道路を掘削する、歩道に足場を組む、電柱を建て替える、クレーンを据えて資材を吊り上げる。こうした作業はいずれも道路の上で行われ、その瞬間から一般の通行に影響が生じます。そこで道路交通法は、道路において工事や作業をしようとする場合、あらかじめ所轄警察署長の許可を受けなければならないと定めています。これが道路使用許可です。
ところが実務では、この道路使用許可と、道路法に基づく道路占用許可との区別があいまいなまま現場が動いてしまうことが少なくありません。「警察に出したから大丈夫」と思っていたら道路管理者の許可が抜けていた、「市役所で手続きしたから終わり」と考えていたら警察署の許可がなかった、という取り違えです。両者は根拠法も窓口も審査の観点も別物であり、片方だけでは適法な施工になりません。
本記事では、道路交通法第77条を出発点に、工事に伴う通行止め・片側交互通行といった交通規制がどの制度で実現されるのか、申請書の様式と記載事項は何か、手数料やオンライン申請はどうなっているのか、そして無許可で施工した場合にどのような罰則が科されるのかを、条文に沿って実務目線で整理します。建設業を営む方、現場代理人の方が押さえておくべき論点を網羅的に扱います。
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目次
道路使用許可とは|道路交通法77条1項が定める4つの許可類型
道路使用許可の根拠は道路交通法第77条第1項です。同項は「次の各号のいずれかに該当する者は、それぞれ当該各号に掲げる行為について当該行為に係る場所を管轄する警察署長(以下この節において「所轄警察署長」という。)の許可を受けなければならない」と定め、許可を要する行為を4つの号に分けています。実務ではこの号の番号をとって「1号許可」「4号許可」などと呼びます。
1号許可|道路における工事・作業
第1号は「道路において工事若しくは作業をしようとする者又は当該工事若しくは作業の請負人」です。建設業に最も関係が深いのがこの類型で、道路の掘削、舗装の打換え、上下水道管やガス管の埋設、電柱の建替え、街路樹の剪定、外壁工事に伴う歩道上の足場設置、クレーン車を据えての揚重作業などが広く含まれます。
条文が「工事若しくは作業をしようとする者又は当該工事若しくは作業の請負人」と書いている点は実務上重要です。発注者側と請負人側のいずれもが申請主体になり得るという構造であり、元請が一括して申請するのか、実際に路上作業を行う下請が申請するのかは、現場ごとの役割分担で決まります。ここが曖昧なまま着工し、結果としてどちらも申請していなかったという事故が起こりやすいところです。契約段階で「道路使用許可の申請者は誰か」を明記しておくことが予防策になります。
2号許可|道路に工作物を設ける行為
第2号は「道路に石碑、銅像、広告板、アーチその他これらに類する工作物を設けようとする者」です。商店街のアーチや催事用の装飾、広告板の設置などが該当します。工作物を継続して置くという性質上、後述する道路法の占用許可と重なる場面が典型的に生じる類型です。
3号許可|露店・屋台等の出店
第3号は「場所を移動しないで、道路に露店、屋台店その他これらに類する店を出そうとする者」です。移動しないことが要件になっている点が特徴で、祭礼時の露店などがここに入ります。
4号許可|公安委員会が定めた行為
第4号は、上記以外で「道路において祭礼行事をし、又はロケーシヨンをする等一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為で、公安委員会が、その土地の道路又は交通の状況により、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要と認めて定めたもの」です。
ここが他の号と決定的に違うのは、何が許可の対象になるかを各都道府県の公安委員会が定めるという点です。したがって4号許可の範囲は全国一律ではありません。たとえば東京都では東京都道路交通規則が、祭礼行事、記念行事、式典、競技会、仮装行列、パレード、街頭行進といった催し物のほか、旗やのぼり・看板を持ったり楽器を鳴らしたりしての広告宣伝、車両を著しく人目をひくように装飾しての通行、ロケーション・撮影会、拡声器等を備え付けた車両による放送・映写、演説や演芸等による人寄せ、消防・水防・避難・救護等の訓練、交通の頻繁な道路における寄附募集・署名要求・物品販売、ロボットの移動を伴う実証実験や自動運転技術を用いた走行実証実験などを列挙しています。
他県で同種の行為を行う場合に東京都の規則をそのまま当てはめることはできません。施工地を管轄する都道府県の道路交通規則(施行細則)を必ず確認するのが鉄則です。
