結論から言えば、観光バスや送迎用の大型バスを有料で走らせる「一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス)」は、道路運送法第4条にもとづく国土交通大臣(地方運輸局)の許可がなければ営めず、許可後も5年ごとの更新を受けなければ効力を失います。許可の取得には、最低車両数・運行管理者・整備管理者・車庫・休憩仮眠施設・自己資金・任意保険といった「人・物・お金・安全」の基準をすべて満たす必要があり、申請者本人(法人は代表権を有する常勤役員)には法令試験も課されます。当事務所は行政書士として許可申請書類の作成・提出代理や車庫の使用権原整理をお手伝いしますが、労務管理は社会保険労務士、設立や登記は司法書士、税務は税理士と連携し、各士業の職域を守って対応します。本記事では制度の骨格を整理します。
目次
貸切バスとは|道路運送法上の位置づけ
貸切バスは、道路運送法第3条第1号ロに定める「一般貸切旅客自動車運送事業」にあたります。1個の契約により乗車定員11名以上の自動車を貸し切って旅客を運送する事業で、観光バス、送迎バス、ツアーバスなどがこれに含まれます。乗合バス(路線バス)や乗用(タクシー)とは事業区分が異なり、それぞれ別の許可が必要です。
この事業を経営するには、道路運送法第4条にもとづき国土交通大臣の許可を受けなければなりません。許可の権限は地方運輸局長に委任されており、実際の窓口は営業所を管轄する運輸支局です。許可基準は各地方運輸局が公示で定めており、たとえば中部運輸局では「一般貸切旅客自動車運送事業の申請に関する審査基準について」(中運局公示第264号)が基準となっています。基準の細目は地域差がありうるため、管轄運輸局の最新公示の確認が欠かせません。
事業用自動車(最低車両数)と営業区域
営業区域は原則として都道府県を単位とし、発地・着地の双方またはいずれかが営業区域内である運送に限られます。
車両については、適切な使用権原を有する乗車定員11名以上の自動車が、営業区域ごとに最低3両必要です。大型車を使用する場合は、営業区域内に配置する最低車両数が5両となります。3両以上5両未満で申請する場合は、中型車・小型車・コミューター車に使用車種が限定される条件が付されるのが一般的です。リース車両でも、使用権原が明確であれば計画車両に算入できます。
運行管理者・整備管理者の選任
安全運行を担保するため、営業所ごとに有資格者を常勤で選任する必要があります。
- 運行管理者:営業所ごとに常勤の有資格者を最低2名選任します。さらに、保有車両数に応じて追加選任が必要となり、貸切バスでは39両までは2名、40両以上は車両数の区分に応じて増員します。資格は運行管理者試験(旅客)の合格等によって取得します。
- 整備管理者:営業所ごとに最低1名を選任します。一定の実務経験+選任前研修、または自動車整備士の技能検定合格などの要件を満たす者から選任します。
貸切バス事業者は保有車両数にかかわらず、新規許可の段階から安全統括管理者の選任と安全管理規程の設定・届出が義務づけられており(道路運送法第22条の2)、最低3両(大型使用は5両)で参入する事業者も対象です。
自動車車庫・営業所・休憩仮眠施設
施設面の基準は次のとおりです。いずれも適切な使用権原(自己所有または賃貸借契約等)を有し、関係法令(都市計画法・建築基準法・農地法等)に抵触しないことが前提です。
| 施設 | 主な基準 |
|---|---|
| 営業所 | 営業区域内に位置し、運行管理・整備管理等を適切に遂行できる機能を有すること |
| 自動車車庫 | 営業所に併設、または営業所から2km以内に位置すること。計画車両すべてを適切に収容でき、車両が通行可能な前面道路に面し、出入りに危険を伴わないこと |
| 休憩・仮眠(睡眠)施設 | 原則として営業所または車庫に併設し、併設できない場合は営業所および車庫の双方から直線2km以内に設け、適切な規模・設備を有すること |
車庫は計画車両を実際に収容できる広さが必要で、車両1台ごとに必要な面積を満たすことが求められます。前面道路が私道の場合は通行承諾、道路幅員が狭い場合は幅員証明など、追加の疎明資料が必要になることがあります。
資金計画・損害賠償能力(任意保険)・法令試験
資金計画では、所要資金(車両費・施設費・人件費・燃料費・保険料・各種税など)と事業開始当初に必要となる資金を適正に見積もり、これに対し十分な自己資金を確保する必要があります。一般に、所要資金の50%以上、かつ事業開始当初に要する資金の100%以上の自己資金を、申請日以降許可日まで継続して確保していることが求められます。
損害賠償能力として、自賠責保険に加え、国土交通省告示の基準を満たす任意保険等への加入が必要です。具体的には、対人賠償が無制限、対物賠償が1事故あたり200万円以上、免責額30万円以下といった内容が求められます。
法令試験は、申請者本人(申請者が法人の場合は代表権を有する常勤の役員)が受験します。道路運送法・運輸規則・労働関係法令など事業遂行に必要な法令知識が問われ、合格しなければ許可されません。さらに、欠格事由(許可取消しから一定期間の経過など、道路運送法第7条)に該当しないこと、社会保険・労働保険への加入も要件となります。
申請から事業開始までの流れと標準処理期間
許可までのおおまかな流れは次のとおりです。
- (1) 営業所を管轄する運輸支局へ許可申請書を提出
- (2) 受付からおおむね1か月後、地方運輸局で法令試験・事業計画ヒアリング
- (3) 審査基準との不適合があれば補正
