特定技能外国人の受入れを検討する企業から、「モンゴル人材を採用したいが、どの送出機関と組めばよいか分からない」という相談を受けることがあります。ベトナムやカンボジアのように、政府が認定した民間送出機関のリストから相手先を選ぶ国が多いなかで、モンゴルはこの点の構造がまったく異なります。モンゴルには、選ぶべき民間送出機関のリストが存在しません。
モンゴルでは、政府機関である労働・福祉サービス庁(GOLWS)そのものが、モンゴル政府が認定する唯一の送出機関とされています。日本側では、民間のエージェントを探すのではなく、受入機関自身又は日本の職業紹介事業者がGOLWSとの間で双務契約を締結することになります。この構造を理解しないまま「モンゴルの認定送出機関を紹介してほしい」と探し始めると、制度上存在しないものを探すことになってしまいます。
本記事では、出入国在留管理庁が公表する手続解説資料とフローチャート、日本とモンゴルの二国間協力覚書(MOC)、上陸基準省令などの一次情報に基づいて、モンゴルからの特定技能外国人受入れの制度構造、派遣プロセス、必要書類を実務目線で整理します。あわせて、モンゴル側の手続と日本の上陸基準との関係と、受入れ後に必要となる支援体制・届出についても解説します。
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目次
統計で見るモンゴル人材|1,239人という規模と分野構成の偏り
制度を語る前に、まず実際の受入れ規模を押さえておきます。出入国在留管理庁の統計(令和7年12月末現在・速報値)によると、特定技能1号の在留外国人数は382,341人です。このうちモンゴル国籍は1,239人で、全体に占める割合はおよそ0.3%にとどまります。ベトナム(158,497人)、インドネシア(86,523人)、ミャンマー(44,315人)といった主要送出国と比べると、モンゴルは統計表でも「その他」に括られる規模です。
ただし、規模が小さいこと自体は受入れの障害ではありません。むしろ実務上重要なのは、モンゴル人材がどの分野に集中しているかという分布の偏りです。
分野別の内訳|介護と建設で全体の6割超
令和7年12月末現在のモンゴル国籍の特定技能1号を分野別に見ると、次のようになっています。
| 特定産業分野 | 人数 |
|---|---|
| 介護 | 440人 |
| 建設 | 354人 |
| 農業 | 98人 |
| 飲食料品製造業 | 86人 |
| 工業製品製造業 | 78人 |
| 外食業 | 68人 |
| ビルクリーニング | 52人 |
| 航空 | 27人 |
| 宿泊 | 24人 |
| 自動車整備 | 6人 |
| 自動車運送業 | 6人 |
| 造船・舶用工業/鉄道/漁業/林業/木材産業 | 各0人 |
| 合計 | 1,239人 |
介護(440人)と建設(354人)だけで全体の64%を占めます。全国では飲食料品製造業(93,393人)が最大分野であるのに対し、モンゴルでは86人にとどまる点が対照的です。航空分野の27人も、全体規模に比して目立つ数字といえます。介護・建設分野での採用を検討している企業にとって、モンゴルは実績のある選択肢だといえます。
ルート別の内訳|技能実習ルートが試験ルートを上回る
特定技能1号になるには、技能試験と日本語試験に合格する「試験ルート」と、技能実習2号を良好に修了して移行する「技能実習ルート」があります。モンゴル国籍1,239人の内訳は、試験ルート570人、技能実習ルート668人、検定ルート1人です。
全国では試験ルート174,625人に対し技能実習ルート207,399人と、技能実習ルートがやや多い構成ですが、モンゴルもこれと同様に技能実習ルートが過半を占めています。分野別に見ると、介護分野では試験ルート316人・技能実習ルート124人と試験ルートが優勢である一方、建設分野では試験ルート28人・技能実習ルート325人と、圧倒的に技能実習からの移行が中心です。つまり、モンゴルの建設人材は技能実習修了者が中心です。ただし、このルート別の内訳は、日本国内で在留資格を変更した人と、帰国後にモンゴルから改めて入国した技能実習修了者を区別したものではありません。後述するとおり、「モンゴルから新規に呼び寄せる」場合と「日本に在留する人を採用する」場合ではモンゴル側で必要な手続がまったく異なるため、どちらのケースなのかを最初に確定させることが実務の出発点になります。
モンゴルで受験できる試験
出入国在留管理庁の運用状況資料(令和7年12月末現在)によると、モンゴル国内では介護、ビルクリーニング、建設、自動車運送業、農業、航空の各分野の技能試験と、日本語試験である国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)が実施されています。現地で試験を受けられる分野が限られている点は、新規に呼び寄せるルートを設計するうえで確認しておくべき前提です。
