結論から言えば、介護タクシー(一般乗用旅客自動車運送事業の「福祉輸送事業限定」許可)を、健常者も乗せられる通常の一般タクシーへ切り替えるには、新しい許可を取り直すのではなく、いま受けている許可に付された「福祉輸送事業限定」という限定を外す手続き=事業計画の変更が中心になります。根拠は道路運送法第4条(許可)と第15条(事業計画の変更認可)、運用は平成18年9月25日付の通達「国自旅第169号」です。ただし限定が外れれば一般タクシーと同じ基準が適用されるため、最低車両数や運行管理・整備管理の体制、運賃の認可など、福祉輸送限定では緩和されていた要件を改めて満たす必要があります。行政書士は、この限定解除(変更認可・変更届)や運賃認可の申請書類の作成・代理提出を業務として支援できます。なお運転者の第二種免許の取得そのものや健康診断は本人・指定機関の領域であり、労務・税務が絡む場面では社会保険労務士・税理士と連携してご案内します。
目次
「福祉輸送事業限定」とは何か――限定の正体を押さえる
介護タクシーは、道路運送法第4条の「一般乗用旅客自動車運送事業」の許可のうち、輸送する旅客を要介護者・要支援者・身体障害者などに限定することで一部の要件を緩和した形態です。法律本文に「福祉輸送限定」という条文があるわけではなく、通達「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の許可等の取扱いについて」(平成18年9月25日 国自旅第169号)に基づく運用です。つまり許可の本体は通常のタクシーと同じ第4条許可で、そこに「福祉輸送に限る」という限定(条件)が付いている状態だと理解すると、切替の全体像が見えてきます。
この限定があるおかげで、本来は最低5両必要なところを1両から開業でき、運行管理者・整備管理者の選任義務などもその規模に応じて緩和されます。逆に言えば、限定を外して誰でも乗せられる一般タクシーになるということは、これらの緩和措置も外れ、通常のタクシー事業と同じ土俵に立つことを意味します。
限定解除=事業計画の変更という考え方
福祉輸送限定から一般乗用(通常のタクシー)への切替は、許可の取り直しではありません。すでに持っている第4条許可に付いた限定を外す「事業計画の変更」として整理されます。事業計画の変更のうち、営業区域・営業所や車庫の位置と収容能力・事業用自動車の数といった重要事項は道路運送法第15条第1項の認可事項、軽微な増車・減車などは事前の変更届で足りるのが原則です。
限定解除は、緩和要件に支えられた事業内容を一般タクシー基準の事業内容へ作り替える行為であるため、実務上は変更認可申請として扱われ、新規許可に準じた審査が行われるのが通例です。どの様式・添付書類で、認可・届出のいずれで処理するかは管轄の運輸支局・地方運輸局の運用により細部が異なるため、申請前に必ず窓口で取扱いを確認することが欠かせません。
切替で改めて満たすべき要件①:最低車両数と営業区域
最大の関門が車両数です。福祉輸送限定では1両から認められますが、限定を外して一般乗用旅客自動車運送事業として営業するには、配置すべき最低車両数は、営業区域ごとに地方運輸局長が定めており、5両以上とする地域が多い一方、政令指定都市など人口の多い区域では10両とするなど5両を超える基準が設けられている場合もあります。同一営業区域に複数営業所を置く場合は、各営業所で定められた最低数以上の配置が必要です。1台で介護タクシーを営んできた個人事業者がそのまま一般タクシーへ移行することは、この5両要件が壁になります。
あわせて、営業区域は許可(事業計画)で定めた区域に限られます。区域を広げる、営業所や車庫を増設・移転するといった変更を伴う場合は、その点についても第15条の変更認可が必要です。車庫は営業所からの距離・収容能力など、一般タクシーと同じ基準で審査されます。
切替で改めて満たすべき要件②:運行管理・整備管理の体制
車両数が増えれば、人的・管理体制の基準も上がります。一般乗用旅客自動車運送事業では、事業用自動車の数に応じて運行管理者(資格者)の選任が必要です。また、自動車車庫を有し一定規模以上となる営業所では整備管理者の選任が求められ、整備管理者は自動車整備士の資格者、または実務経験2年以上で整備管理者選任前研修を修了した者などが要件となります。
5両以上の体制では、運行管理者・整備管理者の選任、運転者の点呼・労務管理、車両の日常点検・定期点検の記録など、安全管理にかかる義務が福祉輸送限定の頃より重くなります。限定解除の審査では、こうした体制が切替後に整っているかも確認されるため、人員配置と資金計画をセットで準備する必要があります。
切替で改めて満たすべき要件③:運転者の第二種免許
意外に誤解が多い点ですが、第二種免許は福祉輸送限定でも一般タクシーでも、有償で旅客を運送する以上いずれも必須です。介護タクシーだから普通免許でよい、ということはありません。したがって「限定解除のために新たに二種免許が要る」のではなく、もともと運転者全員が普通自動車第二種免許(旅客の種類に応じた二種免許)を保有していることが前提です。
切替後に車両を増やして運転者を雇用・増員する場合は、その新たな運転者についても二種免許の保有と、運送事業者が行う初任運転者教育・適性診断の受診などが必要になります。なお、福祉輸送のセダン車で求められることがあるケア輸送研修の修了は、一般タクシーへ切り替える局面では位置づけが変わるため、業務範囲の設計とあわせて検討します。
