建設業のJV(共同企業体)は、複数の企業が工事を共同で受注・施工するための組織です。公共工事で用いられる特定JV・経常JV・地域維持型JV・復旧・復興JVは、対象工事、構成員、出資・分担、資格審査の条件が異なります。
この記事では、2026年11月5日に確認した国交省の運用準則・各取扱通知・標準協定書を中心に整理します。国の準則等と、各発注者の運用基準・入札公告・契約書を区別して確認してください。JVを組めば各社の許可・技術者・入札資格の不足が自動的に解消されるわけではありません。
発注者の資料と各社の許可・経審から、申請の準備を整理します
行政書士法人Treeでは、建設業許可、経審、入札参加資格等の書類作成・申請について無料相談を受け付けています。JVに関する書類は、発注者の指定とご依頼内容から対応可否・費用をご案内します。
目次
JVの制度と協定書|発注者との契約・構成員間の合意を分ける
国交省の共同企業体制度の案内は、JVの方式、運用準則、類型ごとの取扱通知と標準協定書を公表しています。運用準則は、発注機関が運用基準を策定する際に準拠する基準です。すべての民間協業や設計・施工一括発注まで、同じ条件になるものではありません。
建設工事のJVは一般に民法上の組合として扱われます。ただし、組合だからすべての内部・外部債務が一律に連帯になるとだけ説明することはできません。民法・商法、発注者との請負契約、JV協定書等の定めを照合します。国交省の標準協定書は、甲型・乙型とも工事請負契約の履行に関する構成員の連帯責任を定めています。
JVの目的、代表者の権限、利益・損失の負担、脱退・解散の処理を定める協定書と、発注者から工事を請け負う契約は別です。協定書で内部負担を決めても、発注者等に対する責任を当然に免れるとは限りません(民法、商法)。
代表的な4類型|目的と構成員数を比較
| 類型 | 主な目的・対象 | 構成員の目安 |
|---|---|---|
| 特定JV | 大規模・技術難度等から共同施工が必要な特定の工事ごとに結成 | 原則2社又は3社 |
| 経常JV | 中小・中堅企業が継続的協業で経営力・施工力を強化。一定期間、有資格業者として登録 | 2〜3社程度。発注者の運用基準を確認 |
| 地域維持型JV | 道路等の維持管理、除雪、修繕、応急対応等、地域維持事業の実施体制を確保 | 上限は当面10社程度とする取扱い |
| 復旧・復興JV | 大規模災害の復旧・復興で、地域に精通した地元企業の施工力を強化 | 2社又は3社。地元企業を1社以上含む |
経常JVの「最大5社」、すべての構成員の「営業年数3年以上」などを全国共通の数字として扱わず、該当する発注機関の基準を確認します。各社の実績・技術力、代表者の資格、営業経歴についても、工事や発注者ごとに条件があります。
地域維持型と復旧・復興は、対象事業を確認する
地域維持型JVは、地域の維持管理の継続的な実施体制を確保する制度で、新設・改築等をすべて同じ対象にできるものではありません。復旧・復興JVは、激甚災害として指定された災害のほか、特に激甚な災害等も取扱いに含まれ、対象地域・工事・活用期間は発注者が判断します。特定JVに適する大規模・高難度工事等との区別もあります。
地域維持型と復旧・復興の国交省の現行掲載通知は、いずれも2025年2月1日の取扱いです。「共同企業体の在り方について」の2022年改正と、これらの個別通知の改正日を混同しないでください(地域維持型JV・PDF、復旧・復興JV・PDF)。
甲型と乙型|施工方法・内部負担と対外責任の違い
| 項目 | 甲型・共同施工 | 乙型・分担施工 |
|---|---|---|
| 施工・運営 | 構成員が資金・人員・機械等を出し合い、共同で施工 | 工事を分担し、各社が担当する工事を施工 |
| 損益の内部配分 | 標準協定では出資割合に応じ利益・欠損を配分 | 分担工事の損益を基本に内部負担を整理。共通費用等も協定で確認 |
| 発注者等への責任 | 標準協定は工事請負契約の履行について連帯責任を規定 | 標準協定は連帯責任を規定。分担したので他社工事の対外責任がなくなる、とはいえない |
| 内部の損害負担 | 欠損の分担・追加出資等を協定と運営規則で確認 | 分担工事で生じた発注者・第三者への損害の内部負担を協定で確認 |
| 会計 | 共同運営に応じた共通会計・決算の管理 | 分担工事の会計と共通経費の管理を整理 |
