車両関連

霊柩車・寝台車の許可申請|霊柩運送・緑ナンバー・民間救急との違いを解説

更新: 約13分で読めます

遺体を霊柩車・寝台自動車で有償搬送する事業を行うには、貨物自動車運送事業法に基づく国土交通大臣(地方運輸局長)の許可が必要です。一見「人」を運ぶようにみえますが、法的には「特殊な貨物(遺体)」の運送と位置づけられ、「一般貨物自動車運送事業(事業種別:霊きゅう)」として許可申請を行います。実務上は各地方運輸局の公示基準で霊柩運送に特化した運用上の特例(最低車両数の緩和等)が定められています。一方、生存している傷病者・患者等を搬送する民間救急・患者等搬送事業は、道路運送法上の旅客運送事業や消防機関の認定制度が問題となる別制度です。本記事では霊柩車・寝台車事業の許可区分・営業区域・車両要件・必要書類を、葬祭事業者・新規参入事業者向けに整理します。

本記事の結論:

  • 霊柩運送事業は貨物自動車運送事業法第2条第2項の一般貨物自動車運送事業に該当し、同法第3条の許可が必要。事業種別「霊きゅう」として申請するため、各地方運輸局の公示基準により最低車両数1両からの許可が可能等の運用上の特例が認められています(緑ナンバー登録)。
  • 霊柩運送には一般貨物の車両5両以上要件の緩和(最低1両でも可)等の運用例外あり。さらに専ら霊きゅう自動車を運行する5両未満の営業所では運行管理者・整備管理者ともに選任自体が不要となり、葬儀社の自社運搬内製化・新規参入の入口が低いのが特徴。なお寝台車は霊柩運送(貨物自動車運送事業)と患者等搬送事業(道路運送法+消防認定)で許可体系が異なるため、事業内容に応じた選択が必要。
  • 営業所・車庫・運行管理者・整備管理者・所要資金等は通常の運送業許可と共通。許可後は運賃料金届出・法定記録整備が必要。
  • 当所は霊柩運送事業許可申請書・事業計画書・添付書類一式の作成を担当。労務管理・社会保険手続は社会保険労務士をご紹介します。

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根拠法令

  • 貨物自動車運送事業法第2条(定義)・第3条(一般貨物自動車運送事業の許可)
  • 貨物自動車運送事業法第8条(事業計画)・第9条(事業計画の変更)・第10条(運送約款)・第11条(運賃及び料金等の掲示)
  • 貨物自動車運送事業輸送安全規則(運行管理者・整備管理者・点呼)
  • 道路運送車両法第59条(新規検査)・第60条(自動車検査証の交付)
  • 「一般貨物自動車運送事業の許可に関する処理方針」(地方運輸局公示)
  • 「霊きゅう運送事業」「患者等搬送事業」に係る運用通達

霊柩運送と民間救急は許可制度が違う

霊柩運送は、遺体を搬送する事業であり、一般貨物自動車運送事業(事業種別:霊きゅう)として貨物自動車運送事業法上の許可が問題になります。一方、民間救急・患者等搬送事業は、生存している傷病者・患者等を搬送する事業であり、道路運送法上の旅客運送事業の許可・登録や、消防機関による患者等搬送事業者認定が問題となります。葬儀社が遺体搬送を内製化する場合、軽自動車で遺体搬送を行う場合、患者等搬送も併せて行う場合では、必要な許可・届出・認定が異なるため、事業内容を分けて確認する必要があります。

霊柩運送・寝台車事業の法的位置づけ

「貨物」としての遺体・搬送用ストレッチャー

遺体は法的には「貨物」として扱われ、霊柩自動車による搬送は貨物運送事業に該当します。一般人の感覚では「人」を運ぶ事業に見えますが、貨物自動車運送事業法第2条第2項の解釈上、霊柩運送は同法の枠内で営業許可を要します。

寝台自動車の二類型

寝台自動車には2種類あります:①遺体搬送を主目的とする「霊柩運送」、②負傷者・病人(緊急性のないもの)の搬送を主目的とする「患者等搬送事業(民間救急)」。①は貨物自動車運送事業法に基づく一般貨物自動車運送事業(霊きゅう)として国土交通大臣(地方運輸局長)の許可を受けます。②は道路運送法第4条第1項に基づく一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定・介護タクシー等)の許可を取得した上で、各市町村消防(消防長)から「民間による患者等搬送事業に対する指導及び認定に関する要綱」に基づく認定を受けて運営します。両者は異なる許可体系のため、事業内容の確認が重要です。

