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建設業のコンプライアンス|法定帳簿の備付け・標識掲示の義務一覧を解説

更新: 約15分で読めます

建設業許可を取得しても、そこで終わりではありません。建設業法は許可業者に対して、標識の掲示・帳簿の備付け・配置技術者の選任・各種届出の提出など多岐にわたるコンプライアンス義務を課しています。義務の一つでも怠れば、監督処分や罰則の対象となり、最悪の場合は許可取消しに至ることもあります。

この記事では、建設業許可業者が遵守すべき主要な法定義務を一覧形式で整理し、それぞれの根拠条文・具体的な内容・違反時の罰則を解説します。日々の業務の中で抜け漏れが起きやすいポイントも取り上げていますので、自社のコンプライアンス体制の点検にお役立てください。

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建設業許可業者が守るべきコンプライアンス義務の全体像

建設業法は、許可を受けた事業者に対して施工品質の確保・取引の適正化・労働者の保護を目的とした複数の義務を定めています。義務の性質は大きく「掲示・表示」「帳簿・書類の管理」「技術者の配置」「届出・報告」「契約上の規制」に分類できます。

以下の表は、許可業者に課される主な法定義務の一覧です。それぞれの詳細は後述のセクションで解説しますが、まずは全体像を把握してください。

義務の種類 根拠条文 対象 主な罰則
標識(許可票)の掲示 建設業法第40条 全許可業者 10万円以下の過料
帳簿の備付け・保存 建設業法第40条の3 全許可業者 10万円以下の過料
施工体制台帳の作成・備置き 建設業法第24条の8 特定建設業者(元請) 監督処分の対象
配置技術者の選任 建設業法第26条・第26条の3 全許可業者 100万円以下の罰金(営業停止・許可取消しの対象にもなりうる)
契約書面の交付 建設業法第19条 全許可業者 監督処分の対象
一括下請負の禁止 建設業法第22条 全建設業者 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(営業停止・許可取消しの対象にもなりうる)
下請業者への書面交付 建設業法第24条の5等 元請業者 監督処分の対象
社会保険への加入 健康保険法・厚生年金保険法等 適用事業所 許可申請・更新への影響
変更届・決算変更届の提出 建設業法第11条 全許可業者 6ヶ月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金

標識(許可票)の掲示義務とは?どこに何を掲示すればいい?

建設業法第40条は、許可を受けた建設業者に対して「標識の掲示」を義務づけています。この標識は一般に「建設業許可票」や「金看板」と呼ばれ、事業者が適法に許可を受けていることを対外的に示す役割を持っています。

掲示が必要な場所

標識を掲示しなければならない場所は次の2か所です。

  • 営業所(店舗): 本店・支店など、建設業を営むすべての営業所に掲示が必要です
  • 工事現場: 発注者から直接請け負った建設工事(元請工事)の現場に掲示が必要です

なお、2020年(令和2年)10月1日の建設業法改正により、工事現場における掲示義務は元請業者のみが対象となりました。改正前は下請業者にも掲示義務がありましたが、現在は下請業者の現場掲示は不要です。

標識のサイズと記載事項

標識のサイズは建設業法施行規則で定められており、縦25cm以上×横35cm以上です。記載事項は以下の通りです。

記載事項 営業所 工事現場
一般建設業又は特定建設業の別 必要 必要
許可年月日・許可番号 必要 必要
許可を受けた建設業の種類 必要 必要
商号又は名称 必要 必要
代表者の氏名 必要 必要
主任技術者又は監理技術者の氏名 不要 必要

違反した場合の罰則

標識を掲示しなかった場合は、建設業法第55条により10万円以下の過料に処されます。過料は刑事罰ではなく行政上の秩序罰ですが、監督処分の端緒となる可能性もあるため、確実に掲示しておく必要があります。

帳簿の備付け・保存義務|何を・何年間保存すべきか

建設業法第40条の3は、建設業者に対して営業に関する帳簿を営業所ごとに備え付け、一定期間保存することを義務づけています。帳簿は建設業者の適正な営業実態を把握するための基礎資料であり、行政庁の立入検査の際にも確認対象となります。

