飲酒した利用者に代わって、その利用者の自動車を運転して自宅まで送り届ける「自動車運転代行業」を始めるには、都道府県公安委員会の認定を受けなければなりません(自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律=運転代行業法 第4条)。許可ではなく「認定」ですが、欠格事由に該当しないこと、損害賠償措置(保険)を講じていること、安全運転管理者を選任していることなどの要件を満たす必要があり、書類の準備は決して簡単ではありません。本記事では、行政書士の立場から、二種免許・随伴自動車・損害賠償措置という三つの重要ポイントを中心に、認定の要件と申請手続きを実務的に整理します。
目次
自動車運転代行業とは|認定が必要な理由
自動車運転代行業とは、主として夜間において、酒気を帯びた状態などで自ら運転できない利用者に代わり、その利用者の自動車に利用者を乗せて目的地まで運転する役務を提供する営業をいいます。利用者の車(代行運転自動車)と、運転者が後を追って走る事業者の車(随伴用自動車)が常に組みで動く点に特徴があります。
かつては無認可・無保険の業者によるトラブルが社会問題となり、利用者保護のために平成13年に運転代行業法が制定されました。現在は警察庁(公安委員会)と国土交通省の共同所管で規律されており、公安委員会が認定をするときは国土交通大臣に協議してその同意を得る仕組みになっています。無認定で営業した場合は罰則の対象となります。これから開業する方は、まず認定要件を正確に把握することが出発点になります。
認定の要件①|二種免許(普通第二種免許)
利用者を乗せて利用者の自動車を運転する「代行運転自動車」の運転には、普通第二種免許(または大型二種・中型二種などの上位免許)が必要です(道路交通法第86条第5項)。これは、他人を運送する旅客自動車を運転するのと同等の責任が生じるためです。
一方で、運転者の送迎や回収のために走る「随伴用自動車」の運転には二種免許は不要で、第一種免許で足ります。開業時には、代行運転を担当する運転者全員が普通二種免許以上を保有しているかを必ず確認してください。運転者の免許要件を満たさないまま営業すると、認定後であっても行政処分の対象になり得ます。
認定の要件②|随伴用自動車のルールとナンバー
随伴用自動車は、運転者を利用者の車まで送り届けたり、業務終了後に運転者を回収したりするための事業者所有の車両です。ここで実務上とくに誤解が多いのが、次の二点です。
- 随伴用自動車に利用者(客)を乗せてはいけません。 利用者を乗せて運送できるのは、あくまで利用者自身の車(代行運転自動車)に限られます。随伴用自動車に客を乗せると、無許可のタクシー(白タク)営業とみなされるおそれがあります。
- 随伴用自動車は「白ナンバー(自家用)」で差し支えありません。 緑ナンバー(事業用)は不要です。随伴用自動車自体は旅客を運送しないため、自家用登録のまま使用できます。
随伴用自動車には、後述の標識(事業者名・認定番号・「随伴用自動車」である旨など)を表示する義務があります。また、車両の所有関係や自動車検査証(車検証)の写しは認定申請の必要書類となるため、開業前に車両を確保しておくことが前提になります。
認定の要件③|損害賠償措置(保険)
運転代行は「お預かりした他人の高価な財産(自動車)を運転する」業務であるため、事故時の利用者保護として損害賠償措置(保険等への加入)が法令上義務づけられています。国土交通省令で定める最低補償額の基準は次のとおりです。
| 区分 | 最低補償額 |
|---|---|
| 対人賠償 | 1名につき8,000万円以上 |
| 対物賠償 | 1事故につき200万円以上 |
| 利用者の自動車(車両)への賠償 | 200万円以上 |
ポイントは、対人・対物に加えて、運転中にお預かりしている利用者の車そのものを損傷させた場合の賠償までカバーする保険でなければならない点です。一般的な自家用車の任意保険ではこの「他人から預かった車両」の損害を担保できないため、運転代行業専用の保険や共済への加入が必要になります。随伴用自動車についても、平成28年10月1日施行の標準自動車運転代行業約款改正により、対人8,000万円以上・対物200万円以上の損害賠償措置(任意保険等)への加入が義務づけられています。保険証券・約款の写しは認定申請の必須書類です。なお、どの保険・共済が要件に適合するかといった保険商品の選定そのものは、保険会社・代理店にご確認ください。
認定の要件④|安全運転管理者・欠格事由
運転代行業者は、営業所ごとに安全運転管理者を選任しなければなりません。随伴用自動車の台数によっては副安全運転管理者の選任も必要になります。安全運転管理者には一定の運転管理経験などの資格要件があり、すでに資格を有している場合はその証明書類を申請時に添付します。
また、次のような欠格事由に該当する場合は認定を受けられません。
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない者