道路使用許可と道路占用許可の違い|窓口・根拠条文・相互の調整
建設現場で最も混乱が生じるのがこの区別です。両者を整理します。
根拠条文と許可権者が異なる
道路使用許可は道路交通法第77条第1項に基づき、所轄警察署長が許可します。審査の視点は交通の安全と円滑であり、その行為によって交通の妨害が生じないか、生じるとしてどのような条件を付ければ安全を確保できるかを見ます。
これに対し道路占用許可は道路法第32条第1項に基づき、道路管理者が許可します。同項は「道路に次の各号のいずれかに掲げる工作物、物件又は施設を設け、継続して道路を使用しようとする場合においては、道路管理者の許可を受けなければならない」と定め、電柱・電線・変圧塔・郵便差出箱・公衆電話所・広告塔等の工作物、水管・下水道管・ガス管等の物件、鉄道・軌道・自動運行補助施設、歩廊・雪よけ、地下街・地下室・通路・浄化槽、露店・商品置場、その他政令で定めるものを掲げています。審査の視点は道路という公物の管理であり、道路の構造の保全と交通への支障の有無です。
キーワードは「継続して道路を使用」です。道路の一部を継続的に占有する物件を置くのであれば占用許可が要り、その設置作業自体が路上で行われるのであれば道路使用許可も要る、という関係になります。
道路管理者は誰か
占用許可の申請先を間違えないためには、その道路の管理者を特定する必要があります。道路法は、国道について、指定区間内は国土交通大臣、それ以外の部分は都道府県が維持・修繕その他の管理を行うと定め(第13条第1項)、都道府県道の管理はその路線の存する都道府県が行い(第15条)、市町村道の管理はその路線の存する市町村が行う(第16条第1項)としています。さらに第17条の管理の特例により、指定都市の区域内に存する国道の一部の管理および都道府県道の管理は当該指定都市が行います。私道であれば道路法上の道路ではないため占用許可の問題は生じませんが、道路交通法上の「道路」に当たるかは別途の判断になります。
二重申請を避けるための経由申請と協議
同じ行為について警察署と道路管理者の双方に出向くのは申請者の負担が大きいため、法はあらかじめ調整の仕組みを用意しています。
まず経由申請です。道路交通法第78条第2項は、道路使用許可に係る行為が道路法第32条第1項または第3項の適用を受けるものであるときは、道路使用許可の申請書の提出を「当該道路の管理者を経由して行なうことができる」と定め、道路管理者は速やかに申請書を所轄警察署長に送付しなければならないとしています。逆方向も同様で、道路法第32条第4項は、占用許可に係る行為が道路交通法第77条第1項の適用を受けるものである場合、占用許可の申請書の提出を「当該地域を管轄する警察署長を経由して行なうことができる」と定めています。どちらか一方の窓口に出せば他方へ送付してもらえるという双方向の仕組みです。
次に協議です。道路交通法第79条は、所轄警察署長が道路使用許可をしようとする場合において当該行為が道路法第32条第1項または第3項の適用を受けるものであるときは、あらかじめ道路管理者に協議しなければならないと定めます。道路法第32条第5項も、道路管理者が占用許可を与えようとする場合に当該行為が道路交通法第77条第1項の適用を受けるものであるときは、あらかじめ警察署長に協議しなければならないとしています。行政庁どうしが内部で調整する建付けです。
ただし、経由申請ができることと、片方の許可だけで足りることとは別問題です。経由はあくまで申請書の提出ルートの話であり、許可自体は警察署長と道路管理者からそれぞれ得る必要があります。この点を誤解して片方の許可証だけで着工してしまう例が後を絶ちません。
道路管理者自身が工事を行う場合の特例
道路交通法第80条第1項は、道路法による道路の管理者が道路の維持、修繕その他の管理のため工事または作業を行おうとするときは、第77条第1項の規定にかかわらず、所轄警察署長に協議すれば足りると定めています。道路管理者自身が施工主体となる場合の特例であり、民間事業者が道路管理者から工事を請け負って施工する場合の取扱いとは区別して考える必要があります。
道路法24条の承認工事
もうひとつ混同されやすいのが道路法第24条です。同条は、道路管理者以外の者が「道路に関する工事の設計及び実施計画について道路管理者の承認を受けて道路に関する工事又は道路の維持を行うことができる」と定めています。いわゆる承認工事で、宅地への出入口を設けるために歩道の縁石を切り下げる工事などが典型です。占用許可(物件を置く)とも道路使用許可(路上で作業する)とも別枠の手続であり、歩道切下げのように道路の構造そのものを変更する工事では、この承認と道路使用許可の両方を検討することになります。