営業ナンバー(緑ナンバー)の必要性

霊柩運送を業として行う場合、車両は事業用自動車(緑ナンバー)として登録する必要があります。自家用(白ナンバー)車両での有償運送は、貨物自動車運送事業法違反となります(同法第70条第1号、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)。

霊柩運送事業許可の要件

営業所・車庫の要件

営業所は事業計画に必要な広さ(机・電話・パソコン等が設置できる広さ)を有し、都市計画法・建築基準法に違反しないことが必要です。車庫は営業所から地域によって5km〜20km以内(東京特別区・横浜市・川崎市等は20km以内、大阪市・京都市・神戸市・名古屋市等の大都市は10km以内、その他の地域は5km以内が原則。各地方運輸局の公示基準により具体的距離が定められています)、車両前後左右0.5m以上の空地を確保し、出入口・接道幅員等の道路運送車両法基準を満たすことが求められます。物件契約前に管轄運輸支局へ確認することが安全です。

車両要件と最低車両数の特例

一般貨物自動車運送事業の許可は原則5両以上の車両保有が必要ですが、霊柩運送は運用上の例外が認められ、1両から申請できる場合があります。これは事業特性(葬祭時に集中需要、平時の車両稼働率が低い)に配慮したものです。ただし、営業区域、運送需要、車両の使用権原、運行管理体制、資金計画等は通常どおり審査されます。使用車両は、遺体搬送に適した構造・設備を備え、車検証上の用途・車体形状・事業用登録が事業内容に合っている必要があります。新車・中古車・改造車の別により、新規登録、構造等変更検査、用途変更、事業用自動車等連絡書による緑ナンバー登録など、必要手続が異なるため、管轄運輸支局・自動車検査登録事務所へ確認します。

運行管理者・整備管理者

運行管理者:一般貨物では保有車両29両以下なら1名以上の選任が必要。資格取得は「運行管理者試験(貨物)」合格または5年以上の実務経験+基礎講習修了によります。ただし、貨物自動車運送事業輸送安全規則第18条第1項により、専ら霊きゅう自動車または一般廃棄物の収集運搬車を運行する5両未満の営業所では、運行管理者の選任自体を要しません。整備管理者:一般貨物では3級以上の自動車整備士技能検定合格者または整備実務2年以上+整備管理者選任前研修修了者を選任します。なお、道路運送車両法第50条第1項及び同法施行規則第31条の3により、使用の本拠ごとの事業用自動車が5両未満の場合は整備管理者の選任義務自体がありません。霊柩運送事業はこの特例が適用されるケースが多くなっています。具体的な必要人数・資格要件・届出要否は、車両台数と営業所の体制に応じて管轄運輸支局へ確認します。

所要資金と財務要件

事業開始に必要な資金(人件費・燃料費・修繕費・車両費・施設費・税金・保険料等の概ね2か月分+事務所維持費の6か月分等)を、自己資金として申請日以降許可日までの期間中に確実に保有することが必要です。霊柩運送は車両数が少ないため一般貨物より所要資金は抑えられる傾向ですが、それでも数百万円規模になります。

営業区域の指定

霊柩運送事業の営業区域は、各地方運輸局の公示基準により原則として都道府県単位で運用されています。発地(運送の起点)は営業区域内に限定されますが、着地(運送の終点)が営業区域外となる長距離運送は許容されます。複数の都道府県をまたぐ事業展開を計画する場合は、それぞれの都道府県に営業所を設ける、または事業計画変更認可申請により営業区域の追加を行う必要があります。

営業区域変更の手続

営業区域の拡張・変更は事業計画変更認可申請(貨物自動車運送事業法第9条第1項)が必要です。新規許可と同様の審査を経るため、計画的な拡張が求められます。

申請の流れと必要書類

標準的な申請フロー

  1. 事前相談(管轄運輸支局)
  2. 営業所・車庫の物件確保・図面作成
  3. 運行管理者・整備管理者の選任予定
  4. 許可申請書一式の作成・提出
  5. 法令試験受験(個人事業主または法人代表者)
  6. 許可(標準処理期間3〜5か月)
  7. 運行管理者・整備管理者選任届
  8. 運賃料金設定届出
  9. 運送約款の設定手続(標準霊きゅう運送約款を採用するか、独自約款を設定するかにより、届出・認可等の扱いを管轄運輸支局で確認)
  10. 事業用自動車等連絡書取得・車両登録(緑ナンバー)
  11. 事業開始届出

