産業廃棄物の収集運搬を都道府県をまたいで行う場合、原則として廃棄物を積み込む都道府県と積み卸す都道府県の許可が必要です。積替え保管を伴わない収集運搬については、平成23年4月以降の許可合理化により、政令市・中核市についても原則として都道府県許可で県内全域を扱える取扱いとなっています。ただし、政令市区域内で積替え保管を行う場合や、一の政令市内だけで業を行う場合などは、個別に政令市の許可要否を確認する必要があります。本記事では、行政書士の立場から、越境運搬のルールと複数都道府県申請の進め方、講習会修了証の扱いや手数料・期間といった実務上のポイントを、一次情報に基づいて整理して解説します。
目次
産廃収集運搬業の複数都道府県申請とは|いわゆる「許可換え新規」
「許可換え新規」はもともと建設業許可で使われる申請区分の呼称で、産業廃棄物収集運搬業の許可制度に同じ名称の正式な区分があるわけではありません。中身は新規許可申請そのものですが、「すでに他の自治体で産業廃棄物(または特別管理産業廃棄物)収集運搬業の許可を持っている事業者が、別の都道府県で新たに許可を取る」ケースを指して、便宜的にこう呼ばれることがあります。なお、建設業許可の許可換え新規では従前の許可が新許可の取得日に失効しますが、産業廃棄物の場合は既存の許可はそのまま有効で、各都道府県・政令市の許可を並行して保有する点が異なります。
ポイントは、許可は都道府県知事ごとに与えられるという点です。たとえばA県で許可を持っていても、B県で運搬(積込み・積卸し)を行うのであればB県の許可が別途必要になります。積替え保管を伴わない収集運搬であれば、同一県内の政令市・中核市については原則として都道府県許可で足りますが、積替え保管を行う場合などは政令市の許可が必要となることがあります。新たな業の開始ではなく既存事業の地理的な拡大でも、申請区分はあくまで「新規」である点に注意してください。
都道府県をまたぐとき、どこの許可が必要か
廃棄物処理法(第14条)では、収集運搬業の許可は業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事から受けると定められています。収集運搬(積替え保管を伴わないもの)の場合、許可が必要なのは原則として廃棄物を積み込む区域と積み卸す区域です。
- 必要:廃棄物を積み込む場所(排出地)の都道府県・政令市の許可
- 必要:廃棄物を積み卸す場所(処分場や中間処理施設の所在地)の都道府県・政令市の許可
- 原則不要:単に車両が通過するだけの都道府県の許可
たとえば、A県で積み込み、B県を通過して、C県の処分場で積み卸す場合、必要なのはA県とC県の許可で、通過するだけのB県の許可は原則として不要です。一方、途中で積替え保管(一時的な荷下ろし・保管)を行う場合は、その積替え保管を行う区域の許可が別途必要になります。なお、政令指定都市・中核市の区域については、積替え保管なしであれば原則として都道府県許可で扱える一方、積替え保管を行う場合などは市長許可が必要となることがあるため、申請先自治体の手引きで管轄を確認してください。
許可換え新規で押さえるべき講習会修了証の扱い
収集運搬業の許可申請では、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が実施する講習会の修了証が必要です。講習会には「新規(収集運搬課程)」と「更新(同)」があり、修了証の有効期間が異なります。
- 新規講習会の修了証:有効期間はおおむね5年
- 更新講習会の修了証:有効期間はおおむね2年(近年、埼玉県のように更新課程の修了証の有効期間を5年に延長する自治体も出てきています)
許可換え新規で重要なのは、すでに他の自治体で同種の許可を有している場合、有効期間内の「更新」講習会修了証で他県の「新規」許可申請ができる取扱いを認める自治体が多いという点です。本来、新規申請には新規講習会の修了証が原則ですが、既存許可者の負担を軽減するこの運用により、わざわざ新規講習を受け直さずに済むケースがあります。
ただし、この取扱いは自治体ごとに運用が異なります。修了証の有効期間の数え方(申請日基準か受講日基準か)も含め、申請先の都道府県・政令市が公表する最新の手引きで必ず確認してください。なお、JWセンターの収集運搬課程の受講料は2026年度からの改定により、新規課程がオンライン27,500円・会場33,000円、更新課程がオンライン17,600円・会場22,000円が目安です(いずれも税込。実施方法により変動します)。
手数料・有効期間・標準処理期間の目安