JFT-Basicは250点満点で、判定基準点である200点以上でCEFRのA2レベルと判定され、特定技能1号の日本語要件を満たします。なお国際交流基金の案内によれば、2026年8月から、従来のA2に加えてA1(145〜174点)とA2.1(175〜199点)も判定されるようになりました。200〜250点はA2.2(A2)と表示されます。特定技能1号で必要な水準は引き続き200点以上である点に変わりはありません。日本語能力試験(JLPT)のN4以上に合格している場合も日本語要件を満たします。試験の全体像は特定技能の技能試験ガイド|分野別試験・日本語試験・免除条件を解説で整理しています。
日本とモンゴルの二国間協力覚書(MOC)
特定技能制度では、悪質な仲介事業者を排除し、円滑かつ適正な送出し・受入れを確保するため、送出国政府との間で二国間の協力覚書(MOC:Memorandum of Cooperation)を作成することとされています。
モンゴルとのMOCは、平成31年(2019年)4月17日、東京において署名・交換されました。日本側の署名当事者は警察庁、法務省、外務省及び厚生労働省、モンゴル側はモンゴル労働・社会保障省です。このMOCは、両国が特定技能外国人の円滑かつ適正な送出し・受入れの確保(特に、悪質な仲介事業者の排除)及び特定技能外国人の日本での就労における問題の解決等のための情報連携及び協議の基本的枠組みを定めるものです。
ここで押さえておきたいのは、MOCは法的拘束力のある条約ではなく、両国の関係機関の間の協力の枠組みを定める文書であるという点です。一方、上陸基準省令は、国籍又は住所を有する国において本邦で行う活動に関連して遵守すべき手続が定められている場合に、その手続を経ていることを求めています。ただし出入国在留管理庁は、モンゴルを「在留諸申請の際に提出書類は必要ないが、相手国において一定の送出手続が定められている国」に分類し、GOLWSの手続は日本側の在留諸申請上の手続ではないと案内しています。日本の審査との関係は後述します。
なお、出入国在留管理庁は現在、フィリピン、カンボジア、ネパール、ミャンマー、モンゴル、スリランカ、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、ウズベキスタン、パキスタン、タイ、インド、マレーシア、ラオス、キルギス、タジキスタンなど複数国とMOCを作成しています。ただし運用要領が明記するとおり、二国間取決めを作成した国以外の国籍を有する者であっても受け入れること自体は可能であり、MOCの有無が受入れの可否そのものを決めるわけではありません。
GOLWSとは何か|「認定送出機関」ではなく政府機関が唯一の送出機関
モンゴルの制度を理解するうえで最も重要な論点がここです。
正式名称と略称の整理
モンゴル側の窓口は、モンゴル労働・社会保障省の労働・福祉サービス庁です。英文名称は The General Office for Labour and Welfare Services で、これを略した「GOLWS」が正式な略称です。出入国在留管理庁の資料では「労働福祉サービス庁」「労働・福祉サービス庁」「労働・社会保障サービス総合事務所」など複数の日本語表記が用いられていますが、いずれも同一の機関を指します。なお、本記事の省庁名は出入国在留管理庁の資料の表記によっており、モンゴル側の機構改革により現在の名称とは異なる場合があります。
解説記事などでは「GLWS」と書かれることもありますが、日本とモンゴルのMOCや出入国在留管理庁の資料ではGOLWSと表記されています。照会や書類作成の際は、公的資料の表記に合わせておくと混乱を避けられます。
民間送出機関を選ぶ構造ではない
出入国在留管理庁のフローチャートは、注記において「GOLWSは、政府機関であり、モンゴル政府が認定する唯一の送出機関です」と明記しています。つまりモンゴルには、政府が認定した民間送出機関が複数存在し、そのなかから相手先を選定するという仕組みが存在しません。
この点は、他の主要送出国と比べると違いが際立ちます。ベトナムでは所管当局の認定を受けた民間の送出機関が多数存在し(所管省庁は2025年3月の政府機構再編で変更されているため、最新の所管先は都度確認が必要です)、カンボジアでは労働職業訓練省(MoLVT)が民間送出機関を認定しています。これらの国では「どの送出機関と組むか」が受入れの品質を左右する重要な選択でした。モンゴルでは、その選択の余地がそもそもありません。
