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葬祭費・埋葬料の請求手続|いくらもらえる?健康保険・国保・後期高齢者の必要書類と期限2年

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家族が亡くなった後、葬儀や火葬の費用を喪主が立て替えたものの、健康保険から葬祭費・埋葬料を請求できることを知らずに2年の請求期限を過ぎてしまうケースは少なくありません。葬祭費・埋葬料は被保険者が加入していた医療保険の種別(健康保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度)によって、給付名称・支給額・申請窓口・必要書類がそれぞれ異なります。さらに、業務上の死亡であれば労災保険の葬祭料(労働者災害補償保険法17条)または通勤災害用の葬祭給付(同法22条の5)が優先となり、健康保険からの給付は受けられません。本記事では、葬祭費・埋葬料の制度別の違いと申請実務を整理します。

本記事の結論:

  • 被保険者の加入制度ごとに給付名称・支給額・申請窓口が異なります。健康保険=埋葬料5万円(健康保険法100条1項)国民健康保険・後期高齢者医療=葬祭費(概ね3〜7万円)労災保険=葬祭料(315,000円+給付基礎日額30日分または60日分の高い方)です。
  • 業務上災害は労災保険の葬祭料(労災法17条)、通勤災害は葬祭給付(労災法22条の5)が優先し、健康保険からの埋葬料との二重給付はできません。
  • 請求期限はいずれも2年で消滅時効により失権します。起算点は制度ごとに異なり、健康保険の埋葬料は死亡日の翌日、埋葬費・国保等の葬祭費は葬祭を行った日の翌日が基準です(健康保険法193条・国民健康保険法110条1項・労災法42条1項)。
  • Treeでは死後事務委任契約書・遺言書(葬儀付言事項)・事実関係整理書面の作成、戸籍収集等を支援します。給付請求書の代理提出・労災認定の不服審査・遺族年金請求は社会保険労務士業務として連携します。

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葬儀・火葬・各種給付請求等の死後事務を整理した死後事務委任契約書(公正証書化)の作成を支援します。受任者の選定・委任事項の整理・公証役場との調整まで、行政書士業務範囲で対応します。

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根拠法令

  • 健康保険法100条1項(埋葬料)・100条2項(埋葬費)・105条(資格喪失後の埋葬料の継続給付)・113条(家族埋葬料)・53条(健康保険組合の付加給付)・193条(時効2年)
  • 健康保険法施行令35条(埋葬料の額=5万円)
  • 国民健康保険法58条1項(葬祭費の支給、市町村条例等への委任)・110条1項(保険給付を受ける権利の時効2年)
  • 高齢者の医療の確保に関する法律86条(葬祭費・葬祭の給付)
  • 労働者災害補償保険法17条(業務災害用・葬祭料)・22条の5(通勤災害用・葬祭給付)・42条1項(時効2年)
  • 労働者災害補償保険法施行規則17条(葬祭料・葬祭給付の支給額算定)
  • 船員保険法73条(葬祭料)/国家公務員共済組合法・地方公務員等共済組合法(各短期給付)
  • 所得税法9条1項16号(葬祭費・埋葬料等の非課税)

1. 葬祭費・埋葬料・葬祭料の違い|制度別の給付概要

葬祭費・埋葬料は、被保険者本人または被扶養者が死亡した際に、医療保険制度から葬祭費用の補填として支給される現金給付です。日本の公的医療保険は、被用者保険(健康保険・船員保険・共済組合)・国民健康保険・後期高齢者医療制度の複数の保険者により国民皆保険を構成しており、加入していた制度ごとに給付名称・支給額・申請手続が異なります。被用者保険では「埋葬料・埋葬費・家族埋葬料」、国民健康保険・後期高齢者医療制度では「葬祭費」と呼称が分かれます。死亡が業務上災害である場合は労災保険の「葬祭料」(労災法17条)、通勤災害である場合は「葬祭給付」(労災法22条の5)が優先され、医療保険からの埋葬料・葬祭費は支給されません。

