結論から言えば、相続人調査でつまずく最大の原因は「戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本の3種類を区別できず、被相続人の出生から死亡までがつながらない」ことにあります。現在の戸籍だけを取り寄せても、過去の改製で消えた子(前妻との子・認知した子など)が見落とされ、後から相続人がもう一人いた、という事態が起こり得ます。当事務所(行政書士法人Tree)は、戸籍収集と法定相続人の確定、遺産分割協議書の作成を職域として承ります。相続登記は司法書士、相続税は税理士、相続人間の紛争は弁護士と連携して進めますので、本記事ではまず3種類の戸籍の「見方」を実例で整理し、調査をどこから始めればよいかをお伝えします。
目次
戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本の違い
相続人調査で扱う戸籍は、ひとくちに「戸籍」といっても次の3種類に分かれます。読み方が分からないという声が多いので、まず性格の違いを押さえてください。
| 名称 | どんな戸籍か | 読み方 |
|---|---|---|
| 戸籍謄本(全部事項証明書) | その戸籍に在籍している人が現に1人以上いる、現在有効な戸籍 | こせきとうほん |
| 除籍謄本 | 在籍者が全員いなくなった戸籍(死亡・婚姻・転籍などで全員が抜けた) | じょせきとうほん |
| 改製原戸籍謄本 | 法令改正で戸籍を作り直す前の、古い様式の戸籍 | かいせいげんこせき(現場では「はらこせき」とも) |
「除籍」は人が抜けて空になった戸籍、「改製原戸籍」は様式そのものが古くなって作り直された戸籍、という違いです。相続人調査ではこの3種類を時代をさかのぼってつなぎ合わせ、被相続人の出生から死亡までの連続した記録を組み立てます。
改製とは何か——平成と昭和の2回の作り直し
「改製」とは、法令の改正によって戸籍の様式を新しい基準に作り替えることをいいます。改製の前の戸籍が「改製原戸籍」です。相続実務で出会う改製は、主に次の2回です。
- 平成の改製(コンピュータ化):平成6年法務省令第51号附則第2条第1項による改製です。それまで紙(和紙)に手書き・タイプで保管していた戸籍を、コンピュータ処理した横書きの全部事項証明書に作り替えました。法務大臣の指定を受けた市区町村が順次実施したため、改製の時期は自治体ごとに異なります。改製前の縦書き戸籍が「平成改製原戸籍」です。
- 昭和の改製:戦後の民法改正(昭和22年)により戸主制度が廃止されたことを受け、昭和32年法務省令第27号による改製で、戸主を中心とする戸籍から夫婦と未婚の子を単位とする現在の戸籍へ順次作り替えられました(実施時期は自治体により異なります)。これによる改製前の戸籍が「昭和改製原戸籍」です。
改製のときは、改製時点で有効な事項だけが新しい戸籍に書き写され、すでに除籍されていた人(婚姻で抜けた子、亡くなった人など)は新戸籍に転記されません。だからこそ、現在の戸籍だけでは相続人の全員を確認できないのです。
実例で読む——改製で「消える」人がいる仕組み
具体的なイメージで見てみます。被相続人Aさんに、前の配偶者との間の子Bさんがいたとします。
- Bさんは結婚して別の戸籍へ移り、Aさんの戸籍から「除籍」された。
- その後、Aさんの戸籍が平成のコンピュータ化で改製された。
- 改製の時点でBさんはすでに除籍されていたため、新しい(コンピュータ化後の)戸籍にはBさんの記載が一切残らない。
この場合、現在の戸籍謄本を見てもBさんの存在は分かりません。Bさんは法定相続人(民法第887条の子)ですから、Bさん抜きで作った遺産分割協議は無効になります。Bさんを発見するには、改製前の「改製原戸籍」までさかのぼって読む必要があるのです。同様に、認知した子や養子縁組・離縁の記録も、改製や転籍のたびに転記されないことがあり、原戸籍でしか確認できない場合があります。
戸籍の読み方のコツは、各戸籍の編製日・改製日・除籍日だけでなく、被相続人の婚姻・転籍・入籍などの身分事項、従前戸籍、新本籍の記載を時系列で照合することです。前の戸籍に記載された移動先と次の戸籍に記載された移動元が対応しているかを確認し、出生から死亡までの記録に抜けがないかを逐一検証する必要があります。
