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他人の不注意でケガをさせられた場合、故意の暴行であれば傷害罪(刑法第204条)ですが、過失(不注意)による場合は過失傷害罪(刑法第209条)が成立します。過失傷害罪は親告罪であり、被害者等の告訴がなければ検察官は起訴できません。つまり、加害者の処罰を求めるには被害者自身が告訴状を提出する必要があります。
この記事では、過失傷害罪の構成要件と傷害罪・重過失致死傷罪との違い、告訴状における犯罪事実の記載例、そして証拠の集め方を解説します。親告罪特有の告訴期間(犯人を知った日から6ヶ月)にも注意が必要です。
「相手の不注意でケガをしたが、故意か過失かの判断がつかない」「告訴期間の6ヶ月が迫っている」という方は、行政書士法人Treeにご相談ください。告訴状作成の専門家が状況を丁寧に伺い、方針をご提案します。相談は何度でも無料・全国対応です。
目次
過失傷害罪とは?傷害罪・重過失致傷罪との違い
過失傷害罪は、不注意(過失)によって他人にケガをさせた場合に成立する犯罪です(刑法第209条)。故意に暴行を加えてケガをさせる傷害罪とは、加害者の主観面(故意か過失か)が根本的に異なります。
| 比較項目 | 過失傷害罪(刑法209条) | 傷害罪(刑法204条) | 重過失致傷罪(刑法211条) |
|---|---|---|---|
| 主観的要件 | 過失(不注意) | 故意(暴行の意思) | 重大な過失 |
| 法定刑 | 30万円以下の罰金又は科料 | 15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 | 5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金 |
| 親告罪か | はい(告訴が必要) | いいえ | いいえ |
| 告訴期間 | 犯人を知った日から6ヶ月 | 制限なし | 制限なし |
| 公訴時効 | 3年 | 10年 | 5年 |
| 具体例 | 歩行中にスマホに気を取られ他人に衝突しケガをさせた | 殴ってケガをさせた | 飼い犬のリードを離し通行人に重傷を負わせた |
「過失」と「重過失」の境界
過失傷害罪の「過失」とは、注意義務に違反して傷害の結果を生じさせたことを意味します。一方、重過失致傷罪(刑法第211条後段)の「重大な過失」とは、わずかな注意を払えば容易に結果を回避できたにもかかわらず、これを怠った場合をいいます。
過失の程度によって適用される罪名が変わり、重過失致傷罪は親告罪ではない点が実務上重要です。重過失と判断されれば告訴がなくても起訴されうる一方、単純な過失であれば告訴がなければ起訴できません。
- 過失(刑法209条):うっかりミス、軽度の不注意 → 親告罪
- 重過失(刑法211条):容易に回避できたのに著しい不注意で怠った → 非親告罪
この区別は捜査機関や裁判所が個別の事案ごとに判断するものであり、被害者が告訴状を作成する段階では、まず過失傷害罪として告訴し、重過失に該当するかどうかの判断は捜査機関に委ねるのが実務上の一般的な対応です。
自動車事故は別の法律が適用される
自動車やバイクの運転中の事故で人を負傷させた場合は、刑法の過失傷害罪ではなく、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(自動車運転処罰法)の過失運転致傷罪(同法第5条)が適用されます。自動車運転処罰法の過失運転致傷罪は親告罪ではなく、法定刑も「7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」と過失傷害罪よりはるかに重いものです。
本記事で解説する過失傷害罪は、自動車事故以外の場面(日常生活での不注意、スポーツ中の事故、ペットによる咬傷など)を対象としています。
過失傷害罪に該当する典型的なケース
過失傷害罪が問題になる場面は、日常生活のさまざまな場面に存在します。以下に典型的なケースを紹介します。
日常生活における不注意
- 歩きスマホをしていて歩行者に衝突し、相手が転倒して骨折した
- 自転車走行中に前方不注意で歩行者と接触し、ケガをさせた
- マンションのベランダから物を落とし、下を歩いていた人に当たってケガをさせた
スポーツ・レジャー中の事故
- ゴルフのティーショットが他のプレーヤーに直撃し、ケガをさせた
- スキー場でスピードを出しすぎて他のスキーヤーと衝突し、ケガをさせた
ただし、スポーツ中の事故は「競技のルールの範囲内」であれば社会的相当行為として違法性が否定される場合があります。ルールを逸脱した危険な行為によるケガに限り、過失傷害罪が問題になります。
ペット(飼い犬等)による咬傷