2. 健康保険(被用者保険)の埋葬料・埋葬費・家族埋葬料

健康保険法100条1項により、被保険者が業務外で死亡した場合、その者により生計を維持していた者で埋葬を行うものに対し、埋葬料として5万円(健康保険法施行令35条で定める金額)が支給されます。なお「生計を維持されていた者」は、生計の全部または一部を維持されていた者を含み、民法上の親族関係や同一世帯であることは問われません。同条2項により、埋葬料の支給を受けるべき者がない場合は、実際に埋葬を行った者に対し、5万円の範囲内で埋葬に要した費用(埋葬費)が支給されます。被扶養者が死亡した場合は、健康保険法113条の家族埋葬料として被保険者に5万円が支給されます。申請窓口は、協会けんぽ加入者は協会けんぽ各都道府県支部、健康保険組合加入者は当該健康保険組合です。なお健康保険組合の場合、健康保険法53条に基づき規約で定めることにより、5万円に上乗せした付加給付(埋葬料付加金)が支給されるケースがあるため、加入していた組合の規約を確認することをお勧めします。請求書は「健康保険埋葬料(費)支給申請書」で、添付書類は、埋葬料・埋葬費・家族埋葬料の別、事業主証明の有無、生計維持関係の確認が必要かどうかにより異なるため、協会けんぽ支部または健康保険組合の最新案内に従って準備します。

2-1. 資格喪失後の埋葬料(健康保険法105条)

退職等により被保険者の資格を喪失した後でも、健康保険法105条に基づき以下のケースでは従前の健康保険組合・協会けんぽから埋葬料が支給されます:(a)被保険者が資格喪失後3か月以内に亡くなったとき、(b)資格喪失後に傷病手当金または出産手当金の継続給付を受けている期間に亡くなったとき、(c)これらの継続給付を受けなくなった日後3か月以内に亡くなったとき。退職後の死亡では国保ではなく従前の保険者にまず確認します。

3. 国民健康保険の葬祭費

国民健康保険法58条1項に基づき、市町村国保では条例等の定めるところにより、国民健康保険組合では組合の規約等の定めるところにより、葬祭を行った者に対して葬祭費が支給されます。支給額は自治体・国保組合ごとに異なり、多くは3万円〜7万円程度です。例として東京23区では7万円、横浜市では5万円と案内されていますが、金額は変更される可能性があるため、必ず亡くなった方の住所地の市区町村または加入していた国保組合の最新案内を確認してください。申請窓口は被保険者の住所地の市区町村国民健康保険担当課で、申請書(市町村ごとに様式が異なる)に、死亡を確認できる書類(戸籍抄本または死亡診断書の写し)、葬祭執行を確認できる書類(葬儀費用の領収書または会葬礼状)、申請者の本人確認書類、振込先口座の情報等を添付します。なお、葬祭費は「死亡」ではなく「葬祭」に対する給付金のため、自治体によっては直葬・火葬式のみの場合は支給対象外となるケースもあります。また、死亡時に国保加入者であっても、健康保険法105条等により以前加入していた健康保険から埋葬料が支給される場合には、国保の葬祭費が支給されないことがあります。

4. 後期高齢者医療制度の葬祭費

75歳以上(一定の障害がある場合は65歳以上)が加入する後期高齢者医療制度では、高齢者の医療の確保に関する法律86条により、被保険者が死亡した場合に葬祭を行った者に葬祭費が支給されます。支給額・申請手続は都道府県の後期高齢者医療広域連合の条例等で定められ、多くは3万円〜7万円の範囲です。申請窓口は被保険者の住所地の市区町村の後期高齢者医療担当課(広域連合の窓口は市町村が受託)で、必要書類は国保とほぼ同じです。広域連合により条例の内容や案内が異なるため、亡くなった方の住所地の市区町村窓口での確認が確実です。

