相続関連

相続財産清算人(旧相続財産管理人)の選任|相続人不存在の場合の手続きと費用を解説

約9分で読めます

「亡くなった知人に身寄りがなく、遺産の管理を誰が行うのか分からない」「貸家の借家人が死亡したが、相続人が判明しない」——民法上の相続人が存在しない場合、遺産は「相続財産法人」として扱われ、家庭裁判所が選任する相続財産清算人が管理・清算を行います。令和3年(2021年)民法改正により、名称が「相続財産管理人」から「相続財産清算人」に変更され、手続きも一部簡略化されました(令和5年(2023年)4月1日施行)。この記事では、相続財産清算人の選任手続き・権限・費用を解説します。

結論として、相続人が不存在の場合、利害関係人(債権者・受遺者・特別縁故者等)または検察官が家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てます。選任された清算人が公告・債権者への支払い・特別縁故者への分与等を行い、残余財産は国庫に帰属します。予納金として100万円程度が必要なケースが多く、費用負担が申立ての大きなハードルとなります。

「遠縁の親族が亡くなり、遺産の処理をどう進めるべきか相談したい」「相続人不存在のケースで戸籍調査や財産調査を任せたい」とお悩みの方は、行政書士法人Treeにご相談ください。戸籍収集・相続人調査・財産調査などの周辺業務をサポートし、相続財産清算人選任申立書の作成・家裁への申立てが必要な場合は連携する司法書士・弁護士をご紹介いたします。相談は何度でも無料・全国対応です。

▶ 今すぐ無料で相談してみる

相続財産清算人とは

制度の目的

被相続人が死亡したが、戸籍上の相続人が存在しない、または相続人全員が相続放棄した場合、遺産の帰属が確定するまでの間、遺産を管理・清算する者が必要となります。これを相続財産清算人といい、家庭裁判所の審判により選任されます(民法952条)。

令和5年(2023年)4月1日施行の令和3年改正民法により、従来の「相続財産管理人」から「相続財産清算人」に名称変更され、公告期間の短縮や手続きの合理化が図られました。

相続人不存在の典型例

  • 配偶者・子・父母・兄弟姉妹などの法定相続人がいない
  • 法定相続人はいるが全員が相続放棄した
  • おひとりさま(生涯未婚・子なし)で親族が先に死亡している
  • 戸籍上の相続人が行方不明・生死不明

相続財産清算人選任の申立手続き

申立人となれる人

  • 利害関係人: 被相続人の債権者、受遺者、特別縁故者、共有不動産の共有者等
  • 検察官: 公益の代表として申し立てる場合

申立先・必要書類

申立先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。必要書類は以下のとおりです。

  • 相続財産清算人選任申立書
  • 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の父母の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
  • 被相続人の子(およびその代襲者)の戸籍謄本(死亡している場合は除籍)
  • 被相続人の兄弟姉妹の戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
  • 財産を証する資料(不動産登記事項証明書・預金通帳のコピー等)
  • 利害関係を証する資料(債権者の場合は金銭消費貸借契約書等)
  • 相続人のあることが明らかでないことを証する資料(戸籍関係書類の要旨)

申立手数料と予納金

費目 金額の目安
申立手数料(収入印紙) 800円
予納郵便切手 数千円程度(管轄裁判所により異なる)
官報公告料 5,582円(裁判所公表額)
清算人報酬の予納金 20〜100万円程度(遺産の規模による)

予納金は、相続財産から清算人報酬を支払えない場合に備えて申立人が納付するものです。遺産が十分にあれば戻ってくる可能性がありますが、負債超過の場合は戻らないため、申立てに慎重な判断が必要です。

相続財産清算人の権限と手続きの流れ

Step 1: 選任審判と「選任・相続人捜索の公告」

家庭裁判所の審判により清算人が選任されると、家庭裁判所が遅滞なく「選任の公告」と「相続人捜索の公告」を同時に行います(民法952条2項)。公告期間は6か月以上で、この期間内に相続人の申出があれば清算人の任務は終了します。

