来日して住む場所が決まったとき、引越しをしたとき、在留資格の変更が許可されたとき——中長期在留者には、そのつど「住居地の届出」という法律上の義務が発生します。窓口は出入国在留管理局ではなく市区町村役場であり、期限は原則として14日以内。この届出を怠ると20万円以下の罰金の対象になるだけでなく、90日という別の期限を超えると在留資格そのものが取り消される可能性があります。
やっかいなのは、この手続が入管法と住民基本台帳法の二つの法律にまたがっていて、「市区町村に転入届を出せば入管への届出をしたものとみなす」という“みなし規定”で連結されている点です。そのため、転出届を出しただけでは在留カードの住居地は書き換わらない、すでに中長期在留者である人が在留期間を更新しても住居地届出は不要、といった直感に反する結論が生じます。本記事では、入管法19条の7・19条の8・19条の9の三つの届出を条文レベルで整理し、転入・転居・転出の役割分担、必要書類と本人出頭義務、14日を過ぎた場合の罰則、90日を過ぎた場合の在留資格取消しまで、実務目線で解説します。
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目次
在留カードの「住居地」とは|届出義務の全体像
住居地の定義は「本邦における主たる住居の所在地」
在留カードの記載事項は入管法19条の4第1項に列挙されており、その第2号が「住居地」です。同号は住居地を「本邦における主たる住居の所在地」と定義しています。ポイントは「主たる」という限定で、単に一時的に寝泊まりしている場所ではなく、生活の本拠として実際に居住している場所を指します。したがって、勤務先の住所や知人宅を便宜的に届け出ることは制度が予定していません。虚偽の住居地を届け出た場合の扱いについては、後述する罰則および在留資格取消しの項目で詳しく触れます。
届出義務を負うのは「中長期在留者」
住居地届出の義務を負うのは中長期在留者です。入管法19条の3は、在留資格をもって本邦に在留する外国人のうち、次に掲げる者「以外の者」を中長期在留者と定義し、これらの者に在留カードを交付するものとしています。
- 3月以下の在留期間が決定された者
- 「短期滞在」の在留資格が決定された者
- 「外交」又は「公用」の在留資格が決定された者
- 前三号に準ずる者として法務省令で定めるもの
裏を返せば、「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「留学」「家族滞在」「日本人の配偶者等」など3月を超える在留期間を決定された方や、在留期間の定めのない「永住者」は、上記の除外事由に当たらない限り中長期在留者に該当し、住居地届出の対象になります。なお、特別永住者は在留資格を有しないため中長期在留者ではありませんが、入管特例法に別途同趣旨の届出義務が定められています(後述)。
住居地届出は3種類ある
「住居地の届出」とひとくちに言っても、入管法は場面ごとに三つの条文を用意しています。どの条文が適用されるかで起算日が変わるため、まず全体像を押さえてください。
| 場面 | 根拠条文 | 期限の起算点 | 届出先 |
|---|---|---|---|
| 新規上陸後(新たに来日して住居地を定めた) | 入管法19条の7第1項 | 住居地を定めた日から14日以内 | 住居地の市町村長を経由して出入国在留管理庁長官 |
| 在留資格変更等により新たに中長期在留者となった | 入管法19条の8第1項 | 住居地を定めた日(既に住居地を定めている者は許可の日)から14日以内 | 住居地の市町村長を経由して出入国在留管理庁長官 |
| 引越しにより住居地を変更した | 入管法19条の9第1項 | 新住居地に移転した日から14日以内 | 新住居地の市町村長を経由して出入国在留管理庁長官 |
いずれの条文も、届出の名宛人は出入国在留管理庁長官ですが、その経路として市町村長を経由すると定められています。ここでいう「市町村」には特別区が含まれ、地方自治法252条の19第1項の指定都市にあっては区または総合区とされています(入管法19条の7第1項括弧書き)。つまり、東京23区であれば区役所、政令指定都市であれば区役所が窓口になります。
在留カードに関する届出義務は住居地以外にも複数あります。全体を俯瞰したい方は在留カードの届出義務一覧|届出期限と届出方法を解説もあわせてご覧ください。
