関する技能実習2号を良好に修了した方は、技能測定試験と日本語試験の両方が免除され、特定技能1号「漁業」(養殖業区分)に移行できます。ただし、養殖業の技能実習修了者が漁業区分(採捕業務)に移行する場合は、漁業区分の技能測定試験に合格する必要があります。
Q5. 特定技能2号「漁業」に移行するための要件は?
特定技能2号に移行するには、漁業分野の2号技能測定試験に合格し、日本語能力試験N3以上を取得したうえで、管理者等としての2年以上の実務経験要件を満たす必要があります。漁業分野は日本語能力試験の合格が2号の必須要件とされている分野の一つです。2号に移行すれば在留期間の更新に上限がなくなり、家族の帯同も認められます。
まとめ
- 特定技能「漁業」は漁業と養殖業の2区分。業務区分をまたぐ就労は不可
- 直接雇用に加えて派遣形態も利用可能(漁業関連の派遣事業者に限る)
- 派遣先の地理的範囲は、派遣元が管理可能な範囲に制限される
- 漁業特定技能協議会への加入が必須(入会金・年会費なし)
- 対応する技能実習2号修了者は試験免除で特定技能に移行可能
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| サービス | 料金(税抜) |
|---|---|
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※ 本記事の内容は2026年3月時点の入管法令に基づきます。制度・手数料・様式は変更される場合があります。最新情報は出入国在留管理庁でご確認ください。
※ 記事の内容には細心の注意を払っておりますが、万が一誤りがございましたらご指摘いただけますと幸いです。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではございません。具体的なケースについては専門家へのご相談をおすすめいたします。