この構造には実務上の利点と留意点の両方があります。利点は、政府機関が単一の窓口となるため、悪質な民間ブローカーが介在する余地が制度上小さいことです。留意点は、GOLWSの処理能力や運用状況がボトルネックになりうること、そして日本語での折衝が常に可能とは限らないことです。
双務契約の相手方は「日本の受入機関」か「日本の職業紹介事業者」
出入国在留管理庁の解説資料によれば、GOLWSは双務契約の対象として、日本の受入機関又は職業紹介事業者の二つを想定しています。つまり、日本側で契約主体になれるのは、特定技能外国人を直接雇用する受入機関自身か、職業安定法に基づく職業紹介事業の許可を受けた事業者のいずれかです。
登録支援機関であるという理由だけでGOLWSとの双務契約の当事者になれるわけではない点に注意してください。この点は職業紹介の許可の問題と直結するため、後述します。
派遣プロセス①|モンゴルから新たに受け入れる場合
出入国在留管理庁が公表するフローチャートと手続解説に沿って、モンゴルから新規に受け入れる場合の流れを整理します。以下は受入機関が自らGOLWSと双務契約を締結するパターンです。
前提:本人によるGOLWSへの求職者登録
モンゴルの制度上、日本で特定技能外国人として就労を希望するモンゴル国籍の方は、まずGOLWSへ求職者として登録申請する必要があります。対象となるのは、帰国した技能実習2号又は3号を良好に修了した者、試験に合格した者などです。この登録は本人側の手続であり、日本の受入機関が代わって行うものではありません。
手続の流れ
| 順序 | 手続 | 主体・備考 |
|---|---|---|
| 1 | 双務契約の締結 | 受入機関とGOLWS。モンゴル国内法令に従い、労働者の送出し・受入れに係る契約を締結 |
| 2 | 特定技能モンゴル人候補者表の提供 | GOLWSが作成し、双務契約を締結した受入機関へ提供 |
| 3・4 | 選定通知 | 受入機関が候補者表から人材を選定し、GOLWSを通じて候補者へ連絡 |
| 5 | 雇用契約の締結 | 受入機関と本人。締結した雇用契約等の書類はGOLWSを介して本人に送付 |
| 6 | 在留資格認定証明書(COE)交付申請 | 受入機関が地方出入国在留管理官署へ |
| 7・8 | COEの交付・送付 | 交付後、直接又はGOLWSを介して本人へ原本を郵送 |
| 9 | 査証申請代理手続の委任 | 本人がGOLWSへ委任。COEと雇用契約書を添付 |
| 10・11 | 査証代理申請・発給 | GOLWSが在モンゴル日本国大使館へ代理申請 |
| 12 | 査証付き旅券の送付 | GOLWSが本人へ返送 |
| — | 出国前研修の受講 | GOLWSが実施する研修を出国前に受講 |
| 13 | 出国・入国 | 上陸審査を経て「特定技能」の在留資格が付与される |
特定技能モンゴル人候補者表とデータベース
双務契約を締結すると、日本の受入機関(又は職業紹介事業者)に対してGOLWSのデータベースへのアクセス権が与えられ、事前に登録されたモンゴル国籍の方の情報をもとに作成された「特定技能モンゴル人候補者表」の全登録内容を閲覧できる形で情報が提供されるとされています。
ただし、出入国在留管理庁の解説資料には「2020年6月時点では、GOLWSにおいて同データベースを整備中」との注記があり、整備後は双務契約を締結した受入機関にIDとパスワードが付与される予定である一方、整備されるまでは候補者表を電子メールで提供するとの記載になっています。この注記は当該資料が作成された時点の状況を示すものであり、現在の運用がどちらになっているかは、契約前にGOLWSまたは駐日モンゴル国大使館へ直接確認することをおすすめします。
また、GOLWSは受入機関又は職業紹介事業者から要請があった場合、必要に応じて面接等の場所を提供するとされています。現地面接を予定する場合は、この点も事前に相談しておくとよいでしょう。
また、出入国在留管理庁が掲載するQ&Aによれば、候補者表の提供を受けるにはGOLWSのデータベースを利用する必要があり、2年ごとに250米ドル程度のシステム利用手数料がかかるとされています。なお、日本に在住するモンゴル国籍の方を雇用する場合は、双務契約の締結は不要とのことです。
職業紹介事業者を介するルート
日本の職業紹介事業者がGOLWSと双務契約を締結する場合、流れが一部変わります。この場合、日本の受入機関は職業紹介事業者に求人情報(求人票)を提出し、職業紹介事業者が候補者表をもとに受入機関へあっせんを行います。選定通知はGOLWSと職業紹介事業者の双方を経由して候補者に伝えられ、その後の雇用契約締結、COE交付申請、査証手続の流れは受入機関直接のパターンと同様です。
