くい打機やさく岩機、大型のバックホウを使う工事が決まったとき、現場の担当者が真っ先に確認しなければならないのが「特定建設作業実施届出」です。これは騒音規制法と振動規制法という2つの法律にそれぞれ根拠を持つ届出で、指定地域内で対象作業を行う場合、作業開始の日の7日前までに市町村長へ提出しなければなりません。
この届出は、期限の計算を1日誤っただけで着工日をずらさざるを得なくなる性質のものです。にもかかわらず、「どの機械を使うと対象になるのか」「騒音と振動で対象作業がどう違うのか」「1日で終わる作業でも届出が要るのか」といった判断が現場任せになっているケースは少なくありません。届出漏れには罰金も定められており、公共工事の受注実績にも影響しかねません。
本記事では、騒音規制法・振動規制法の条文と施行令・施行規則、環境大臣が定める規制基準まで一次情報に当たりながら、特定建設作業実施届出の対象・期限・記載事項・罰則を実務目線で整理します。
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目次
特定建設作業実施届出とは|騒音規制法と振動規制法の二本立て構造
特定建設作業実施届出は、建設工事に伴って発生する著しい騒音・振動から周辺の生活環境を守るために設けられた事前届出制度です。根拠となる法律は2つあり、それぞれ独立した届出義務を課しています。
- 騒音規制法(昭和43年法律第98号)第14条第1項
- 振動規制法(昭和51年法律第64号)第14条第1項
条文番号が偶然にも両方とも「第14条」で揃っているため混同されがちですが、これは別々の法律の別々の届出です。同じ現場で騒音の特定建設作業と振動の特定建設作業の両方に該当する場合、届出書は2通提出することになります。片方だけ出して済ませることはできません。
届出が必要になるのは「指定地域内」に限られる
両法とも、届出義務が生じるのは「指定地域内」で特定建設作業を伴う建設工事を施工しようとする場合です。指定地域は、騒音規制法第3条第1項により、都道府県知事(市の区域内の地域については市長)が指定します。条文では、住居が集合している地域、病院または学校の周辺の地域その他の騒音を防止することにより住民の生活環境を保全する必要があると認める地域を、規制地域として指定しなければならないとされています。
つまり、現場の住所が指定地域に入っているかどうかが第一のふるいです。実務では、工事場所を管轄する市区町村の環境担当部署が公表している指定地域図で確認するのが確実です。同じ市内でも指定地域と指定地域外が混在していることは珍しくなく、また騒音規制法の指定地域と振動規制法の指定地域が完全には一致しない自治体もあります。「前回の現場では要らなかったから今回も不要だろう」という判断は危険です。
届出先は「市町村長」
届出先は都道府県ではなく市町村長です(騒音規制法第14条第1項、振動規制法第14条第1項)。後述する建設リサイクル法の届出先が都道府県知事であるのと対照的で、同じ現場でも書類の宛先が分かれます。政令指定都市では区役所が窓口になっている例、特別区では区が窓口になっている例など、実際の受付窓口は自治体ごとに異なります。
「特定建設作業」の定義|騒音規制法施行令別表第二の8作業
騒音規制法第2条第3項は、「特定建設作業」を、建設工事として行われる作業のうち、著しい騒音を発生する作業であって政令で定めるものと定義しています。この「政令で定めるもの」が騒音規制法施行令(昭和43年政令第324号)第2条であり、同条は別表第二に掲げる作業とすると規定しています。
騒音規制法施行令別表第二に掲げられているのは、次の8種類の作業です。カッコ内の除外要件や出力要件が判断の分かれ目になるため、原文の要件をそのまま押さえておく必要があります。
騒音規制法の特定建設作業8種
| 号 | 作業の内容 |
|---|---|
| 一 | くい打機(もんけんを除く)、くい抜機またはくい打くい抜機(圧入式くい打くい抜機を除く)を使用する作業(くい打機をアースオーガーと併用する作業を除く) |
| 二 | びょう打機を使用する作業 |
| 三 | さく岩機を使用する作業(作業地点が連続的に移動する作業にあっては、1日における当該作業に係る2地点間の最大距離が50メートルを超えない作業に限る) |
| 四 | 空気圧縮機(電動機以外の原動機を用いるものであって、その原動機の定格出力が15キロワット以上のものに限る)を使用する作業(さく岩機の動力として使用する作業を除く) |
| 五 | コンクリートプラント(混練機の混練容量が0.45立方メートル以上のものに限る)またはアスファルトプラント(混練機の混練重量が200キログラム以上のものに限る)を設けて行う作業(モルタルを製造するためにコンクリートプラントを設けて行う作業を除く) |