工事に伴う通行止め・車線規制はどう実現されるか
「工事のため通行止めにしたい」という要望に対して、制度がどう応えるのかを整理します。ここは誤解が多いところです。
交通規制の権限は公安委員会にある
道路交通法第4条第1項は、都道府県公安委員会が、道路における危険を防止し、交通の安全と円滑を図るため必要があると認めるときは、政令の定めるところにより信号機または道路標識等を設置・管理して、交通整理、歩行者等または車両等の通行の禁止その他の道路における交通の規制をすることができると定めています。同条第2項は、この交通規制を「区域、道路の区間又は場所を定めて行なう」ものとし、対象を限定し、または適用される日・時間を限定して行うことができるとしています。
そのうえで第5条第1項は、公安委員会が、通行の禁止その他の交通の規制のうち適用期間の短いものを警察署長に行わせることができると定めます。この「適用期間の短いもの」の範囲は道路交通法施行令第3条の2に定められており、同条は法第5条第1項により公安委員会が警察署長に行わせることができる交通の規制を、政令が列挙する道路標識等による規制でその適用期間が1月を超えないものとしています。工事に伴う一時的な通行止めや一方通行の変更などが、警察署長限りで処理される制度的な理由がここにあります。
許可条件として規制が付されるのが実務の中心
もっとも、日常的な工事規制の多くは、正式な交通規制の告示によってではなく、道路使用許可に付される条件によって実現されています。道路交通法第77条第3項は、許可をする場合において必要があると認めるときは、所轄警察署長は、当該許可に係る行為が第2項第1号に該当する場合を除き、当該許可に「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要な条件を付することができる」と定めています。
実務では、この条件として施工時間帯の指定(たとえば夜間のみ、あるいは朝夕のピーク時間帯を除く)、車線をふさぐ幅や延長の上限、片側交互通行とすること、交通誘導員の配置人数と配置位置、歩行者用通路の確保幅、資材搬出入車両の出入口の指定などが付されます。許可条件は許可証の一部であり、これに反した施工は条件違反として罰則の対象になります(後述)。
さらに第77条第4項は、道路における危険を防止し交通の安全と円滑を図るため特別の必要が生じたときは、所轄警察署長が既に付した条件を変更し、または新たに条件を付することができると定めています。許可を得た後でも、周辺の交通状況の変化やイベントの開催などによって条件が追加・変更されることがあるということです。長期工事では特に、許可後の条件変更の連絡を受ける体制を現場側に用意しておく必要があります。
緊急時に警察官が行う措置
道路交通法第6条第4項は、警察官が、道路の損壊、火災の発生その他の事情により道路において交通の危険が生ずるおそれがある場合において、危険を防止するため緊急の必要があると認めるときは、必要な限度において、当該道路につき一時、歩行者等または車両等の通行を禁止し、または制限することができると定めています。水道管の破裂や陥没など突発事象の現場では、まずこの権限で通行が止められ、その後に本格的な復旧工事の手続へ移行するという流れになります。
道路使用許可の申請手続|様式第六・記載事項・添付書類
申請先は「行為に係る場所を管轄する警察署長」
道路交通法第77条第1項は、許可権者を「当該行為に係る場所を管轄する警察署長」としています。管轄を誤ると受理されませんので、施工箇所がどの警察署の管轄かを事前に確認します。
路線工事のように施工範囲が長く、複数の警察署の管轄にまたがる場合の取扱いも同項に定めがあります。「当該行為に係る場所が同一の公安委員会の管理に属する二以上の警察署長の管轄にわたるときは、そのいずれかの所轄警察署長の許可」でよいとされています。同一都道府県内で複数署にまたがるなら1署で足りるということです。逆に言えば、都県境をまたぐ工事では、それぞれの都道府県の警察署長の許可が必要になります。ここは工程を組むうえで見落とせません。
申請書の記載事項(施行規則10条1項)
道路交通法第78条第1項は「内閣府令で定める事項を記載した申請書を所轄警察署長に提出しなければならない」と定め、その内閣府令が道路交通法施行規則第10条です。同条第1項は、記載すべき事項として次の6項目を掲げています。
- 申請者の住所及び氏名(法人にあつては、その名称及び代表者の氏名)
- 道路使用の目的
- 道路使用の場所又は区間
- 道路使用の期間
- 道路使用の方法又は形態
- 現場責任者の住所及び氏名