5. 労災保険の葬祭料・葬祭給付

労働者の死亡が業務災害による場合は労働者災害補償保険法17条に基づく「葬祭料」、通勤災害による場合は同法22条の5に基づく「葬祭給付」が、葬祭を行う者に対して支給されます。支給額は、労災保険法施行規則17条により、315,000円+給付基礎日額の30日分、または給付基礎日額の60日分のいずれか高い方となります。給付基礎日額は、原則として死亡前3か月間に支払われた賃金総額をその期間の暦日数で除した金額です。申請窓口は事業場の所在地を管轄する労働基準監督署で、「葬祭料請求書(業務災害用)」または「葬祭給付請求書(通勤災害用)」を提出します。労災保険給付は医療保険の埋葬料・葬祭費より優先し、二重給付はできません。

6. 請求期限は2年|いつから時効が進むか

葬祭費・埋葬料・葬祭料・葬祭給付の請求権はいずれも2年で消滅時効にかかり、これを過ぎると請求できなくなります(健康保険法193条・国民健康保険法110条1項・労働者災害補償保険法42条1項)。時効の起算点は給付ごとに異なる点に注意が必要です:

  • 健康保険の埋葬料:死亡日の翌日
  • 埋葬費・国民健康保険葬祭費・後期高齢者医療葬祭費:葬祭(埋葬)を行った日の翌日
  • 労災保険の葬祭料・葬祭給付:労働者の死亡日の翌日(権利を行使することができる時)

実務では、死亡届・火葬許可申請の後、市区町村窓口で国民健康保険または後期高齢者医療制度の葬祭費について案内されることがありますが、協会けんぽ・健康保険組合の埋葬料・埋葬費は、市区町村ではなく加入していた保険者または勤務先を通じて確認・請求する必要があります。死亡直後は加入制度を確認し、請求先を取り違えないことが重要です。

7. 葬祭費・埋葬料の税務上の取扱い

葬祭費・埋葬料・葬祭料はいずれも相続税の課税対象外(相続財産に含まれない)であり、所得税も非課税となります(所得税法9条1項16号等)。受取人の所得申告は不要です。なお、葬儀費用は被相続人の債務控除(相続税法13条)の対象となるため、葬儀費用の領収書・会葬礼状等は相続税申告のために保管しておくことを推奨します。具体的な税務処理は税理士にご確認ください。

8. 死後事務委任契約による事前準備

独居高齢者・身寄りのない方の終活では、葬祭費・埋葬料の請求事務を含む死後事務を、生前に第三者(行政書士・司法書士・弁護士・受任機関等)に委任しておく死後事務委任契約が有効です。死後事務委任契約に、葬儀・火葬・埋葬に関する費用精算や、葬祭費・埋葬料等の請求に必要な資料整理を委任事項として明記しておくことで、死亡後の事務を円滑に進めやすくなります。ただし、実際の給付請求は、制度上の請求権者、保険者・自治体の代理申請ルール、委任状の要否、振込口座の指定方法に従う必要があります。社会保険関係の申請代理は社会保険労務士業務となる場合があるため、必要に応じて社会保険労務士へ確認します。死後事務委任契約は公正証書化することで、金融機関等からの信頼性が高まります。委任事項の選定・契約書原案の作成・公証役場との調整は行政書士業務範囲です。

業務範囲の整理

行政書士業務(Treeで対応可能)

  • 死後事務委任契約書(公正証書化を含む)の作成
  • 遺言書(葬儀・埋葬方法の付言事項を含む)作成支援
  • 葬祭費・埋葬料の請求手続に関する情報整理・申請書記載例の提示
  • 必要に応じた戸籍収集・親族関係資料の整理(葬祭費・埋葬料の請求では、喪主確認書類、領収書、会葬礼状、死亡確認書類、本人確認書類等が中心となるため、戸籍が常に必要とは限りません)

業務範囲外(提携専門家をご紹介)

  • 葬祭費・埋葬料・労災保険給付の申請代理(社会保険労務士業務)
  • 労災認定の行政不服審査・取消訴訟(社会保険労務士・弁護士業務)
  • 遺族年金・遺族厚生年金の申請(社会保険労務士業務)
  • 相続税申告・準確定申告(税理士業務)
  • 相続登記(司法書士業務)