| 六 | バックホウ(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものを除き、原動機の定格出力が80キロワット以上のものに限る)を使用する作業 |
| 七 | トラクターショベル(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものを除き、原動機の定格出力が70キロワット以上のものに限る)を使用する作業 |
| 八 | ブルドーザー(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものを除き、原動機の定格出力が40キロワット以上のものに限る)を使用する作業 |
判断を誤りやすい3つのポイント
第一に、くい打機の除外範囲です。もんけんは除かれ、くい打くい抜機については圧入式が除かれます。また、くい打機をアースオーガーと併用する作業も対象外です。ここは振動規制法と除外の範囲がずれているため、後述のとおり要注意です。
第二に、建設機械の定格出力と低騒音型指定です。第六号から第八号までのバックホウ・トラクターショベル・ブルドーザーは、それぞれ80キロワット・70キロワット・40キロワット以上という定格出力の下限があり、これを下回る機械を使う作業は対象外です。さらに、一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定した機械(いわゆる低騒音型建設機械)を使用する場合も対象から除かれます。現場で使う機械が低騒音型の指定を受けているかどうかは、機械の型式ごとに確認が必要です。定格出力だけを見て対象と判断してしまうと、不要な届出を出すことになりかねません。
第三に、さく岩機の移動距離要件です。作業地点が連続的に移動する作業については、1日における2地点間の最大距離が50メートルを超えない作業に限って対象となります。長い区間を移動しながら断続的にさく岩機を使う工事では、この距離要件の当てはめが実務上の争点になります。
「その作業を開始した日に終わるもの」は除外される
見落とされやすいのが、騒音規制法施行令第2条のただし書です。同条は「別表第二に掲げる作業とする。ただし、当該作業がその作業を開始した日に終わるものを除く」と規定しています。つまり、着手した日のうちに終了する作業は特定建設作業に該当しません。これは振動規制法施行令第2条でも同じ構造です。
ただし、これを「1日で終わらせるつもりだから届出不要」と自己判断するのは危険です。工程が延びて2日目にかかった時点で特定建設作業となり、届出義務が発生します。しかし届出は作業開始の日の7日前までに提出しなければならないため、その時点では期限を守ることが不可能になります。実務では、1日で終わる見込みであっても延伸の可能性があるなら、あらかじめ届け出ておく判断が安全です。
振動規制法の特定建設作業|施行令別表第二の4作業
振動規制法第2条第3項も同様に、建設工事として行われる作業のうち著しい振動を発生する作業であって政令で定めるものを「特定建設作業」と定義しています。振動規制法施行令(昭和51年政令第280号)第2条により、対象は別表第二に掲げる次の4作業です(作業を開始した日に終わるものを除く点は騒音と同じ)。
| 号 | 作業の内容 |
|---|---|
| 一 | くい打機(もんけんおよび圧入式くい打機を除く)、くい抜機(油圧式くい抜機を除く)またはくい打くい抜機(圧入式くい打くい抜機を除く)を使用する作業 |
| 二 | 鋼球を使用して建築物その他の工作物を破壊する作業 |
| 三 | 舗装版破砕機を使用する作業(作業地点が連続的に移動する作業にあっては、1日における当該作業に係る2地点間の最大距離が50メートルを超えない作業に限る) |
| 四 | ブレーカー(手持式のものを除く)を使用する作業(作業地点が連続的に移動する作業にあっては、1日における当該作業に係る2地点間の最大距離が50メートルを超えない作業に限る) |
騒音と振動で「くい打機」の除外範囲が違う
両法を並べて読むと、くい打機関係の除外範囲が一致していないことがわかります。これは実務で最も間違えやすい箇所です。
| 機械 | 騒音規制法施行令 | 振動規制法施行令 |
|---|---|---|
| くい打機 | もんけんを除く | もんけんおよび圧入式くい打機を除く |
| くい抜機 | 除外の定めなし | 油圧式くい抜機を除く |
| くい打くい抜機 | 圧入式くい打くい抜機を除く | 圧入式くい打くい抜機を除く |