実務上とりわけ重要なのが最後の現場責任者です。法令上の記載事項である以上、形式的に名前を書いておけばよいというものではなく、実際に現場を管理し、警察署からの連絡に応じられる人物を記載する必要があります。担当者が交代した場合は後述の変更届の対象になり得ます。
様式は「別記様式第六」・提出は2通
施行規則第10条第2項は、法第78条第1項の申請書および法第78条第3項の許可証の様式は別記様式第六のとおりとし、申請書は2通提出するものと定めています。1通が警察署に保管され、もう1通に許可内容が記載されて許可証として交付される仕組みです。警視庁も窓口申請の場合は2部作成するよう案内しています。
各都道府県警察が配布している用紙にも「別記様式第六(第十条関係)」と印字されています。この「第十条」は施行規則の条番号であって様式番号ではありませんので、様式を指すときは「別記様式第六」と表記するのが正確です。条番号と様式番号を取り違えないよう注意してください。
添付書類
施行規則第10条第3項は、申請書には「道路使用の場所又は区間の付近の見取図その他の第一項各号の事項を補足するために公安委員会が必要と認めて定めた書類」を添付しなければならないと定めています。つまり添付書類の詳細は都道府県ごとに定められるという構造です。
警視庁は、工事・作業の申請について、工事概要、現場案内図、緊急連絡先、道路使用状況図などを例示しています。道路使用状況図は、車線の割付け、規制帯の位置と延長、保安施設の配置、交通誘導員の立ち位置、歩行者用通路の確保状況などを図示するもので、審査の実質はここに集約されると言ってよい書類です。図面が粗いと補正を求められ、着工日程に直接影響します。
祭礼行事等の4号許可については、企画書、現場案内図、道路使用状況図などが例示されています。
許可証の交付・変更届・再交付
道路交通法第78条第3項は、所轄警察署長は許可をしたときは許可証を交付しなければならないと定めています。同条第4項は、許可証の交付を受けた者は記載事項に変更を生じたときは所轄警察署長に届け出て、許可証に変更に係る事項の記載を受けなければならないとしており、この変更の届出は施行規則第11条により別記様式第七の届出書と当該許可証を提出して行います。
同条第5項は、許可証を亡失し、滅失し、汚損し、または破損したときは再交付を申請できると定め、施行規則第12条により別記様式第八の再交付申請書と当該許可証を提出して行います。ただし亡失・滅失の場合は許可証の提出を要しません。
手数料・処理期間とオンライン申請|2025年12月からe-Gov電子申請へ
手数料は都道府県ごとに異なる
道路使用許可の手数料は各都道府県の条例で定められており、全国一律ではありません。したがって「いくらか」を一般論で語ることはできず、施工地を管轄する都道府県警察の案内で確認する必要があります。
参考として、警視庁が案内している東京都の手数料は次のとおりです。
- 工事・作業の申請:2,700円
- 工事・作業以外の申請:2,100円
- 年間縁日露店等:1,100円
- 許可証の再交付:700円
他県ではこれと異なる額が定められています。複数県にまたがる工事では、県ごとに申請が必要になるうえ手数料も県ごとに発生しますので、見積段階で織り込んでおくべきコストです。
受付時間と余裕をもった申請
警視庁は申請窓口を「道路使用許可を受けようとする道路の場所を管轄する警察署(交通規制係)」とし、受付時間を平日午前8時30分から午後4時30分までと案内しています。標準処理期間は都道府県警察ごとに扱いが異なりますので、着工日から逆算し、補正の可能性も見込んで早めに申請するのが実務の基本です。
オンライン申請の現在地
警察関係の行政手続はオンライン化が進んでいます。警視庁は、令和7年12月15日(月曜)から、以前の警察庁「警察行政手続サイト」にて受け付けていた申請・届出が「e-Gov電子申請」に変わりましたと案内しており、デジタル庁が運営するe-Gov電子申請ポータルへ移行しています。警察庁も道路使用許可のページにオンライン申請に関する項目を設けています。
オンライン申請では窓口の開庁時間に縛られない一方、システムの対象手続の範囲や添付図面のデータ形式、手数料の納付方法などは運用に依存します。実際に利用する際は、申請先都道府県警察の最新の案内を確認してください。なお警視庁は、オンライン申請について手数料納付後に「通常数日を要します」と案内しています。
建設業に関わる許認可のオンライン化という点では、車両側の手続も参考になります。あわせて特殊車両通行許可申請代行|特車の重量・寸法基準・オンライン申請・違反時の罰則もご覧ください。
許可基準と許可条件|道路交通法77条2項から7項を読む
77条2項|許可しなければならない3つの場合