スケジュール設計の考え方
新規入国ルートで見落とされやすいのが、モンゴル側の手続と日本側の手続が直列に並ぶという点です。双務契約の締結は候補者表の入手の前提であり、候補者表がなければ選定に進めません。同様に、査証申請代理手続の委任にはCOEと雇用契約書の添付が必要とされているため、COEが交付されるまで査証手続は着手できません。さらに出国前研修の受講が出国前に必要とされています。
つまり「双務契約 → 選定 → 雇用契約 → COE交付申請 → COE交付 → 委任 → 査証代理申請 → 査証発給 → 出国前研修 → 出国」という工程が、原則として前工程の完了を待って進むことになります。並行処理できる部分が限られるため、入社希望日から逆算する場合は各工程に十分な余裕を見込む必要があります。特にCOEの審査期間は分野や申請時期、受入機関の類型によって変動するため、出入国在留管理庁が公表している標準処理期間を確認したうえで計画を立ててください。
また、双務契約はGOLWSとの契約締結という国外の相手方との交渉を伴います。締結までに要する期間は案件によって異なりますので、初めてモンゴル人材を受け入れる企業は、この最初の工程にも相応の時間を見込んでおくべきです。
双務契約書のひな型と問い合わせ先
出入国在留管理庁の解説資料によれば、双務契約書のひな型はモンゴル側の手続に関するGOLWSのホームページ(モンゴル語)に掲載されているとされています。ただし同資料では当該ホームページのURLが「確認中」と記載されたままであるため、実際に契約を進める際は、出入国在留管理庁の資料に掲載されている下記の連絡先へ直接照会することをおすすめします(連絡先は変更されている場合があります)。
| 窓口 | 連絡先 |
|---|---|
| 駐日モンゴル国大使館 領事部アタッシェ(労働担当) | 電話 090-6300-7503 / 03-3469-2088 メール info@japancenter.mlsp.gov.mn / tokyo10@mfa.gov.mn |
| モンゴル労働・社会保障省 労働福祉サービス庁(GOLWS) | 電話(国際電話)+976-7013-6992 メール ssw@hudulmur-halamj.gov.mn |
派遣プロセス②|日本に在留するモンゴル人を受け入れる場合
モンゴル国籍の特定技能1号のうち668人が技能実習ルートであり、日本国内で技能実習を修了した人材を採用するこちらのパターンも実務では多いと考えられます(統計上は、帰国後に改めて入国した技能実習修了者と区別されていません)。日本国内にいる技能実習修了者や試験合格者を採用し、「特定技能」へ在留資格を変更する場合の流れを整理します。
日本側の手続
日本側の手続は、通常の在留資格変更と同じ構造です。まず受入機関と本人との間で特定技能に係る雇用契約を締結し、次に本人が地方出入国在留管理官署に対して「特定技能」への在留資格変更許可申請を行い、審査の結果、変更が許可されれば日本側の手続は完了します。
在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請の手数料は、2026年9月30日までに受け付けた申請は6,000円(オンライン申請は5,500円)ですが、2026年10月1日以降に受け付けた申請は、許可された在留期間に応じて1万円〜7万5,000円(オンライン申請は1万円〜6万5,000円)になります(令和8年政令第268号)。どちらの額になるかは許可日ではなく申請の受付日で決まり、手数料は申請時ではなく許可を受けるときに納めます。なお、新規入国の場合に行う在留資格認定証明書交付申請には手数料はかかりません。変更手続の詳細は特定技能への在留資格変更手続き|技能実習・留学からの切替方法と必要書類を解説をご参照ください。
モンゴル側で必要な手続
日本に在留している場合であっても、モンゴル側の手続が免除されるわけではありません。出入国在留管理庁の解説資料によれば、モンゴルの制度上、GOLWSに雇用契約等の登録手続を行う必要があり、モンゴル国籍の本人がGOLWSの連絡先に雇用契約書等をPDFで送付する必要があるとされています。
登録後、GOLWSから登録が完了したことを示す証明書が交付されます。GOLWSによれば、登録から証明書が交付されるまでの期間は概ね3営業日とのことです。
そしてこの証明書は、在留資格変更許可申請において参考資料として提出されるものと位置づけられています。フローチャートにもその旨の注記があります。申請の直前になって証明書がないことに気づくと、3営業日とはいえスケジュールに影響しますので、雇用契約を締結した段階で本人にGOLWSへの登録を案内しておくのが安全です。