主な提出書類

  • 一般貨物自動車運送事業(霊きゅう)許可申請書
  • 事業計画(営業所・車庫・車両・運送品目・運賃等)
  • 所要資金計画書・資金の調達方法
  • 営業所・車庫の見取図・平面図・写真・賃貸借契約書
  • 車両明細・車検証・車庫証明(自動車保管場所証明書)
  • 運行管理者・整備管理者の選任予定者の資格証明
  • 法人謄本・定款・直近事業年度の決算書(法人申請の場合)
  • 個人事業の場合は資産目録・住民票

運賃料金・運送約款

運賃料金の設定

運賃料金は事業者が自由に設定できますが、運輸局への届出が必要です(貨物自動車運送事業報告規則第2条の2に基づく設定・変更後30日以内の届出)。霊柩運送の運賃は「基本運賃(10kmまで〇〇円)」「超過1kmあたり〇〇円」「特別車両割増」「夜間料金」「待機料金」「冷蔵保管料金」等を組み合わせて設定するのが一般的です。地方運輸局が公示する標準運賃を参考にしつつ、地域実情に応じて設定します。

運送約款の選択

運送約款については、標準霊きゅう運送約款を採用するか、独自約款を設定するかで手続が異なります。標準約款をそのまま使用する場合は標準約款使用の届出・掲示等で足りる運用がされることがありますが、独自約款を設定する場合は地方運輸局長の認可が必要です(同法第10条)。葬儀社向けに特約(複数搬送割引等)を設ける場合は独自約款の方が柔軟ですが、認可の手続負担が発生します。実務上は標準約款での開始+必要に応じて独自約款への移行という段階的対応が現実的です。標準約款は国土交通省の公示に最新版があり、改正時は速やかに改正後の約款適用への切替えが必要となるため、具体的な提出書類・手続名は管轄運輸支局へ確認します。

運賃料金変更時の届出

運賃料金を変更する場合は、設定・変更後30日以内に届出を行います(貨物自動車運送事業報告規則第2条の2)。届出を怠ると是正指導・行政処分の対象となり得ます。価格設定の自由度が高い反面、葬儀社からの不当な値下げ要求等、独占禁止法上の優越的地位の濫用や下請法上の不当な取引慣行が問題となるケースもあるため、地域競合状況・葬儀社との取引慣行を踏まえた合理的な運賃設定が望まれます。

許可後の継続義務

輸送安全規則上の義務

運行管理者による点呼(出庫前・帰庫後・中間点呼)の実施、運転日報の作成と1年間の保存、車両の3か月点検・12か月点検の実施、整備記録簿の整備等が義務付けられます。事業用自動車事故報告書の提出義務、自動車事故報告規則第3条の重大事故報告も適用されます。

事業報告書・事業実績報告書

毎事業年度終了後100日以内に事業報告書、毎年7月10日までに事業実績報告書を地方運輸局長に提出します(いずれも貨物自動車運送事業報告規則第2条)。

各種変更届

営業所・車庫の移転、車両の増減、運行管理者・整備管理者の変更、役員変更、商号変更等の事項は、それぞれ事業計画変更認可申請または届出が必要です(貨物自動車運送事業法第9条)。営業所・車庫の移転は事業計画変更認可(30日前まで)、車両の増減は届出(事後30日以内)、運行管理者・整備管理者の変更は届出(事後30日以内)など、事項により認可と届出の区分・期限が異なります。届出漏れは輸送安全規則違反として行政処分の対象となるため、社内の変更管理体制を整えておくことが重要です。

葬祭事業者の周辺許認可

葬祭ホール(葬儀場)の建築・運営

葬祭ホールの新設は建築基準法・都市計画法・消防法の規制対象となり、用途地域による制約があります。火葬場は墓地、埋葬等に関する法律第10条に基づく経営許可が必要で、原則として地方公共団体が経営主体となります。民間事業者が火葬場を経営することは現行法上極めて限定的です。

葬祭業の登録・許可

葬祭業(葬儀社)そのものは特別な許可制度がない自由業ですが、霊柩運送・墓地経営・骨壺販売等の周辺事業は個別の許認可規制があります。葬祭ディレクター技能審査は厚生労働省認定の技能評価制度であり、業務遂行の必須要件ではありません。