施工方式は、工種の数だけで自由に決められるとは限りません。発注者の指定、施工範囲の分け方、必要な許可・技術者配置、費用と責任の整理から選びます。特定JVの標準協定書は、甲型・Wordと乙型・Wordで条項が異なります。経常・地域維持・復旧復興も、それぞれの様式を確認してください。
出資比率と代表者|2社30%・3社20%の適用範囲
国交省の運用準則の注解には、特定・経常・復旧復興JVの各構成員の出資比率について、2社なら30%以上、3社なら20%以上という最小限度の基準があります。これは代表者が必ず50%超を持つという意味ではありません。
一方、地域維持型JVの甲型は、原則として均等割の6割以上を各構成員の最小限度とする取扱いがあり、実施量等による柔軟な設定も確認します。例えば2社なら均等50%の6割で30%、3社なら約33.3%の6割で20%ですが、構成員数が変われば基準も変わります。柔軟設定でも甲型の出資比率をゼロ、乙型の分担工事額をゼロとすることは認められません。
代表者の出資が構成員中最大であるという準則の要件は、特定JVについてのものです。経常・地域維持・復旧復興の代表者の選び方を同じ要件に一括りにせず、個別の取扱いと発注者基準を確認します。復旧・復興JVでは原則として地元企業が代表となる取扱いもあります。
建設業許可と技術者配置|各社・各工事を対応させる
JVそのものに各社の許可をまとめて一本化するのではなく、構成員の許可が施工する工事をカバーしているか確認します。国交省の取扱いでは、甲型は工事全体に含まれる建設工事の種類を構成員の許可でカバーし、各構成員も少なくとも一部に対応する許可を持つことを確認します。乙型では、各社の分担工事に対応する許可を確認します。
元請JVが下請に出す金額の合計が税込5,000万円以上(建築一式8,000万円以上)となる場合は、特定建設業の許可を確認します。甲型では少なくとも1社が当該工事に対応する業種の特定許可を持ち、できる限り代表者を含める取扱いです。乙型は分担工事ごとに該当する構成員の許可を判断します。JV全体での下請金額と、乙型の分担工事の判定を区別してください。
主任技術者・監理技術者も構成員ごとに確認し、「JV代表者が1人置けば他社は配置不要」とは判断しません。甲型で少なくとも1社の監理技術者を要する場合と、乙型で分担ごとに判断する場合を分けます。専任の要否・兼務や地域維持・復旧復興の緩和措置も個別の条件があります(監理技術者制度運用マニュアル・PDF)。
「特定JV」という名称と「特定建設業許可」は別の区分です。実際の工種、元下関係、下請契約と配置計画、発注者の資格条件を合わせて確認してください(建設業法)。
経審と入札参加資格|JVの点数と構成員の審査を区別
法定の経営事項審査は、政令で定める公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が対象です。公共工事等の対象案件では構成員の経審結果と入札資格を確認しますが、JVという理由だけで民間工事を含むすべてに同じ受審義務が生じるわけではありません。
公共工事の契約締結に必要な経審結果は、通常、審査基準日から1年7か月の期間として管理し、継続的な受注では毎年の受審を確認します。通知書を受け取った日から数えるものではなく、入札資格名簿の登録期間とも別です(建設業法施行規則18条の2、国交省:申請に使用する経営事項審査)。
構成員が受ける法定経審と、発注者がJVの入札資格を評価する客観的事項の審査を区別してください。例えば地域維持型JVの現行通知では、次のように経審の項目・取扱いに準じて審査します。
| 評価の部分 | 主な取扱い |
|---|---|
| 経営規模 | 各構成員の年間平均完成工事高、自己資本、平均利益等の元データを合算して評価 |
| 経営状況(Y) | 各構成員の評点の平均 |
| 技術力(Z) | 技術職員数、年間平均元請完成工事高等の元データを合算して評価 |
| 社会性等(W) | 各構成員の評点の平均 |
具体的な算定と主観的事項の審査は、類型と発注者の現行要領で確認します。単体のP点を足せばJVの資格が得られる、という計算ではなく、この表を全JVの全国共通の算定式として使うこともできません。
経常JVと単体の重複登録は、工事種別等で確認
国交省地方整備局等の2025・2026年度資格審査の案内は、一つの発注機関・同一工事種別内で、経常JVとその構成員である単体企業の同時登録はできないとしています。一方、JV登録を希望しない工事種別は、単体登録を認めると案内しています。
