自動ブレーキやレーダー・カメラの調整(エーミング)を行う整備工場は、原則として「特定整備認証」が必要です。これは2020年(令和2年)4月1日に従来の「分解整備」が「特定整備」へと範囲拡大・名称変更され、新たに「電子制御装置整備」が加わったことによるものです。認証を受けずにこれらの整備を業として行うと道路運送車両法違反となります。本記事では、行政書士の立場から、特定整備認証の種類・対象作業・設備要件・人的要件、すでに終了した経過措置、そして2024年(令和6年)10月から始まったOBD検査との関係までを、一次情報に基づいて整理します。認証申請書類の作成・提出は当事務所が行政書士業務としてサポートいたします。
目次
特定整備とは|分解整備からの範囲拡大
特定整備は、道路運送車両法および同法施行規則に基づく整備事業の区分です。2020年(令和2年)4月1日の制度施行により、従来の「分解整備」という名称が「特定整備」に変わり、整備の範囲に「電子制御装置整備」が追加されました。背景には、衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)や車線維持支援といった先進安全技術(ADAS)、さらに自動運行装置の普及があります。これらは前方を監視するカメラ・レーダー・センサーで作動するため、装置を取り外さなくても、その作動に影響を及ぼす作業を行えば「整備」に該当すると整理されました。
特定整備の認証は、行う作業内容に応じて次の3種類に分かれます。
- 分解整備のみの認証(従来の分解整備に相当)
- 電子制御装置整備のみの認証(エーミング等)
- 両方を行う認証
自社の作業実態に合わせて、いずれの認証を取得するかを選ぶことになります。
電子制御装置整備の対象となる作業
電子制御装置整備の対象は、「取り外しを伴わなくても装置の作動に影響を及ぼす整備又は改造」です。具体的には、以下のような作業が代表例です。
- 自動ブレーキ等に用いる前方監視カメラ・レーダー・センサーの調整(エーミング、キャリブレーション)
- 自動運行装置(いわゆる自動運転装置)の整備
- これらのセンサーが装着されたフロントバンパー等の脱着
- センサー付きフロントガラスの交換
つまり、ガラス交換やバンパー脱着であっても、対象センサーの作動に影響する場合は電子制御装置整備に当たり、認証が必要となる点に注意が必要です。対象車両は、これらの装置を備えた自動車に限られます。
認証の設備要件(作業場・車両置場・工具)
電子制御装置整備の認証では、エーミング作業を正確に行える環境が求められます。地方運輸局によって示されている代表的な基準は次のとおりです(実際の数値は対象車両や運輸局の運用により異なる場合があるため、必ず管轄運輸局で確認してください)。
| 区分 | 主な要件 |
|---|---|
| 電子制御装置点検整備作業場 | 屋内で間口2.5m以上・奥行6m以上、床面が平滑であること、対象車両のエーミングに十分な天井高があること |
| 車両置場 | 間口3m以上・奥行5.5m以上 |
| 機械器具・工具 | 整備用スキャンツール(性能・機能要件を満たすもの)、水準器などの作業計器 |
間口・奥行は内側で測定します。なお、点検整備作業場は分解整備の作業場と共用が認められる場合があります。一方、分解整備のみの認証では、対象車両の種類に応じた作業場・点検作業場・車両置場の広さや、作業機械・器具の保有が求められます。
あわせて、2025年(令和7年)7月8日施行の省令改正で機器要件の一部が見直されました。原動機・動力伝達装置・操縦装置・制動装置・緩衝装置の分解整備をする事業場については、一定の場合を除き、整備用スキャンツールが作業機械等に追加されます。また、比重計はバッテリテスターで、エンジンタコテスター・タイミングライトは整備用スキャンツールで代替できるなど、機器要件の合理化も行われています。適用時期や対象装置は認証の種類・対象車両によって異なるため、最新の要件は申請前に必ず管轄運輸支局で確認しましょう。
人的要件(整備主任者)・申請先・必要書類
特定整備事業には、事業場ごとに整備主任者を選任する必要があります。電子制御装置整備の整備主任者になるには、原則として運輸支局長等が行う「電子制御装置整備の整備主任者等資格取得講習」の修了が必要です。ただし、一級大型自動車整備士または一級小型自動車整備士の資格を持つ方は、この講習が免除されます。
このほか、対象作業に応じた人数の工員を確保することが求められます。なお2025年(令和7年)7月8日施行の改正では、整備士技能検定の受験資格における実務経験期間の短縮(例:二級は3級取得後3年から2年へ)や、点検整備記録簿の電子化、研修・講習のオンライン化(学科部分)など、人材確保に資する見直しも行われています。