切替で改めて満たすべき要件④:運賃の認可
運賃は道路運送法第9条の3に基づき認可(または届出)が必要な事項です。福祉輸送に限定した介護タクシーでは、時間制運賃・距離制運賃や、ストレッチャー・車椅子等の料金を組み合わせた「ケア運賃」を、地域ごとの基準額の範囲で設定するのが一般的でした。これに対し、健常者も乗せる一般のタクシーは、営業区域が「特定地域・準特定地域」に該当するかどうかで枠組みが分かれます。これらの地域では、地方運輸局長が範囲を定める「公定幅運賃」の制度の対象となり、その範囲内で運賃を定めて届け出る取扱いとなります。これに当たらない地域では、地方運輸局長が公表する自動認可運賃の範囲内で認可申請を行い、範囲外であれば個別に認可を受けることになります。
つまり限定解除では、輸送対象が広がることに合わせて運賃の枠組みを一般タクシー用に組み替える必要があります。どの運賃ブロックのどの額を採用するかは、申請区域の最新の自動認可運賃・公定幅運賃の表に基づいて決めます。最新の運賃表は管轄の地方運輸局が公表しています。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、介護タクシー(福祉輸送事業限定)から一般乗用旅客自動車運送事業(通常のタクシー)への限定解除に伴う事業計画変更認可申請・変更届、運賃認可(または届出)申請、車庫の増設・移転に伴う変更手続など、道路運送法上の各種申請書類の作成・整備・代理提出を一括してご支援します。あわせて、各種登録手続(車庫証明5,500円〜、名義変更7,000円〜/いずれも税込。個人・法人や地域により変動します)も承ります。限定解除・運送業許可関係の申請報酬は、車両台数・営業所数・営業区域・運賃の設計など事案により大きく異なるため、お見積りのうえご案内します。なお、運転者の第二種免許の取得、適性診断や健康診断の受診、運行管理者・整備管理者の資格取得そのものは本人・指定機関の領域であり、当事務所は越権せず手続面の支援に徹します。手続の詳細・お見積りは車両・運送業許可サポートのご案内をご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
車庫証明・名義変更などの自動車手続でお困りではありませんか。行政書士法人Treeでは、書類の作成から警察署・運輸支局への提出代行まで対応します。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
介護タクシーの「福祉輸送事業限定」から通常の一般タクシーへの切替は、許可の取り直しではなく、第4条許可に付いた限定を外す変更認可申請(道路運送法第15条・通達 国自旅第169号)が中心です。ただし限定が外れると緩和措置も外れ、最低5両の車両数、運行管理者・整備管理者の選任、公定幅運賃を前提とした運賃認可など、一般タクシーと同じ要件を改めて満たす必要があります。第二種免許はもともと必須で限定解除で新たに増えるものではありませんが、増車・増員に伴う運転者要件は別途確認が要ります。認可・届出の別や様式は運輸支局ごとに運用差があるため、申請前の窓口確認が成功の鍵です。書類作成から代理提出まで、行政書士が手続面をお手伝いします。
介護タクシーの一般乗用への切替に関するよくある質問
Q:福祉輸送限定を外せば、健常者のお客様も乗せられますか。
A:限定が外れて一般乗用旅客自動車運送事業(通常のタクシー)になれば、輸送対象の限定はなくなり健常者も乗せられます。ただしその前提として、最低車両数5両、運行管理・整備管理の体制、一般タクシー用の運賃認可など、福祉輸送限定では緩和されていた要件をすべて満たす必要があります。
Q:1台で開業した介護タクシーをそのまま一般タクシーにできますか。
A:原則としてそのままではできません。一般乗用旅客自動車運送事業は営業所ごとに5両以上の配置が必要なため、1台の状態では限定解除の基準を満たしません。増車のうえ管理体制を整えるか、福祉輸送限定のまま運営を続けるかを、事業計画と資金計画を踏まえて判断することになります。
Q:切替には新しい二種免許が必要になりますか。
A:第二種免許は福祉輸送限定の介護タクシーでも、有償で旅客を運ぶ以上もともと必須です。限定解除のために新たな二種免許が要るわけではありません。ただし切替に伴って運転者を増員する場合は、その方が二種免許を保有していること、初任運転者教育や適性診断の受診が必要になります。
Q:運賃はどう変わりますか。介護タクシーのケア運賃のままでよいですか。
A:健常者を含む一般タクシーは、営業区域が特定地域・準特定地域なら地方運輸局長が範囲を定める公定幅運賃の対象となり、それ以外の地域では自動認可運賃の範囲内での認可申請または個別認可となります。いずれにせよ福祉輸送向けのケア運賃の枠組みとは異なるため、申請区域の運賃表に基づいて一般タクシー用の運賃へ組み替える必要があります。
Q:限定解除の手続きは認可ですか、届出ですか。どれくらいかかりますか。
A:営業区域・車両数・営業所や車庫など重要事項の変更を伴うため、実務上は事業計画変更の認可申請として扱われ、新規許可に準じた審査が行われるのが通例です。標準処理期間や審査の運用、必要書類は管轄の運輸支局・地方運輸局によって差があるため、申請前に窓口で取扱いを確認してください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