必要書類の整理|日本側とモンゴル側
モンゴル案件では、日本側の入管提出書類とモンゴル側の手続書類の2系統を並行して管理する必要があります。実務では、この2系統を1枚のチェックリストにまとめて進捗を管理すると漏れが減ります。
| 区分 | 主な書類・手続 | 新規入国 | 国内変更 |
|---|---|---|---|
| モンゴル側 | GOLWSへの求職者登録(本人) | 必要 | — |
| GOLWSとの双務契約書 | 必要 | — | |
| 査証申請代理手続の委任状(本人がGOLWSへ提出) | 必要 | — | |
| GOLWSへの雇用契約等の登録/登録完了証明書 | — | 必要(変更申請の参考資料) | |
| 日本側 | 在留資格認定証明書交付申請書一式 | 必要 | — |
| 在留資格変更許可申請書一式 | — | 必要 | |
| 特定技能雇用契約書・雇用条件書、1号特定技能外国人支援計画書ほか | 必要 | 必要 |
入管へ提出する書類の具体的な一覧は、分野・申請区分・受入機関の類型(上場企業か否か等)によって異なります。出入国在留管理庁が申請区分ごとに公表している最新の提出書類一覧で必ず確認してください。ここで様式番号を記憶に頼って準備すると差し替えが発生しやすい部分です。
なお、査証申請代理手続の委任にあたっては、交付されたCOEと、雇用契約書を添付する必要があるとされています。また、来日予定の本人が査証申請代理手続をGOLWSに委任していることを確認するため、GOLWSに対して「委任状」を提出する必要があります。COE(紙の原本・写し又は電子交付のメール)を本人に届ける段取りと、委任状の準備は連動して進めることになります。
2系統管理でつまずきやすい場面
実務でトラブルになりやすいのは、次の3つの場面です。
- COEの送付ルートが決まっていない:出入国在留管理庁の解説資料は、COE交付後に「直接若しくはGOLWSを介して」原本を郵送するとしています。ただし、2023年3月17日以降はCOEを電子メールで受領して本人へ転送できる場合があり、代理人による査証申請でも紙のCOEの写しや電子メールの印刷物の提出が認められています。どの方法で本人に届けるかをGOLWSと事前にすり合わせておかないと、査証手続が遅れるおそれがあります。
- 雇用契約書の送付経路を誤る:モンゴルの制度上、締結された雇用契約等の書類はGOLWSを介して相手方であるモンゴル国籍の方に送付する必要があるとされています。本人に直接送って済ませてしまうと、モンゴル側の手続要件を満たさないおそれがあります。
- 国内変更案件でGOLWS登録を失念する:日本に在留している方を採用する場合、日本側の変更許可申請だけで完結すると考えてしまいがちです。しかしGOLWSへの雇用契約等の登録と登録完了証明書の取得は本人側の手続として必要とされており、証明書は変更申請の参考資料として位置づけられています。
いずれも、日本側の入管手続とモンゴル側の手続を別々のチェックリストで管理していると起きやすい漏れです。1本の工程表に統合し、どちらの手続がどの段階で止まっているのかを常に把握できる状態にしておくことをおすすめします。
GOLWSの手続と上陸基準省令の関係|特定技能1号の6要件
「モンゴル側の手続は現地の話であって、日本の入管審査とは別問題ではないか」という質問を受けることがあります。出入国在留管理庁は、GOLWSの手続を日本側の在留諸申請上の手続ではないと案内しており、モンゴルを在留諸申請の際に独自の提出書類が必要な国とはしていません。ただし、上陸基準省令(出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令)には本国の手続に関する要件があるため、両者の関係を整理しておきます。
特定技能1号の上陸基準は6つの号で構成される
同省令の「特定技能の項の下欄第一号に掲げる活動」の欄は、入管法第2条の5第1項・第2項(特定技能雇用契約)、第3項・第4項(受入機関)及び第6項・第7項(支援計画)への適合に加えて、申請人が次のいずれにも該当することを求めています。
| 号 | 要件の内容 |
|---|---|
| 第1号 | イ 18歳以上/ロ 健康状態が良好/ハ 技能が試験その他の評価方法により証明/ニ 日本語能力が試験その他の評価方法により証明/ホ 退去強制令書の円滑な執行に協力するとして法務大臣が告示で定める外国政府又は地域の権限ある機関が発行した旅券を所持/ヘ 特定技能1号での在留期間が通算5年(相当の理由がある場合は6年)に達していないこと |