新規上陸後の住居地届出|入管法19条の7
条文の構造
入管法19条の7第1項は、中長期在留者は「住居地を定めた日から十四日以内に、法務省令で定める手続により、住居地の市町村の長に対し、在留カードを提出した上、当該市町村の長を経由して、出入国在留管理庁長官に対し、その住居地を届け出なければならない」と定めています。
重要なのは起算点が「入国した日」ではなく「住居地を定めた日」である点です。空港に到着してから数日間はホテルに滞在し、その後アパートに入居したというケースでは、アパートに入居して生活の本拠を定めた日が起算日になります。ただし、後述する在留資格取消しの90日ルールは上陸許可を受けた日から起算されるため、住居地決定が遅れれば遅れるほど余裕がなくなる構造になっています。
市区町村窓口での在留カードの扱い
同条第2項は、市町村長は在留カードの提出があった場合には「当該在留カードにその住居地の記載をし、これを当該中長期在留者に返還するものとする」と規定しています。実務上は、窓口で在留カードを預け、その場で裏面の住居地欄に新しい住所が記載(または追記)されて返却される流れになります。カードを預けて返してもらう手続であるため、届出の際は在留カードを必ず持参してください。
住民基本台帳法によるみなし届出
同条第3項は「第一項に規定する中長期在留者が、在留カードを提出して住民基本台帳法第三十条の四十六の規定による届出をしたときは、当該届出は同項の規定による届出とみなす」と定めています。
住民基本台帳法30条の46は「中長期在留者等が住所を定めた場合の転入届の特例」で、中長期在留者等が国外から転入した場合には、転入をした日から14日以内に、氏名・住所・世帯主との続柄・生年月日・性別・国籍等などを市町村長に届け出なければならないとし、あわせて在留カードの提示を義務づけています。
つまり、新規来日者が市区町村の窓口で在留カードを提示して転入届を提出すれば、それ一回で住民基本台帳法上の転入届と入管法上の住居地届出の両方を済ませたことになるわけです。別途、地方出入国在留管理局に出向いて住居地を届け出る必要はありません。
空港で在留カードが交付されなかった場合
出入国在留管理庁の案内によれば、上陸許可時にその場で在留カードが交付されるのは新千歳・仙台・成田・羽田・中部・関西・神戸・広島・福岡・那覇の各出入国港です。それ以外の出入国港では旅券に「在留カードを後日交付する」旨の記載を受け、後日、届け出た住居地あてに在留カードが郵送されます。出入国在留管理庁も、新規上陸後の住居地届出の必要書類として「在留カード又は後日在留カードを交付する旨の記載を受けた旅券を提示」と案内しています。この場合、在留カードが手元になくても住居地届出は可能であり、むしろ届け出なければカードが届きません。
在留資格変更等に伴う住居地届出|入管法19条の8
どんな許可が対象か
入管法19条の8第1項は、在留資格の変更許可(20条3項本文)、在留期間の更新許可(21条3項)、永住許可(22条2項)、在留資格の取得許可(22条の2第3項・22条の3で準用)、在留特別許可(50条1項)、難民又は補完的保護対象者の認定に伴う在留資格に係る許可(61条の2の2第1項)、仮滞在の許可を受けた者に対する在留資格の取得許可(61条の2の5第1項)などを受けて「新たに中長期在留者となつた者」を対象としています。
ここでよくある誤解が「在留期間を更新したら毎回住居地届出が必要なのではないか」というものです。条文が対象としているのはあくまで新たに中長期在留者となった者です。すでに中長期在留者である人が在留期間更新許可を受けただけでは、新たに中長期在留者となったわけではないので19条の8の届出義務は生じません。これに対し、たとえば3月以下の在留期間しか決定されていなかった人が更新により3月を超える在留期間を得て初めて中長期在留者になった、「短期滞在」から就労系の在留資格へ変更が許可された、といった場合には19条の8が適用されます。
起算点の特則に注意
19条の8第1項の期限は「住居地を定めた日(既に住居地を定めている者にあつては、当該許可の日)から十四日以内」です。日本国内で在留資格変更許可を受ける人は、通常すでに住まいがありますから、この括弧書きが適用され、許可の日が起算日になります。19条の7が「住居地を定めた日」を一律の起算点とするのに対し、こちらは許可日起算になり得る点が実務上の落とし穴です。
