ご家族が亡くなり自動車を相続するときは、車検証上の所有者の名義変更(普通自動車は移転登録、軽自動車は自動車検査証記入申請)が必要です。手続きのカギは「普通自動車か軽自動車か」と「車の査定額が100万円を超えるか」の2点です。普通自動車で査定額が100万円を超える場合は相続人全員が実印を押した遺産分割協議書が、100万円以下なら新所有者1名の実印のみで作れる遺産分割協議成立申立書が使えます。軽自動車はこれらの書類が原則不要です。本記事では行政書士の立場から、自分で手続きできるケースと専門家サポートが効率的なケース、普通自動車・軽自動車の違い、単独相続・複数相続人それぞれの進め方、必要書類、期限を実務に沿って整理します。なお、自動車の相続では2024年3月1日に始まった戸籍の広域交付を活用すると、必要な戸籍を本籍地以外の市区町村でもまとめて取得しやすくなっています。
目次
まず確認すべき2つのポイント(車種と査定額)
自動車の相続手続きは、次の2点で必要書類と提出先が大きく変わります。最初にここを押さえると、その後の流れがスムーズです。
- 車種:普通自動車(登録自動車)か、軽自動車か。提出先が異なります。
- 査定額:普通自動車の場合、車の評価額が100万円を超えるかどうかで提出書類が変わります。
提出先は、普通自動車が使用の本拠地を管轄する運輸支局(または自動車検査登録事務所)、軽自動車が軽自動車検査協会です。手続きの名称も、普通自動車は「移転登録」、軽自動車は「自動車検査証記入申請(名義変更)」と異なります。
査定額の確認方法
普通自動車で100万円以下であることを示すには、客観的な資料として査定証(査定書)を用います。日本自動車査定協会(JAAI)の事業所などで査定を受けて発行してもらう方法のほか、運輸支局で認められる査定価格確認資料を用意する必要があります。インターネット上の相場情報や任意の見積資料だけでは受理されない場合があるため、事前に管轄の運輸支局へ確認すると安心です。査定には所定の料金がかかり、即日発行されないこともあるため、早めの段取りをおすすめします。
普通自動車の名義変更(移転登録)の進め方
普通自動車は査定額により提出書類が分かれます。以下のいずれの場合も、車検証・新所有者の印鑑証明書(発行後3か月以内)・実印・委任状・車庫証明書(必要な地域)などの基本書類は共通です。
査定額が100万円を超える場合(遺産分割協議書)
この場合は、相続人全員が署名し実印を押した遺産分割協議書が必要です(遺産分割協議書の書き方もあわせてご覧ください)。あわせて、被相続人の死亡の事実および相続人全員を確認できる戸籍(除籍)謄本等または法定相続情報証明書、相続人全員の印鑑証明書を準備します。相続人の範囲によっては、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要になる場合もあります。誰がその車を取得するかを協議書で明確にしたうえで、新所有者が移転登録を申請します。
査定額が100万円以下の場合(遺産分割協議成立申立書)
車の取得者が決まっていれば、簡便な遺産分割協議成立申立書を使えます。これは新たに所有者となる相続人1名の実印のみで作成でき、他の相続人の実印・印鑑証明書は不要という点が大きな違いです。様式は国土交通省や各地方運輸局のウェブサイトからダウンロードできます。あわせて、被相続人の死亡と相続人の範囲がわかる戸籍(除籍)謄本、新所有者の印鑑証明書、100万円以下であることを示す査定証を添付します。なお、書類は簡便でも、相続人間で「誰が取得するか」の合意(遺産分割協議の成立)が前提である点は変わりません。
軽自動車の名義変更(自動車検査証記入申請)
軽自動車は財産的価値が比較的小さいことから、相続でも遺産分割協議書や遺産分割協議成立申立書は原則不要で、通常の名義変更と同様の手続きで済みます。窓口は軽自動車検査協会です。一般に、自動車検査証記入申請書(当日窓口で記入可)、車検証、新使用者の住所を証する書面、ナンバー変更を伴う場合は車両の持ち込みなどが必要です。軽自動車検査協会での名義変更自体は通常の名義変更手続きに準じますが、軽自動車税の申告や自治体での届出などで、戸籍謄本等や法定相続情報一覧図の写しの提示を求められることがあります。なお、令和3年1月4日以降、軽自動車の名義変更にかかる申請書への押印・署名は原則不要とされています。代理人が手続きする場合は申請依頼書を用意します。
相続人が1人の場合と複数の場合の違い
相続人が誰かによって、書類の整え方が変わります。
| 状況 | 必要となる主な書類(普通車・100万円超の例) |
|---|---|