- リードを適切に管理せず、飼い犬が通行人に噛みついてケガをさせた
- ドッグランで飼い犬が他の利用者を噛み、傷害を負わせた
飼い主には動物の逸走を防止する注意義務があり(動物の愛護及び管理に関する法律第7条)、この義務を怠って飼い犬が他人を負傷させた場合には過失傷害罪が成立しうるとされています。管理が著しく不十分であった場合は重過失致傷罪(刑法第211条)に問われる可能性もあります。
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過失傷害罪の告訴状の書き方|犯罪事実の記載例
過失傷害罪の告訴状は、傷害罪の告訴状と基本構成は同じですが、犯罪事実の記載において加害者の「過失」(注意義務違反)の内容を具体的に記載する必要がある点が異なります。
告訴状の基本構成
- 表題:「告訴状」
- 提出先:○○警察署長 殿
- 提出日:作成年月日
- 告訴人の情報:住所・氏名・生年月日・連絡先
- 被告訴人の情報:住所・氏名
- 告訴の趣旨:「被告訴人の下記行為は刑法第209条第1項(過失傷害罪)に該当すると思料するので、捜査のうえ厳重に処罰されたく告訴します」
- 告訴事実:過失の内容と傷害の結果を5W1Hで記載
- 告訴に至る経緯:事故に至った背景・事情
- 証拠資料:診断書、写真等の一覧
犯罪事実の記載例(歩行者への衝突事故の場合)
被告訴人は、令和○年○月○日午前○時○分頃、東京都○○区○○町○丁目○番地先歩道上において、スマートフォンの画面を注視しながら歩行するという、前方の安全を確認すべき注意義務を怠った過失により、前方から歩行してきた告訴人に正面から衝突し、告訴人を転倒させ、よって、告訴人に対し、全治約○週間を要する右手首骨折の傷害を負わせたものである。
犯罪事実の記載例(飼い犬の咬傷事故の場合)
被告訴人は、令和○年○月○日午後○時頃、○○県○○市○○町○丁目○番○号所在の○○公園内において、自己の飼育する大型犬(○○種)のリードを手から離し、同犬を放置するという、飼い犬が他人に危害を加えることを防止すべき注意義務を怠った過失により、同犬が告訴人の左腕に噛みつき、よって、告訴人に対し、全治約○週間を要する左前腕部咬傷の傷害を負わせたものである。
犯罪事実の記載で重要な3つのポイント
- 注意義務の内容:「前方の安全を確認すべき注意義務」「飼い犬が他人に危害を加えることを防止すべき注意義務」など、加害者が負っていた具体的な注意義務を明記する
- 注意義務違反の態様:「スマートフォンの画面を注視しながら歩行するという」「リードを手から離し放置するという」など、注意義務に違反した具体的行為を記載する
- 因果関係:過失行為と傷害結果を「よって」で結びつけ、過失と傷害の間に因果関係があることを示す
傷害罪の告訴状では「暴行の態様」が中心ですが、過失傷害罪では「注意義務の内容とその違反態様」が中心になる点が最大の違いです。告訴状の基本的な書き方については「告訴状の書き方ガイド|構成・記載例・提出先を行政書士が解説」もあわせてご確認ください。
過失傷害罪の証拠の集め方
過失傷害罪の告訴でも、医師の診断書が最も重要な証拠であることは傷害罪と同じです。加えて、過失傷害罪では「加害者に過失があったこと」を裏付ける証拠が必要になります。
必須の証拠:医師の診断書
| ポイント | 注意点 |
|---|---|
| 受診時期 | 事故後できるだけ早く受診する。時間が経つと事故との因果関係の立証が困難になる |
| 記載内容 | 傷病名・全治期間に加え、受傷原因(「衝突による」「咬傷による」等)が記載されていることを確認 |
| 部数 | 原本を告訴状に添付し、コピーを手元に保管 |
過失を裏付ける証拠
- 事故現場の写真・動画:現場の見通し、路面状況、障害物の有無など、過失の有無を判断する材料になる
- 防犯カメラ・ドライブレコーダーの映像:事故の瞬間が記録されていれば最も有力。映像は一般に1〜2週間で上書きされるため、店舗・施設に早急に保存を依頼する
- 目撃者の連絡先・証言:事故の目撃者がいる場合は氏名・連絡先を確認し、できれば証言内容を記録する
- 加害者の言動の記録:事故直後に加害者が「ごめんなさい」「よそ見をしていた」等と発言した場合、その内容を記録する(メモ・録音等)。過失の自認として有力な証拠になる
- 事故状況を示す物的証拠:破損したリード、落下物の破片など、過失の原因を示す物がある場合は保全する
過失傷害罪は親告罪 — 告訴期間に要注意
過失傷害罪は刑法第209条第2項により親告罪とされています。これは、被害者等による告訴がなければ検察官が起訴できないことを意味します。
告訴期間は「犯人を知った日から6ヶ月」