住民票の写しを提出したときのみなし
19条の8第3項は、在留カードを提出して住民基本台帳法30条の46又は30条の47の届出をしたときは、19条の8第1項の届出とみなすと定めています。住民基本台帳法30条の47は「住所を有する者が中長期在留者等となつた場合の届出」で、すでに市町村の区域内に住所を有していた外国人が中長期在留者等となった場合に、その日から14日以内の届出を義務づけるものです。
さらに19条の8第4項には特則があります。出生や日本国籍の離脱などにより在留資格の取得を申請する外国人が、その申請に際して住民票の写しまたは住民票記載事項証明書を提出したときは、許可があった時に住居地の届出があったものとみなされます。関連して、入管法22条の2第1項は、出生その他の事由により上陸手続を経ずに在留することとなった外国人は当該事由が生じた日から60日を限り在留資格なしに在留できるとし、同条第2項は、この期間を超えて在留しようとする場合は当該事由が生じた日から30日以内に在留資格の取得を申請しなければならないと定めています。日本で子どもが生まれた家庭では、出生届とあわせてこの期限管理が必要になります。
引越したときの住居地変更届出|入管法19条の9
起算点は「新住居地に移転した日」
入管法19条の9第1項は、中長期在留者は住居地を変更したときは「新住居地に移転した日から十四日以内に」、新住居地の市町村長に在留カードを提出したうえで、市町村長を経由して出入国在留管理庁長官に新住居地を届け出なければならないと定めています。起算点は引越し先に移り住んだ日であり、賃貸借契約の締結日でも、旧住所を出た日でもありません。
届出先が「新住居地の」市町村長である点も条文上明確です。旧住所地の役所ではなく、引越し先の役所で手続します。
転入と転居の違い
住民基本台帳法上、市区町村をまたぐ引越しは「転入」、同一市区町村内の引越しは「転居」として整理されています。
- 転入届(住民基本台帳法22条):転入をした日から14日以内に、氏名・住所・転入年月日・従前の住所・世帯主との続柄などを市町村長に届け出る
- 転居届(住民基本台帳法23条):同一市町村内で住所を変更した場合に、転居をした日から14日以内に、氏名・住所・転居年月日・従前の住所・世帯主との続柄を届け出る
いずれも住民基本台帳法上の期限が14日以内であり、入管法19条の9の14日と一致するため、実務上は一回の窓口手続で両方を満たす設計になっています。
みなし届出の範囲
19条の9第3項は、中長期在留者が在留カードを提出して住民基本台帳法22条(転入届)、23条(転居届)又は30条の46の規定による届出をしたときは、19条の9第1項の届出とみなすと定めています。したがって、引越し先の役所で在留カードを提示して転入届または転居届を出せば、入管法上の住居地変更届出も完了します。
転出届だけでは在留カードの住居地は変わらない
みなし規定に「24条」が入っていない
ここが本記事で最も強調したい論点です。住民基本台帳法24条は転出届について「転出をする者は、あらかじめ、その氏名、転出先及び転出の予定年月日を市町村長に届け出なければならない」と定めています。ところが、入管法19条の9第3項が列挙するみなし対象は22条・23条・30条の46であり、24条(転出届)は含まれていません。
つまり、旧住所地の役所で転出届を出しただけでは、入管法上の住居地届出をしたことにはなりません。転出届は「これから出ていきます」という予告にすぎず、この段階では新しい住居地が確定していないのですから、当然といえば当然です。在留カード裏面の住居地が書き換わるのは、引越し先の役所で転入届を出したときです。
実務では「引越し前に転出届を出したから手続は終わった」と思い込み、新住所地での転入届を失念したまま14日を超えてしまう事例が見られます。転出届と転入届は二段構えの別々の手続だと理解してください。
マイナンバーカードによる特例転出
住民基本台帳法24条の2は「個人番号カードの交付を受けている者等に関する転入届の特例」を定めており、マイナンバーカードの交付を受けている者が転出届をした場合、その後最初に行う転入届については、転出証明書等の添付を求める同法22条2項の規定を適用しないとしています(政令で定める場合を除く)。旧住所地と新住所地の市町村長の間で電子的に情報が引き継がれる仕組みです。