FAQ|よくあるご質問

Q1. 健康保険組合と国民健康保険のどちらに請求するか分からない。
A. 原則として、死亡時に加入していた医療保険制度に確認します。ただし、退職後の任意継続中である場合や、健康保険法105条に基づき(a)資格喪失後3か月以内の死亡、(b)傷病手当金または出産手当金の継続給付期間中の死亡、(c)継続給付終了後3か月以内の死亡に該当する場合は、以前加入していた健康保険から埋葬料が支給されることがあります。75歳未満で国保加入中の場合は市区町村国保、75歳以上は後期高齢者医療制度、被用者保険加入中または継続給付に該当する場合は協会けんぽ・健康保険組合に確認します。

Q2. 葬祭費と埋葬料を両方請求できますか。
A. できません。葬祭費(国保・後期高齢者)と埋葬料(健康保険)は、被保険者が加入していた制度のいずれか1つから支給される仕組みで、二重請求はできません。労災保険の葬祭料・葬祭給付が支給される場合は、医療保険からの給付は受けられません。

Q3. 葬儀をしていなくても請求できますか。
A. 健康保険の埋葬料(5万円)は、生計維持関係のあった方で埋葬を行う方に対して定額で支給されます。いわゆる葬儀式を行っていない場合でも、火葬・埋葬等の事実や死亡事実を確認できる資料により請求できる場合があります。一方、埋葬費・国保や後期高齢者医療制度の葬祭費は、実際に葬祭を行った者への給付であるため、領収書・会葬礼状等、葬祭執行を確認できる資料が求められるのが通常です。直葬・火葬のみの場合は自治体により葬祭費の支給可否が分かれるため、申請前に市区町村窓口に確認します。

Q4. 喪主以外でも請求できますか。
A. 健康保険の家族埋葬料は被保険者本人が請求しますが、葬祭費・埋葬費は実際に葬祭を行った者(喪主・施主)が請求者となります。喪主・施主・領収書名義人が複数いる場合や、実際に費用を負担した人が異なる場合は、保険者・自治体に確認が必要です。代表者による請求、委任状、領収書名義人の確認などを求められることがあります。給付金の内部的な分配は、関係者間で事前に整理しておくことが望ましいです。

Q5. 死亡から2年以上経過していますが請求できますか。
A. 原則として請求権は時効により消滅し、給付を受けられません。ただし、死亡事実や葬祭執行日の確認、請求権の起算点、保険者側の取扱いにより確認が必要な場合があります。2年を経過している場合でも、まずは各保険者・自治体に時効完成の取扱いと申請可否を確認してください。

Q6. 公務員や私立学校教職員の埋葬料はどこに請求しますか。
A. 国家公務員共済組合・地方公務員共済組合・日本私立学校振興・共済事業団など、所属していた共済組合に請求します。給付名称は埋葬料・家族埋葬料で、健康保険とほぼ同じ運用ですが、支給額・付加給付・必要書類は各共済組合の規程により異なるため、所属組合に直接確認します。

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まとめ

葬祭費・埋葬料の請求は、被保険者が加入していた医療保険制度(健康保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度・共済組合・労災保険)によって、給付名称・支給額・申請窓口・必要書類が分かれており、いずれも2年の消滅時効が共通しています(起算点は給付ごとに異なる)。葬儀直後の慌ただしい時期に、(a)喪主が高齢で手続きを忘れる、(b)相続人が複数いて誰が請求するか決まらないまま時効に近づく、(c)健康保険組合からの自動案内がなく制度を知らない、(d)任意継続中だったことに気づかず国保窓口で「該当なし」と案内され制度を取り違える等の失敗パターンが報告されています。生前の死後事務委任契約により受任者を指定しておくことで、円滑な請求と給付金の確保が可能となります。Treeでは死後事務委任契約書・遺言書の作成等を通じて終活段階での備えを支援しています。社会保険給付の申請代理・労災認定・遺族年金は社会保険労務士、相続税申告は税理士、相続登記は司法書士をご紹介します。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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