帳簿に記載すべき事項

帳簿には、建設業法施行規則第26条に基づき、以下の事項を記載する必要があります。

  • 営業所の代表者の氏名及びその者が代表者になった年月日
  • 注文者と締結した建設工事の請負契約に関する事項(工事名称・施工場所・工期・請負代金の額・契約年月日など)
  • 発注者と締結した住宅の新築工事については、住宅の床面積・建設瑕疵負担割合・保険法人の名称なども追加で記載

帳簿の保存期間

帳簿の保存期間は、対象工事の種類によって異なります。

工事の種類 保存期間 起算日
一般の建設工事 5年間 目的物の引渡し日
発注者と締結した住宅を新築する建設工事 10年間 目的物の引渡し日

住宅新築工事の保存期間が10年間と長い理由は、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)における瑕疵担保責任の期間(引渡しから10年間)と整合を取るためです。

帳簿に添付すべき書類

帳簿には、契約書またはその写し、特定建設業者が元請となった場合の施工体制台帳のうち一定の書類(下請業者の商号・工事内容等の記載部分)などを添付して保存しなければなりません。これらの添付書類も帳簿と同じ期間保存する必要があります。

帳簿を備え付けない場合や保存義務に違反した場合は、建設業法第55条により10万円以下の過料に処されます。

施工体制台帳・施工体系図の作成義務はどんな場合に発生する?

建設業法第24条の8は、特定建設業者が発注者から直接請け負った工事について、一定の金額以上の下請契約を締結した場合に施工体制台帳の作成を義務づけています。施工体制台帳は、下請を含む施工体制の全体像を記録する書類で、不正な下請関係の防止や施工責任の明確化を目的としています。

作成義務が発生する要件

工事の区分 作成義務が発生する条件
公共工事 下請契約を締結する場合(金額を問わない)
民間工事(建築一式工事) 下請代金の総額が8,000万円以上(税込)
民間工事(建築一式以外) 下請代金の総額が5,000万円以上(税込)

施工体制台帳を作成した場合は、工事現場ごとに備え置くとともに、施工体系図を工事関係者が見やすい場所及び公衆が見やすい場所に掲示しなければなりません。

保存期間

施工体制台帳は帳簿の添付書類として、工事の目的物を引き渡した日から5年間(発注者と締結した住宅新築工事は10年間)保存する必要があります。

施工体制台帳の作成義務に違反した場合は、建設業法上の監督処分(指示処分・営業停止処分)の対象となります。

施工体制台帳の具体的な記載事項や作成手順については、施工体制台帳の作成ガイドで詳しく解説しています。

配置技術者の選任義務|主任技術者と監理技術者の違い

建設業法第26条は、建設業者に対して、請け負った建設工事の施工にあたり、工事現場ごとに一定の資格を有する技術者を配置することを義務づけています。配置すべき技術者は工事の規模や下請金額によって異なります。

主任技術者と監理技術者の配置基準

区分 主任技術者 監理技術者
配置義務 全ての工事現場 特定建設業者が元請となり、下請代金総額が5,000万円以上(建築一式は8,000万円以上)の工事現場
資格要件 一般建設業の営業所専任技術者と同等の資格 1級国家資格者、または指導監督的実務経験を有する者
専任の要否 公共性のある工作物・個人住宅を除く重要な工事で請負代金4,500万円以上(建築一式は9,000万円以上)の場合は専任 原則として専任

配置技術者は、施工計画の作成・工程管理・品質管理・安全管理など、工事の施工の技術上の管理をつかさどる重要な役割を担います。技術者を適切に配置しないまま施工した場合、建設業法第26条違反として100万円以下の罰金に処されるだけでなく、営業停止処分や許可取消しにも発展しうる重大な違反です。

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契約・下請関係の義務|書面交付と一括下請負の禁止

請負契約は書面で締結する義務がある?

