告訴状関連

贈収賄罪の告発状|公務員の職務に関する不正な金銭授受への対応

更新: 約6分で読めます

贈収賄罪(刑法197条以下)は、公務員の職務に関する不正な金銭・物品の授受を処罰する重要犯罪です。被害者個人ではなく公益を害する犯罪のため、告訴ではなく「告発」で立件されます。「役所の許認可で賄賂を求められた」「公務員が不正受領しているのを目撃した」――こうした事案は告発により刑事捜査の端緒となります。

本記事の結論:

  • 贈収賄罪の告発状は①告発人・被告発人の特定、②犯罪事実(公務員の職務・賄賂の授受・対価関係)、③立証資料、④告発の趣旨を網羅します。
  • 構成要件区分が重要で、受託収賄(197条1項後段)・第三者供賄(197条の2)・加重収賄(197条の3)等を正しく特定します。
  • 立証資料として録音・銀行記録・メール等の対価関係を示す客観証拠の整理が告発受理の鍵となります。
  • 当所は警察署長宛て告発状の作成のみ対応。検察庁宛て告発状作成は司法書士業務、刑事告発代理は弁護士をご紹介します。

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根拠法令

  • 刑法 197条(収賄罪・受託収賄罪・事前収賄罪)
  • 刑法 197条の2(第三者供賄罪)
  • 刑法 197条の3(加重収賄罪・事後収賄罪)
  • 刑法 197条の4(あっせん収賄罪)
  • 刑法 198条(贈賄罪)
  • 2025年6月1日施行 改正刑法(懲役・禁錮を拘禁刑に統合)
  • 刑事訴訟法 239条(告発)

1. 贈収賄罪の構成要件

1-1. 単純収賄罪(197条1項前段)

  • 主体:公務員
  • 行為:賄賂の収受・要求・約束
  • 対象:職務に関し
  • 法定刑:5年以下の拘禁刑

1-2. 受託収賄罪(197条1項後段)

請託(特定の職務行為を依頼)を受けたとき:7年以下の拘禁刑。

1-3. 事前収賄罪(197条2項)

公務員になろうとする者が、就任前に請託を受けて賄賂を収受:5年以下の拘禁刑。

1-4. 第三者供賄罪(197条の2)

公務員が請託を受け、第三者に賄賂を供与させる:5年以下の拘禁刑。

1-5. 加重収賄罪(197条の3)

収賄を受けた公務員が不正な行為をする等:1年以上20年以下の拘禁刑。

1-6. あっせん収賄罪(197条の4)

公務員が他の公務員の職務にあっせんして賄賂を収受:5年以下の拘禁刑。

1-7. 贈賄罪(198条)

賄賂を供与・申込・約束した者:3年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金。

2. 「賄賂」の概念

賄賂とは「公務員の職務に対する不正の報酬」。金銭に限らず、物品・接待・債務免除・職位提供等の経済的利益を含みます。社交儀礼の範囲を超えるものが対象。

3. 「職務に関し」の解釈

3-1. 一般的職務権限

公務員の地位上の職務権限の範囲内であれば、具体的事務に直接関係なくても「職務に関し」に該当。

3-2. 職務密接関連行為

判例上、職務と密接関連する行為への報酬も「職務に関し」と評価される傾向。

4. 告発と告訴の違い

項目 告訴 告発
主体 被害者本人・法定代理人 第三者(誰でも)
対象犯罪 すべての犯罪 すべての犯罪
親告罪との関係 告訴必須 告発でも公訴提起可
取下げ 第一審判決前まで 同左

贈収賄罪は被害者個人がいない(公益侵害)ため、告発による立件が原則です。

5. 告発状の必要記載事項

5-1. 告発人情報

  • 氏名・住所・連絡先
  • 職業
  • 生年月日

5-2. 被告発人情報

  • 氏名・住所・職業(公務員の場合は所属部署・役職)
  • 不明の場合:「氏名不詳」と記載し可能な限り特定

5-3. 罪名

収賄罪(刑法197条)・受託収賄罪・第三者供賄罪・加重収賄罪等。贈賄者がいる場合は贈賄罪(198条)も。

5-4. 告発の趣旨

「上記被告発人を、下記犯罪事実により厳重に処罰されたく、ここに告発する」

5-5. 犯罪事実

  • 日時:賄賂授受の日
  • 場所:授受場所
  • 方法:金銭・物品・接待等の内容
  • 金額・価額
  • 請託の内容(受託収賄の場合)
  • 職務との対価関係