道路使用許可は警察署長の自由裁量ではありません。道路交通法第77条第2項は、許可の申請があった場合において、当該申請に係る行為が次の各号のいずれかに該当するときは、所轄警察署長は許可をしなければならないと定めています。
- 当該申請に係る行為が現に交通の妨害となるおそれがないと認められるとき(第1号)
- 当該申請に係る行為が許可に付された条件に従つて行なわれることにより交通の妨害となるおそれがなくなると認められるとき(第2号)
- 当該申請に係る行為が現に交通の妨害となるおそれはあるが公益上又は社会の慣習上やむを得ないものであると認められるとき(第3号)
この条文構造は実務上きわめて重要です。工事はその性質上、多かれ少なかれ交通に影響します。第1号だけを見れば許可は出しにくい。しかし第2号があるため、適切な条件を付ければ交通の妨害のおそれがなくなると認められる限り、警察署長は許可をしなければならないことになります。だからこそ申請にあたっては、規制計画・保安施設・誘導体制をどう組めば安全が確保できるのかを、道路使用状況図等で説得的に示すことが本質的な作業になるのです。「どうせ警察の裁量だから」と粗い図面を出すのは、この構造の理解として正しくありません。
77条3項・4項|条件の付与と変更
前述のとおり、第3項により警察署長は必要な条件を付すことができます。ただし第2項第1号に該当する場合、すなわちそもそも交通の妨害となるおそれがないと認められる場合には条件を付すことができません。第4項により、特別の必要が生じたときは条件の変更・追加が可能です。
77条5項・6項|許可の取消し・効力停止と弁明の機会
第5項は、所轄警察署長は、許可を受けた者が第3項・第4項の条件に違反したとき、または道路における危険を防止し交通の安全と円滑を図るため特別の必要が生じたときは、その許可を取り消し、又はその効力を停止することができると定めています。条件違反は罰則の対象であると同時に、許可そのものを失う事由でもあるということです。工事が止まれば工期にも原価にも直撃します。
もっとも手続保障も置かれています。第6項は、条件に違反した者について取消し等の処分をしようとするときは、当該処分に係る者に対し、あらかじめ弁明をなすべき日時、場所および処分をしようとする理由を通知して、弁明および有利な証拠の提出の機会を与えなければならないと定めています。ただし「交通の危険を防止するため緊急やむを得ないとき」はこの限りでないとされています。
77条7項|原状回復義務
第7項は、許可を受けた者は、当該許可の期間が満了したとき、または第5項により許可が取り消されたときは、すみやかに当該工作物の除去その他道路を原状に回復する措置を講じなければならないと定めています。仮設物や標示板を撤去せずに放置することは、この義務の違反になります。
道路法にも対応する規定があり、第40条第1項は、道路占用者は占用期間が満了した場合または占用を廃止した場合には占用物件を除却し道路を原状に回復しなければならない(原状回復が不適当な場合を除く)と定め、同条第2項で道路管理者は必要な指示ができるとしています。撤去まで含めて工事であるという意識が必要です。
工事現場の保安施設と標示板の設置基準
許可条件の内容を理解するには、その背景にある基準を知っておくと役立ちます。道路工事現場の標示・防護については、「道路工事現場における標示施設等の設置基準」(昭和37年8月30日 道発第372号 建設省道路局長通達)があり、平成18年3月31日付(国道利第37号・国道国防第205号)で改正されています。この基準は「道路工事(道路占用工事にかかわるものを含む。)現場における標示施設、防護施設の設置及び管理の取扱」を定めるものです。
標示板に表示する事項
同基準は、道路工事を行う場合は必要な道路標識を設置するほか、原則として次の事項を標示する標示板を工事区間の起終点に設置するものとしています(短期間に完了する軽易な工事や自動車専用道路などの高速走行を前提とする道路における工事は除く)。
- 工事内容(工事の内容、目的等)
- 工事期間(交通上支障を与える実際の工事期間のうち、工事終了日、工事時間帯等)
- 工事種別(舗装修繕工事等)
- 施工主体(施工主体及びその連絡先)
- 施工業者(施工業者及びその連絡先)
防護施設・迂回路・色彩・管理
防護施設については、車両等の進入を防ぐ必要のある工事箇所には両面にバリケードを設置し、交通に対する危険の程度に応じて赤ランプ、標柱等を用いて工事現場を囲むものとされています。
迂回路を設ける場合は、当該迂回路を必要とする時間中、迂回路の入口に迂回路の地図等を標示する標示板を設置し、迂回路の途中の各交差点(迷い込むおそれのない小分岐を除く)において道路標識「まわり道」(120-A、120-B)を設置するものとされています。