したがって、経常JVを結成すると単体企業のすべての入札機会を放棄する、という説明はできません。また、発注機関によっては別の条件があり、全国一律の制限ではありません。有資格期間も年度ごとに必ず更新と決めつけず、対象年度・工事種別・等級と定期又は随時受付の条件を確認します(国交省:2025・2026年度資格審査の案内・PDF)。
設計者等を含むJVを一律に否定しない
公共工事の施工JVと、設計・施工一括発注等の参加形態は同じではありません。発注方式によっては、設計企業と施工企業を含むJV等が募集されています。設計者が含まれるからすべて不可、又は無許可の会社も工事を自由に施工できる、という結論にはなりません。業務分担、構成員それぞれの資格、許可と契約上の責任を確認します(神奈川県の設計・施工一括発注の募集例)。
協定書で決める事項|完成後の責任・解散まで確認
発注者指定の最新様式を出発点として、目的と対象工事、構成員、代表者・権限、出資又は分担、会計と損益、費用負担、工事遂行・責任、脱退・除名、存続・解散と清算を照合します。国交省の標準協定書の項目を、すべての案件に共通する唯一の法定記載事項とするものではありません。
- 代表・運営:契約、請求・受領、金融機関、運営委員会、議決と報告の権限
- 施工と資金:各社の役割、出資・分担、共通費用、追加資金、利益と欠損の配分
- 責任:発注者・第三者への責任、構成員間の負担、契約不適合に関する責任
- 存続・終了:完成・履行後の存続期間、解散後も残る責任、清算と残余財産の扱い
- 変更・脱退:承認、通知、施工継続と不足資金、持分・債務の整理
特定JVの標準協定書には、請負契約履行後にも所定の期間存続する条項があります。工事完成と同時に当然すべての関係が終了するわけではなく、解散後も工事の契約不適合に関する共同連帯責任が残る条項があります。
契約不適合責任は、2020年改正で単に呼び名だけが変わった制度と捉えず、追完・代金減額等の請求と契約条項を確認します。紛争がある場合や責任・請求の判断が必要な場合は弁護士に相談してください。
印紙税は、協定書という名称だけでは決まらず、記載内容と作成・交付方法で判断します。JVを組成する合意と、請負・融資等の課税事項を記載した文書を区別し、紙の具体的な文案について税務署等に確認してください。すべてのJV協定書に一律4,000円、又は一律に課税されない、とする案内はできません(国税庁:課税文書の判断)。
倒産・脱退時|甲型と乙型の条項を同じにしない
構成員の経営状態が悪化した場合は、工事継続、対外的な責任と内部清算、発注者の承認を分けて確認します。破産手続開始、民事再生、会社更生を、すべて同じ条件で自動脱退となるものとして扱うことはできません。
特定JVの標準甲型は、工事完成までの脱退に発注者と構成員全員の承認を求め、除名にも正当事由、他の構成員全員・発注者の承認、本人への通知等を定めています。一方、標準乙型は工事完成日までの脱退を認めない条項があり、構成員が破産・解散等となった場合の分担工事の完成について、残存構成員の共同連帯の履行を定めています。
実際に採用する協定書、請負契約、法令と倒産手続の状況に従い、早めに発注者へ報告・協議してください。脱退した会社との精算だけで工事完成義務まで消える、と判断しないことが大切です。
結成・申請の進め方と必要資料
- 発注条件を確認:類型・施工方式、対象工事、構成員数、地域要件、許可・実績・技術者・等級、出資又は分担基準を確認する
- 各社の資格を照合:許可、経審、配置予定技術者、財務・納税等の資料と、有資格期間・重複登録制限を確認する
- 協定書と施工計画を整える:代表者、権限、責任、会計、出資・役割、脱退と終了後の扱いを合意する
- 資格審査・参加申請:所定の協定書、構成員資料、申請様式を、期限と指定方法に沿って提出する
- 受注後も管理:技術者・施工体制、会計、変更届、工事完成後の責任と清算を継続して確認する
必要資料の例は、JV協定書、許可・経審の結果資料、登記・納税・財務資料、技術者や施工実績の資料等です。全件で同じ書類・通数になるとは限らず、発注者の最新の申請要領と案件の公告を優先します。
JCIPと電子入札は別の手続き