申請にあたっての主な数値の目安は次のとおりです。いずれも申請先によって運用差があるため、最終的には各自治体の手引きで確認します。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 新規許可申請手数料(収集運搬・積替え保管なし) | 81,000円(全国一律。許可を取る自治体ごとに必要) |
| 許可の有効期間 | 5年(優良産廃処理業者の認定を受けた場合は7年) |
| 標準処理期間 | おおむね60日前後(自治体により異なる) |
注意したいのは、手数料は許可を取る自治体ごとに発生することです。3つの県で許可換え新規を行えば、原則として3件分の手数料がかかります。また有効期間(5年)も自治体ごとに進行するため、複数県で許可をお持ちの場合は、更新時期がそれぞれずれていきやすい点に留意してください。許可換え新規を機に更新スケジュールを一覧で管理しておくと、うっかり失効を防げます。
許可換え新規の進め方と落とし穴
実務上の流れは、おおむね次のようになります。
- 1. 必要な許可権者の特定:積込み地・積卸し地から、どの都道府県・政令市の許可が必要かを洗い出します。
- 2. 講習会修了証の確認:既存許可があるか、手元の修了証が有効期間内か、申請先が更新修了証での新規申請を認めているかを確認します。
- 3. 申請書類・添付書類の準備:登記事項証明書、定款、財務諸表、車両・駐車場の使用権原を示す書類、欠格要件に関する誓約書などを、申請先ごとの様式で整えます。許可要件や添付書類の全体像は産業廃棄物収集運搬業許可申請の完全ガイドもあわせてご確認ください。
- 4. 各自治体への申請・審査対応:自治体によって添付書類や記載要領、予約の要否が異なります。
もっとも多い落とし穴は、1つの県の基準だけで全県分を進めてしまうことです。書類の様式、駐車場・車両の要件、修了証の取扱いは自治体ごとに細かく異なり、A県で通った書式がB県では補正を求められることが珍しくありません。また、扱う廃棄物の品目(種類)は許可ごとに範囲が定まるため、県をまたぐ前に「どの品目を運ぶか」を明確にしておくことも重要です。複数自治体への同時並行申請は書類点数が多く、要件確認の負担も大きいため、専門家のサポートを活用すると手戻りを減らせます。
当事務所(行政書士法人Tree)では、産業廃棄物収集運搬業の新規・許可換え新規・更新・変更の各申請について、必要な許可権者の整理から自治体ごとの書類作成・申請代行までを一括してサポートしています。都道府県をまたぐ越境運搬の許可でお悩みの方は、建設・産廃許可サポートのご案内はこちらからお気軽にご相談ください。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
産業廃棄物の収集運搬を都道府県をまたいで行うには、積込み地と積卸し地それぞれの許可が必要で、通過するだけの県の許可は原則不要です。すでに他県で許可をお持ちの事業者が別の県で取得する申請は通称「許可換え新規」と呼ばれ、区分は新規ですが、有効期間内の更新講習会修了証で申請できる運用を認める自治体も多くあります。手数料(全国一律81,000円)・有効期間(5年、優良認定で7年)はいずれも自治体ごとに発生・進行するため、申請先ごとの最新の手引きで確認しながら進めることが、確実な許可取得への近道です。
産業廃棄物収集運搬業の許可換え新規に関するよくある質問
Q:他県で許可を持っていれば、別の県では届出だけで運搬できますか?
A:いいえ。許可は都道府県知事・政令市長ごとに与えられるため、新たに運搬(積込み・積卸し)を行う県では、改めてその県の新規許可(許可換え新規)が必要です。届出では足りません。
Q:県境をトラックで通過するだけの県でも許可は要りますか?
A:原則として不要です。許可が必要なのは廃棄物を積み込む区域と積み卸す区域です。ただし途中で積替え保管を行う場合は、その区域の許可が別途必要になります。
Q:許可換え新規でも、新規の講習会を受け直す必要がありますか?
A:すでに他自治体で同種の許可をお持ちの場合、有効期間内の「更新」講習会修了証で新規申請を認める自治体が多くあります。ただし取扱いは自治体ごとに異なるため、申請先の手引きで必ず確認してください。
Q:3つの県で許可を取ると、手数料や更新はどうなりますか?
A:手数料は許可を取る自治体ごとに発生するため、原則として3件分かかります。有効期間(5年)も自治体ごとに進行するので、更新時期が県ごとにずれていきます。一覧で管理しておくと失効防止に役立ちます。
Q:取り扱う廃棄物の品目を後から増やせますか?
A:許可の範囲を超える品目を新たに扱う場合は、原則として変更許可申請が必要です。県をまたぐ前に、どの品目を運ぶかを整理しておくと、申請がスムーズです。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。