Step 2: 債権者・受遺者への請求申出の公告(Step 1と並行)

Step 1の公告と並行して、清算人は遅滞なく債権者・受遺者に対する請求申出の公告を行います(民法957条1項)。公告期間は2か月以上で、ただしStep 1の公告期間(6か月)内に満了しなければなりません。この期間内に申出があった債権者・受遺者に、清算人が財産から弁済を行います。

Step 3: 清算業務

  • 遺産の調査・財産目録の作成
  • 預貯金の解約・不動産の売却等の換価処分
  • 公告期間内に申し出た債権者への配当弁済
  • 受遺者への遺贈の履行

Step 4: 特別縁故者への財産分与

Step 1の公告期間(相続人捜索の6か月)が満了して相続人不存在が確定した場合、被相続人と特別の縁故があった者(内縁の配偶者・療養看護に努めた者・事実上の養子等)は、公告期間満了後3か月以内に家庭裁判所に特別縁故者への相続財産分与の申立てを行うことができます(民法958条の2第2項)。なお、特別縁故者は自然人に限らず、社会福祉法人・地方公共団体等の法人も該当しうると判例上認められています。

Step 5: 共有持分の他の共有者への帰属・残余財産の国庫帰属

特別縁故者への分与の申立てがない場合、または申立てがあっても分与されなかった場合、被相続人の共有持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。最高裁平成元年11月24日判決により、民法958条の2(特別縁故者への分与)が民法255条に優先適用されることが確立しています。

共有持分以外で、特別縁故者への分与後も残る財産は、国庫に帰属します(民法959条)。清算人が国に財産を引き継ぎ、任務が完了します。

相続手続きのご相談はお任せください

相続財産清算人選任の申立てでは、被相続人の出生から死亡までの全戸籍父母の全戸籍兄弟姉妹の戸籍など、非常に多くの戸籍類を収集する必要があり、本籍地が複数回移動している方の場合は取得先が10か所以上になることもあります。戸籍収集は行政書士の専門業務であり、全国の役所への職務上請求により効率的に収集可能です。

行政書士法人Treeでは、相続人調査・戸籍収集・相続関係説明図の作成など、相続財産清算人選任申立てに必要な周辺書類の整備をワンストップでサポートしています。家庭裁判所への申立書本体の作成・代理は司法書士・弁護士の業務範囲のため、必要に応じて連携先をご紹介可能です。

  • ✔ 戸籍収集・相続人調査に対応
  • 相続関係説明図・財産目録の整備をサポート
  • ✔ 司法書士・弁護士のご紹介にも対応
  • ✔ 相談は何度でも無料・全国対応

▶ まずはお気軽にお問い合わせください

2023年改正のポイント

名称変更「相続財産管理人」→「相続財産清算人」

2023年4月1日施行の民法改正により、相続人不存在の場面での管理人の名称が「相続財産清算人」に変更されました。単なる名称変更ではなく、清算の役割をより明確にする趣旨です。

公告の一本化

改正前は①選任公告(2か月)→②債権者・受遺者への請求申出公告(2か月)→③相続人捜索公告(6か月以上)の3段階の公告を順次行う必要があり、権利関係の確定まで最低10か月以上を要していました。改正後は①選任公告と③相続人捜索公告が一本化されて「選任・相続人捜索の公告」(6か月以上)となり、この期間内に②債権者・受遺者への請求申出公告(2か月以上)を並行して行う運用となったため、権利確定までの期間が最短6か月に短縮されました。

不在者財産管理人との区別

似た制度として「不在者財産管理人」(民法25条)がありますが、これは生存している不在者の財産を管理する制度で、被相続人の死亡後の遺産管理とは別です。申立理由や対象が異なる点に注意が必要です。

新設された「相続財産管理人」(民法897条の2)との区別

令和3年改正では、清算目的の旧「相続財産管理人」が「相続財産清算人」に名称変更されるのと同時に、保存目的の新「相続財産管理人」制度が民法897条の2として新設されました。両者は以下のように区別されます。