| アースオーガー併用 | 併用する作業を除く | 除外の定めなし |
たとえば圧入式くい打機を使う作業は、振動規制法では対象外ですが、騒音規制法では「もんけんを除く」としか書かれていないため、圧入式くい打機であっても騒音規制法上のくい打機に当たり得ます。逆に、くい打機をアースオーガーと併用する作業は騒音規制法では明文で除外されていますが、振動規制法には同じ除外がありません。「振動は要らないから騒音も要らない」といった横並びの判断は成り立ちません。2つの法律について別々に当てはめを行うのが原則です。
解体工事は両法にまたがりやすい
解体工事では、鋼球による破壊作業(振動)、手持式以外のブレーカー(振動)、さく岩機や大型バックホウ(騒音)が同時に登場することがあります。この場合は騒音・振動それぞれの届出が必要になるうえ、建設リサイクル法や大気汚染防止法の手続も並行します。解体工事に関わる届出全体の整理については、建設リサイクル法の特定建設資材廃棄物とは|対象工事・届出・分別解体・再資源化・罰則を解説もあわせてご確認ください。
提出期限は「作業開始の日の7日前まで」|日数の数え方と緊急時の例外
騒音規制法第14条第1項、振動規制法第14条第1項はいずれも、当該特定建設作業の開始の日の7日前までに届け出なければならないと定めています。届出そのものは受理されれば足り、許可のような処分を待つ必要はありませんが、期限を過ぎた提出は届出義務違反となります。
「7日前まで」の数え方
期間の計算方法については、民法第138条が「期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う」と定め、同法第140条本文が「日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない」と規定しています。騒音規制法・振動規制法には日数計算についての特別の定めが置かれていないため、この初日不算入の原則が基本となります。
もっとも、実際の運用は条文の文言より慎重です。自治体が公表している手引きでは、届出日と作業開始日のいずれも日数に算入せず、その間に中7日を空ける(結果として作業開始日の8日前までに提出する)ものとして案内されている例が多く見られます。「作業開始日から8日を引いた日が届出期限」「作業開始日の前日を1日目としてさかのぼり、8日目に当たる日まで」といった形で明示している自治体もあり、条文の文言どおりに7日を引いて計算すると1日足りなくなるおそれがあります。
ただし、期限日が閉庁日に当たる場合の取扱いや、郵送提出の場合に到達日と発信日のどちらを基準とするかといった細部は、自治体の運用によって差があります。期限ぎりぎりの提出を前提に工程を組むのは避け、余裕をもって窓口に確認するのが実務上の鉄則です。工程が確定した段階で早めに提出しておけば、期限計算で悩む必要はなくなります。
災害その他非常の事態による例外
騒音規制法第14条第1項ただし書、振動規制法第14条第1項ただし書は、災害その他非常の事態の発生により特定建設作業を緊急に行う必要がある場合には、事前届出の適用を除外しています。
ただし、これは届出そのものが不要になるという意味ではありません。両法とも第14条第2項で、この場合において当該建設工事を施工する者は速やかに同条第1項各号に掲げる事項を市町村長に届け出なければならないと定めています。事前届出が事後の速やかな届出に置き換わるだけであり、届出義務は残ります。しかもこの第2項の届出を怠った場合には過料の定めがあります(後述)。
なお「災害その他非常の事態」は、工期の遅れや資材の到着遅延といった事業者側の事情を指すものではありません。緊急性の判断は慎重に行い、該当性に疑義があるなら通常の事前届出として処理すべきです。
届出義務者・記載事項・添付書類|様式第九の実務
誰が届け出るのか|届出義務者は「施工しようとする者」
騒音規制法第14条第1項の主語は「指定地域内において特定建設作業を伴う建設工事を施工しようとする者」です。振動規制法も同じ表現を用いています。ここでいう施工しようとする者は、実務上、当該建設工事を施工する元請業者を指すものとして運用されるのが一般的です。
もっとも、下請業者が特定建設作業を実際に実施する場合も想定されており、騒音規制法施行規則第10条第2項は、環境省令で定める記載事項として「下請負人が特定建設作業を実施する場合は、当該下請負人の氏名又は名称及び住所並びに法人にあつてはその代表者の氏名」および「届出をする者の現場責任者の氏名及び連絡場所並びに下請負人が特定建設作業を実施する場合は、当該下請負人の現場責任者の氏名及び連絡場所」を挙げています。振動規制法施行規則第10条第2項にも同趣旨の規定があります。つまり、届出をするのは元請、実際に作業をするのが下請なら下請の情報も届出書に書くという設計です。