相続人調査で集める戸籍の範囲
相続人を確定するために必要なのは、原則として「被相続人の出生から死亡までの連続したすべての戸籍」と「相続人全員の現在の戸籍」です。法定相続人の範囲(配偶者は常に相続人、子は第1順位、直系尊属は第2順位、兄弟姉妹は第3順位)によって、必要な戸籍は変わります。
- 子が相続人(第1順位):被相続人の出生から死亡までの全戸籍(子の有無を確認するため)+各相続人の現在戸籍。
- 直系尊属が相続人(第2順位):被相続人に子やその代襲者がいないことを確認したうえで、生存する直系尊属(父母・祖父母など)を確認する戸籍が必要です。
- 兄弟姉妹が相続人(第3順位):被相続人に子やその代襲者がおらず、直系尊属も全員死亡していることを確認する戸籍に加え、父母の出生から死亡までの戸籍から兄弟姉妹を確定する必要があります。兄弟姉妹が先に死亡している場合は、代襲相続人となる甥・姪の戸籍も必要です。
兄弟姉妹が相続人になるケースや、相続人が先に亡くなって代襲相続(民法第887条第2項)が生じるケースでは、たどるべき戸籍が広がり、複数の市区町村にまたがることが多くなります。
戸籍はどこで取れるか——広域交付と保存期間
戸籍の取得方法は近年大きく変わりました。実務で押さえるべき2点を整理します。
(1)広域交付制度(令和6年3月1日施行)
戸籍法の一部を改正する法律(令和元年法律第17号)の一部が令和6年3月1日に施行され、本籍地が遠方でも、最寄りの市区町村の窓口で、全国の戸籍証明書・除籍証明書をまとめて請求できる「広域交付」が始まりました(戸籍法第120条の2)。請求できるのは本人・配偶者・直系尊属(父母・祖父母など)・直系卑属(子・孫など)で、窓口に直接来庁し顔写真付き身分証明書で本人確認を受ける必要があります。郵送請求・代理人請求はできません。また、コンピュータ化されていない一部の古い戸籍・除籍は広域交付の対象外で、その場合は従来どおり本籍地の市区町村に請求します。
(2)手数料
証明書1通あたりの手数料は、戸籍謄本(全部事項証明書)が450円、除籍謄本・改製原戸籍謄本がそれぞれ750円が標準です。郵送請求の場合は定額小為替で支払うのが一般的です。
(3)保存期間と「廃棄済み」のリスク
除籍簿・改製原戸籍の保存期間は、戸籍法施行規則第5条第4項により、現在は当該年度の翌年から150年です。これは平成22年6月1日の改正で従前の80年等から延長されたものですが、改正前にすでに保存期間を経過して廃棄された古い除籍は復元できません。その場合は、市区町村が発行する「廃棄証明書」や、保存されている範囲の戸籍などで相続人の確認を補うことになります。古い相続(明治・大正期の出生など)では、この廃棄の壁に当たることがあります。
集めた戸籍を相続手続でどう使うか——法定相続情報証明制度
集めた戸籍の束は、相続登記(司法書士の職域)や金融機関での名義変更など、手続のたびに提出が求められます。そこで便利なのが「法定相続情報証明制度」(平成29年5月29日運用開始)です。相続関係を一覧にした「法定相続情報一覧図」と戸除籍謄本等の束を登記所(法務局)に提出すると、登記官が内容を確認のうえ、認証文を付した写しを無料で交付します。この写しは戸籍の束の代わりに各種手続で使え、複数の窓口に分厚い戸籍を出し直す手間を省けます。一覧図の作成や戸籍収集に加え、相続人から委任を受けた行政書士は、業務範囲内で法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出を代理することもできます。申出先は、被相続人の本籍地・最後の住所地、申出人の住所地又は被相続人名義の不動産所在地を管轄する登記所です。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、被相続人の出生から死亡までの戸籍収集、改製原戸籍・除籍を読み解いての法定相続人の確定、そして遺産分割協議書の作成までを一括して承ります。「どの市区町村に何を請求すればよいか分からない」「集めた古い戸籍が読めない」という段階からご相談いただけます。