建設業法第19条は、建設工事の請負契約を締結する場合に、一定の事項を記載した書面を交付することを義務づけています。記載すべき事項は、工事内容・請負代金の額・工期・違約金・紛争解決方法など、計16項目に及びます。

口頭のみの契約や記載事項が不十分な契約書は建設業法違反となり、監督処分の対象です。なお、2020年の建設業法改正により、電磁的記録による契約(電子契約)も認められるようになりました。

一括下請負はなぜ禁止されているのか

建設業法第22条は、請け負った建設工事を一括して他の業者に請け負わせること(一括下請負=丸投げ)を禁止しています。これは発注者が建設業者の能力や信用を評価して発注しているにもかかわらず、実質的に別の業者が施工することは発注者の信頼を裏切る行為であるためです。

一括下請負の禁止に違反した場合の罰則は非常に重く、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金が科されます(建設業法第47条)。さらに営業停止処分や許可取消しの対象にもなります。

ただし、民間工事(共同住宅の新築工事を除く)で発注者の書面による事前承諾を得た場合は、例外的に一括下請負が認められます。公共工事では一切認められません。

下請業者への書面交付義務

元請業者は下請業者と契約を締結する際にも、請負代金の額・工期・支払方法などを記載した書面を交付しなければなりません。また、特定建設業者は下請代金の支払期日について、引渡し申出日から50日以内に支払わなければならないという期限も定められています(建設業法第24条の6)。

建設業法の条文の全文は、e-Gov法令検索「建設業法」で確認できます。

社会保険の加入は許可の維持にも関わる

建設業における社会保険(健康保険・厚生年金保険・雇用保険)への加入は、健康保険法・厚生年金保険法・雇用保険法によって義務づけられています。特に建設業では、国土交通省が業界全体の社会保険加入対策を推進しており、未加入の状態は許可の取得・維持にも直接影響します。

社会保険未加入が引き起こす不利益

  • 建設業許可の取得・更新への影響: 許可申請・更新時に社会保険の加入状況が確認され、適用事業所であるにもかかわらず未加入の場合は、許可が下りない可能性があります
  • 経営事項審査(経審)での減点: 社会保険未加入の場合、経営事項審査のW点(社会性等)で大幅に減点され、公共工事の入札で不利になります
  • 現場への入場制限: 元請業者は下請指導ガイドラインに基づき、社会保険未加入の下請業者の現場入場を認めない運用が広がっています
  • 行政指導・立入検査: 年金事務所等からの加入指導や立入検査が行われ、強制加入となる場合もあります

国土交通省は「建設業における社会保険加入対策」として加入促進を強力に進めています。詳細は国土交通省「建設業における社会保険加入対策について」をご確認ください。

変更届・決算変更届の提出期限を見落としていませんか?

建設業許可を受けた後も、届出事項に変更が生じた場合は所定の期限内に変更届を提出しなければなりません。届出を怠ると罰則の対象になるだけでなく、許可の更新手続きにも支障をきたします。

変更届の提出期限一覧

届出の種類 提出期限 具体例
経営業務管理責任者・専任技術者・令3条使用人の変更 変更後2週間以内 経管の交代、専技の退職、支店長の変更など
商号・営業所・役員・資本金等の変更 変更後30日以内 社名変更、本店移転、役員の就退任、増資など
決算変更届(事業年度終了届) 事業年度終了後4ヶ月以内 毎年の決算報告(工事経歴書・財務諸表等を提出)

決算変更届は毎年の提出が義務づけられており、提出を怠ると許可の更新申請が受理されないことがあります。5年に一度の更新時期にまとめて数年分を提出するケースも見られますが、未提出の状態は建設業法第11条違反であり、6ヶ月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の罰則が適用される可能性があります。

変更届・決算変更届の提出先・必要書類の詳細は、国土交通省「許可後の手続き」をご確認ください。

決算変更届の具体的な書き方については、決算変更届の書き方ガイドで様式ごとに詳しく解説しています。

よくある不備・見落としがちなコンプライアンス違反

建設業法のコンプライアンス義務は範囲が広いため、知らず知らずのうちに違反状態になっていることも珍しくありません。行政庁への届出や現場の管理体制について、以下のようなケースは特に注意が必要です。

1. 許可票の掲示漏れ・古い情報のまま放置

営業所に許可票を掲示していなかったり、許可の更新後に古い許可番号の標識をそのまま使い続けていたりするケースがあります。許可番号や許可年月日は更新のたびに変わるため、更新の都度新しい許可票に差し替える必要があります。