- 拘禁刑以上の刑に処せられ、または運転代行業法・道路交通法等の一定の規定に違反するなどして、その執行を終わった日等から所定の期間(原則として2年)を経過していない者
- 心身の故障により業務を適正に実施できないおそれがある者
- 損害賠償措置が基準に適合しない者、安全運転管理者を選任できない者 など
これらに該当しないことを誓約する誓約書に加え、個人申請者または法人役員等について、精神機能の障害に関する医師の診断書の提出が求められます。
運転代行業の認定申請に必要な書類・手数料・標準処理期間
認定申請は、主たる営業所の所在地を管轄する警察署(交通課)を経由して、都道府県公安委員会へ提出します。手数料は12,000円で、都道府県により収入証紙等で納付します(納付方法は各都道府県で確認が必要です)。主な必要書類は次のとおりです。
- 認定申請書(運転代行業法に基づくもの)
- 住民票の写し・誓約書(欠格事由非該当)・診断書(個人申請者または法人役員等に関するもの)
- 損害賠償措置を証する書類(保険証券・約款の写し)
- 安全運転管理者に関する書類(資格を証する書面等)
- 随伴用自動車の自動車検査証・保険証書の写し、従業員名簿 など
認定後は、認定を受けた旨を示す標識を主たる営業所の見やすい場所に掲示する(随伴用自動車が1台以下である等の一定の場合を除き、事業者のウェブサイトにも掲載する)とともに、代行運転自動車には国家公安委員会規則で定める標識を、随伴用自動車には国土交通省令で定める表示等をする義務があります。さらに、運送引受書の交付、料金の掲示など、業務上の遵守事項が継続的に課されます。会社形態で開業する場合は、これらと並行して法人設立や事業目的の整備も必要になります。当事務所では、認定申請書類の作成・整備や随伴用自動車の車庫証明(自動車保管場所証明)など、行政書士の職域に属する手続を一括してサポートいたします。なお、保険商品の選定は保険会社・代理店、税務は税理士、法人設立の登記は司法書士と、それぞれ連携してご案内します。車両関連の手続については車両手続きのページもあわせてご覧ください。
運転代行業の認定は、二種免許・随伴自動車のルール・損害賠償措置・安全運転管理者と、確認すべき要件が多岐にわたります。「自分のケースで認定が取れるのか」「保険や書類の準備をどう進めればよいか」とお悩みの方は、ぜひ一度運転代行業の認定申請・車両手続きのご相談はこちらからお問い合わせください。料金は事案により異なるため個別にお問い合わせください。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
自動車運転代行業を始めるには、公安委員会の認定(運転代行業法第4条)が不可欠です。要点は、(1)利用者の車の運転には普通二種免許以上が必要、(2)随伴用自動車は白ナンバーで可だが利用者は乗せられない、(3)損害賠償措置は対人8,000万円以上・対物200万円以上・預かり車両200万円以上が最低基準、(4)営業所ごとに安全運転管理者を選任し欠格事由に該当しないこと、の四点です。書類準備と要件確認を確実に進めることが、スムーズな開業の鍵となります。
運転代行業の認定に関するよくある質問
Q:運転代行業の認定に有効期間はありますか。
A:認定自体に更新制の有効期間は設けられていません。ただし、営業所の名称・所在地、安全運転管理者、損害賠償措置の内容などに変更が生じた場合は、変更の届出が必要です。届出を怠ると行政処分の対象となり得ますので、認定後の維持管理も重要です。
Q:随伴用自動車に二種免許は必要ですか。
A:随伴用自動車には利用者を乗せないため、二種免許は不要で第一種免許で運転できます。二種免許が必要なのは、利用者を乗せて利用者の車(代行運転自動車)を運転する場合です。
Q:普通の自動車保険に入っていれば損害賠償措置の要件を満たしますか。
A:満たさないのが通常です。運転代行では「お預かりした他人の車」を運転して損傷させるリスクがあり、一般の自家用車の任意保険ではこの損害を担保できません。運転代行業専用の保険・共済への加入が必要になります。具体的な保険商品は保険会社・代理店にご確認ください。
Q:個人でも認定を受けられますか。法人でないと駄目ですか。
A:個人でも法人でも認定を受けられます。法人で開業する場合は会社設立や事業目的の整備が別途必要になり、登記手続は司法書士と連携してご案内します。どちらの形態が適するかは、規模や資金計画に応じてご相談ください。
Q:認定申請から営業開始までどのくらいかかりますか。
A:書類が整ってから認定までは、標準処理期間として45日程度が示されている自治体があります。実際は安全運転管理者の確保、保険契約、随伴用自動車の準備などの事前段取りに時間がかかることが多く、都道府県や警察署で運用が異なるため、開業希望時期から逆算して早めに管轄警察署へ確認することをおすすめします。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。