| 相続人が1人(単独相続) | その方が当然に取得するため、遺産分割協議書は不要。被相続人の戸籍(除籍)謄本、その方が唯一の相続人とわかる戸籍、印鑑証明書など |
| 相続人が複数 | 誰が車を取得するかを定めた遺産分割協議書(全員の実印・印鑑証明書)。査定額100万円以下なら遺産分割協議成立申立書で簡便化可 |
複数の相続人がいる場合、車を共有のままにすると、その後の売却や廃車のたびに全員の関与が必要となり負担が大きくなります。誰か1人の単独取得とし、必要に応じて代償金などで調整する方法が一般的です。なお、相続税や代償金の課税関係は税理士の領域となりますので、税務の取扱いは税理士にご確認ください。当事務所では提携する税理士を紹介することも可能です。車以外の財産も含めて遺産分割協議書を作成したい場合は、遺産分割協議書作成のご相談もあわせてご確認ください。
手続きの期限と放置のリスク
道路運送車両法第13条では、所有者に変更があったときは新所有者がその事由のあった日から15日以内に移転登録を申請しなければならないと定められています。実務上はこの期限を過ぎても手続き自体は可能ですが、名義をそのままにすると、自動車税・軽自動車税の納税通知先が混乱したり翌年度分の課税が相続人に残ったり、売却・廃車・任意保険の手続きが滞ったりするなどの不都合が生じます。相続が発生したら早めに名義変更を行うことが大切です。なお、自動車にはローン(所有権留保)が付いている場合があり、その際は信販会社等の所有権解除手続きが先に必要になることがあります。
当事務所がサポートできること
当事務所では、行政書士の業務として遺産分割協議書・遺産分割協議成立申立書の作成、戸籍等の収集、移転登録(名義変更)の代理申請を一括してお手伝いできます。相続放棄・限定承認や相続登記、成年後見の申立てが関係する場合は司法書士と、相続人間に争いがある場合は弁護士と、相続税・準確定申告など税務は税理士と、それぞれ連携してサポートいたします。「平日に窓口へ行く時間がない」「書類の集め方がわからない」という方は、まずご相談ください。自動車の相続・名義変更(移転登録)のご相談・ご依頼はこちら。料金は内容により異なりますので個別にお問い合わせください。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
車の相続では、まず普通自動車か軽自動車かを確認します。普通自動車は運輸支局で移転登録を行い、査定額が100万円を超えれば相続人全員の実印を押した遺産分割協議書、100万円以下なら新所有者1名の実印で足りる遺産分割協議成立申立書を使えます。軽自動車は軽自動車検査協会での手続きで、これらの書類は原則不要です。相続人が複数いる場合は誰が取得するかを明確にし、15日以内という期限を意識して早めに進めましょう。書類収集や申請に不安があれば、行政書士法人Treeにご相談ください。
車の相続・名義変更に関するよくある質問
Q:相続する車が普通自動車か軽自動車かはどう見分けますか?
A:車検証の「自動車の種別」やナンバープレートの色・分類番号で確認できます。一般に黄色ナンバー(事業用は黒地)が軽自動車、白ナンバー(事業用は緑)が普通・小型自動車です。提出先や必要書類が変わるため、最初に確認してください。
Q:遺産分割協議書と遺産分割協議成立申立書は何が違いますか?
A:遺産分割協議書は相続人全員の署名・実印が必要な正式な合意書面です。遺産分割協議成立申立書は、査定額100万円以下の普通自動車に限り、新所有者となる相続人1名の実印のみで作成できる簡便な様式です。いずれも「誰が取得するか」の合意が前提である点は共通です。
Q:相続人が私1人だけです。遺産分割協議書は必要ですか?
A:相続人が1人だけの単独相続では、遺産分割協議書は不要です。あなたが唯一の相続人であることがわかる戸籍(除籍)謄本一式と印鑑証明書などを添えて、名義変更を申請します。
Q:名義変更をしないまま乗り続けても問題ありませんか?
A:道路運送車両法上は15日以内の申請が定められています。放置すると自動車税の扱いが不明確になり、売却・廃車・保険の手続きも滞ります。トラブルを避けるため早めの手続きをおすすめします。
Q:必要な戸籍はどこで取れますか?
A:2024年3月1日から戸籍の広域交付が始まり、本籍地以外の市区町村の窓口でも、被相続人や相続人の戸籍をまとめて請求しやすくなりました(一部取得できない戸籍もあります)。収集が大変な場合は、当事務所が代行いたします。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。