| 第2号 | 本人やその配偶者・親族等が、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず金銭その他の財産を管理されず、違約金等を定める契約が締結されておらず、今後も締結されないと見込まれること |
| 第3号 | 雇用契約の申込みの取次ぎや外国における活動の準備に関して外国の機関に費用を支払っている場合、その額及び内訳を十分に理解して当該機関との間で合意していること |
| 第4号 | 国籍又は住所を有する国・地域において、本邦で行う活動に関連して遵守すべき手続が定められている場合、当該手続を経ていること |
| 第5号 | 食費・居住費その他定期に負担する費用について、対価として供与される利益の内容を十分に理解して合意し、費用額が実費相当その他適正な額であり、明細書等が提示されること |
| 第6号 | 法務大臣が告示で定める特定の産業上の分野については、分野所管省庁が告示で定める基準に適合すること |
なお第1号のただし書により、技能実習2号(企業単独型・団体監理型のいずれか)を良好に修了し、修得した技能が従事しようとする業務に関連すると認められる場合は、ハ(技能試験)とニ(日本語試験)に該当することを要しません。モンゴル国籍で技能実習ルートが668人に上るのは、この免除規定の存在が大きく影響しています。
第4号(本国で遵守すべき手続)とGOLWSの手続
ここで注目すべきは第4号です。出入国在留管理庁の運用要領は、この規定について「特定技能外国人が、特定技能に係る活動を行うに当たり、海外に渡航して労働を行う場合の当該本国での許可等、本国において必要な手続を遵守していることを求めるもの」と説明し、さらに「二国間取決めにおいて『遵守すべき手続』が定められている場合には当該手続を経ていることが必要となります」としています。
モンゴルの場合、GOLWSへの求職者登録、双務契約、査証申請代理の委任、出国前研修の受講は、モンゴルの法令・制度に基づく送出手続とされています。出入国在留管理庁はこれらを在留諸申請の提出書類とはしていませんが、査証申請はGOLWSを通じて行われ、国内での変更申請でも登録完了証明書が参考資料とされています。モンゴル側の手続を省略すると、送出しや査証手続が進まなくなるおそれがあるため、日本側の申請と並行して必ず済ませておくべきです。
第2号・第3号|費用の透明性はモンゴル案件でも変わらない
GOLWSが政府機関であるとしても、費用に関する第2号・第3号の要件が緩むわけではありません。特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令(平成31年法務省令第5号)も、受入機関が保証金の徴収や違約金を定める契約を締結する行為、そうした行為を行う者からの紹介を受けて雇用契約を締結する行為を、基準不適合となる行為として明記しています。
また同省令は、1号特定技能外国人支援に要する費用について、直接又は間接に外国人に負担させないこととしていることを受入機関の基準としています。支援委託費を給与から差し引くような設計はできません。第5号との関係では、住居費や食費を控除する場合、実費相当その他適正な額であることと、明細書等の提示が求められます。費用構造の全体像は特定技能外国人の受入れ費用の全体像|初期費用から月額費用まで整理で整理しています。
職業紹介の許可|登録支援機関の登録だけでは足りない
モンゴル案件で見落とされやすいのが、職業紹介事業の許可の問題です。GOLWSが双務契約の相手方として想定しているのは「日本の受入機関」か「日本の職業紹介事業者」の二つであり、後者として関与するには職業安定法上の許可が必要です。
厚生労働省・都道府県労働局が公表している職業紹介事業者向けの留意点資料は、この点を明確に整理しています。
- 特定技能1号・2号の在留資格については、職業紹介事業の許可などを受けて、国外に存在する求職者の受入れに関する職業紹介を行うことが可能である。
- 特定技能外国人材に対して転職先のあっせんを行う場合にも、職業紹介事業の許可などが必要である。
- 入管法に基づき登録支援機関となっている場合でも、職業紹介を行う場合には、別途職業紹介事業の許可などを取得する必要がある。
- 監理団体の許可を受けた事業者が行えるのは技能実習に関する雇用契約の成立のあっせんであり、特定技能に関する職業紹介を行う場合には別途許可等が必要である。
登録支援機関の登録と職業紹介事業の許可はまったく別の制度です。「登録支援機関だから海外人材の紹介もできる」という理解は誤りであり、無許可で職業紹介を行えば職業安定法上の問題となります。登録支援機関の役割については登録支援機関とは?役割・届出・義務的支援10項目を行政書士が解説もあわせてご確認ください。
国外にわたる職業紹介で追加される規律