他の届出とは義務者が異なるので注意
同じ現場で必要になる他の法令の届出は、義務者が異なります。ここを取り違えると、書類は作ったのに提出者が違って受理されないという事態を招きます。
| 手続 | 根拠 | 義務者 | 届出先 | 期限 |
|---|---|---|---|---|
| 特定建設作業実施届出(騒音) | 騒音規制法14条1項 | 建設工事を施工しようとする者 | 市町村長 | 作業開始の日の7日前まで |
| 特定建設作業実施届出(振動) | 振動規制法14条1項 | 建設工事を施工しようとする者 | 市町村長 | 作業開始の日の7日前まで |
| 対象建設工事の届出 | 建設リサイクル法10条1項 | 発注者または自主施工者 | 都道府県知事 | 工事に着手する日の7日前まで |
| 特定粉じん排出等作業の実施の届出 | 大気汚染防止法18条の17第1項 | 発注者または自主施工者 | 都道府県知事 | 作業開始の日の14日前まで |
騒音・振動の届出は施工者が出すのに対し、建設リサイクル法と大気汚染防止法の届出は発注者が出すという違いは、実務上きわめて重要です。石綿関係の手続の詳細は、解体工事における大気汚染防止法の届出|事前調査結果報告・特定粉じん排出等作業の手続を行政書士が解説で整理しています。発注者側の責任分担については解体工事の発注者の責任|分別解体等の届出・元請の指導と委託契約の留意点もご参照ください。
届出書の様式は騒音・振動とも「様式第九」
騒音規制法施行規則第10条第1項、振動規制法施行規則第10条第1項はいずれも、法第14条第1項および第2項の規定による届出は様式第九による届出書によってしなければならないと定めています。両法とも様式番号が第九で共通していますが、当然ながら別々の様式です。
法律が定める記載事項
騒音規制法第14条第1項が掲げる記載事項は次のとおりです。
- 氏名または名称および住所ならびに法人にあっては、その代表者の氏名
- 建設工事の目的に係る施設または工作物の種類
- 特定建設作業の場所および実施の期間
- 騒音の防止の方法
- その他環境省令で定める事項
振動規制法第14条第1項も第1号・第2号・第5号は同じですが、第3号と第4号が異なります。振動規制法の第3号は「特定建設作業の種類、場所、実施期間及び作業時間」、第4号は「振動の防止の方法」です。騒音規制法では第3号が「特定建設作業の場所及び実施の期間」にとどまり、作業の種類は施行規則側で環境省令事項として求められる構造になっています。法律の条文レベルで求められる項目が違う点は、条文を引用する際に取り違えないよう注意が必要です。
環境省令で定める事項(施行規則第10条第2項)
騒音規制法施行規則第10条第2項が定める事項は、次の6項目です。
- 建設工事の名称ならびに発注者の氏名または名称および住所ならびに法人にあってはその代表者の氏名
- 特定建設作業の種類
- 特定建設作業に使用される騒音規制法施行令別表第二に規定する機械の名称、型式および仕様
- 特定建設作業の開始および終了の時刻
- 下請負人が特定建設作業を実施する場合は、当該下請負人の氏名または名称および住所ならびに法人にあってはその代表者の氏名
- 届出をする者の現場責任者の氏名および連絡場所ならびに下請負人が特定建設作業を実施する場合は、当該下請負人の現場責任者の氏名および連絡場所
振動規制法施行規則第10条第2項は、次の4項目です。作業の種類と作業時間が法律本体(第14条第1項第3号)に規定されているため、省令側の項目数が少なくなっています。
- 建設工事の名称ならびに発注者の氏名または名称および住所ならびに法人にあってはその代表者の氏名
- 特定建設作業に使用される振動規制法施行令別表第二に規定する機械の名称、型式および仕様
- 下請負人が特定建設作業を実施する場合は、当該下請負人の氏名または名称および住所ならびに法人にあってはその代表者の氏名
- 届出をする者の現場責任者の氏名および連絡場所ならびに下請負人が特定建設作業を実施する場合は、当該下請負人の現場責任者の氏名および連絡場所
実務で記載に手間取るのが「機械の名称、型式および仕様」です。カタログ上の商品名ではなく型式まで特定する必要があり、定格出力の記載が求められることもあります。リース機械を使う場合は、機械が確定してから届出書を作成することになるため、7日前という期限から逆算すると、機械の手配は想像以上に早く固めておく必要があります。
添付書類