葬儀互助会との関係

葬儀互助会は割賦販売法上の「前払式特定取引」として経済産業大臣の許可(同法第35条の3の61)が必要であり、保全措置・帳簿備置・前受金の管理等が義務付けられます。霊柩運送事業者が葬儀互助会と提携する場合は、保全制度・解約返戻金の取扱いを契約書で明確化することが重要です。

業務範囲の整理

行政書士業務(許可申請の作成・代理)

  • 一般貨物自動車運送事業(霊きゅう)許可申請書の作成・提出代理
  • 事業計画書・資金計画書の作成
  • 営業区域変更・車両増減の事業計画変更認可申請の作成
  • 運送約款認可申請・運賃料金届出書の作成
  • 事業用自動車等連絡書・車庫証明・名義変更の作成

業務範囲外(他士業領域)

  • 運送約款違反等の損害賠償交渉(弁護士業務/弁護士法第72条)
  • 運輸局の処分(営業停止・許可取消)に対する不服申立て・取消訴訟等の争訟対応は、法的主張や代理交渉を伴うため弁護士へ相談するのが安全。行政書士が関与する場合も、行政不服申立てに関する書類作成・手続確認の範囲を個別に確認し、訴訟対応は弁護士と連携
  • 労働関係の36協定届出(社会保険労務士業務)
  • 事業税・消費税の税務申告(税理士業務)
  • 運転者の労務管理規程作成(社会保険労務士業務)

FAQ|よくあるご質問

Q1. 葬儀社が自社で霊柩車を保有する場合、許可は不要ですか?

葬儀料金に搬送費が含まれる「葬祭サービスの一環」として行う場合でも、独立した運送行為と判断されれば許可が必要です。形式上「無償」でも、葬儀代金との実質的対価関係があれば有償運送に該当する可能性が高く、許可取得が望ましいです。

Q2. 1台からでも許可は取れますか?

霊柩運送事業は運用上、1両からの許可申請が可能です。ただし営業所・車庫・運行管理者・整備管理者等の他要件は一般貨物と同様に必要となります。

Q3. 軽自動車で霊柩運送はできますか?

軽自動車で遺体搬送を行う場合は、貨物軽自動車運送事業の届出(貨物自動車運送事業法第36条)が問題となります。ただし、霊きゅう用途に適した車両構造・車検証上の表示・営業ナンバー・運送品目の扱いは管轄運輸支局で確認が必要です。一般貨物の霊きゅう限定許可とは手続・要件が異なるため、事業計画段階で確認します。車両規格の制約から本格的な宮型霊柩車には不向きで、寝台車型搬送に限定されるケースが多いです。

Q4. 事業承継の場合の手続は?

平成30年改正貨物自動車運送事業法(2019年11月施行)により、事業の譲渡譲受・合併・分割の認可(同法第30条)、相続の認可(同法第31条)の制度が整備されました。事業承継では、これらの手続により事業の地位承継を検討します。許可番号や登録情報の扱い、車両・営業所・車庫・運行管理体制の承継可否は、承継スキームと管轄運輸支局の処理により確認が必要です。許可取消事由がある事業者からの承継は認められない場合があります。

Q5. 許可取得から営業開始までどれくらいかかりますか?

申請から許可まで標準処理期間3〜5か月、許可後の登録(緑ナンバー取得)に1〜2週間、運送約款認可・運賃料金届出を経て営業開始まで、計4〜6か月見込んでおくと安全です。

Q6. 患者等搬送(民間救急)は霊柩運送と一緒に許可できますか?

患者等搬送事業(民間救急)は、道路運送法第4条第1項に基づく一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定・介護タクシー等)の許可を取得した上で、各市町村消防(消防長)から「民間による患者等搬送事業に対する指導及び認定に関する要綱」に基づく認定を受ける構造です。霊柩運送許可(貨物自動車運送事業)と一括ではなく、別途手続を行います。

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まとめ

霊柩車・寝台車事業は貨物自動車運送事業法に基づく許可事業であり、営業区域・車庫・運行管理者・整備管理者等の要件を満たす必要があります。一般貨物との差異は、最低車両数(1両から可)、特殊車両(霊柩自動車・寝台自動車)の構造変更、葬儀業界特有の業務形態にあります。葬儀社が自社運搬を内製化する場合や、新規事業として霊柩運送に参入する場合は、許可申請の事前計画(営業所・車庫の確保、運行管理者・整備管理者の選任、所要資金の調達)が極めて重要です。許可後の運賃料金届出・運送約款認可・各種変更届を含めて、行政書士に相談しながら進めることをおすすめします。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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