同資料によれば、国外にわたる職業紹介を行う場合には、相手先国の関係法令、相手先国において事業者の活動が認められていることを証明する書類、取次機関を利用する場合の業務分担契約書、取次機関に関する申告書などの追加提出が求められます。あわせて、次の遵守事項が定められています。
- 取扱職種の範囲などとして届け出た国以外を相手先国としてはならない。
- 求職者に渡航費用その他の金銭を貸し付け、又は求人者がそれらの金銭を貸し付けた求職者に対して職業紹介を行ってはならない。
- 保証金の徴収その他名目のいかんを問わず求職者の財産を管理し、違約金など不当な財産移転を予定する契約を締結する取次機関を利用してはならない。
- 求職者が保証金の徴収等を受けていることを認識して職業紹介を行ってはならない。
また、求職者からの手数料徴収は一部の例外を除き職業安定法において禁止されています。モンゴルのように政府機関が唯一の送出機関である国では、民間ブローカーが介在する余地は制度上小さいものの、日本側で募集にあたる事業者の許可関係は必ず確認しておくべき点です。
受入れ後の支援体制と届出|定期届出は年1回に変わっている
入国・変更許可が下りれば終わりではありません。特定技能1号では、受入れ後の支援と届出が制度の中核を占めます。
1号特定技能外国人支援計画
入管法第2条の5第6項は、特定技能1号の外国人と雇用契約を締結しようとする本邦の公私の機関に対し、1号特定技能外国人支援計画の作成を義務づけています。同条第7項は、支援に日本人との交流促進に係る支援や、本人の責めに帰すべき事由によらずに契約を解除される場合の転職支援を含むものとしています。
支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託した場合、同条第5項により、受入機関は支援体制に関する基準(第3項第2号)に適合するものとみなされます。登録支援機関は入管法第19条の23第1項に基づき出入国在留管理庁長官の登録を受けた者で、同条第2項により登録は5年ごとに更新しなければ効力を失います。義務的支援の内容は特定技能1号の支援計画とは?義務的支援10項目と登録支援機関への委託を解説で詳しく整理しています。
モンゴル人材の場合、モンゴル語での事前ガイダンスや生活オリエンテーションの実施体制を確保できるかが実務上の分かれ目になります。特定技能基準省令は、事前ガイダンスや定期的な面談などの支援が外国人が十分に理解することができる言語により実施されることを求めているためです。ベトナム語やインドネシア語に比べ、モンゴル語対応が可能な支援担当者・通訳の確保は容易ではありません。委託先を選定する段階で、モンゴル語対応の実績を具体的に確認しておくべきです。
定期面談は3か月に1回以上
特定技能基準省令は義務的支援として支援責任者又は支援担当者が外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施することを求めており、運用要領は「定期的な面談」とは3か月に1回以上の頻度で行うものをいうと明記しています。
届出|随時届出は14日以内、定期届出は年1回
届出には、事由が生じたつど行う随時届出と、一定期間の状況をまとめて報告する定期届出があります。ここは近年ルールが変わった部分なので注意が必要です。
随時届出は、入管法第19条の18第1項に基づき、特定技能雇用契約の変更・終了・新たな締結、支援計画の変更、支援委託契約の締結・変更・終了などがあった場合に必要です。出入国管理及び難民認定法施行規則第19条の17第2項により、該当することとなった日から14日以内に届け出なければなりません。詳細は特定技能の随時届出一覧|契約変更・支援計画変更・受入れ困難・支援実施困難時の14日ルールで一覧化しています。
一方、定期届出は従来の四半期ごと(年4回)から年1回に変更されています。同施行規則第19条の18第3項は、特定技能所属機関が毎年5月31日までに、その年の前年の4月1日からその年の3月31日までの期間に係る事項を記載した書面を地方出入国在留管理局に提出しなければならないと定めています。
登録支援機関側の届出も同様です。同施行規則第19条の24第1項により、支援計画の全部の実施を委託された登録支援機関は、毎年5月31日までに、前年4月1日から当年3月31日までの期間に係る事項を記載した書面を、委託元の特定技能所属機関を経由して地方出入国在留管理局に提出することとされています。提出方法や様式は特定技能の定期届出ガイド|届出書の書き方と提出の流れで解説しています。
ここで混同しやすいのが、定期届出が年1回になった一方で、定期面談の頻度は3か月に1回以上のまま変更されていないという点です。「報告が年1回になったから面談も年1回でよい」という誤解は、支援計画の不履行に直結します。