  • 相続財産清算人(民法952条): 相続人不存在の場合に、債権者への弁済・特別縁故者への分与・国庫帰属までの清算業務を行う
  • 相続財産管理人(民法897条の2 / 新設): 相続人はいるが遺産分割未了の場合など、相続財産の保存を目的として選任される

同じ「相続財産〇〇人」という名称でも役割が大きく異なるため、どちらの制度が必要かを正しく判断することが重要です。

よくある質問

Q. 相続放棄した相続人は、相続財産清算人が選任されるまで遺産を管理する必要がありますか?

2023年4月施行の民法改正により、相続放棄者の管理義務は「相続財産を現に占有している場合」のみとされました(民法940条1項)。ただし、現に占有している場合は、次の相続人または相続財産清算人に引き継ぐまで保存義務を負います。相続放棄後の管理義務は「相続放棄後の管理義務と注意点|2023年民法改正の影響と実務対応を解説」もご参照ください。

Q. 相続財産清算人の職務はどのくらいの期間続きますか?

清算業務の完了まで通常1年〜2年程度を要します。不動産の売却に時間がかかる場合や、特別縁故者の申立てがある場合はさらに長期化することがあります。

Q. 相続財産清算人には誰が選任されますか?

実務上は、弁護士・司法書士等の法律専門職が選任されるケースが大半です。家庭裁判所の名簿から候補者が選ばれるのが通例で、申立人が特定の候補者を指名することもできますが、裁判所の判断に委ねられます。

Q. 債権者として申立てる場合、予納金100万円の負担は大きいです。他の手段はありますか?

少額の債権のために予納金を負担するのは非効率なため、実務上は以下の対応が検討されます。

  • 他の債権者と費用を分担して共同申立てを行う
  • 被相続人の残置財産を担保として清算見込みを裁判所に説明
  • 資力要件を満たす場合は、法テラスの民事法律扶助制度(立替・分割返済)を活用する
  • 債権額と予納金額を比較し、費用対効果が見合わない場合は申立てを断念する

Q. 被相続人が賃借していた部屋は、誰が明渡しを行いますか?

相続人がいる場合は相続人に、相続人不存在の場合は相続財産清算人が賃借権を承継し、明渡し義務を負います。賃貸人が居住者なしの状態で部屋を自力で明渡すことはできません(賃貸人の不法行為となる可能性)。

まとめ

  • 相続財産清算人は相続人不存在の場合の遺産管理・清算者
  • 2023年4月に「相続財産管理人」から改名され手続きも合理化
  • 申立ては被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
  • 予納金は20〜100万円程度が目安
  • 残余財産は特別縁故者分与→国庫帰属の順で処理

相続の特殊ケースについては「相続の特殊ケース完全ガイド|代襲相続・数次相続・相続放棄」もご参照ください。

相続周辺サポートは行政書士法人Treeへ

相続財産清算人選任の申立書作成および家庭裁判所への申立て代理は、司法書士・弁護士の業務範囲となります。行政書士法人Treeでは、申立てに必要となる以下の周辺業務をサポートいたします。

  • 戸籍収集・相続人調査
  • 相続関係説明図・財産目録の整備
  • 相続財産調査のサポート
  • ✔ 必要に応じた司法書士・弁護士の紹介
  • ✔ 相談は何度でも無料・全国対応

料金は業務内容に応じて個別お見積りいたします。まずは無料相談をご利用ください。

▶ 無料相談の予約はこちら

※ 本記事の内容は2026年4月時点の民法・家事事件手続法に基づく一般的な解説であり、個別の法的助言ではありません。なお、相続財産清算人選任申立書の作成および家庭裁判所への申立ては、司法書士法・弁護士法に基づき司法書士・弁護士の業務範囲とされています。行政書士は申立てに必要な戸籍収集・相続関係説明図作成等の周辺業務を行うことができます。訴訟対応は弁護士にご相談ください。

行政書士法人Tree