5-6. 立証資料の目録

  • 銀行振込記録
  • 領収書・契約書
  • メール・LINEのやりとり
  • 録音記録
  • 関係者の陳述書

6. 立証の難しさと対応

6-1. 密室性

賄賂の授受は密室で行われることが多く、客観的証拠の確保が困難。録音・録画・銀行記録等の事前準備が重要。

6-2. 関係者の証言確保

関係者は身元を秘して証言したい場合が多い。陳述書での証言確保。

6-3. 物的証拠の保全

  • 授受時のスマホ録音・写真
  • LINE・メールのスクリーンショット
  • 銀行振込明細
  • 不自然な経費精算記録

7. 告発状の提出先

告発状の提出先は、「警察署長」または「検察官」が原則。

  • 警察署長宛て:行政書士の業務範囲
  • 検察庁宛て:司法書士業務(裁判所・検察庁提出書類)

行政書士は警察署長宛てのみ作成可能。被告発人の所在地・犯行地を管轄する警察署が一般的。

8. 関連法令での処罰

8-1. 公職選挙法(選挙関係)

選挙時の買収は公職選挙法で別途処罰(221条以下)。

8-2. 政治資金規正法

政治家への寄附は規制あり。違反は別途処罰。

8-3. 不正競争防止法(外国公務員)

外国公務員への贈賄は不正競争防止法18条で処罰。

8-4. 国家公務員法・地方公務員法

収賄等は懲戒免職・停職等の懲戒処分対象。

9. 業務範囲の整理

9-1. 行政書士の業務範囲

  • 事実関係整理書面の作成
  • 警察署長宛て告発状の作成(行政書士法1条の2)
  • 立証資料の整理

9-2. 業務範囲外(提携専門家を紹介)

  • 検察庁宛て告発状の作成 → 司法書士業務
  • 刑事弁護・告発人代理 → 弁護士業務
  • 民事損害賠償請求 → 弁護士業務
  • 内部通報窓口の整備 → 公益通報者保護法対応で弁護士・行政書士

FAQ|よくあるご質問

Q1. 贈賄者と収賄者の両方を告発できますか?
A. はい。贈収賄は対向犯(贈賄者と収賄者が両方処罰対象)。同一告発状で両者を告発可能。

Q2. 自分も贈賄に関与している場合は告発できますか?
A. 告発自体は可能。ただし自身も贈賄罪(198条)の対象となるため、自首(刑法42条)として位置付けることで刑の減軽(任意的減軽)が期待できます。

Q3. 立証が困難な場合でも告発すべきですか?
A. 客観的証拠が乏しい段階では受理されにくい。録音・記録等を可能な限り保全してから提出を推奨。

Q4. 公務員の接待はすべて贈収賄ですか?
A. 社交儀礼の範囲(少額・対価関係なし)は対象外。職務と対価関係ある接待は対象。区別は判例の蓄積による。

Q5. 告発が受理されない場合は?
A. 検察審査会への申立、追加立証資料の提出、別の警察署・検察庁への提出を検討。

Q6. 告発から起訴まではどれくらいかかりますか?
A. 事案により大きく変動。複雑な贈収賄事件は捜査に1〜3年、起訴判断にさらに数か月。証拠の質と量で大きく変わります。

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まとめ

贈収賄罪の告発状は、犯罪事実(公務員の職務・賄賂授受・対価関係)の特定、客観的立証資料の整備が不可欠です。受託収賄・第三者供賄・加重収賄等の構成要件区分も重要。提出先は警察署長または検察官(行政書士は警察署長宛てのみ)。検察庁宛ては司法書士業務、刑事弁護・代理は弁護士業務という業際を踏まえ、専門家チームで対応します。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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