特定産業分野は19分野に
受入れ可能な分野についても更新があります。特定産業分野を定める省令(平成31年法務省令第6号)は令和8年法務省令第22号により改正され、2026年4月1日から19分野となりました。従前の16分野に、リネンサプライ、物流倉庫、資源循環が追加されています。ただし新規3分野は告示基準の整備や技能試験の実施を経て順次受入れが可能になる段階であり、直ちにすべての分野で受入れができるわけではありません。分野ごとの協議会への加入も必要ですので、特定技能の協議会とは?分野別の加入方法・費用・タイミングもあわせてご確認ください。制度全体の枠組みは特定技能とは?1号・2号の違いと19分野を解説で整理しています。
育成就労制度への移行を見据えて
技能実習に代わる育成就労制度は2027年施行予定で、育成就労産業分野は17分野とされています。モンゴル国籍の特定技能1号1,239人のうち668人が技能実習ルートであることを踏まえると、技能実習から育成就労への移行は、モンゴル人材の採用経路そのものに影響しうる変化です。
育成就労制度では、送出機関に関する規律が強化される方向にあります。もっとも、モンゴルのように政府機関であるGOLWSが唯一の送出機関とされている国について、育成就労制度の下で具体的にどのような運用となるかは、今後の二国間取決めや下位法令の整備を待つ必要があります。現時点で確定していない事項を前提に採用計画を固めるのは避け、制度の動きを追いながら判断するのが安全です。送出機関に関する規律の方向性は育成就労の送出機関規制|手数料上限・契約書様式・二国間取決めの強化で整理しています。
特定技能外国人の受入れをご検討の企業様へ。行政書士法人Treeでは、在留資格の申請取次から支援計画の作成・各種届出までをサポートします。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
モンゴルからの特定技能外国人受入れで最初に押さえるべきは、GOLWS(モンゴル労働・社会保障省 労働・福祉サービス庁)が政府機関であり、モンゴル政府が認定する唯一の送出機関であるという構造です。民間の認定送出機関を選定する仕組みは存在せず、日本の受入機関又は職業紹介事業者がGOLWSと直接双務契約を締結します。なお、MOCや出入国在留管理庁の資料での略称はGOLWSです。
手続は新規入国と国内変更でまったく異なります。新規入国では、双務契約の締結、候補者表による選定、雇用契約、COE交付申請、査証申請代理手続のGOLWSへの委任、出国前研修という流れをたどります。日本に在留する方の採用では、雇用契約と在留資格変更許可申請に加え、本人がGOLWSへ雇用契約等を登録し、概ね3営業日で交付される登録完了証明書を変更申請の参考資料として提出します。統計上は技能実習ルートが668人と過半を占めており、後者のケースも多いと考えられます。
モンゴル側の手続は、出入国在留管理庁の案内では日本側の在留諸申請上の手続ではないとされていますが、査証申請代理の委任や出国前研修などを経なければモンゴルからの送出しは進みません。なお上陸基準省令第4号は、本国で遵守すべき手続が定められている場合に当該手続を経ていることを求めています。あわせて第2号の保証金・違約金の禁止、第3号の外国の機関に支払う費用の額と内訳についての理解と合意、第5号の食費・居住費の適正額と明細書提示という費用の透明性要件も、モンゴル案件で緩むことはありません。
受入れ後は、1号特定技能外国人支援計画に基づく支援と届出が続きます。定期届出は四半期ごとから年1回・毎年5月31日期限(対象期間は前年4月1日から当年3月31日)へ変更された一方、定期面談は3か月に1回以上のままである点は取り違えやすい実務ポイントです。随時届出の14日以内という期限も変わっていません。モンゴル語で理解できる言語による支援体制を確保できるかどうかは、委託先選定の段階で具体的に確認しておくべきです。
行政書士法人Treeでは、特定技能外国人の受入れについて、在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請の申請取次、特定技能雇用契約書・雇用条件書など権利義務に関する書類の作成、1号特定技能外国人支援計画の作成、随時届出・定期届出など各種届出書類の作成をお手伝いしています。なお、GOLWSへの登録や双務契約などモンゴル側の手続は、本人・受入機関等がGOLWSとの間で行うものです。ご相談は何度でも無料です。
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