この特例により転出証明書の持参は不要になりますが、転入届そのものが不要になるわけではありません。新住所地の役所へ出向いて転入届を行い、在留カードに住居地の記載を受ける必要がある点は変わりません。
海外へ転出する場合
日本を出国して海外で生活する場合には、原則として市区町村での転出の届出が必要です。この場合は日本国内に新住居地が生じないため、入管法19条の9の「新住居地の届出」という形にはなりません。もっとも、後述する在留資格取消事由(22条の4第1項9号)は「届け出た住居地から退去した場合において、当該退去の日から90日以内に新住居地の届出をしないこと」を要件としており、長期の海外滞在から戻った際に住居地届出を忘れると、思わぬリスクにつながることがあります。出国と再入国を繰り返す方は、住居地の管理に特に注意してください。
市区町村窓口での実務|必要書類・本人出頭・代理
持参するもの
出入国在留管理庁の案内および条文を踏まえると、窓口で必要になるのは概ね次のとおりです。自治体ごとに運用が異なる部分もあるため、来庁前に当該市区町村の案内を確認することをおすすめします。
- 在留カード(新規上陸後の届出で在留カードが未交付の場合は、後日在留カードを交付する旨の記載を受けた旅券)
- 届出書(転入届・転居届。窓口備付け)
- 旅券
- マイナンバーカード(交付を受けている場合。券面の住所等を書き換えるため)
- 同一世帯として届け出る家族全員分の在留カード
- 世帯主との続柄を証する文書(家族で転入する場合。本国の公的機関が発行した出生証明書・婚姻証明書などの原本と日本語訳)
転入届・転居届に記載する事項
窓口で記入する届出書の記載事項は住民基本台帳法に列挙されています。転入届(同法22条1項)では、氏名、住所、転入をした年月日、従前の住所、世帯主についてはその旨・世帯主でない者については世帯主の氏名及び世帯主との続柄、転入前の住民票コードが必要です。ただし、いずれの市町村においても住民基本台帳に記録されたことがない者は、住民票コードの記載を要しません。また、中長期在留者が国外から転入した場合は、22条ではなく同法30条の46の特例が適用され、氏名・住所・世帯主との続柄のほか、出生の年月日、男女の別、国籍等、外国人住民となった年月日、中長期在留者である旨、在留資格・在留期間・在留期間の満了の日・在留カードの番号を届け出たうえ、在留カードを提示することになります。
同一市区町村内の転居届(同法23条)は、氏名、住所、転居をした年月日、従前の住所、世帯主である旨または世帯主の氏名及び世帯主との続柄の5項目です。なお、同法27条1項により、これらの届出は政令で定めるところにより書面でしなければならないとされています。
外国人住民の住民票には在留情報が記載される
日本人住民との違いとして押さえておきたいのが、住民基本台帳法30条の45「外国人住民に係る住民票の記載事項の特例」です。同条により、外国人住民の住民票には、同法7条各号に掲げる事項の一部に加えて国籍等、外国人住民となった年月日が記載され、さらに中長期在留者については中長期在留者である旨、在留カードに記載され又は記録されている在留資格、在留期間、在留期間の満了の日、在留カードの番号が記載されます。特別永住者については、特別永住者である旨と特別永住者証明書の番号が記載されます。
つまり、住民票と在留カードは情報が連動しており、窓口で在留カードの提示が求められるのはこの記載を行うためでもあります。在留資格や在留期間に変更があった場合、住民票の記載も更新されることになります。
世帯に変更があったときの届出
引越しを伴わなくても、同居家族の構成が変わったときには別途の届出が必要になる場合があります。住民基本台帳法25条は、転入届・転居届の場合を除くほか、その属する世帯またはその世帯主に変更があった者は、変更があった日から14日以内に、氏名、変更があった事項及び変更があった年月日を市町村長に届け出なければならないとしています(政令で定める者を除く)。この世帯変更届を怠った場合も、同法52条2項により5万円以下の過料の対象です。
本人出頭が原則(入管法61条の8の3第1項1号)
入管法61条の8の3は「本人の出頭義務と代理人による届出等」を定めた規定です。同条第1項第1号は、19条の7第1項・19条の8第1項・19条の9第1項の届出、および市町村長から返還される在留カードの受領について、「住居地の市町村の事務所」に自ら出頭して行わなければならないとしています。
