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任意後見契約の手続きと流れ|公正証書の作成から登記まで

更新: 約14分で読めます

任意後見契約の手続きで最も見落とされがちなのが、公正証書でなければ契約が無効になるという点です。「任意後見契約に関する法律」第3条は、任意後見契約を公正証書で締結することを法律上の要件と定めています。私文書で署名・押印しただけでは、どれだけ内容が整っていても法的効力が認められません。

任意後見契約の手続きは、(1)受任者の選定、(2)代理権の範囲の決定、(3)公証役場での公正証書作成、(4)東京法務局への登記、(5)判断能力低下時の監督人選任申立て、の5ステップです。

この記事では、任意後見契約を公正証書で作成し、登記を経て効力を発生させるまでの具体的な流れと、必要書類・費用・注意点を解説します。

「手続きの進め方がわからない」「公証役場とのやり取りが不安」という方は、行政書士法人Treeにご相談ください。任意後見契約に精通した行政書士が、契約内容の設計から公正証書の作成まで一括でサポートいたします。相談は何度でも無料・全国対応です。

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任意後見契約はなぜ公正証書が必要なのか

任意後見契約は、将来の判断能力低下に備えて代理権を付与する重大な法律行為です。任意後見契約に関する法律第3条は、この契約を「公証人の作成する公正証書によってしなければならない」と明記しています。

公正証書での作成が義務付けられている理由は主に3つあります。第一に、公証人が本人の意思能力と契約内容を確認することで、本人の真意に基づく契約であることが担保されます。第二に、公正証書は原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんのリスクが排除されます。第三に、公証人から東京法務局への登記嘱託が自動的に行われ、契約の存在が公的に記録される仕組みになっています。

つまり、公正証書の作成は単なる形式要件ではなく、本人保護と制度の信頼性を確保するための仕組みです。自分で契約書を作成して署名・押印しただけでは、任意後見契約として機能しない点に注意してください。

手続きの全体像と所要期間の目安

任意後見契約の手続きは、準備開始から公正証書の完成までおおむね2週間〜1か月程度が目安です。受任者がすでに決まっていて契約内容も固まっている場合は2週間程度、内容の検討に時間をかける場合は1か月以上かかることもあります。

ステップ 内容 所要期間の目安
Step 1 受任者の選定 数日〜数週間
Step 2 代理権の範囲・契約条件の決定 1〜2週間
Step 3 公証役場への事前相談・文案作成 数日〜1週間
Step 4 公証役場での調印(公正証書作成) 当日(約30〜60分)
Step 5 東京法務局への登記(公証人が嘱託) 約2〜4週間

なお、Step 5の登記は公証人が職権で嘱託するため、本人や受任者が手続きをする必要はありません。登記が完了すると、法務局から登記事項証明書を取得できるようになります。

任意後見契約の手続き 5つのステップ

Step 1:受任者(任意後見人候補者)を選ぶ

最初のステップは、将来の任意後見人となる受任者を決めることです。受任者になるために法律上の資格は不要で、以下のような方に依頼できます。

  • 家族・親族:本人の生活状況を熟知しているため、身上監護面でのメリットが大きい
  • 行政書士・弁護士・司法書士等の専門家:法的手続きに精通しており、財産管理面で安定した対応が期待できる
  • NPO法人・社会福祉法人:組織として継続性があり、個人の死亡リスクが少ない

ただし、以下に該当する方は受任者になれません(任意後見契約に関する法律第4条第1項第3号、民法第847条準用)。

  • 未成年者
  • 家庭裁判所で解任された法定代理人・保佐人・補助人
  • 破産者
  • 行方不明の者
  • 本人に対して訴訟をした者、その配偶者及び直系血族

おひとりさまで身近に頼れる方がいない場合は、専門家やNPO法人を受任者として選ぶことが現実的な選択肢です。

Step 2:代理権の範囲と契約条件を決める

受任者に付与する代理権の範囲を具体的に検討します。任意後見契約では、代理権の範囲を「代理権目録」として契約書に定めるのが一般的です。主な代理権の項目は以下の通りです。

代理権の分類 具体的な内容
財産管理 預貯金の管理・払戻し、不動産の管理・処分、保険契約に関する事項
身上監護 介護サービス契約・施設入所契約・入院手続きの締結・変更・解除
行政手続き 税務申告、年金・社会保険に関する届出、各種行政手続き
法律行為 訴訟行為、示談・和解、契約の締結・解除