騒音規制法第14条第3項は、届出には当該特定建設作業の場所の附近の見取図その他環境省令で定める書類を添附しなければならないと定めています。振動規制法第14条第3項も同じ構造です。
そして騒音規制法施行規則第10条第3項は、この環境省令で定める書類を「特定建設作業を伴う建設工事の工程の概要を示した工事工程表で特定建設作業の工程を明示したもの」と規定しています。振動規制法施行規則第10条第3項も同様です。
したがって、法令上の最低限の添付書類は付近見取図と工事工程表(特定建設作業の工程を明示したもの)の2点です。工程表は単に工事全体の工程を示すだけでは足りず、どの期間にどの特定建設作業を行うのかが読み取れる形で明示する必要があります。自治体によっては、作業配置図や周辺への周知状況に関する資料など、独自の添付資料を求めている場合があります。提出前に窓口の案内を確認しておくと差し戻しを防げます。
特定建設作業の規制基準|85デシベル・75デシベルと時間・日数の制限
届出を出せば自由に作業してよいわけではありません。特定建設作業には、騒音・振動それぞれについて守るべき基準が定められています。
騒音の規制基準
騒音については、騒音規制法第15条第1項に基づき環境大臣が定める基準として、「特定建設作業に伴つて発生する騒音の規制に関する基準」(昭和43年11月27日厚生省・建設省告示第1号)が置かれています。その内容は次のとおりです。
- 第1号(大きさ):特定建設作業の場所の敷地の境界線において、85デシベルを超える大きさのものでないこと
- 第2号(夜間):別表第1号に掲げる区域では午後7時から翌日の午前7時までの時間内、別表第2号に掲げる区域では午後10時から翌日の午前6時までの時間内に行われる特定建設作業に伴って発生するものでないこと
- 第3号(1日の作業時間):別表第1号の区域では1日10時間、別表第2号の区域では1日14時間を超えて行われる特定建設作業に伴って発生するものでないこと
- 第4号(連続日数):特定建設作業の全部または一部に係る作業の期間が当該場所において連続して6日を超えて行われる特定建設作業に伴って発生するものでないこと
- 第5号(休日):日曜日その他の休日に行われる特定建設作業に伴って発生するものでないこと
各号にはただし書による例外が置かれています。第2号(夜間)については、災害その他非常の事態の発生により緊急に行う必要がある場合、人の生命または身体に対する危険を防止するため特に行う必要がある場合、鉄道または軌道の正常な運行を確保するため特に夜間に行う必要がある場合、道路法第34条に基づく道路占用許可に夜間施工の条件が付された場合や同法第35条の協議で夜間施工に同意された場合、道路交通法第77条第3項に基づく道路使用許可に夜間施工の条件が付された場合や同法第80条第1項の協議で夜間施工とされた場合が例外とされています。
第3号(1日の作業時間)については、当該特定建設作業がその作業を開始した日に終わる場合、災害その他非常の事態により緊急に行う必要がある場合、人の生命または身体に対する危険を防止するため特に行う必要がある場合が例外です。
なお、この告示の柱書には、第1号の基準を超える大きさの騒音を発生する特定建設作業について勧告・命令を行うにあたり、第3号本文にかかわらず1日の作業時間を同号に定める時間未満4時間以上の間において短縮させることを妨げない旨のただし書が置かれています。基準超過が続く場合、行政側が作業時間の短縮を求める余地があるということです。
振動の規制基準
振動については、振動規制法第15条第1項の環境省令で定める基準として、振動規制法施行規則第11条および別表第一が基準を定めています。骨格は騒音と同じで、数値と一部の例外事由が異なります。
- 第1号(大きさ):特定建設作業の場所の敷地の境界線において、75デシベルを超える大きさのものでないこと
- 第2号(夜間):付表第1号の区域では午後7時から翌日の午前7時まで、付表第2号の区域では午後10時から翌日の午前6時までの時間に行われるものでないこと
- 第3号(1日の作業時間):付表第1号の区域では1日10時間、付表第2号の区域では1日14時間を超えて行われるものでないこと
- 第4号(連続日数):当該場所において連続して6日を超えて行われるものでないこと
- 第5号(休日):日曜日その他の休日に行われるものでないこと
振動の別表第一備考は、デシベルを計量法別表第二に定める振動加速度レベルの計量単位とし、測定は計量法第71条の条件に合格した振動レベル計を用いて鉛直方向について行い、振動感覚補正回路は鉛直振動特性を用いると定めています。振動ピックアップの設置場所についても、緩衝物がなく十分踏み固め等の行われている堅い場所、傾斜および凹凸がない水平面を確保できる場所、温度・電気・磁気等の外囲条件の影響を受けない場所という条件が明記されています。