ここは在留資格変更許可申請などとの大きな違いです。地方出入国在留管理局に対する申請等については、所属する行政書士会・弁護士会を経由して地方出入国在留管理局長に届け出た行政書士・弁護士による申請取次の制度が施行規則59条の4第4項1号(同条2項1号ロ)に用意されていますが、市区町村に対する住居地届出はこの取次制度の対象ではありません。以下に述べる範囲の者が本人に代わって手続することになります。
本人に代わって手続できる人
入管法61条の8の3第2項は、外国人が16歳に満たないとき、または疾病その他の事由により自ら行うことができないときは、次に掲げる者(16歳未満の者を除く)であって当該外国人と同居するものが、この順序により、本人に代わってしなければならないと定めています。
- 配偶者
- 子
- 父又は母
- 前三号に掲げる者以外の親族
さらに同条第3項は、上記の場合のほか、同条第2項各号に掲げる者(16歳未満を除く)であって外国人と同居するものが本人の依頼により代わってする場合その他法務省令で定める場合には、本人が自ら出頭することを要しないとしています。
この「法務省令で定める場合」について、入管法施行規則59条の4第1項は、住居地届出(61条の8の3第1項1号に掲げる行為)に関して、本人または61条の8の3第2項により本人に代わってしなければならない者から依頼を受けた者(16歳未満の者及び当該外国人の同居親族を除く)、あるいは法定代理人が本人に代わって行う場合と定めています。
加えて、住民基本台帳法26条1項は「世帯主は、世帯員に代わつて、この章又は第四章の四の規定による届出をすることができる」と定め、同条2項は世帯員が届出をすることができないときは世帯主が代わって届出をしなければならないとしています。世帯単位で転入する家族の場合、世帯主が家族全員分をまとめて届け出る運用が一般的です。ただし同法27条3項により、届出の任に当たっている者が本人と異なる者であるとき(同一世帯に属する者である場合を除く)は、依頼により届出の任に当たるものであることを明らかにする書類の提示等を求められます。
16歳未満の子どもの扱い
16歳未満の中長期在留者についても住居地届出は必要です。本人が出頭するのではなく、上記の順序に従って同居の親族が代わって行います。家族で来日した場合、子どもの在留カードも忘れずに持参してください。なお、入管法23条5項により、16歳に満たない外国人には在留カード等の携帯義務は課されていません。
14日を過ぎた場合の罰則と90日を過ぎた場合の在留資格取消し
届出をしなかった場合|入管法71条の5
住居地の届出を怠った場合の罰則は入管法71条の5に規定されています。同条は次の各号のいずれかに該当する者は20万円以下の罰金に処すると定めています。
- 第1号:19条の7第1項又は19条の8第1項の規定に違反して住居地を届け出なかった者
- 第2号:19条の9第1項の規定に違反して新住居地を届け出なかった者
- 第3号:19条の10第1項、19条の15(4項を除く)又は19条の16の規定に違反した者
虚偽の届出をした場合|入管法71条の2
届け出なかった場合よりも重いのが虚偽届出です。入管法71条の2第1号は、19条の7第1項・19条の8第1項・19条の9第1項・19条の10第1項又は19条の16の規定による届出に関し虚偽の届出をした者を、1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金に処すると定めています。実際には居住していない住所を届け出る、実態と異なる住所で住民登録を行うといった行為は、この条文に直接該当し得ます。
住民基本台帳法上の過料
入管法とは別に、住民基本台帳法にも制裁があります。同法52条2項は、正当な理由がなくて22条から24条まで、25条又は30条の46から30条の48までの規定による届出をしない者を5万円以下の過料に処するとし、同条1項はこれらの届出に関し虚偽の届出をした者を、他の法令により刑を科すべき場合を除き5万円以下の過料に処するとしています。過料についての裁判は簡易裁判所が行います(同法53条)。
90日ルール|在留資格の取消し(入管法22条の4第1項8号〜10号)