色彩については、防護施設に色彩を施す場合は黄色と黒色の斜縞模様(各縞の幅10cm)を用いるものと定められています。現場の資機材でおなじみのあの配色には、こうした根拠があります。
管理については、標示板および防護施設は堅固な構造とし所定の位置に整然と設置して、修繕、塗装、清掃等の維持を常時行うほか、夜間においては遠方から確認し得るよう照明又は反射装置を施すものとされています。設置して終わりではなく、期間中の維持管理まで含めて求められている点が要点です。
工事情報看板と工事説明看板
同じ平成18年3月31日付で、上記の設置基準の改正(国道利第37号・国道国防第205号)とは別の通達として発出されたのが、「道路工事現場における工事情報看板及び工事説明看板の設置について」(国道利第38号・国道国防第206号 道路局路政課長・国道・防災課長通達)です。いずれも平成18年4月1日から実施されています。工事情報看板は、予定されている道路管理者の行う道路工事に関する工事情報を提供するため、道路工事を開始する約1週間前から道路工事を開始するまでの間、工事内容・工事期間等を標示するものとして、工事が予定されている現場付近に、ドライバーから看板内容が見えないように設置するものとされています。工事説明看板は、実施されている道路工事に関する工事情報を提供するため、道路工事開始から道路工事終了までの間、工事内容・工事期間等を標示するものとして、同様に現場付近に設置するものとされています。いずれも短期間に完了する軽易な工事等は除かれます。
また占用工事に係る取扱いとして、同通達の前提となった提言にいう「道路工事」には占用工事が含まれることを踏まえ、占用工事に係る工事情報の提供についても同様の取扱いに準じて行うよう、地方連絡協議会等の場において関係公益事業者に協力を依頼するものとされています。この場合の看板は、占用物件の設置等の工事のための一時占用として取り扱い、別個の占用としては取り扱わないとされている点も実務上の留意事項です。
なお、工事に伴う安全管理という観点では事故発生時の報告義務も併せて確認しておきたいところです。解体工事の事故報告義務|労基署への労働者死傷病報告・公衆災害通報を解説で整理しています。
交通誘導警備員の配置|警備業法18条と資格者配置路線
道路使用許可の条件として交通誘導員の配置が求められることは多いのですが、その誘導員に資格が必要な場合がある点は見落とされがちです。
交通誘導警備業務は、警備業法第2条第1項第2号の「人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務」に位置づけられる警備業務です。他人の需要に応じて行うものが警備業務であり、これを営業として行うには同法第4条の認定が必要です。
そのうえで警備業法第18条は、警備業者は、警備業務(第2条第1項第1号から第3号までのいずれかに該当するものに限る)のうち、「その実施に専門的知識及び能力を要し、かつ、事故が発生した場合には不特定又は多数の者の生命、身体又は財産に危険を生ずるおそれがあるものとして国家公安委員会規則で定める種別のものを行うときは、国家公安委員会規則で定めるところにより、その種別ごとに第23条第4項の合格証明書の交付を受けている警備員に、当該種別に係る警備業務を実施させなければならない」と定めています。
この「国家公安委員会規則で定める種別」を定めているのが警備員等の検定等に関する規則です。同規則第1条第4号は、警備業法第2条第1項第2号の警備業務のうち「工事現場その他人又は車両の通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務(交通の誘導に係るものに限る。)」を交通誘導警備業務として掲げており、検定には1級と2級があります。
そのうえで同規則第2条は、検定合格警備員の配置が必要になる場合を2つに分けています。ひとつは高速自動車国道または自動車専用道路において行う交通誘導警備業務で、これは規則自体が定めているため全国一律に配置義務がかかります。もうひとつが、道路または交通の状況により都道府県公安委員会が道路における危険を防止するため必要と認めるもので、実務上「資格者配置路線」と呼ばれる路線がこれにあたります。いずれの場合も、交通誘導警備業務を行う場所ごとに1級または2級の検定合格警備員を1人以上配置しなければなりません。公安委員会が認める路線は都道府県ごとに定められるため全国共通ではありませんので、施工箇所の路線が該当するかどうかは、管轄の都道府県警察の公表内容で確認してください。