代理権の範囲は自由に設定できますが、契約締結後に範囲を変更するには公正証書の作り直しが必要です。そのため、将来必要になりそうな事項はなるべく広めに含めておくことが実務上のポイントです。

なお、任意後見人に付与されるのは代理権のみです。法定後見のような同意権・取消権はありません。また、医療行為そのものへの同意(手術の同意など)は任意後見人の権限に含まれません。入院手続きの代理はあくまで事務的な契約行為の代理であり、医療行為の判断を代わりに行えるわけではない点にご注意ください。

このほか、報酬の有無・金額、契約の解除条件なども決めておきます。家族を受任者にする場合は無報酬とするケースが多いですが、専門家に依頼する場合は月額報酬を定めるのが一般的です。

Step 3:公証役場で公正証書を作成する

契約内容が固まったら、公証役場に連絡して事前相談の予約を取ります。手順は以下の流れです。

  1. 事前相談の予約:最寄りの公証役場に電話し、任意後見契約の公正証書を作成したい旨を伝えます
  2. 契約ドラフトの送付:行政書士等が作成した契約書の原案と必要書類を公証役場に送付します
  3. 公証人による文案作成:公証人が原案を確認し、法的に整った公正証書の文案を作成します(数日〜1週間程度)
  4. 文案の確認・修正:完成した文案を本人・受任者双方が確認し、必要があれば修正を依頼します
  5. 調印日の予約:文案が確定したら、本人と受任者が揃える日程で調印日を予約します

公証役場に持参する必要書類は以下の通りです。

必要書類 備考
本人の戸籍謄本 発行から3か月以内
本人の住民票 発行から3か月以内
本人の印鑑登録証明書+実印 発行から3か月以内
受任者の住民票 発行から3か月以内
受任者の印鑑登録証明書+実印 発行から3か月以内
または 顔写真付き本人確認書類+認印 マイナンバーカード・運転免許証など(印鑑証明の代わり)

公証役場によって必要書類が多少異なる場合があるため、事前相談時に確認しておくと安心です。なお、本人が病気や身体の障害で公証役場に出向けない場合は、公証人が出張して作成することも可能です(出張手数料が別途かかります)。

Step 4:公証役場で調印する

調印日当日、本人と受任者が揃って公証役場を訪問します。公証人が公正証書の全文を読み上げ、内容に誤りがないかを確認したうえで、本人・受任者が署名・押印します。所要時間は約30分〜1時間程度です。

公正証書の原本は公証役場に保管され、本人と受任者にそれぞれ正本または謄本が交付されます。正本は原本と同一の効力を持つため、大切に保管してください。

Step 5:東京法務局への登記と登記事項証明書の取得

公正証書の作成が完了すると、公証人が東京法務局(後見登記を全国一括で管理)に任意後見契約の登記を嘱託します。この手続きは公証人が行うため、本人や受任者が直接何かをする必要はありません。

登記完了後は、法務局で登記事項証明書を取得できるようになります。この証明書は、将来、判断能力が低下した際に任意後見監督人の選任を家庭裁判所に申し立てる際に必要となる書類です。

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公正証書の作成にかかる費用

任意後見契約の公正証書作成にかかる法定費用は、全国一律で以下の通りです。

費用項目 金額
公正証書作成手数料 13,000円
登記嘱託手数料 1,600円
収入印紙(登記用) 2,600円
正本・謄本の交付手数料 1枚300円 × 枚数
書留郵便料 実費
合計(目安) 約20,000〜25,000円

任意後見契約の公正証書作成手数料は、目的の価額を算定できない法律行為として一律13,000円と定められています。詳しい費用体系は日本公証人連合会の任意後見契約ページで確認できます。

なお、行政書士等の専門家に契約書の起案を依頼する場合は、上記の公証役場費用とは別に専門家報酬が発生します。行政書士法人Treeでは39,800円(税抜)〜で任意後見契約の作成をサポートしています。

効力はいつ発生する?監督人選任の申立て

任意後見契約は、公正証書を作成しただけでは効力が発生しません。本人の判断能力が実際に低下した段階で、家庭裁判所任意後見監督人の選任を申し立て、監督人が選任されて初めて効力が発生します。