罰則以上に深刻なのが在留資格の取消しです。入管法22条の4第1項は、法務大臣は同項各号に掲げる事実のいずれかが判明したときは在留資格を取り消すことができると定めており、住居地関係では次の三つが取消事由とされています。
| 号 | 取消事由 | 起算点 |
|---|---|---|
| 第8号 | 上陸許可の証印又は許可を受けて新たに中長期在留者となった者が、90日以内に出入国在留管理庁長官に住居地の届出をしないこと(届出をしないことにつき正当な理由がある場合を除く) | 当該上陸許可の証印又は許可を受けた日 |
| 第9号 | 中長期在留者が、届け出た住居地から退去した場合において、90日以内に出入国在留管理庁長官に新住居地の届出をしないこと(届出をしないことにつき正当な理由がある場合を除く) | 当該退去の日 |
| 第10号 | 中長期在留者が、出入国在留管理庁長官に虚偽の住居地を届け出たこと | — |
第8号の起算点が「上陸許可の証印又は許可を受けた日」である点は特に重要です。入居先が決まらずホテル暮らしが続いた場合でも、90日の時計は上陸許可の日から動き続けます。また第9号の起算点は「退去の日」、すなわち届け出てある住居地から出ていった日です。新居に入った日ではないため、旧宅を引き払ってから次の住まいが決まるまで時間がかかるケースでは、この90日を意識する必要があります。
なお、第8号・第9号にはいずれも「届出をしないことにつき正当な理由がある場合を除く」という留保が付されています。他方、第10号の虚偽届出にはこうした留保がありません。令和6年法律第60号により、2027年4月1日から22条の4第1項に永住者の取消事由(新しい8号・9号)が加わるため、住居地関係の取消事由は同日以降10号〜12号に繰り下がります。
取消しの手続と出国準備期間
在留資格の取消しは、法務大臣が一方的に行えるものではありません。入管法22条の4第2項は、取消しをしようとするときは指定する入国審査官に当該外国人の意見を聴取させなければならないと定め、同条3項は、あらかじめ意見の聴取の期日及び場所並びに取消しの原因となる事実を記載した意見聴取通知書を送達しなければならないとしています。同条4項により、当該外国人またはその代理人は期日に出頭して意見を述べ、証拠を提出することができます。ただし同条5項により、正当な理由がなくて意見の聴取に応じないときは、意見の聴取を行わずに取消しをすることができるとされています。
取消しは在留資格取消通知書の送達により行われ(同条6項)、同条7項は、第1号及び第2号を除く事由により取り消す場合には30日を超えない範囲内で出国のために必要な期間を指定するものとしています。住居地関係の8号〜10号はこの指定の対象となりますが、指定された期間内に出国しなければならず(期間を過ぎて残留すると入管法24条2号の4の退去強制事由)、生活への影響は甚大です。
永住者について2027年4月1日から加わる取消事由(改正後の22条の4第1項8号・9号)と取消手続の流れについては、永住者の在留資格喪失リスク|2024年改正入管法22条の4の取消事由拡大と対応策もあわせてご参照ください。
住居地以外の届出・特別永住者・特定在留カードとの関係
住居地以外の記載事項の変更は入管局へ(入管法19条の10)
住居地と混同されやすいのが「住居地以外の記載事項の変更届出」です。入管法19条の10第1項は、中長期在留者は19条の4第1項第1号に掲げる事項、すなわち氏名、生年月日、性別及び国籍の属する国又は地域に変更を生じたときは、変更を生じた日から14日以内に出入国在留管理庁長官に変更の届出をしなければならないと定めています。
住居地届出が市区町村窓口であるのに対し、こちらは地方出入国在留管理局が窓口です(入管法61条の8の3第1項2号)。届出があった場合、出入国在留管理庁長官は入国審査官に新たな在留カードを交付させるものとされています(19条の10第2項)。婚姻による改姓や国籍変更があった場合は窓口を間違えないよう注意してください。
このほか、在留カードの有効期間の更新申請(19条の11。有効期間満了日の3月前から満了日までの間)、紛失・盗難・滅失による再交付申請(19条の12第1項。その事実を知った日から14日以内)なども地方出入国在留管理局が窓口です。これらの手続の詳細は在留カードの住所変更・更新手続き|14日ルール・再交付・紛失対応を解説で解説しています。
特別永住者の場合(入管特例法10条)