建設業許可・経審の電子申請システムであるJCIPと、発注者の資格申請・電子入札のシステムは別です。対象申請、利用資格、JV代表者の権限、電子証明書等の要否をそれぞれ確認してください。JCIPは2023年1月に電子申請受付を開始し、2026年7月の経審改正への対応案内も公表されています(国交省:JCIPの案内)。
労務管理もJVという名称だけで各社の義務が免除されるものではありません。建設業の時間外労働は原則月45時間・年360時間で、特別条項でも年720時間等の複数の上限を確認します。災害復旧・復興では月100時間・複数月平均80時間の規制に特例がありますが、すべての上限が免除されるわけではありません(厚生労働省:時間外労働の上限規制)。
Treeへ相談する際の範囲・料金
JVでは、構成員ごとの許可・経審と、JVの資格申請、協定書等の作成を分けて見積ります。次の金額は通常サービスの掲載報酬(税込・実費別)です。複数構成員分の手続きやJV協定書の作成等をすべて含む一律パックではないため、必要業務を確認してご案内します。
| 通常サービス | 税込報酬 |
|---|---|
| 建設業許可・新規知事/大臣 | 110,000円/165,000円 |
| 建設業許可・更新知事/大臣 | 55,000円/88,000円 |
| 経審スポット(経審申請のみ) | 159,500円 |
| 経審スタンダード(決算変更届+経営状況分析+経審) | 192,500円 |
| 入札ワンストップ(スタンダード+1自治体の入札参加資格) | 220,000円 |
| 入札参加資格申請(1〜9件の場合、1件) | 38,500円 |
新規許可の請求書・入金確認付き合わせは22,000円(税込)別途と掲載しています。許可の行政庁費用、経営状況分析機関の手数料、証明書・郵送等の実費、JV固有の追加作業と見積り範囲は、契約前に確認してください(許可申請の料金、経審プラン、入札参加資格の料金)。
よくある質問
Q. 特定JVの構成員は何社ですか?
国交省の運用準則では原則2社又は3社です。経常JVは2〜3社程度、地域維持型は当面10社程度を上限とする取扱い、復旧・復興JVは2社又は3社など、類型で異なります。実際の発注者基準と公告を確認してください。
Q. 出資比率はすべてのJVで2社30%以上・3社20%以上ですか?
すべての類型を同じ基準では説明できません。特定・経常・復旧復興JVの運用準則の基準、地域維持型甲型の均等割の6割以上を基本とする取扱い等を分けて確認します。代表者の比率や乙型の分担基準も、類型・方式と発注者の条件によります。
Q. 経常JVを組むと単体で入札できなくなりますか?
単体でのすべての入札機会を失うわけではありません。国交省地方整備局等の2025・2026年度案内は、一つの発注機関・同一工事種別内での同時登録を制限し、JV登録を希望しない工事種別では単体登録を認めています。発注機関による別の条件も確認してください。
Q. 乙型なら他の構成員の工事に責任を負いませんか?
分担工事の内部的な損益・損害負担と、発注者等への対外責任は別です。国交省の標準乙型協定書は工事請負契約の履行について連帯責任を定め、内部の分担によって対外責任を免れない旨も定めています。実際の契約・協定を確認してください。
Q. 特定JVは工事が終われば責任もなくなりますか?
工事完成・契約履行・解散と責任の終了は同じではありません。標準協定書には履行後の所定の存続期間や、解散後も残る契約不適合に関する共同連帯責任があります。完成後の連絡、清算、責任を協定と請負契約で確認してください。
Q. 構成員が倒産したら自動的に脱退しますか?
破産手続開始、民事再生、会社更生等の状況と、適用する法令・協定書を分けて確認します。標準甲型・乙型でも脱退や工事継続の条項は異なり、残存構成員の履行義務、発注者の承認、通知と内部清算等を確認する必要があります。早めに弁護士や発注者へ相談してください。
公告・協定書様式・各社の資格資料をもとに準備を進めます
発注者名、希望する工事種別・JVの類型、構成員候補、許可・経審・技術者の状況、申請期限をお知らせください。行政書士法人Treeが書類作成・申請の対応可否と見積りをご案内します。法律上の紛争・責任判断や代理交渉は、弁護士への相談が必要です。
根拠・参考資料
確認日:2026年11月5日。制度の共通資料と個別の発注者・案件条件を照合し、申請時の最新公告・要領・様式に従ってください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。