2. 帳簿・契約書を保存期間前に廃棄

帳簿の保存期間は5年間(住宅新築工事は10年間)ですが、保存期間を把握しておらず、社内の文書廃棄ルールに従って早期に廃棄してしまう事例が見られます。行政庁の立入検査で帳簿が提示できない場合、過料の対象となります。

3. 決算変更届の未提出・提出遅延

決算変更届は毎年提出が義務づけられていますが、「出していなくても何も言われない」と誤解して数年間未提出のまま放置しているケースがあります。更新申請時に初めて気づいて慌てるパターンが多く、場合によっては更新が間に合わず許可が失効するリスクもあります。

4. 配置技術者が実際に現場にいない

主任技術者や監理技術者を名目上は配置しているものの、実際にはほとんど現場に来ていないという状態は、配置義務を果たしていないと判断される可能性があります。特に専任が求められる工事では、他の工事現場との兼任が発覚すると重大な違反となります。

5. 経営業務管理責任者・専任技術者の変更届の遅延

経営業務管理責任者や専任技術者が退職・交代した場合の届出期限は2週間以内です。この期限は短いため、人事異動の忙しさの中で後回しにしてしまいがちですが、届出遅延は建設業法違反です。後任が決まっていない状態が長期化すると、許可要件を欠くとして許可取消しのリスクにもつながります。

よくある質問

Q. 建設業の許可票は市販のものでも問題ない?

建設業法施行規則で定められたサイズ(縦25cm以上×横35cm以上)と記載事項を満たしていれば、市販品でも自作でも問題ありません。素材(金属・アクリル・紙など)についても法令上の制限はありませんが、屋外に掲示する場合は耐久性を考慮して金属製やアクリル製を選ぶのが一般的です。

Q. 帳簿はエクセルなどの電子データでも保存できる?

はい、帳簿の備付けについては電磁的記録(電子データ)による保存も認められています。ただし、行政庁の立入検査の際に速やかに書面に出力できる状態にしておく必要があります。バックアップ体制を整え、紛失や破損に備えることも重要です。

Q. 決算変更届を出し忘れるとどうなる?

決算変更届を提出しないこと自体が建設業法第11条違反であり、罰則(6ヶ月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)の対象となりえます。加えて、許可の更新申請時に過年度分の決算変更届が未提出だと、更新申請が受理されない場合があります。更新期限が迫っている状態で未提出に気づいた場合は、速やかに行政書士等の専門家に相談することをお勧めします。

Q. 社会保険に入っていないと建設業許可は取れない?

適用事業所に該当するにもかかわらず社会保険(健康保険・厚生年金保険・雇用保険)に加入していない場合、建設業許可の申請や更新が認められない可能性があります。国土交通省は2020年10月以降、社会保険への加入を許可要件として明確化しており、未加入の状態では許可の取得・維持が困難です。

Q. 一括下請負で許可が取り消されることはある?

あります。一括下請負の禁止(建設業法第22条)に違反した場合は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金という重い刑事罰が科されるほか、営業停止処分や許可取消処分の対象にもなります。特に公共工事での一括下請負は例外なく禁止されており、発覚した場合は厳しい処分が下される傾向にあります。

まとめ

建設業許可を維持するためには、許可の取得だけでなく、取得後のコンプライアンス義務を継続的に履行することが不可欠です。この記事で解説した主要な義務を改めて整理します。

  • 標識の掲示(建設業法第40条)と帳簿の備付け・保存(同第40条の3)は全許可業者が対象。違反は10万円以下の過料
  • 配置技術者の選任(同第26条)は全工事で必須。違反は100万円以下の罰金に加え、営業停止や許可取消しの対象にもなりうる
  • 一括下請負の禁止(同第22条)に違反すると3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金という重い罰則がある
  • 変更届・決算変更届は期限内に毎年提出が必要。未提出だと許可の更新に支障をきたす
  • 社会保険の加入は許可要件として明確化されており、未加入では許可の取得・維持が困難

これらの義務を自社だけで漏れなく管理するのは容易ではありません。コンプライアンス体制に少しでも不安がある場合は、建設業許可の専門家に相談されることをお勧めします。

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※ 2026年4月時点の建設業法に基づく解説です。都道府県ごとに運用が異なる場合があります。最新情報は国土交通省でご確認ください。

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