特別永住者は在留資格を有しないため中長期在留者には当たりませんが、入管特例法(平成3年法律第71号)10条に同趣旨の義務が定められています。同条1項は、住居地の記載のない特別永住者証明書の交付を受けた特別永住者は住居地を定めた日から14日以内に、同条2項は、特別永住者は住居地を変更したときは新住居地に移転した日から14日以内に、市町村長に特別永住者証明書を提出したうえで市町村長を経由して出入国在留管理庁長官に届け出なければならないとしています。
同条4項・5項には入管法と同様のみなし規定があり、特別永住者証明書を提出して住民基本台帳法30条の46の届出をしたときは同条1項の届出と、同法22条・23条又は30条の46の届出をしたときは同条2項の届出とみなされます。届出を怠った場合の罰則は同法32条1号・2号で20万円以下の罰金です。
なお、住居地以外の記載事項(氏名・生年月日・性別・国籍等)の変更届出については、中長期在留者が地方出入国在留管理局を窓口とするのに対し、特別永住者は居住地の市町村長を経由して届け出るものとされています(入管特例法11条1項)。窓口が異なる点に注意が必要です。
特定在留カードと住居地届出
出入国在留管理庁の案内によれば、在留カードとマイナンバーカードの機能を1枚にまとめた特定在留カードの運用が2026年6月14日に開始され、地方出入国在留管理局での交付申請の受付は翌開庁日の6月15日から始まりました。取得は任意であり、従来どおり在留カードとマイナンバーカードを別々に持つことも可能です。また、同庁は2026年9月時点でも特定在留カードの交付申請はオンライン申請に対応していない旨を案内しています。
制度の趣旨は、地方出入国在留管理局で在留に関する許可や届出を行った際に、マイナンバーカードの記載事項更新のために別途市区町村へ出向く必要をなくすことにあります。もっとも、住居地の届出そのものが市区町村窓口で行われるという入管法19条の7・19条の8・19条の9の構造は変わりません。引越しの際に市区町村へ届け出る必要がなくなるわけではない点を誤解しないでください。なお、住居地の届出とみなされる転入届・転居届を市区町村で行う際に、あわせて特定在留カードの交付申請をすることもできます(入管法19条の15の2第2項)。制度の概要は特定在留カードとは|在留カードとマイナンバーカードが1枚に【2026年6月14日運用開始】で整理しています。
実務でつまずきやすいケースと対処
社宅・寮に入居する場合
企業が用意した社宅や寮に入居するケースでは、入居日と実際の生活開始日がずれることがあります。届出の起算点は「住居地を定めた日」「新住居地に移転した日」ですから、実際に生活の本拠を移した日を基準に14日をカウントします。受入れ機関の担当者が入居手続と役所手続をまとめて案内する体制を作っておくと、届出漏れを防げます。特定技能外国人の住居確保に関する実務は特定技能外国人の住居確保支援|社宅・賃貸・連帯保証・家賃負担の実務で解説しています。
単身赴任・複数の住まいがある場合
入管法19条の4第1項2号の住居地は「本邦における主たる住居の所在地」です。平日は勤務地近くのアパート、週末は家族の住む自宅、というように複数の居所がある場合、どちらが「主たる住居」かを実態に即して判断することになります。生活の本拠がどこかは、居住日数、家財の所在、家族の居住状況などから総合的に判断される事柄であり、形式的に選べるものではありません。判断に迷う場合は、市区町村の窓口や地方出入国在留管理局に事前に相談してください。
短期の一時的な滞在
出張や旅行で一時的に別の場所に宿泊しているだけであれば、生活の本拠を移したとはいえず、住居地の変更には当たりません。他方、勤務地の変更に伴って生活の拠点ごと移った場合は、たとえ数か月の予定であっても住居地の変更に当たり得ます。「一時的か、拠点の移転か」で判断が分かれます。
在留資格変更・在留期間更新の申請中に引越した場合
申請中であっても住居地届出の義務は独立して存在します。新住居地に移転した日から14日以内に市区町村へ届け出てください。あわせて、審査中の案件について地方出入国在留管理局に届け出てある連絡先住所が古いままだと、通知が届かないという実害が生じます。申請中の引越しは、市区町村での住居地届出と、申請先の地方出入国在留管理局への連絡の両方を行うのが安全です。
所属機関に関する届出との混同