ここは原価に直結する論点です。検定合格警備員は一般の警備員より単価が高くなるのが通常であり、資格者配置路線であることを見落として積算すると、契約後に想定外のコスト増が生じます。入札・見積の段階で路線区分を確認しておくことが実務上の勘所です。
無許可・条件違反の罰則|道路交通法と道路法の両面
道路交通法上の罰則
道路交通法第119条第2項第7号は、第76条第3項または第77条第1項の規定に違反したときを掲げ、同項柱書は「当該違反行為をした者は、三月以下の拘禁刑又は五万円以下の罰金に処する」と定めています。すなわち無許可で道路において工事・作業を行った場合の法定刑です。
同項第8号は、第77条第3項により警察署長が付し、又は同条第4項により警察署長が変更し、若しくは付した条件に違反したときを掲げており、条件違反も同じく3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金の対象です。許可を取っていても、時間帯や規制方法の条件を守らなければ処罰され得るということです。
第120条第2項第5号は、第77条第7項の規定に違反したとき、すなわち原状回復義務違反を掲げ、同項柱書により5万円以下の罰金と定めています。
また第121条第1項第10号は、第78条第4項(許可証の記載事項の変更の届出)等の規定に違反した者を掲げ、2万円以下の罰金または科料と定めています。
法人も処罰される|両罰規定
会社にとって見過ごせないのが両罰規定です。道路交通法第123条は、法人の代表者または法人・人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人または人の業務に関し、第119条第2項、第120条第2項、第121条第2項等の違反行為をしたときは、「行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑又は科料刑を科する」と定めています。
第77条第1項違反(無許可)は第119条第2項第7号、条件違反は同項第8号ですから、いずれも両罰規定の対象です。つまり現場で施工した従業員個人が処罰されるだけでなく、会社にも罰金刑が科され得ることになります。建設業者にとっては、罰金額の多寡以上に、法人が処罰されたという事実そのものが問題です。
道路法上の罰則
占用許可を欠いた場合はさらに重くなります。道路法第102条第1号は、第32条第1項の規定に違反して道路を占用したときは、その違反行為をした者を1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処すると定めています。無許可占用は道路使用許可違反より格段に重い法定刑です。
また道路法第71条第1項は、法令違反者や許可条件違反者等に対し、道路管理者が許可等の取消し・効力停止・条件変更、行為または工事の中止、工作物の改築・移転・除却、原状回復などを命ずることができると定めています。同条第2項は、道路に関する工事のためやむを得ない必要が生じた場合等に許可等を受けた者へ処分・措置を命じ得るとしています。そして第104条第7号は、第71条第1項または第2項の規定による道路管理者の命令に違反したときは100万円以下の罰金と定めています。
道路法第107条も両罰規定を置き、法人の代表者や従業者等が業務に関し第100条から第106条まで(第102条第2項を除く)の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか法人・人に対しても各本条の罰金刑を科するとしています。
建設業者としての波及
罰則そのものに加え、建設業者にとっては許可制度への波及も意識しておく必要があります。無許可施工や条件違反が発覚すれば、発注者からの信用低下、指名停止といった措置に及ぶことがあります。日常の許可管理という観点では、建設業許可『土木工事業』の請負金額500万円以上の判断と軽微な工事の例外や土木工事業の主任技術者・監理技術者の専任配置基準|4,500万円・9,000万円と兼務特例も参考になります。
実務でつまずきやすいポイントとよくある質問
Q. 一日で終わる小さな作業でも許可は必要ですか
道路交通法第77条第1項第1号は「道路において工事若しくは作業をしようとする者」と定めており、条文上、工事の規模や日数による除外は設けられていません。実際にどこまでを許可対象として扱うかは、路上を占める態様や交通への影響を踏まえた個別判断になりますので、短時間の作業であっても事前に所轄警察署の交通規制係へ相談するのが安全です。自己判断で省略して無許可施工となれば、前述の罰則と両罰規定のリスクを負うことになります。
Q. 元請と下請のどちらが申請すべきですか