第1号区域と第2号区域
時間規制の厳しさを分ける「第1号区域」は、指定地域のうち、都道府県知事(市の区域内の区域については市長)が次のいずれかに該当する区域として指定した区域です。振動規制法施行規則別表第一の付表では、次のように定められています。
- 良好な住居の環境を保全するため、特に静穏の保持を必要とする区域
- 住居の用に供されているため、静穏の保持を必要とする区域
- 住居の用に併せて商業、工業等の用に供されている区域であって、相当数の住居が集合しているため、振動の発生を防止する必要がある区域
- 学校教育法第1条に規定する学校、児童福祉法第7条第1項に規定する保育所、医療法第1条の5第1項に規定する病院および同条第2項に規定する診療所のうち患者を入院させるための施設を有するもの、図書館法第2条第1項に規定する図書館、老人福祉法第5条の3に規定する特別養護老人ホーム、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第2条第7項に規定する幼保連携型認定こども園の敷地の周囲おおむね80メートルの区域内
第2号区域は、指定地域のうち第1号区域以外の区域です。学校・保育所・病院等の周囲おおむね80メートルという基準があるため、用途地域だけを見て判断すると区域の当てはめを誤ります。現場の周辺に該当施設がないか、必ず確認してください。
基準違反は直ちに罰則ではなく「勧告→命令」
ここは正確に理解しておく必要があります。騒音規制法第15条第1項は、市町村長は、指定地域内で行われる特定建設作業に伴って発生する騒音が環境大臣の定める基準に適合しないことによりその場所の周辺の生活環境が著しく損なわれると認めるときは、当該建設工事を施工する者に対し、期限を定めて、騒音の防止の方法を改善し、または作業時間を変更すべきことを勧告することができると定めています。
そして同条第2項は、勧告を受けた者がその勧告に従わないで特定建設作業を行っているときに、期限を定めて改善または作業時間の変更を命ずることができるとしています。罰則が科されるのは、この命令に違反した場合です。基準を超過したこと自体が直ちに犯罪となるわけではありません。
また、騒音規制法第15条第3項は、公共性のある施設または工作物に係る建設工事として行われる特定建設作業について勧告・命令を行うにあたり、市町村長は当該建設工事の円滑な実施について特に配慮しなければならないと定めています。振動規制法第15条第3項も、工期の遅延によって公共の福祉に著しい障害を及ぼすおそれのあるときは、生活環境の保全に十分留意しつつ、建設工事の実施に著しい支障を生じないよう配慮しなければならないとしています。
違反した場合の罰則|騒音規制法と振動規制法で金額が大きく違う
両法の罰則は構造こそ似ていますが、金額が大きく異なります。振動規制法のほうが重い設定です。特定建設作業に関係する部分を整理します。
| 違反の内容 | 騒音規制法 | 振動規制法 |
|---|---|---|
| 第14条第1項の届出をせず、または虚偽の届出をした | 3万円以下の罰金(第31条) | 10万円以下の罰金(第26条) |
| 第15条第2項の命令(改善命令)に違反した | 5万円以下の罰金(第30条) | 30万円以下の罰金(第25条) |
| 第14条第2項の届出(緊急時の事後届出)をせず、または虚偽の届出をした | 1万円以下の過料(第33条) | 3万円以下の過料(第28条) |
| 報告をせず、虚偽の報告をし、検査を拒み、妨げ、忌避した | 3万円以下の罰金(第31条) | 10万円以下の罰金(第26条) |
加えて、両罰規定が置かれています。騒音規制法第32条は、法人の代表者または法人もしくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人または人の業務に関し違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人または人に対して各本条の罰金刑を科すると定めています。振動規制法第27条も同様です。つまり、現場担当者個人だけでなく会社にも罰金が科される設計です。