住居地届出とは別に、入管法19条の16は、就労資格や身分系資格の一部について、所属機関の名称・所在地の変更、消滅、離脱、移籍、契約の終了・締結、配偶者との離婚・死別などが生じた場合に、事由発生から14日以内に出入国在留管理庁長官へ届け出る義務を定めています。これに違反した場合の罰則は71条の5第3号(20万円以下の罰金)です。勤務先が引越したことと本人が引越したことは別の届出である点を混同しないでください。なお、特定技能の場合は、本人の届出とは別に、受入れ機関(特定技能所属機関)にも入管法19条の18の随時届出義務があります。受入れ機関側の随時届出については特定技能の随時届出一覧|契約変更・支援計画変更・受入れ困難・支援実施困難時の14日ルールで整理しています。
14日を過ぎてしまったら
期限を過ぎたことに気づいた場合でも、放置は避けるべきです。71条の5の罰則は「届け出なかった者」を対象とするものであり、90日を超えれば22条の4第1項8号・9号の在留資格取消事由に該当し得ます。いずれのリスクも時間の経過とともに拡大します。気づいた時点でただちに市区町村の窓口へ出向き、遅れた事情を正直に説明したうえで届出を行ってください。虚偽の日付で届け出るなどして取り繕う行為は、71条の2第1号の虚偽届出および22条の4第1項10号の取消事由に直結する、最も避けるべき対応です。
在留カードの携帯義務も忘れずに
入管法23条2項は、中長期在留者は出入国在留管理庁長官が交付し、又は市町村の長が返還する在留カードを受領し、常にこれを携帯していなければならないと定めています。同条3項により、入国審査官・入国警備官・警察官等から提示を求められたときは応じなければなりません。携帯しなかった者は75条の3により20万円以下の罰金、提示を拒んだ者は75条の2第2号により1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金の対象です。市区町村の窓口に在留カードを提出して住居地の記載を受けたら、その場で必ず返還を受けて携帯してください。
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まとめ
在留カードの住居地届出は、場面ごとに三つの条文が用意されています。新規上陸後は入管法19条の7で「住居地を定めた日」から14日以内、在留資格変更等により新たに中長期在留者となった場合は19条の8で「住居地を定めた日(既に住居地を定めている者は許可の日)」から14日以内、引越しの場合は19条の9で「新住居地に移転した日」から14日以内です。いずれも窓口は市区町村であり、市町村長を経由して出入国在留管理庁長官に届け出る構造になっています。
最大の落とし穴は転出届と転入届の役割分担です。入管法19条の9第3項がみなし対象としているのは住民基本台帳法22条(転入届)・23条(転居届)・30条の46であり、24条の転出届は含まれていません。転出届はあくまで予告にすぎず、在留カード裏面の住居地が書き換わるのは引越し先の役所で転入届を出したときです。マイナンバーカードによる特例転出(同法24条の2)を使っても、転入届そのものが不要になるわけではありません。
制裁は二段構えです。届け出なかった場合は入管法71条の5により20万円以下の罰金、虚偽の届出は71条の2第1号により1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金。住民基本台帳法52条による5万円以下の過料も別途あります。そして入管法22条の4第1項8号・9号・10号は在留資格の取消事由であり、8号は上陸許可等を受けた日から、9号は届け出た住居地を退去した日から、それぞれ90日で成立し得ます。14日の届出期限とは別に、在留資格の取消事由にかかわる90日という期限が走っている点を必ず意識してください。
手続面では、住居地届出は入管法61条の8の3第1項1号により市区町村の事務所への本人出頭が原則です。16歳未満または疾病その他の事由で自ら行えないときは同条2項の順序で同居の親族が代わって行い、本人の依頼による同居親族のほか、施行規則59条の4第1項により本人等の依頼を受けた者や法定代理人も手続できます。地方出入国在留管理局に対する申請等の取次制度とは仕組みが異なる点に注意してください。
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