第77条第1項第1号は「工事若しくは作業をしようとする者又は当該工事若しくは作業の請負人」と定めており、いずれも申請主体になり得ます。したがって法令上どちらでなければならないという答えはなく、誰が申請し、誰が現場責任者となるかを契約と施工体制の中で明確に決めておくことが実務対応です。施行規則第10条第1項が現場責任者の住所・氏名を記載事項としている以上、申請者と現場管理の実態が乖離しないようにしてください。
Q. 工期が延びた場合はどうすればよいですか
許可は「道路使用の期間」を記載事項として(施行規則第10条第1項第4号)、その期間について与えられます。期間が満了すれば第77条第7項の原状回復義務が生じます。工期延長が見込まれる場合は、期間満了前に所轄警察署へ相談し、必要な手続を確認してください。無手続のまま期間を超えて路上作業を継続すれば、その部分は無許可の道路使用と評価されるおそれがあります。
Q. 現場責任者や連絡先が変わったときは
道路交通法第78条第4項は、許可証の記載事項に変更を生じたときは所轄警察署長に届け出て許可証に変更事項の記載を受けなければならないと定め、施行規則第11条により別記様式第七の届出書と許可証を提出します。この違反は第121条第1項第10号により2万円以下の罰金または科料の対象です。人事異動の多い時期は特に注意してください。
Q. 都県境をまたぐ工事はどう申請しますか
第77条第1項が1署でよいとするのは「同一の公安委員会の管理に属する二以上の警察署長の管轄にわたるとき」です。公安委員会は都道府県ごとに置かれますから、都県境をまたぐ場合は各都道府県で許可を得る必要があります。手数料も都道府県ごとの条例によりますので、県ごとに発生します。
Q. 廃棄物の搬出を伴う工事で他に注意することは
道路使用許可は交通の安全と円滑という観点からの規制であり、廃棄物や資材の取扱いは別の法令が規律します。解体を伴う工事では建設リサイクル法の届出等が問題になりますので、建設リサイクル法の特定建設資材廃棄物とは|対象工事・届出・分別解体・再資源化・罰則を解説もあわせてご確認ください。
Q. 私道での工事にも道路使用許可は要りますか
道路法上の道路でない私道であっても、道路交通法上の「道路」に該当すれば同法第77条の適用があり得ます。一方、道路法に基づく占用許可は道路法上の道路を前提とする制度です。「私道だから何も要らない」という単純な整理はできませんので、当該通路の位置づけを確認したうえで所轄警察署に相談してください。
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まとめ
道路上での工事・作業には、道路交通法第77条第1項第1号に基づく道路使用許可が必要です。許可権者は行為に係る場所を管轄する所轄警察署長であり、同一公安委員会の管理に属する複数署にまたがる場合はいずれか1署の許可で足りる一方、都県境をまたぐ場合は都道府県ごとの許可が必要になります。申請主体は工事をしようとする者またはその請負人であり、元請・下請のどちらが申請するかは契約段階で決めておくべき事項です。
道路使用許可と道路法第32条第1項の道路占用許可は別制度です。前者は警察署長、後者は道路管理者が許可権者で、審査の視点も交通の安全・円滑と道路の管理という違いがあります。道路交通法第78条第2項と道路法第32条第4項により相互に経由申請ができ、道路交通法第79条と道路法第32条第5項により行政庁間の協議も行われますが、経由できることと片方の許可で足りることは別問題である点を取り違えないでください。
工事に伴う通行止めや片側交互通行の多くは、道路交通法第77条第3項に基づく許可条件として実現されます。同条第2項第2号は、条件に従って行われることで交通の妨害のおそれがなくなると認められるときは許可をしなければならないと定めており、規制計画と保安施設・誘導体制を道路使用状況図で説得的に示すことが申請の核心になります。許可後も第4項により条件が変更・追加されることがあり、第5項の取消し・効力停止、第7項の原状回復義務まで含めて管理が必要です。
罰則面では、無許可の道路使用が道路交通法第119条第2項第7号により3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金、条件違反が同項第8号により同じ法定刑とされ、第123条の両罰規定により法人にも罰金刑が科され得ます。無許可占用は道路法第102条第1号で1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金とさらに重くなります。手数料や資格者配置路線の指定は都道府県ごとに異なるため、施工地の運用を必ず確認してください。
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