罰金額自体は高額ではありません。なお、騒音規制法・振動規制法違反による罰金刑は、建設業法第8条第8号の欠格要件の対象法令として建設業法施行令第3条の2が列挙するもの(建築基準法、宅地造成及び特定盛土等規制法、都市計画法、景観法、労働基準法、職業安定法、労働者派遣法の各規定)には含まれておらず、これによって直ちに建設業許可を失うわけではありません。もっとも、届出漏れや基準超過が近隣とのトラブルや行政指導につながれば、発注者との信頼関係や現場運営に影響します。「金額が小さいから」と軽視できる性質のものではありません。建設業許可取得後に守るべき法定義務全般については、建設業許可取得後のコンプライアンス|法定帳簿の備付け・標識掲示の義務一覧を解説で整理しています。
報告徴収と立入検査
騒音規制法第20条第1項は、市町村長は法の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、特定建設作業を伴う建設工事を施工する者に対し特定建設作業の状況その他必要な事項の報告を求め、またはその職員に建設工事の場所に立ち入り、物件を検査させることができると定めています。
騒音規制法施行令第3条第2項は、この報告・検査の対象を、特定建設作業の実施の状況および騒音の防止の方法についての報告、ならびに建設工事の場所に立ち入って特定建設作業に使用される機械および騒音を防止するための施設ならびに関係帳簿書類を検査することと具体化しています。近隣から苦情が寄せられた場合、市町村がこの権限に基づいて現場に入ることがあります。届出書の内容と実際の作業内容が食い違っていると、虚偽届出を問われかねません。
実務でつまずきやすいポイント
変更が生じたときの取扱い
騒音規制法第14条、振動規制法第14条には、届出事項に変更が生じた場合の変更届に関する明文規定は置かれていません。この点は、建設リサイクル法第10条第2項が「届出に係る事項のうち主務省令で定める事項を変更しようとするときは、その届出に係る工事に着手する日の7日前までに」変更を届け出なければならないと明記しているのと対照的です。
もっとも、明文規定がないからといって何もしなくてよいわけではありません。工期や作業内容、使用機械が届出時から大きく変わった場合、実務上は変更届の提出を求める運用をしている自治体が多く見られます。また、届出の内容と実態が乖離したまま作業を続けると、報告徴収や立入検査の際に問題となります。変更が生じた時点で速やかに市町村の窓口に相談するのが安全な対応です。
条例による上乗せ・横出し
騒音規制法第27条第2項は、この法律の規定は、地方公共団体が、指定地域内において建設工事として行われる作業であって特定建設作業以外のものについて、その作業に伴って発生する騒音に関し条例で必要な規制を定めることを妨げるものではないと定めています。振動規制法第23条第2項も同旨です。
つまり、政令別表第二に載っていない作業についても、自治体が条例で独自の規制や届出義務を設けることが法律上認められています。実際、条例で対象作業を追加している自治体や、法の指定地域外について独自の規制を設けている自治体があります。法令だけを確認して「対象外だから届出不要」と結論づけるのは危険で、工事場所を管轄する自治体の条例まで確認する必要があります。
同一現場で複数の届出が重なる
指定地域内で解体を伴う工事を行う場合、典型的には次の手続が同時並行で走ります。期限がそれぞれ異なるため、最も早い期限から逆算して工程を組む必要があります。
- 大気汚染防止法第18条の17第1項の届出(該当する場合):作業開始の日の14日前まで・発注者または自主施工者・都道府県知事
- 建設リサイクル法第10条第1項の届出(対象建設工事の場合):着手する日の7日前まで・発注者または自主施工者・都道府県知事
- 騒音規制法第14条第1項の届出:作業開始の日の7日前まで・施工しようとする者・市町村長
- 振動規制法第14条第1項の届出:作業開始の日の7日前まで・施工しようとする者・市町村長
- 道路使用許可(道路交通法第77条)・道路占用許可(道路法第32条):現場の状況に応じて
なお、大気汚染防止法第18条の15第6項は、解体等工事の元請業者または自主施工者は、事前調査を行ったときは遅滞なく、環境省令で定めるところにより調査の結果を都道府県知事に報告しなければならないと定めています。石綿の事前調査結果報告は届出とは別の義務であり、規模要件を満たせば石綿が無かった場合でも報告が必要です。
近隣への周知
騒音規制法・振動規制法には、近隣住民への事前説明を義務づける規定はありません。しかし、自治体の条例や指導要綱で工事の事前周知を求めている例は多く、また実際のトラブルの多くは法定基準の超過ではなく周知不足から生じます。届出を出すことと近隣対応は別物であり、届出さえ出せば苦情が来ないというものではありません。
よくある質問
1日で終わる作業でも届出は必要ですか