親告罪の告訴期間は、刑事訴訟法第235条第1項により、犯人を知った日から6ヶ月です。この期間を過ぎると告訴ができなくなり、過失傷害罪である以上、加害者の刑事処罰は不可能になります。
「犯人を知った日」とは、犯人の氏名・住所の詳細を把握した日ではなく、犯人が誰であるかを特定・識別できる程度に認識した日を指します。事故の現場で加害者の顔を見て認識していれば、その時点から6ヶ月の期間が進行します。
告訴を検討する際の注意点
- 告訴期間の管理:6ヶ月はあっという間に過ぎるため、犯人が判明した段階で日付を記録し、告訴状の準備を並行して進める
- 告訴の取消し:親告罪では告訴を取り消すと再度の告訴ができなくなるため(刑事訴訟法第237条第2項)、示談交渉の中で安易に取り消さないよう注意する
- 民事との並行:刑事告訴と損害賠償請求(民事)は並行して進めることが可能。告訴期間が過ぎても、不法行為に基づく損害賠償請求(民法第709条)は別途の時効期間が適用される
親告罪の告訴期間の計算方法や例外については「親告罪とは?告訴が必要な犯罪一覧と告訴期間の計算方法」で詳しく解説しています。
よくある質問
Q. 過失傷害罪と傷害罪のどちらで告訴すべきかわかりません。
加害者に「ケガをさせようとする意思(故意)」があったかどうかが分かれ目です。意図的に暴行を加えた結果ケガをした場合は傷害罪、不注意によるものであれば過失傷害罪です。判断に迷う場合は、事実関係をありのまま記載した告訴状を提出し、罪名の最終的な判断は捜査機関に委ねるのが実務的な対応です。
Q. 自転車事故で相手にケガをさせられた場合、過失傷害罪で告訴できますか?
自転車は「自動車運転処罰法」の適用対象外であるため、自転車による人身事故には刑法の過失傷害罪(第209条)または重過失致傷罪(第211条)が適用されます。信号無視やスマホ操作中など、注意義務違反の程度が著しい場合は重過失致傷罪に問われる可能性があります。
Q. 告訴期間の6ヶ月を過ぎてしまいました。何か方法はありますか?
親告罪の告訴期間を過ぎた場合、刑事処罰を求めることは原則としてできません。ただし、民事上の損害賠償請求は刑事の告訴期間とは別の時効(不法行為の消滅時効:損害及び加害者を知った時から3年)が適用されるため、被害の回復を民事で求める道が残されている場合があります。
Q. 相手の飼い犬に噛まれました。飼い主を過失傷害罪で告訴できますか?
飼い主がリードの管理を怠るなどの注意義務違反があった場合、過失傷害罪で告訴できる可能性があります。管理の懈怠が著しい場合(ノーリードで大型犬を放置していた等)は、重過失致傷罪に問われる場合もあります。まず医療機関で診断書を取得し、事故の状況を整理したうえで告訴を検討してください。
Q. 過失傷害罪の告訴を取り消した後、やはり告訴し直すことはできますか?
できません。刑事訴訟法第237条第2項により、告訴を取り消した者は同一事実について再度の告訴ができません。示談交渉の中で告訴の取消しを求められることがありますが、取り消すと刑事処罰の道が閉ざされるため、慎重に判断してください。
まとめ
- 過失傷害罪(刑法209条)は、不注意によって他人にケガをさせた場合に成立する犯罪。法定刑は30万円以下の罰金又は科料
- 過失傷害罪は親告罪であり、被害者の告訴がなければ起訴できない。告訴期間は犯人を知った日から6ヶ月
- 重大な過失(著しい不注意)による場合は重過失致傷罪(刑法211条)が適用され、こちらは親告罪ではない
- 自動車事故は自動車運転処罰法が適用されるため、過失傷害罪の対象外
- 犯罪事実には注意義務の内容・違反態様・傷害結果を具体的に記載し、「よって」で因果関係を示す
- 証拠の中で最も重要なのは医師の診断書。事故直後の現場写真や加害者の過失を示す物的証拠も有効
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| サービス | 料金 |
|---|---|
| 告訴状作成 | 34,800円(税抜)〜 |
- ✔ 過失の内容と傷害結果を正確に記載した告訴状を作成
- ✔ 診断書・写真等の証拠を体系的に整理
- ✔ 受理されやすい書面構成
- ✔ 相談は何度でも無料・全国対応
告訴期間の6ヶ月は短く、告訴状の作成には一定の時間がかかります。まずはお気軽にお問い合わせください。
※ 記事の内容には細心の注意を払っておりますが、万が一誤りがございましたらご指摘いただけますと幸いです。
※ 2026年3月時点の刑法・刑事訴訟法に基づく解説です。告訴・告発の受理判断は捜査機関の裁量による部分があります。具体的な事案は弁護士にもご相談ください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではございません。具体的なケースについては専門家へのご相談をおすすめいたします。