認証申請は、事業場の所在地を管轄する地方運輸局長(窓口は運輸支局等)に対して行います。特定整備の種類および事業場ごとに認証を受ける必要があります。主な必要書類は、認証新規申請書(第1号様式)、申請者・役員を特定できる書面(個人は住民票の写し、法人は商業登記簿謄本等)、事業場の所在を証する書面(土地・建物の登記簿謄本等)、整備主任者選任の届出書、整備士の技能検定合格証書の写し、電子制御装置整備を行う場合は整備主任者等資格取得講習の修了証の写しなどです。様式や添付書類は管轄の運輸局・運輸支局により異なるため、申請前に必ずご確認ください。
経過措置はすでに終了|未認証は要注意
制度施行時には経過措置が設けられていました。施行日(令和2年4月1日)の時点で電子制御装置整備に相当する作業を行っていた事業者は、施行から4年を経過する日、すなわち令和6年(2024年)3月31日までは、認証を受ける準備期間として、それまで行っていた範囲の作業を継続できました。
この経過措置はすでに終了しています。したがって、現在エーミング等の電子制御装置整備を業として行うには、原則として認証が必須です。未取得のまま該当作業を続けると、無認証営業として行政処分や罰則の対象となり得ますので、早めの認証取得をおすすめします。
特定整備とOBD検査の関係
特定整備とあわせて押さえておきたいのがOBD検査です。OBD検査は、車載式故障診断装置(OBD)に記録された故障コードをスキャンツールで読み取り、目に見えにくいADASや自動運転システム等の不具合を確認する新しい車検手法です。道路運送車両法の改正等で整備され、国産車は2024年(令和6年)10月1日、輸入車は2025年(令和7年)10月1日から車検時に義務化されました。
対象となるのは、令和3年(2021年)10月1日(輸入車は令和4年10月1日)以降の新型車(フルモデルチェンジ車)などで、大型特殊自動車や二輪自動車は除かれます。対象かどうかは車検証の備考欄(「OBD検査対象」の記載)で確認できます。検査では、保安基準不適合となる故障コード(特定DTC)の有無を、インターネット経由でサーバーに接続して判定します。特定整備でADAS関連の作業を行う工場にとっては、整備後にOBD上のエラーが残らないよう適切に対応することが、車検対応の観点からも重要になります。
特定整備認証の取得をご検討中の整備事業者さまへ。当事務所では、行政書士として認証申請に必要な書類の作成・整理から運輸支局への提出まで、丁寧にサポートいたします。設備要件の確認や事業計画の整理でお悩みの場合も、まずはお気軽にご相談ください。料金は事案により異なるため個別にお問い合わせください。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
2020年(令和2年)4月の制度改正で、分解整備は特定整備となり、エーミング等の電子制御装置整備が新たに認証の対象となりました。認証には作業場・車両置場の広さ、スキャンツールや水準器などの設備、講習を修了した整備主任者の選任が必要です。施行時の経過措置は令和6年(2024年)3月31日で終了しており、現在は未認証での該当作業はできません。あわせて2024年(令和6年)10月開始のOBD検査も理解し、適切な体制を整えましょう。
特定整備認証に関するよくある質問
Q:ガラス交換だけでも認証は必要ですか?
A:交換するフロントガラスにADAS用のカメラ・センサーが装着されており、その作動に影響を及ぼす場合は電子制御装置整備に該当し、認証が必要です。センサーに関係しない一般的なガラス交換のみであれば対象外となることもありますので、作業内容ごとに個別の確認が必要です。
Q:分解整備の認証は持っていますが、エーミングを始めるには何が必要ですか?
A:別途「電子制御装置整備」の認証取得が必要です。平滑な床の作業場・車両置場の確保、スキャンツールや水準器の設置、講習を修了した整備主任者の選任などの要件を満たし、管轄の地方運輸局長へ申請します。
Q:経過措置はまだ使えますか?
A:いいえ。経過措置は令和6年(2024年)3月31日で終了しています。現在は電子制御装置整備を業として行うには認証が必須で、未取得のまま続けると行政処分や罰則の対象になり得ます。
Q:OBD検査の対象車かどうかはどこで確認できますか?
A:車検証の備考欄で確認できます。国産車は令和3年(2021年)10月1日、輸入車は令和4年(2022年)10月1日以降の新型車などが対象です。
Q:認証申請の手続きは行政書士に依頼できますか?
A:はい。認証申請に必要な書類の作成・整理や運輸支局への提出は、行政書士業務として当事務所がサポートいたします。設備要件の確認段階からご相談いただけます。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。