騒音規制法施行令第2条ただし書、振動規制法施行令第2条ただし書により、その作業を開始した日に終わる作業は特定建設作業から除かれます。したがって法令上は届出不要です。ただし、工程が延びて2日目にかかれば特定建設作業となり、その時点では7日前という期限を守れません。延伸の可能性があるなら、あらかじめ届け出ておく判断が実務上は安全です。
低騒音型の機械を使えば届出は不要になりますか
騒音規制法施行令別表第二第六号から第八号までのバックホウ・トラクターショベル・ブルドーザーについては、一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものが除外されています。この指定を受けた機械を使う作業は、当該号の特定建設作業には該当しません。ただし、これは騒音規制法施行令別表第二の第六号から第八号に限った話です。同じ現場でくい打機やさく岩機を使えば別途該当し得ますし、振動規制法施行令別表第二には環境大臣が指定する機械を除外する規定そのものがありません。
指定地域かどうかはどこで確認できますか
指定地域は騒音規制法第3条第1項・振動規制法第3条第1項に基づき都道府県知事(市の区域内の地域については市長)が指定し、同条第3項により公示されます。実務では、工事場所を管轄する市区町村の環境担当部署が公表する指定地域図や、都道府県の公示情報で確認します。騒音と振動で指定地域の範囲が異なる場合があるため、両方の確認が必要です。
元請ではなく下請が届け出てもよいですか
条文上の届出義務者は「特定建設作業を伴う建設工事を施工しようとする者」であり、実務上は元請業者が届け出るものとして運用されています。下請業者が特定建設作業を実施する場合は、施行規則第10条第2項により、届出書に下請負人の氏名・名称・住所および現場責任者の氏名・連絡場所を記載します。届出主体そのものを下請に変えるという趣旨の規定ではありません。
届出をすれば夜間や日曜に作業してよいのですか
いいえ。届出は作業の実施を届け出る手続であって、規制基準の適用を免れさせるものではありません。夜間や日曜日その他の休日の作業は、告示第2号・第5号(振動は施行規則別表第一第2号・第5号)で制限されており、例外に当たる場合を除いて認められません。夜間施工を要する場合、道路占用許可や道路使用許可に夜間施工の条件が付されているといった、告示・省令が定める例外事由に該当するかを個別に確認する必要があります。
期限に間に合わなかった場合はどうなりますか
作業開始の日の7日前までに届け出なかった場合、騒音規制法第31条により3万円以下の罰金、振動規制法第26条により10万円以下の罰金の対象となり得ます。法人にも両罰規定により罰金刑が科され得ます。間に合わないことが判明した時点で、作業開始日を後ろにずらして期限を満たすよう工程を調整するのが原則的な対応です。
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まとめ
特定建設作業実施届出は、騒音規制法第14条第1項と振動規制法第14条第1項という別々の根拠を持つ2つの届出です。条文番号が同じであるために一体のものと誤解されがちですが、対象作業も記載事項も罰則の金額も異なります。両法について別々に当てはめを行い、双方に該当するなら2通提出するのが原則です。
対象作業は、騒音規制法施行令別表第二の8作業と振動規制法施行令別表第二の4作業です。くい打機の除外範囲が両法でずれている点、バックホウ等には定格出力の下限と環境大臣が指定する低騒音型の除外がある点、そしてその作業を開始した日に終わるものは除かれるという施行令第2条ただし書は、判断を誤りやすい急所です。
提出期限は作業開始の日の7日前までで、届出先は市町村長です。民法第140条の初日不算入の原則に従うのが基本ですが、閉庁日や郵送提出の扱いは自治体運用に差があるため、期限ぎりぎりの提出を前提とした工程は避けるべきです。災害その他非常の事態による緊急施工の場合は事前届出が免除されますが、第14条第2項により速やかな事後届出が必要で、怠れば過料の対象となります。
規制基準は、騒音85デシベル・振動75デシベルを敷地境界線での上限とし、第1号区域・第2号区域の別に夜間の時間帯規制と1日10時間・14時間の作業時間制限、連続6日の日数制限、日曜日その他の休日の制限が課されています。基準超過は直ちに罰則ではなく、市町村長の勧告を経た改善命令への違反が処罰対象となる構造です。届出義務違反には騒音3万円以下・振動10万円以下の罰金が定められ、両罰規定により法人にも罰金刑が及びます。
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