- (4) 審査・許可・許可書の交付
- (5) 登録免許税の納付、運賃・料金設定届、運行管理者・整備管理者の選任届出(運輸開始までに安全管理規程を届け出て、安全統括管理者を選任・届出)
- (6) 事業用自動車の登録・準備完了後に事業開始、事業開始後は遅滞なく運輸開始届を提出
許可までの標準処理期間は管轄運輸局の定めによりますが、おおむね3〜4か月が目安です。補正に要した期間は標準処理期間に含まれず、補正が長引けばさらに時間を要します。許可後は6か月以内に運輸を開始しなければなりません。登録免許税は1件あたり9万円で、許可後1か月以内の納付が求められます。
5年ごとの更新制
貸切バスの許可は、道路運送法第8条により5年ごとに更新を受けなければ、その期間の経過によって効力を失います。この更新制は、平成28年(2016年)1月の軽井沢スキーバス事故を受けた法改正により導入され、平成29年(2017年)4月1日から施行されています。不適格な事業者を排除し、輸送の安全を継続的に確保することが目的です。
更新許可申請は、有効期間満了日の区分ごとに各地方運輸局の公示で指定された申請期間内に、管轄運輸支局へ行う必要があります。自社の許可日・満了日を確認し、公示された受付月に早めに準備することが重要です。更新申請があった場合、満了日までに処分がなされないときは、処分があるまで従前の許可がなお効力を有します。更新時にも、車両数・管理者・施設・財務・法令遵守といった許可基準を引き続き満たしていることが確認されます。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、行政書士の業務として、貸切バス(一般貸切旅客自動車運送事業)の許可申請書類の作成・提出代理、事業計画の整理、車庫・営業所の使用権原や前面道路に関する疎明資料の収集、更新許可申請のサポートまで対応します。あわせて、車庫証明・名義変更・各種登録のほか、一般貨物・タクシー・介護タクシー・福祉有償運送など運送業許可全般もお引き受けします。なお、運行管理者・整備管理者の選任に係る労務管理や就業規則は社会保険労務士、会社設立・登記は司法書士、税務申告は税理士と連携し、各士業の職域に沿って進めます。
貸切バスの許可申請・更新申請の料金は、車両数や営業所数など事案により異なるため、内容をうかがったうえでお見積りいたします。ご相談は何度でも無料です。詳しくは車両・運送業許可サポートのご案内をご覧ください。
車庫証明・名義変更などの自動車手続でお困りではありませんか。行政書士法人Treeでは、書類の作成から警察署・運輸支局への提出代行まで対応します。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
貸切バス事業は、道路運送法第4条の許可制であり、第3条第1号ロに区分される事業です。許可には、乗車定員11名以上の車両を最低3両(大型使用は5両)、営業所ごとに運行管理者2名以上・整備管理者1名以上、営業所から2km以内の車庫、休憩仮眠施設、所要資金に対する十分な自己資金、対人無制限等の任意保険、そして法令試験の合格が必要です。標準処理期間はおおむね3〜4か月で、許可後6か月以内の運輸開始が必要です。さらに道路運送法第8条により平成29年4月1日施行の5年更新制が適用され、満了日の区分ごとに各地方運輸局の公示で指定された申請期間内の更新申請が欠かせません。基準は地方運輸局の公示で細部が定められ運用も変わりうるため、管轄運輸局の最新基準を必ず確認してください。
貸切バスの許可に関するよくある質問
Q:貸切バスは何両から始められますか。
A:営業区域ごとに乗車定員11名以上の事業用自動車が最低3両必要です。ただし大型車を使用する場合は5両以上が求められ、3両以上5両未満で申請すると中型車・小型車・コミューター車に車種が限定される条件が付されるのが一般的です。リース車両でも使用権原が明確であれば計画に算入できます。
Q:運行管理者と整備管理者は何名必要ですか。
A:営業所ごとに、常勤の有資格運行管理者を最低2名、整備管理者を最低1名選任します。運行管理者は保有車両数に応じて増員が必要で、39両までは2名、40両以上は区分に応じて追加します。資格要件や選任前研修の有無は職種ごとに異なるため、事前に確認が必要です。
Q:車庫は営業所からどのくらいの距離まで認められますか。
A:営業所に併設するか、営業所から2km以内に位置することが基準です。計画車両すべてを収容できる広さがあり、車両が通行可能な前面道路に面し、出入りに危険がないことが求められます。前面道路が狭い場合は幅員証明、私道の場合は通行承諾などの追加資料が必要になることがあります。
Q:許可が下りるまでどれくらいかかりますか。
A:標準処理期間はおおむね3〜4か月です。ただし申請内容に補正が生じた場合、補正に要した期間は標準処理期間に含まれないため、全体ではさらに時間がかかることがあります。申請後おおむね1か月で法令試験・ヒアリングが実施され、許可後は6か月以内に運輸を開始しなければなりません。
Q:5年更新を忘れるとどうなりますか。
A:道路運送法第8条により、5年ごとに更新を受けなければ期間の経過で許可の効力を失います。更新申請は有効期間満了日の区分ごとに各運輸局の公示で指定された申請期間内に行う必要があります。満了日までに処分がなされない場合は、処分があるまで従前の許可がなお効力を有します。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