申立てができるのは、本人・配偶者・四親等内の親族・任意後見受任者です。申立て時に必要な書類には、医師の診断書、戸籍謄本、登記事項証明書、本人の財産に関する資料などがあります。審理期間はおおむね1〜3か月程度です。

任意後見監督人には弁護士や司法書士が選任されることが多く、その報酬は家庭裁判所が決定します。一般的な目安は月額1万〜3万円程度で、本人の財産から支払われます。成年後見制度の全体像については法務省の成年後見制度ページで詳しく説明されています。

手続きで注意すべきポイント

判断能力が低下してからでは契約できない

任意後見契約は本人に契約締結能力があることが前提です。認知症が進行してからでは有効な契約が結べません。「まだ早い」と思っても、元気なうちに準備を始めることが重要です。軽度の判断能力低下が見られる場合は「即効型」で対応できる可能性もありますが、判断能力の程度によっては法定後見を検討すべきケースもあります。

見守り契約を併用して「空白期間」に備える

任意後見契約を「将来型」で締結した場合、契約から効力発生までの間に本人の状態を把握する仕組みがありません。判断能力の低下に気づくのが遅れると、適切なタイミングで監督人選任の申立てができないリスクがあります。見守り契約を併用し、受任者が定期的に連絡・訪問する体制を整えておくことで、判断能力低下の兆候を早期に発見できます。

死後事務は任意後見契約の範囲外

任意後見契約はあくまで本人の生存中を対象とした制度です。本人が亡くなると効力が終了し、任意後見人には葬儀の手配や行政届出、契約解約等の死後の事務を行う権限がありません。死後までカバーするには、死後事務委任契約を別途締結しておく必要があります。

よくある質問

Q. 任意後見契約は自分だけで手続きできますか?

制度上は可能です。本人と受任者が直接公証役場に相談し、公正証書を作成してもらうことはできます。ただし、代理権目録の設計や契約条項の検討には法的な専門知識が必要であり、漏れや不備があると将来必要な場面で代理権が行使できない事態を招きかねません。行政書士等の専門家に契約書の起案を依頼するのが一般的です。

Q. 受任者は複数人にすることはできますか?

はい、可能です。たとえば財産管理は行政書士に、身上監護は家族に、というように役割を分担させることもできます。複数の受任者を選任する場合は、代理権の範囲が重複しないよう整理し、各受任者との間でそれぞれ公正証書を作成する必要があります。

Q. 任意後見契約の費用は全部でいくらかかりますか?

公証役場の費用(約2万〜2万5千円)に加え、行政書士等の専門家に契約書の起案を依頼する場合はその報酬が別途発生します。また、将来、任意後見監督人が選任された後は監督人の報酬(月額1万〜3万円程度)が継続的にかかります。行政書士法人Treeでは39,800円(税抜)〜で契約作成をサポートしています。

Q. 契約後に代理権の範囲を変更できますか?

変更する場合は、既存の契約を解除したうえで新たに公正証書を作り直す必要があります。変更のたびに公証役場への手数料がかかるため、最初の契約時に代理権の範囲をなるべく広く設定しておくことが実務上のポイントです。

Q. 公証役場に行けない場合はどうすればよいですか?

本人が入院中や身体の障害等で公証役場に出向けない場合は、公証人が自宅や病院に出張して公正証書を作成することも可能です。出張の場合は、公正証書作成手数料が1.5倍(19,500円)になるほか、日当と交通費が別途加算されます。

まとめ

  • 任意後見契約は公正証書での作成が法律上の要件。私文書では無効になる
  • 手続きは「受任者の選定 → 代理権の設計 → 公証役場での公正証書作成 → 登記 → 監督人選任申立て」の5ステップ
  • 公証役場の法定費用は合計約2万〜2万5千円。専門家に契約書の起案を依頼する場合は報酬が別途発生
  • 見守り契約死後事務委任契約との併用で、「契約〜効力発生〜死後」まで切れ目のない備えができる

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※ 2026年3月時点の民法・任意後見契約に関する法律に基づく解説です。公証人手数料等は改定される場合があります。最新情報は日本公証人連合会でご確認ください。

※ 記事の内容には細心の注意を払っておりますが、万が一誤りがございましたらご指摘いただけますと幸いです。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではございません。具体的なケースについては専門家へのご相談をおすすめいたします。


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