遺産分割協議書作成の料金(税込)はミニマムプラン43,780円、スタンダードプラン87,780円、すべて丸投げお任せプラン217,800円です。詳しくは料金ページをご確認ください。なお、相続登記は司法書士、相続税の申告は税理士、相続人間で争いがある場合は弁護士、相続放棄の申述(家庭裁判所への手続で行政書士は代理できません)などは、各専門家と連携してご案内します。相続登記は令和6年4月1日から義務化され、原則として、自己のために相続の開始があったことと、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。正当な理由なく申請義務を怠った場合は10万円以下の過料の対象となり得るため、戸籍収集はお早めに着手されることをおすすめします。詳しくは遺産分割協議書作成サポートのページをご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
相続手続でお困りの方へ。行政書士法人Treeでは、戸籍の収集による相続人調査から遺産分割協議書の作成までをサポートします。書類作成に関するご相談は何度でも無料です。※相続登記は司法書士、相続税申告は税理士、相続放棄など家庭裁判所へ提出する書類の作成は司法書士・弁護士の業務であり、当法人では取り扱いません。
まとめ
戸籍謄本(現在有効)・除籍謄本(全員が抜けた)・改製原戸籍謄本(作り直す前)の3種類は、それぞれ役割が異なります。改製のたびに除籍済みの人は新戸籍に転記されないため、現在の戸籍だけでは前妻の子・認知した子などを見落とすおそれがあります。相続人を漏れなく確定するには、被相続人の出生から死亡までの戸籍を時系列でつなぎ、空白がないかを確認することが要です。令和6年3月1日施行の広域交付制度で取得は便利になりましたが、未コンピュータ化の戸籍は対象外で、古い除籍は廃棄されている場合もあります。戸籍の読み解きと相続人調査でお困りの際は、お早めにご相談ください。
戸籍の改製・除籍・原戸籍に関するよくある質問
Q:改製原戸籍と除籍謄本は何が違うのですか。
A:除籍謄本は、その戸籍に在籍していた人が死亡・婚姻・転籍などで全員いなくなり、空になった戸籍の写しです。一方、改製原戸籍は、法令改正で戸籍の様式を作り替える「改製」が行われた際の、作り替える前の古い戸籍です。「人が抜けて閉じた」のが除籍、「様式が変わって閉じた」のが改製原戸籍、と整理すると分かりやすいです。
Q:なぜ現在の戸籍だけでは相続人調査が足りないのですか。
A:改製や転籍の際、その時点ですでに除籍されていた人(結婚で抜けた子など)は新しい戸籍に書き写されないからです。現在の戸籍に載っていない子が、改製原戸籍をさかのぼると見つかることがあります。そのため、出生から死亡までの連続した戸籍をすべて集める必要があります。
Q:広域交付制度を使えばすべての戸籍がその場で取れますか。
A:いいえ。令和6年3月1日施行の広域交付では本籍地以外の窓口で全国の戸籍をまとめて請求できますが、コンピュータ化されていない一部の古い戸籍・除籍は対象外です。その分は従来どおり本籍地の市区町村に請求します。また請求は本人・配偶者・直系尊属・直系卑属に限られ、窓口への来庁と本人確認が必要で、郵送・代理請求はできません。
Q:古い除籍が「廃棄済み」と言われました。どうすればよいですか。
A:除籍簿・改製原戸籍の保存期間は現在150年ですが(戸籍法施行規則第5条第4項)、平成22年の改正前に旧保存期間を経過して廃棄されたものは復元できません。この場合、市区町村に「廃棄証明書」を発行してもらい、保存されている範囲の戸籍と併せて相続人を確認します。手続の進め方は個別事情によりますので、専門家にご相談ください。
Q:戸籍の取得費用はいくらかかりますか。
A:証明書1通あたり、戸籍謄本は450円、除籍謄本・改製原戸籍謄本はそれぞれ750円が標準です。相続人調査では複数通・複数自治体にまたがることが多く、総額は事案によって変わります。当事務所がお手伝いする場合の報酬は別途、遺産分割協議書作成のプラン料金(税込43,780円〜)に応じてご案内します。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


